すしログ日本料理編 No. 162 三河功治さんの料理

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

この度、web上で非常に魅力的なイベントを発見しました。

現在「サーモン&トラウト」に勤務されている三河さんと、広島県庄原市のチーズ生産者「乳ぃーずの物語。」の國利さんがコラボし、日本料理の中でチーズを表現されるとの事!

そして、企画は清澄白河の国産チーズ専門店「チーズのこえ」の今野さん。

三河さんは滋賀県の名店「徳山鮓」で修業された方で、今後多大な期待を寄せているため、万難を排して予定調整の上、参加させて頂きました。

場所はサモトラですが、三河さんは独立が確定しているので、店舗情報は載せずに「三河さんの料理」としてご紹介いたします。

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三河功治さん×國利知史さんコラボイベントの料理の概観

今回のイベントのお料理の流れとしては、以下の通りです。

  • 八寸(チーズ)
  • 椀(チーズ)
  • お造り:ワニ(サメ)
  • 天麩羅(チーズ、山菜)
  • 炊き合せ(チーズ、鶏肉)
  • 鮒鮓を用いた野菜炒め、チーズ掛け
  • 酒肴盛り合わせ(チーズ、シャルキュトリ)
  • お好み焼きをイメージしたタリアテッレ
  • 水菓子(チーズ、鮒鮓飯のソース)

料理名を列挙しただけでも、十分個性的ではないでしょうか?

詳細は後述致しますが、一言力強く言えることは、非常に個性的なラインナップながら、日本料理にチーズを落とし込むのに成功されている事実です。

 

日本料理の調味料と出汁を用いて、西洋料理では味わえないチーズ料理に仕上げておられました。

これは、チーズが国産チーズであることも大きな理由だと思います。

福岡の欧割烹清水さんでは、糸島ナチュラルチーズ製造所・TAKさんのチーズを出汁に漬けて鰹節と山葵と見事に合わせておりますが、今回も同様に和食と国産チーズの相性の良さを実感した次第です。

 

日本人はもともと歴史的に発酵食品が大好きな民族。

鮒鮓などのナレズシは乳酸発酵に伴う酸味が「チーズのよう」と形容されるので、チーズそのものも本質的に大好きな民族なのでは?と感じます。

…やや拡大解釈となってしまいましたが、それも十分ありうるなと感じさせる、新たな日本料理の可能性を提示する秀逸な内容でした。

「徳山鮓」での修行の成果も随所に表れており、三河さんの将来が楽しみです!

スペシャルイベントの料理の詳細

下記に各料理の詳細と使用されたチーズの品種を明記します。

 

庄原市高野のリンゴを用いたシードル

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八寸

八寸

  • 使用チーズ:リコッタ、フロマージュブラン、スカモルツァ
  • 内容:クロカワの煮物(カピとキャロライナリーパー、スカモルツァ)、クサギの新芽(スカモルツァ)、リコッタ鮨(リンゴと鮎)、白和え風リコッタ(干し柿とクルミ、香茸パウダー)、鮎の骨煎餅(梅干しフロマージュブラン)

クロカワはキノコ通に好まれる苦みのあるキノコだが、タイの発酵調味料であるカピを用いる事で、見事にスカモルツァに接続されていた。

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キャロライナリーパーは広島県庄原市の吉岡香辛料研究所さんのもの。

元来は超激辛と言うよりも激痛を呼び起こす品種であるが、使用量が程良いため、ピリ辛で収まっている。

また、山野草であるクサギの新芽も印象深い味わい。

強い苦味に心地良い香ばしさがあり、海藻のような要素もある。

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リコッタ鮨も全く違和感が無く、完成度に驚いた。

使用する酢は明治時代から続く蔵の後藤商店さんの赤酢。

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鮎の骨煎餅に用いた合わせ調味料も個性的。

フロマージュブランの酸味に梅干しの酸味を合わせ、骨煎餅の香ばしさを包み込む。

 

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  • 使用チーズ:モッツァレラ

椀種は牡蠣真薯で、椀妻は縮みほうれん草、吸い口はゴボウ。

吸い地はジャガイモのすり流し。

これは大変力強い味わいの椀…と言うかスープ。

濃密な牡蠣真薯を主役として、周囲の風味ががっちりと合わさり、足し算によって魅力を高めている。

モッツァレラは風味と食感が跳躍する。

 

お造り

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ワニ(サメ)は広島県庄原市の郷土料理。

サメ食は全国でもエリアが限られており、庄原市以外だと島根県仁多郡奥出雲町や、鳥取県日野郡日南町などの山間部でも食される。

また、栃木県鹿沼市にも食文化があり、「モロ」と呼ばれている。

文化としては非常に古く、「古事記」の因幡の白兎に出てくる「ワニ」はサメであり、古来より食されていたとされる。

発掘史料によると、縄文時代から食されていたと言う説があり、ロマンがある(笑)

