
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
この度、宮城の鮨を探求すべく2軒お伺いしました。
そのうち1軒が「笠聖」さんです。
親方は東京の名店「鮨さいとう」で修行されたキャリアを活かし、宮城の内陸部で「ここでしか食べられない鮨」を志向されています。


お伺いしたところ期待以上に美味しく、そして、面白い鮨でした!
ポテンシャルがバッチリなので、またお伺いして応援したいと心から感じます。
宮城県は仙台だけでなく、個性的な鮨店が点在する土地なので、鮨好きならば車を借りて鮨旅行をするのも一興です!
仙台市内のみや一軒で終わらせるのは勿体ないと思いますよ。
タップできる目次
「笠聖」は2024年4月にオープンした鮨店で、親方の名は笠原 聖太さんです。
白金高輪の「鮨たかはし」でキャリアをスタートされ、赤坂の「鮨まつい」、六本木の「鮨さいとう」で約3年半ずつ修行された生粋の鮨職人です。
「なぜ内陸部の加美町で!?」と思われるかと思いますが、ご実家が1893年(明治26年)から続く鮮魚店の「かさ松」であるため、当地で開業された模様です。
車で訪問する際は看板や暖簾がわかりにくいので、「かさ松」さんを目印にすると良いです(お店の前以外に駐車場があるので、事前にお伺いしておくのが無難)。


お店の魅力については、確かな基礎技術を踏まえて、独自性と郷土性を表現されている点です。
当初はガチガチの江戸前鮨を提供していたそうですが、次第に郷土性を打ち出すようになり、今や鮎や岩魚に加えて、石巻や気仙沼などの名漁港から宮城らしい地魚を仕入れ、個性的な鮨へと落とし込んでおられます。
「変わった魚」を扱う際に、鮨職人はセンスが否応なしに表れます。
よって、笠原親方のセンスは間違いなく、センスがあるならば今度着実に応用されていくだろうと感じました。
内陸部で、少し行きづらい場所かもしれませんが、親方の足跡を追いかけるのも楽しいと思いますよ!
(都会で有名店スタンプラリーをしている人たちは有名になってから訪問するので、一番良いところ、すなわち料理人が試行錯誤してブレイクスルーする瞬間を味わえないのが非常にもったいない!と感じます)

生命線のシャリは酸味がほんのりと効いていて、酸の広がりは上品です。
酢だけでなく、塩も軽やかなので、お米の甘味を十分に感じられるシャリで、米どころらしいシャリだと感じました。
品種は、加美町産のササニシキとササシグレ(ササニシキの交配親の父方)をブレンドされているとの事です。

なお、シャリについては少しだけ気になる点があったので、親方に直接お伝えしました。
本記事を読んで訪問される頃には、きっと、さらに美味しくなっていることでしょう!
炊飯とシャリ切りを上手くできる方ならば間違いありません。

なかなかチャレンジングな立地なので、鮨好き&グルメな方は応援してあげてください!
きっと、どんどん素敵なお店になるはずです。

それでは、いただいた内容を紹介します。
「笠聖」さんのコースは、ランチのみの握り11,000円と、ランチ・ディナーおまかせ19,800円の2本となります。
僕は握り原理主義者なのでランチに握りのコースをいただきました。
2025年10月にいただいた内容です。

まずは、加美町のレタスと胡麻(地物!)と、東松島の生わかめから。鮨をいただく前に生野菜とわかめは嬉しい(血糖値スパイクの予防は大切!)。

加美町のミョウガのビール酵母漬け!ビール酵母のお陰で香りが独特で面白い。

甘味がありつつ酸味を立たせたフルーティ系。東京で修行された割に意外な方向性だが、これはローカライズ故だろう。個人的には地方であっても江戸前鮨ならば甘味を落としたガリの方が本質に合致する気がする。本質とは即ち口直しである。

石巻。昆布〆で、身質はみっちり、しっとりしている。昆布を用いつつ上品な方向性で安心する(昆布〆の使い方で鮨職人のセンスや方向性はある程度分かるため)。

気仙沼。脂を流す程度の漬け。柔らかめながらむちっと軽く食感を楽しませる。脂がしっかり乗っているものの、漬けが上品な塩梅なので軽やかな後味。この魚体に基づく調味の塩梅の見極めは素晴らしい。

