こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
以前通常営業時にお伺いした笠間の「鮨 松榮」さん。
茨城の食材を活かした「常磐前鮨」を志向する、魅力的なご当地江戸前鮨です。
この度、臼井親方からご連絡をいただき、同じく茨城県筑西市にある「来福酒造」さんとの日本酒ペアリング会のお誘いをいただきました。
「鮨酒文化振興協会」を運営する身としては行かねばなりません。
「来福酒造」さんも魅力的な酒蔵さんですしね。


日本酒ペアリングを共に探求している妻とともに参加したところ、個性抜群なペアリング会でした。
そして、全国の酒蔵さんは、地元の上質なお店を組んでペアリングイベントを行うことで、さらに価値を上げる事が可能だと確信しました!
…とは言え、自蔵のお酒は把握しているけど、料理とのペアリング理論はわからない…という酒蔵さん(あるいは飲食店さん)はご相談ください。
最大限お力添えいたします。
それでは、日本酒ペアリング会の詳細を紹介します。
ただ、その前に、ペアリングを担当された藤村 勇太さん(次期十一代目蔵元)を紹介させてください。
若くして日本酒ペアリングを行う素晴らしい方なので。

まず、「来福酒造」さんは1716 年(享保元年)に創業をさかのぼる、非常に長い歴史を持つ酒蔵です。
常陸の國にやってきた近江商人が筑波山麓の良水を活かして創業された酒蔵ですが……これ、テストに出ます!
いや、J.S.A. SAKE DIPLOMAの栃木県の項目に記載があり、一次試験で問われる可能性がある質問なんです。
それはさておき歴史が古い酒蔵さんなのですが、実験的な試みをされてきたのが面白いところ。
東京農業大学の中田 久保先生と組んで、自然界の花の蜜から「花酵母」を分離・培養する方法を確立した酒蔵だからです。
今でも使用する酵母は全て花酵母というのが面白い。
ちなみに、「花酵母」と言っても分離元の花の香りがするわけではありません。
かつてソムリエの方が書いた日本酒の本に「このお酒はバラ酵母のお酒なのでバラの香りがする」と書かれていたので買って飲んでみたことがありますが、やっぱりしませんでした笑
ご注意ください!
そして、藤村 勇太さんは次期十一代目の当主で、現在東京農業大学の大学院生です。
大学生の頃にJ.S.A. SAKE DIPLOMAを取得された方なので、才気あふれる醸造家です。
なお、J.S.A. SAKE DIPLOMAを取得する際には、「アカデミー・デュ・ヴァン」の並里先生の授業を受講されたそうです。
藤村 勇太さんは僕が「鮨ゆうき」さんでペアリング会を開催した時にもご参加いただきました。
実は、開催前には藤村 勇太さんが酒蔵の方だと認識しておらず、高い倍率の抽選の結果、藤村 勇太さんが当選、そしてご参加いただいたのですが、イベントの最後にご挨拶して「来福酒造」さんだと分かり、ヒヤッとしました笑
今回、藤村 勇太さんのペアリングをいただき、僕も刺激になりました。
正直なところ、昭和から平成にかけての日本酒マニアは「日本酒とはこうあるべし!」という圧が強く、「純米酒信仰」、「冷酒信仰」、「辛口信仰」などなど色々な信仰があり、それを個人の趣味を超えて押し付けがちでした。
だからこそ、様々な飲料が増える過程で若い層が「日本酒はなあ…」と退いていってしまったのだと思います。
まさに先行するマニアがビギナーを阻害してジャンルが衰退するパターン。
しかし、ペアリングには「こうあるべし!」というルールなどありません。
僕もペアリング理論を研究していて、理論があると実践の質が改善されるとは思いますが、ペアリングは十人十色でそれが楽しい。
まして、最近の日本酒はめっちゃ美味しくなっています。
だからこそ世界各国で日本酒のアワードが作られたり、一流店でペアリングに日本酒が使われるようになっているわけです。
つまり、今の時代に食を楽しむならば、日本酒を飲まないのはもったいない。
そして、ペアリングを体感しないなんてもったいない。
藤村 勇太さんのペアリングをいただくことで、若い方ほど日本酒を飲んで、ペアリングに触れたら確実に面白いぞ!と感じました。
日本酒ペアリングには、提供者の知識、経験、味覚といったスキル的なものだけでなく、感情、哲学、思想などの感覚的なものも含まれるので、「成功したペアリング」というものがあるならば、それはゲストの心に響くペアリングなのだと思いました。
藤村 勇太さん、ありがとうございました。
これからも楽しみにしています!
それでは、いただいた内容を紹介します。

