こちらは北海道が誇る江戸前鮨の名店です。
嶋宮勤氏が1971年に開業し、北海道に江戸前の仕事を持ち込まれました。
道産の食材に江戸前の仕事を施す「蝦夷前」の開祖と言えます。
その甲斐もあってか鮨職人としては珍しく、「黄綬褒章」と「現代の名工」を受賞されております。
札幌に三軒、銀座に一軒ありますが、やはり本店に伺いたいと思っておりました。
こちらは料理付きのコースにすると2万円を超えるため、リーズナブルに頂けるランチにお伺いし、握りのみのコース(8,640円、12貫+椀、水菓子)を頂きました。
価格帯としては、北海道にあって銀座とほぼ同じです。
こちらのシャリは硬めで、塩分、酢ともに控えめ。
非常にオーソドックスな味わいで、久兵衛一門のシャリに似ております。
よって、タネによってずば抜けた一体感はないまでも、全体的に相性が良いシャリです。
温度管理も良く、山葵はこまめにすり下ろされております。
松皮鰈
高級鰈のマツカワ。
甘みが極めて強く、歯ごたえは適度。
寝かしておられるのでしょうが、良い見極めです。
スダチを使用しますが、わずか一滴と、抑制されております。
大助(オオスケ)
食感はとろりとしており、香りは芳醇。
タネとしては良いのですが、
握られてから薬味を盛るまで(提供)に40秒ほど掛かっていたところがやや興醒め。
こちらは薬味を使う仕事は数人分まとめて処理されるようなのですが、タイムラグが大き過ぎる。
鮪トロ
宮城産。歯切れは良く、香りもそれなりにあります。
北寄貝
炙って提供され、炙り加減が良い。
塩はヒマラヤ岩塩、酢橘を数滴。
タネの質、仕事を合わせてかなり良かった。
エゾバフン海胆
すっきりした味わいで、香りたっぷり。
これもヒマラヤ岩塩で。
ボタン海老
申し分ない味わいです。
鯵
脂が中々乗っており、香りも良いです。
鮑
生ですが、香りが強く、包丁の入れ方も良いので、嫌味なく頂けます。
烏賊
剣先でしょうか。薬味を幾つか選ばせてもらえるところが面白い。
僕は山わさびで。
甘みが強く、美味しい烏賊でした。
いくら
煮キリが多く、少々味が濃い。
椀
油揚げとエノキの味噌汁と、野暮。
小鰭
割としっかりした〆加減で、オボロを噛ます。
地方で頂く小鰭としては非常に良く、北海道で江戸前を出されている矜持を感じました。
穴子
小鰭に続いて江戸前の代表的なタネである穴子で終わらせるというのも面白いです。
ひと通り頂き、こちらの鮨は「優等生」だと感じました。
流石にタネごとにハイレヴェルな味をキープし、仕事も上質で、シャリも中々の出来栄えです。
ただ、銀座価格である点を考えると、(東京から伺う場合)夜に伺う価値は低く、ランチがギリギリかなと感じました。
よって、追加してコストを上げるという蛮行もせず。
最も、フレッシュな魚をただ食わせる地方寿司とは全く異なるスタンスで、江戸前鮨を北海道に根付かせた氏の功績は極めて大きいと思います。
全国にお弟子さんも多く、江戸前鮨文化の隆盛に寄与されてきた方のお店。
北海道の人にとっては、正統の江戸前仕事を楽しめる良店であることは間違いないかと思います。
店名:すし善 本店
シャリの特長:硬めで、温度管理が良い。酢、塩分ともに控えめで万人受けする味わい。
予算の目安:(昼)9,000円〜、(夜)20,000円〜
最寄り駅:円山公園駅から337m
TEL: 011-612-0068
住所: 北海道札幌市中央区北一条西27-2-10
営業時間:11:00~15:00、17:00~22:00
定休日:月曜
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