こちらは長崎で食通に愛される、いぶし銀の割烹です。
ゆうに37年の歴史を誇り、当地に移転する前は銅座町で15年営業されていたそうです。
ご主人の料理は素材の味わいを力強く提示する魅力的なものばかりで、使用する素材は基本的に長崎県のもののみ。
「山葵だけ長崎との県境…佐賀県産」と笑いながら教えてくださりましたが、今回頂いた素材は全て「長崎にここまでの食材が!」と唸らされるものばかりでした。
必ずしも複雑な調理を行っているわけではないのですが、素材を活かす「勘所」を押さえておられるのが分かり、
シンプルであるのに他では頂けない料理に仕上げておられます。
正にいぶし銀と言う単語がピッタリな質実剛健な料理。
頂いている間に季節を変えて再訪したい…と強く感じた次第です。
この度頂いたお酒
小松酒造・万齢、峰乃白梅・純米、一ノ蔵・特別純米。
長崎県のお酒が無かったのは少し残念ですが、太っ腹な量で嬉しかったです(笑)
鱧
落としを梅きゅう、ぬたオクラの2種類で提供。
鱧がとにかく濃厚な風味!
久々に鱧で、旨味と風味に驚いた。
梅干しは自家製、ぬたに芥子をキリリと利かせている点も魅力。
実に爽やかで夏の先付に嬉しい品だった。
焼き茄子と甘長唐辛子
唐辛子の香りが抜群。
そして、ツユの出汁が旨い。
甘みと塩気は控え目で、茄子の甘みを活かし、一体感を感じさせる煮浸しである。
お造り
イサキ、レモンとかぼすの果汁ブレンドとともに。
山葵を乗せ、五島の塩を付け、果汁にサッとくぐらせて頂く。
これは美味しい食べ方。
さらに途中で鱧の子の塩漬け、ご主人に言わせると「長崎キャヴィア」と共に頂く。
いやいや、キャヴィアよりも粋な食べさせ方!
塩気のみならず香りが加わり、調味料的に楽しめる。
イサキはぶりぶりと力強いを保持し、強い旨味に仕上げているので、それを活かし切る食べ方だと感じた。
出始めの頃は磯の香りと余計な脂が多いが、8月になると程よく抜けるので、この食べ方が良いとの事である。
朝6時に〆た1キロ程のものであるそう。
茗荷と新生姜の甘酢漬け
箸休めかつアテに。
長崎和牛ヒレの焼きもの
牛肉!?と意表を突かれたが、これは美味い。
肉は脂と赤身のバランスが良く、赤身の力強い味わいや酸味が加わるので、味が濃くともサッパリ。
焼き加減も抜群でレアに仕上げている。
熱源は炭火。
炭の香りが食欲を刺激するのは言わずもがな。
焼く過程で余計な脂が落ち、また、流れ出る脂で表面がカリッと仕上げられる。
炭や薪による牛肉の焼きものは他の熱源に比べて雄々しさがあって良い。
アカアシエビ(クマエビ)の天麩羅
甘みが強く風味も良い海老。
揚げ加減はしっとり、ジューシィ。
繊維質が柔らかくほどけるので包丁を細かく入れているのかと思ったが、「開いただけ」との事なので揚げ方が良いのだろう。
濃厚な味わいだった。
新いも(サツマイモ)の天麩羅
甘い。そしてキレのある香りが印象的。
低温で長時間揚げている模様。
衣がガリッと弾け、ほろっと甘みと甘い香りが立ち込める。
お食事
対馬黄金穴子の天麩羅混ぜご飯。
本当に素晴らしい味わい!
天麩羅を天ツユにくぐらせ、刻んで混ぜている。
たっぷりと。
ガリッガリに揚げて風味を凝縮している為、野趣ある香りが堪らない。
「対馬黄金穴子は東京の人気のせいで倍以上の価格になった」とつぶやいておられたが、これは鮨好きとしては耳が痛い話である。
本当に、穴子が厳しい冬の時期には、東京では対馬産が大活躍。
しかし、今回実感したのは、穴子の香りを活かすも殺すも仕事次第である事。
下手な職人は柔らかさを追求し過ぎて、穴子の香りを殺す。
穴子の妙味は脂と風味。
脂の強さと食感の柔らかさだけが追及される(食べ手もそこを重視する)風潮があるので、自身は敢えて反論を申し上げたいところである。
香の物はキュウリの味噌漬け。
味噌汁は鰹出汁がしっかり利いており、味噌は風味豊か。
当然おかわりは必至!
水菓子
いちじく。濃密ながらに酸味もあるため爽やか。
お酒もたっぷり頂きつつ、14,400円と良心的な価格。
もちろん長崎では高級店に該当するのかと思いますが、申し分ない満足度です。
店名:堂山(どうやま)
食べるべき逸品:四季折々の長崎食材と、食材の魅力をダイレクトに伝えてくれる調理の数々。
予算の目安:おまかせ10,000円+お酒
最寄駅:正覚寺下駅から160m
TEL:095-823-7811
住所:長崎県長崎市鍛冶屋町7-55
営業時間:予約次第
定休日:予約次第
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