
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
この度、富山県が推進する「寿司といえば、富山」キャンペーンに惹かれて、6年ぶりに富山に行きました。
鮨研究家として現在の富山の鮨を体感せねば、と。
そして、1店舗目にお伺いしたのが、「鮨 難波」さんです。
こちらは富山市内でベテランの域に入る江戸前鮨店です。


結果として、コースのほぼ全てが富山湾の魚介類で、富山の海の豊穣さに魅入られた次第です。
1店舗目にお伺いして大正解でした。
ありがたいことにお昼も営業されているので、富山のランチ鮨でオススメの一軒です。

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「鮨 難波」の難波親方は、もともと岡山ご出身の職人さんです。
広島・仁保にあった「うえ乃寿し」で16歳から20歳まで奉公された叩き上げの職人さんで、その後富山の「寿司栄」で6年修行されて独立されたとの談です。ふむふむ。
しかし、その後に「開業して29年…」と聞いて、たいへん焦りました。
大変お若く見えるため、1969年生まれの方とは思いもよりませんでしたので。
お店は1995年2月にオープンされたそうです。
今や息子さんも漬け場に立ち、親子で鮨を握られています。

「鮨 難波」さんの魅力については、富山湾の魚介類を余す所なく楽しませてくれる点と、単に「キトキト」なだけでなく江戸前鮨の仕事を施した鮨種を提供されている点です。
富山や石川ではキトキト=新鮮さを重視する文化圏ですが、江戸前鮨と大衆寿司を分けるポイントは仕事にあります。
キトキト100%を求めるならば、江戸前鮨店ではなく回転寿司店や居酒屋に行けば十分に満たされるでしょう。
しかし、ここが難しいところ。
鮨店であっても、お客さんが土地の方ばかりだと仕事を受け入れられづらい土地が未だに多々あります。
土地によっては「鮮度の良い魚を、なぜ寝かせたり加熱したりするんだ!」と言われ、江戸前鮨が否定されることがあります。
ですので、キトキトと仕事の良いとこ取りをされる難波親方は、開店以来結構な試行錯誤をされてきたのではないかと推察します。

そして、鮨の生命線であるシャリについては、モダンとクラシックの間を行く塩梅です。
酸味を効かせつつ甘味がある味付けは土地に調整されている味付けだと思われます。
富山にあって幅広い層にヒットする方向性。
そして、やや柔らかめかと思いつつ、ぱらりとほどけて温度は温かめ。
米粒の割れが気になるところではありますが、お店の魅力を損ねるほどではなく、粘度と温度はモダンな方向性です。
いかに人気店や権威のあるお店であってもシャリがクラシックすぎると食の連続性に欠けてしまうので、難波親方が時代に合わせてブラッシュアップされていることが分かりました。
なお、お店以外の話になりますが、桝田酒造店(満寿泉)の蔵元と懇意にされているようで、東岩瀬の「沙石」の楽しみ方を教えていただきました。
「沙石」は桝田酒造店の有料テイスティング施設で、端的に述べてパラダイスです。
15分1,000円、30分2,000円で桝田酒造店のほぼ全ての銘柄や希少な熟成酒を楽しめる夢のような空間。
あまりにも素晴らしい施設で、なんという心意気!と、深く感動しました。
日本酒が好きな方ならばマストです。
難波親方に感謝いたします。
「鮨 難波」さんのコースは、おまかせランチ7,700円、おまかせディナー24,200円となっています(税込サ別)。僕はお昼にお伺いしました。
それでは、【おまかせランチ】の詳細を紹介します。

お酒については、県内外のお酒を幅広く取り扱っておられ、良心的な価格設定です。

林の五百万石。爽やかな香りで、五百万石にしては甘味と味わいがしっかりある。良いスターター。

ハイアルコールながら甘味があり、味の幅が付けられていて、後味はキリッとしている。

甘味がある点はクラシックだが、酸味を効かせてキリッとした後味に仕上げるガリ。昆布のグルタミン酸を加えている模様。

岩瀬漁港。寝かせてしっとり、とろりとした食感で、香りがふんわりと漂った後に旨味が滲む。名刺代わりの一貫目がキトキトではなく江戸前仕事を施した白身魚と言う点で、親方の鮨への姿勢を実感することができた。

氷見。口に運ぶや否や脂が滲み、実に甘い。また、旨味と香りがふんわりと広がってゆくところも魅力的で、さらに余韻が喉で長い。これも巧みに寝かせていて、仕事が奏功していると実感した。

白身魚3連発とは実に嬉しい!しかも全てがハイクオリティで、鰆はとろりと滑らかな食感の後に脂を楽しめる。甘味が残り印象深い。富山は鰆も美味しいのだと教えていただいた。

標準和名ケンサキイカの赤イカ。海苔を噛ませて提供。ねっちりと柔らかめの食感からブチブチと強めの食感が広がる。海苔の風味とイカの甘味が良い相性!