ちなみに、なぜ山間部かと言うと、サメは大量のアンモニアを含んでいるため、長時間輸送しても腐らないためである。

 

さて、肝心のお味。

これが非常に淡白で、しかし旨味があって、旨い。

保存食としてのサメは臭いが強かっただろうが、現在の流通手段を以て調理されたサメは独自の魅力を楽しめる。

ねっちりと舌に張り付くような食感の後、サクッと切れる繊維質は独特だ。

 

本日のサメは気仙沼のモウカザメ。

付け合わせはワニの煮凝り、春菊新芽。

タタキの方はハブ草茶を極めて上品に用いておられ、興味深い。

「ハブ草茶」は広島では割と知られる薬草茶である。

広島市内の名店「悠膳いしおか」さん「野趣拓」さんでも使用されている。

 

天麩羅

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  • 使用チーズ:カチョカヴァロ、スカモルツァ
  • 野菜:蕗の薹、蕨

火入れしたカチョカヴァロは鉄板の美味しさだが、スモーキーフレイバーが加わるスカモルツァは悶絶するほど美味しい。

天麩羅の衣と言う、ふんわりと優しい生地がチーズにピッタリとは!

もちろん一口目はサクッと。

蕗の薹などの揚げ方も良く、三河さんの天麩羅の腕も知れた。

 

炊き合せ

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  • 使用チーズ:雪子

鶏肉と椎茸のとろろ蒸し。

これは、庄原市の郷土料理【雪消し鍋】をイメージされたそう。

チーズの名前からインスピレーションを得て、郷土料理をアレンジされたそうだが、その思考経路が、まず素晴らしい。

単純に高級食材を足し算する日本料理とは次元が異なる。

 

味わいはとろろとチーズが一体化しており、実に美味。

とろろの中だけでなく、具としてもチーズが入っており、食べ応えがある。

鶏肉と椎茸の旨味も出ており、チーズと相互に活かしている。

 

野菜炒め

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  • 使用チーズ:カチョカヴァロ

野菜は明日葉、カイランナで、鮒鮓の飯(いい)を使用!

鮒鮓の飯とは、「徳山鮓」での修行の成果を遺憾なく発揮!

乳酸発酵による酸味と、鮒から滲み出た香りが加わり、非常に贅沢な味わいの野菜炒めとなっている。

風味の強い野菜を用いているため、鮒鮓飯ならびにカチョカヴァロが浮く事無く噛み合っている。

 

酒肴盛り合わせ

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  • 使用チーズ:オールドナナツカ(チェダータイプ)
  • 内容:鯉の燻製、猪ハム、猪パテ、ブラックバスの南蛮漬けなど

これは面白い!

個々の完成度が高く、「徳山鮓」に匹敵する味わいである。

尚、鯉と猪の組み合わせには三河さんのメッセージが込められており、(チーズのこえのある)清澄白河駅ホームにある「鯉の丸に牡丹」をイメージされたそう。

今回の出会いに感謝を示されており、感動的だ。

 

ソースは高野のリンゴジャムに後藤の赤酢。

パテにはオールドナナツカと白子のソース。

オールドナナツカは明治の頃に作られていたレシピを再現したそう。

 

お好み焼きをイメージしたタリアテッレ

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  • 使用チーズ:朧月

牡蠣とお好みソース、揚げたケール、卵醤油漬け、ザワークラウトとイカ天の炒めもの添え。

これは完全にお好み焼きの味わい(笑)

「朧月」は鰹節や鯖、イリコ、昆布、椎茸の出汁を用いているチーズ。

和のエッセンスのあるチーズなので、「お好み焼き」との相性は抜群だ(笑)

 

デザート

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  • 使用チーズ:フロマージュブラン

高野のリンゴ、フロマージュブランと鮒鮓飯のソース。

変態的の一言(笑)

鮒鮓の香りを割とアグレッシヴに用いたデザートだ。

しかし、発酵食品好きならば妙に惹かれる強い個性と味わい。

 

スペシャルイベントのお料理なので記事化するかどうか悩みましたが、企画・実行頂いた関係各位に感謝の意を示すと共に、

応援になればと思い、この度筆を執りました。

今後のご活躍を心より祈念しています。

 

関連する記事

文中でご紹介したお店のリンクです。

 

滋賀県の名店「徳山鮓」

広島市内でイチオシの日本料理店「悠膳いしおか」

カジュアルに上質なお料理を楽しめる「野趣拓」

 

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