すしログ No. 32  はしぐち@赤坂見附

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こちらはかつて紀尾井町にあり、予約困難と謳われた鮨店。

2011年に当地に移転されたとの事。

赤坂御用地に隣接する場所にあり、駅からはやや離れているものの、静謐な立地は道すがら期待を高めます。

 

暖簾をくぐり、お店に入ると、六席ほどの待合があります。

予約時間になると女将さんが笑顔で案内してくれ、奥に進むとキリッと美しいカウンターが目に入る。

カウンター周りは明るく、天井や小壁には影が降り、陰影のコントラストが妙に心を落ち着けます。

 

お店に漂う香りは、非常に香しい。

酢と米の匂いが絶妙に交じり合っておりますが、鮨店の中でもかなり良い香りのお店です。

鮨店では、香りも重要な要素。

 

お酒は奈良の春鹿を頼み、握りのみお好みで頂く事にしました。

 

一貫目の真子鰈を頂き、こちらのシャリと握りの完成度に驚嘆を覚えます。

温度が申し分なく、口の中のほどけ具合も絶妙です。

酢、塩ともに控えめなのに、非常に印象深く美味しいシャリ。

甘みは排除されておりますが、尖ったところは無く、上品でありながら存在感のある、かなり秀逸なシャリです。

白身に始まり、〆もの、貝、鮪、煮物と頂きましたが、全てのタネにシャリが合致しておりました。

タネとの調和性の高いシャリとしては福元以来の満足度です。

個人的には、シャリの「味わい」としてはイーブンですが、

シャリの「美味しさ」ではこちらに軍配。

話に聞く「沈むシャリ」は内包する空気によってシャリの味を高みに上げる。

 

ご主人の握りは無駄が無く、骨太な掌と指を優しく駆使した、的確な小手返しです。

ご主人の職人気質な雰囲気と無骨な外見とは裏腹な、柔らかで、優しい握り。

しかし、手元への目付きは鋭く真摯で、シャリに魂と気合を込めているかのようです。

 

ガリは程よい塩気に鮮烈な辛味で、食感強め。

美しく薄切りにされており、これを見ただけでも包丁の技術を窺い知れます。

接客に関しては、よく言われる「素っ気なさ」が確かに存在します。

しかし、僕は昨今では稀有な「職人気質」だと感じ、非常に格好良く感じました。

カウンターを挟んでの対峙。

向こうが手で魂を込めた握りを、こちらは口で吟味する。

職人さんから「どうだ」と付きつけられた刃を受けるような感覚は、今や鮨店では味わいにくい心地良い緊張感だと思います。

それでいて、よくよく見ると、ご主人は口元に笑みをたたえておられ、目元にも笑みも浮かべておられるのが印象的でした。

 

お会計は12貫と干瓢巻き(と日本酒一合)で、1万5千円を切るほど。

単価としては銀座並ですが、握りの完成度を考慮すると、「良心的」だと感じます。

お任せしかない飲み鮨店が主流になっている中で、お好みで頂けて、良心的な会計の鮨店は非常にありがたい。

 

頂いた握りは下記の通りです。

特に〆の仕事に感銘を覚えました。

 

真子鰈

昆布の旨味をしっかり乗せた〆方。

昆布の香りは余り無い。食感が程よい。

白烏賊

繊細な包丁。

細切りにしつつ、烏賊の食感を楽しませる。

春子

やや強めに〆つつ旨味と香りを立てる。

皮目が美味。

小鰭

こちらもやや強めの〆だが、皮の食感は活かしている。

時期的に旨味は少し弱いが、シャリとの相性が抜群。

仕事とシャリが奏功。

ミル貝

甘く柔らかい。包丁に妙有り。

青柳

香りは上品で、甘い。

一般的な青柳のイメージを裏切る。

鮪漬け

軽やかな食感。

しっかりと漬けているものの、辛すぎない。

鮪中トロ

上品な甘みを楽しませる。

赤貝

大ぶりながら野暮ったさは無い。

穴子

細身だが、香りを中々上手く引き出している。

旬に頂いてみたい。

 

しっかりとした火入れ。

噛みしめると旨味が滲み、ツメが美味。

玉子

薄切りで、おぼろを挟む。

ふんわりとした柔らかな甘み。

干瓢巻き

食感、歯切れ良好。

甘みは控えめで、程よい醤油。山葵と合う。

シャリの美味しさを感じさせる干瓢の仕上げだった。

 

こちらのシャリは当世流行のシャリに比べると、薄味かもしれません。

酢を立たせ、塩を強め、エッジを利かせたシャリは僕も好きです。

しかし、全てのタネを活かすシャリと言うのは、極めて珍しい。

 

店名:鮨 はしぐち

シャリの特長:タネとの調和が素晴らしい、バランスに長けたシャリ。温度、硬さも申し分なし。

予算の目安:夜15,000円〜

最寄り駅:赤坂見附駅から443m

TEL: 03-3478-3588

住所: 東京都港区元赤坂1-5-20

営業時間:18:00〜22:00

定休日:日曜、祝日

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