鮪のみ県外で銚子産との談。150キロ台。爽やかな酸味と上品な血の香りを楽しめて、余韻にも鉄分がふんわりと漂う。県外産の鮪でも味わい深い。

10キロで、こちらは富山湾。柔らかく甘味があるメジ。他県の成魚の後に地元の幼魚を出す構成が楽しい。

大葉に乗せて握る。昆布〆を軽やかに行い、白海老の甘味の後に昆布の香りが高まってゆく設計。昆布を前面に出さない点が魅力的で、余韻に昆布が漂う、なかなか個性的な昆布〆の仕事である。

軽く凝縮されたむっちり感の後にじゅわっ、とろっと身がほどけてゆく。甘味に頼り切るのではなく、食感のある仕事で魅力的だ。卵も上品にプチプチと馴染みながらアクセントとなる。

まさかの鱚とは驚いた(4月頭なのに)。巧みに脱水してぷちりと気持ち良い食感で、大葉が爽やかな鱚。

潮汁をベースに昆布出汁を加え、鮪とニギスのつみれと共に。つみれと大根の香りがほっこりとした気分に。まろやかで旨味がじんわりと広がる吸い地。大根と人参を柔らかくしすぎず、軽く食感を残している点にセンスを感じる。

備長炭を近づけてじっくりと熱を加えて、脂を活性化させてから提供。大トロの美点を最大化していて、もちろん筋も気にならない。醸造アルコールを添加した生原酒が相性良く、爽やかかつ酒のアルコール感が後味をマスキングしてくれる。

これは白眉。釜揚げとの談であるが、驚くほどの味わいだ。実にクリアーな味わいかつ、香りがピュア。そして、驚くばかりの食感で、ホタルイカが溶ける。実に繊細な火入れで、朝どれのホタルイカをこのような調理で提供する鮨店は旅する理由となるだろう。

古典的な笹の葉を用いた加熱方法で、穴子の下だけでなく上にも被せる。穴子はとろとろ、ふわふわで、繊維質はしっとりとしつつ軽いむっちり感もあるのが楽しい。香りにはふんわりと野趣が漂う。これは美味い。消え去るようなとろとろ感が尊ばれがちな今日この頃であるが、穴子の本質は繊維と香りにあると信じている由。煮詰めは甘味強くなく良い意味で軽い。大ぶりな穴子で、これも地物との談。

ベニズワイガニは新湊。チャレンジングな創作茶碗蒸しで、卵の甘味とシャリの酸味でスッキリした食後感を与えてくれる。季節外れのいくらの使用はご愛嬌。

食感が強めで、山葵多めの鉄砲。山葵を多めに用いつつ、オリーブオイルと合わせる提供が面白い。

単なる虚仮威しではなく、味が合うためだ。山葵の辛味がまろやかになり、山葵の香りと甘味を感じやすくなる。そして、オリーブの香りがアクセントになり、最後はシャリの酸味でスッキリとした後味となる。オリーブオイルはもちろん、トリュフオイルなどの香味オイルを使う鮨店は敬遠するところであるが、こちらは最後に上品に、面白く使われているので魅力に感じた。
…ただ、このコース内容で巻物1人1本は男性の自分でも多いと思う笑

みっちりと密度があり、ジューシィな出汁巻き玉子。玉子についてはクラシックな寿司店の方向性。

ほうじ茶のプリン、砺波のイチゴ、黒蜜。個人的には黒蜜は無い方がほうじ茶とイチゴの香りや甘味を楽しみやすいように感じた。
「鮨 難波」さんの予約方法については、テーブルチェックでのWEB予約となります。
店名:鮨 難波(すし なんば)
予算の目安:おまかせランチ7,700円、おまかせディナー24,200円 ※ともに税込サ別
TEL:なし
住所:富山県富山市公文名34-12
最寄駅:大泉駅から530m
営業時間:12:00~15:00、18:00~00:00
定休日:月曜
富山湾の恵みに惚れ惚れする、すしログ(@sushilog01)でした。
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