梨のリキュールと辛口のスパークリング日本酒割とは、一般的な酒蔵さんなら絶対に選ばないカクテルからスタート!攻めてるなあ、と思わず笑顔。幸水の香りがしっかりと漂い、日本酒の苦味と泡が味を引き締める。リキュールの甘味が強めに用いられていて、まろやかな一杯目だ。

鮟鱇の布=卵巣、醤油漬け鮟鱇出汁の煮凝り。凄い粘度と密度で驚嘆を覚えた。「鮟鱇の布」は今の時期になると卵らしくなってくるそうだ。このような面白い食材を、面白いだけでなく美味しくいただけるのが産地の魅力だ。行かねば味わえぬ郷土の味。

付け合わせの葉はナスタチウム。メヒカリはコンフィにしたものをパテに加工されている。メヒカリの香りと脂が活きていて美味。パンはバゲットというか食パンであるが、本当にバゲットを使用しても良いと感じた(香ばしさと食感がパテを楽しく演出してくれるはず)。食前酒によって梨の香りを添えることでフレンチ的な提供となる。面白い試みだ。

大内さんの鮟鱇。活け越しして血抜きと神経締め、脱水を施しているそう。産地は久慈。それに、酒蒸しの鮟肝と「ふぐねぎ」、ポン酢を合わせている。ポン酢の強い味わいに負けない鮟鱇の旨味が印象的。

最近注目を集めている香気成分、4MMP(4-メルカプト-4-メチルペンタン-2-オン=低グルテリン米を使用することで発生する香気成分でソーヴィニヨン・ブランに含まれる香り)によるマスカット、ライチに加えて乳製品系の香りもある。甘味と微発泡がありつつ、キレやミネラル感もあるフィニッシュ。別途ご提供いただいた火入れバージョンが酒米に春陽を用いており、生酒の方は水ほのか。生酒の方が収斂味が高めの味わい。

鰆は脂がノリノリだ。蕗の薹の香りにハーブ香を添え苦味に甘味を合わせるのは良い。蕗の薹だけでなく藁炙りの苦味もあるのでソースが活きている。

鮟肝でロッシーニ風とは攻めている。ついつい『美味しんぼ』で山岡士郎が「フォアグラなんかより鮟肝の方が美味いね」と声高に言ってのけた上に、実際に食べさせて周りを納得させたエピソードを思い出した。鮟鱇のプルプルした食感から旨味が広がるので鮟肝ともバランスが良い。見せ方の軟派さを裏切る高い味覚のバランス。生酒バージョンの寄り添い方が魅力的。ドライさが弱いので油脂を包み込むような味覚的なバランス。香りの添え方も魅力。


皮と身を使用した春巻きとは野心作。鮟肝の皮の食感を魅力的に使用している!中には笠間の椎茸が入っていて嬉しい。椎茸の美点である旨味、香り、食感の全てが活きている調理法だ。鮟肝ソースは胡麻とポン酢を混ぜている。4MMPはまろやかに同調し、辛口の方は後味を切る。異なるペアリング体験が可能。

自社に高精白可能な精米機をお持ちとのことで、広島県民として気になってメーカーを聞いてしまった(広島には有名なサタケがあるため)。結果、チヨダエンジニアリング(兵庫)との談であった。