石巻。酢〆にして、加美町のカボスを少量使用。春子の香りと甘味を楽しませる〆方かつ柑橘の使用量。酸味が軽やかで、実に良い。

加美町の養殖ものだそうだが、〆で鮎の香りを活かしているところが魅力だ。養殖モノにありがちな脂の重たさも無く、エサ由来のネガティブなフレイバーも無い。

塩釜、100キロ、背の天身。むっちりした食感が持ち味で、柔らかくほどけながら弾力も楽しめる。旨味と酸味が広がり、血の余韻も楽しめる。旨い。

トロの方の魚体は75キロ。みっちりしていてパンチ系ではない中トロで、脂の甘味とほんのりと漂う香りが持ち味。

大トロもみっちりして、脂が溢れる。ただ、重たくない。

石巻。「墨烏賊」ではなく標準和名での説明とは珍しい。土佐酢に浸した加美町の菊花を添えている。むちむち、ぷちり、とろりと、やや柔らかさを志向する仕事で、イカの甘味を楽しませながら土佐酢も上品に使用している。

産地は石巻!珍しい。一昨年は5杯くらいしか揚がらなかったそうだが、増えているそうだ。これは問答無用で旨い!旨味と甘味があり、香りも良い。温玉の卵黄を混ぜているそうだが、これも塩梅が良い。これみよがしにコクと粘性を出さないところが粋だ。

加美町。漬け。むっちり、とろりと魅力的な食感の変化で、脂を楽しませた後に岩魚らしい香りを楽しませてくれる。岩魚と言えば焼き魚だが、焼きよりも遥かに軽やかに香りを楽しむことが出来て、ふんわりと上品に漂う香りをキャッチするところが新感覚。面白い表現を味わわせていただいた。

石巻、十三浜の漁師に特注で作ってもらっていると言う、紫海胆の塩雲丹。通常の塩雲丹とは異なり、良い海胆を選別した上で、軽やかな塩分濃度で仕上げている。これまた抜群だ!甘味と香りに加えて旨味も感じさせる凝縮感。これは塩雲丹ならでは。

江合川の天然モノ。もっちりとした食感で、ゼラチン質と甘味を楽しませ、焼きによる香ばしさと軽いサクッと感を調和させる。鰻らしい香りが余韻漂う。鰻の握りとして考えられている仕事だ。

小海老とアオサの味噌汁。

気仙沼、2.1キロ。江戸前鮨で使用する穴子は50g程度のめそっこから140gほどの範囲内なので、大型の穴子と言うのが宮城らしい。厚みがあり、穴子の脂と香りをじんわりと広げる煮仕事も奏功。甘味は上品な方向性。巨大でありながら骨が全く当たらず、丁寧な仕込みをされている(=職人として真面目な心根を持つ)ことが分かる。

七ヶ浜の海苔を使用し、鮪だけでなく、ミズの実の醤油漬けを加えた鉄火巻き!ミズのサクサク食感ととろみが加わり、これは魅力的だ!考えられている。

右が加美町の舞茸を練り込んだ玉子焼き、左はサルエビの玉子焼き。口当たりは滑らか。舞茸の方は、舞茸の茶碗蒸しのような趣がある!サルエビは旨味のある海老で、香りもふんわり。海と山の競演の玉子焼きとは、当地らしくで面白い試みだ。

加美町のシャインマスカット、「もりのかがやき」(リンゴ)。「もりのかがやき」は、みっちりしていて、気持ち良い甘味と酸味。好みのタイプのリンゴだ。
「笠聖」さんについては、お電話もしくはインスタグラムのDMにて予約が可能です。
店名:笠聖(りゅうせい)
シャリの特徴:酸味ほんのり、塩も軽やかなので、お米の甘味を十分に感じられるシャリ
予算の目安:ランチのみの握り11,000円、ランチ・ディナーおまかせ19,800円
最寄駅:なし ※「宿泊施設ございます。状況により古川駅の往復送迎いたします」との談
TEL:070-1140-1572
住所:宮城県加美郡加美町字町屋敷二番19ー1
営業時間:12:00~14:00、18:00~21:00
定休日:不定休
宮城県の個性派鮨店たち
御当地江戸前鮨をこよなく愛する、すしログ(
@sushilog01)でした。
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