こちらはすし善にほど近い、円山公園にある鮨店です。
この瀟洒な一角は札幌の一大グルメエリアとなっております。
ご主人は東京の街場寿司の出身ですが、全国を熱心に食べ歩かれ、個性あふれる鮨を作り出しておられます。
「自身の理想とする鮨まではまだまだ…」と謙遜されておりましたが、既に唯一無二の仕事も幾つか生み出されております。
再訪時の写真付き記事もあります。
そして、着目すべきは仕事のセンス。
過剰なことはやらず、ギリギリのところで抑制されている印象を受けます。
それが奏功し、かなり上質なタネを入れておられますが、損なうことなくタネを活かし、個性を表現する事に成功しております。
40代半ばで名声を高めておられるご主人。
これからの進化が楽しみです。
札幌で伺うべき鮨店は、こちらかと思います。
シャリは赤酢を二種類使用され、酸味が強く、エッジの利いたシャリです。
酸味を利かせつつ、砂糖も使用している為、尖り過ぎずにまとめておられ、ハラリとほどける硬さ、粘度は非常に優れております。
米の香りも結構強いですが、嫌味にならずに一体化しております。
個性を出しつつバランスに長けた美味しいシャリです。
とは言え、試行錯誤されているそうなので、将来進化しているかもしれません。
(再訪し、矢張り進化しておりました。2017.11追記)
なお、使用されている山葵も質が高く、静岡産の極太サイズ。
ガリも辛味を出した鋭い味付けで、その味付け故に途中で出されます。
この度の訪問時には縞鯵と帆立の間に出てきました。
蒸し鮑
函館産。包丁を入れた時に立ち込める香りこそ、鮑の魅力。
まさしく馥郁たる香りが鼻孔をくすぐり、食感を官能的に高められる。
火入れは絶妙で柔らかく、一口かじれば濃厚なゼラチン質と旨味に舌が惑わされる。
身に秘めた微かな苦みが美味しく、逆に肝は爽やかな味わい。
蝦夷バフンウニ
利尻産。一粒が巨大で、香り、食感ともに申し分ない。
粒がしっかりと存在を主張し、舌を愛撫するように旨味がとろける。
真子鰈
函館産。面白い事に、肝ポン酢で頂く。
身はプリプリで甘みが走り、ポン酢の程よい酸味も上品。
肝を爽やかに食わす仕事。
ゴマサバ
淡路産。藁で炙り焼き。
皮下脂肪がもの凄く、今の時期の「鯖」として非常に魅力的。
とろっと脂が滲み、浅葱と生姜の使い方も抑制されており爽やか。
ツブ貝
肝ソース。食感、香りが非常に強く、余韻が長い。
キンキ味噌
兜の肉や骨まで使用した味噌。
塩分が控えめなのにお酒を進ませる、上品な酒肴。
甘みと香りがたっぷりで、かすなか骨の食感が気持ち良い。
キンキ焼物
皮はパリパリで。身はジューシー。
申し分ない火入れ。
この後、握りに移行します。
烏賊
鹿の子切り。ねっとりとした食感、甘みが非常に深い。
甘鯛
旨味が極めて強く、酢橘の使い方も巧い。
鰺
比較的珍しい、酢〆(≠酢洗い)。
酸味が香りと甘みを強調する、良い仕事。
トキシラズ
頂いて、その脂の質に驚く。
聞くところによると、3kgほどの魚体で、ほぼ鮭児との事。
皮目を軽く炙っているところにセンスを感じ、昆布で軽く〆ているところも白眉。
香り、甘み、食感の全てが揃った仕事。
縞鰺
10日熟成。口当たりが良く、香りも十分。
帆立海苔挟み
稚内産、海苔は愛知の青飛。
鮪トロ
三厩産。まろやかなコクがあり、香りよりも旨味が鮮烈な印象。
丁寧にタネの温度を戻されており、旨味の伝達、口どけに奏功。
北寄貝
炙り加減が非常に良い。腹まで届くような香りで、甘みも深い。
ホッカイシマエビ
かなりの上モノが入ったので生で、との事。
ブドウエビ
白眉。氷温熟成3日を経て、海老味噌で漬け込んだ卵と食す。
深い緑色の卵は見た目にも美しく、味わい的にはほぼ完璧。
「海老の新たな仕事」とも言える鮮烈な一貫。
椀
じゅんさいを使用しており面白い。
出汁はやや強めの鰹で、積丹産の岩海苔が香しい。
穴子
神奈川産(小柴?)。煮ツメはさっぱり。
伊達巻き
甘エビを使用。
素材のクオリティのみならず感動的な仕事が多く、満足の一言です。
鮨店では珍しく日本酒が進んでしまい、計三合。
(二世古・純吟・彗星、大信州・純吟、山法師・純米大吟醸)
お会計は22,150円となり、少々お値段が張る印象ですが、
北海道で頂いた鮨の中では一番美味しく、
他の料理店と比べても訪問する価値があると感じました。
店名:鮨菜 和喜智(すしさい わきち)
シャリの特徴:赤酢を二種類ブレンドし、程良い酸味。非常に美味しいシャリ。
予算の目安:おまかせ21,470円〜
最寄駅:円山公園駅から130m
TEL:011-640-3768
住所:北海道札幌市中央区南二条西25-1-22
営業時間:18:00~20:00、20:00~22:00 ※完全2交代制
定休日:月曜
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