お酒の香りについては、イチゴを思わせるカプロン酸エチルを感じつつ酢酸イソアミルも混ざる。甘味がありつつ、ベッタリと残らない甘味と香りだ。酵母系の苦味だけでなく特有の収斂味があるからスッキリ。酵母はアベリア酵母との談。

唯一定置網の港で揚がるそう。パツパツしつつ香りが広がる墨烏賊で美味。シャリは割とアルデンテで、カリッと弾ける部分があり、かなり硬めな方向性である。前回は僕とお誘いいただいた方の2名で、「お客さまによって炊き加減を炊き分けている」との談であったので、今回は通常仕様のハードなシャリと思われる。

閂サイズ。仕事が面白く、昆布水〆。結果として、穏やかな昆布の旨味が浸透しており、食感は昆布「水」〆ながらパツパツしている。薄口醤油も少量混ぜているそうだが、バランスが良い。〆時間は12分ほどとのことなので薄口醤油の塩分も食感の凝縮に奏功している模様。そして、水揚げから4日とは驚いた。骨付きで3日寝かせて冷やしこみを行い、〆ているとの談。細かく教えていただき多謝!

香り良く、食感も強く、味わいが濃い。そして、脂がノリノリ。これは旨い鯛だ。なお、繊細系の鮨種については、香りと甘味はやはり抑えるのが良いと実感。


銚子、漬け。旨味と甘味が強い赤身で、柔らかくて旨い。ロゼは酸味によって日本酒よりも後味を「切り切る」感じのマスキング効果があると実感。

肝と芽葱を噛ませている。身質はしっとりしつつホロホロとほどけ、最後にとろける繊維質。その食感変化の過程で肝も自然に馴染む。カワハギの仕事を鮟肝で表現することに成功している。

桃色ホッキ。火を入れつつ柔らかく、しっとりとほどける。甘味が強く、臭みは無い。

身はもちろん、皮までも柔らかくとろりととろけ、甘い。ネガティブなしのピュアな香り。一汐しただけとの談。大内さんから仕入れる「特特サイズ」の目光の力を体感する。

青リンゴの香りを山葵の香りに合わせるとのことで意欲的なアプローチ。香りのペアリングは日本酒において意識されにくいが、僕は必須だと確信している。日本酒ペアリングの面白さを高めてくれる要素だ。温度が上がると黄色リンゴと乳製品系の香りが広がる。

中トロとは思えないほどの脂の強さと甘味。シャリとのバランスが良い。

柔らかくて甘味が濃く、かなり良い大トロだ。
ここで先に供された辛口を燗酒で提供。

塩と酢で〆た後で昆布〆を行い、芝海老のオボロを使用されている。白板昆布による〆なのでしっとりしたテクスチャーだ。繊維はほろりとほどける。オボロは甘味が強めなので、個人的にはオボロは塩気と酸味が強めの〆に合わせるのが王道のように感じた。オボロは〆の酸味や塩味、タネ自体の甘味とバランスを取ると非常に良い。

キロアップの腹回りのみ使用。脂と皮下脂肪ゼラチン質は言わずもがな繊維のホロホロ感や香りも楽しませてくれる。実に贅沢な出し方。


食感と香りが非常に良い奈良漬けだ。熟成古酒と奈良漬の相性は言わずもがな。

七味唐辛子と山椒を使用。食感はコリッコリと力強く、味を染み込ませている点と相まって、つまみとしての妙を感じさせる干瓢巻きだ。

アラ汁ベースの味噌汁で旨味中心。油脂が軽く滲んでいるが、香りも含めて上品な方向性。魚の姿を色濃く想像させるアラ汁ベースの味噌汁。好感。
「鮨 松榮」さんは、お電話での予約となります。
店名:鮨 松榮(すしまつえい)
予算の目安:おまかせコース+日本酒のペアリングで28,000円~35,000円
TEL:0296-77-0317
住所:茨城県笠間市東平1-1-21
最寄駅:友部駅から200m
営業時間:17:00~22:00
定休日:月曜
※完全予約制です
通常営業時の記事
日本酒ペアリングは最高だと再認識する、すしログ(
@sushilog01)でした。
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