こんにちは、鮨を愛する鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
さて、一之江にある「鮨かの」さんは、以前からお伺いしたいと思っていた鮨店です。
紹介してくれた友人は筆者が信頼する「鮨の同志」で、かつて一緒に鮨を食べ歩いていました。
信頼する友人が見出したお店なので連れて行って欲しいと願いつつ、タイミングが合わず、今回、長い時を経て単独訪問する事に。
鹿野親方と「シャリサミット」で出会った事が、大きな原動力となりました。
今回訪問して「鮨かの」さんには、他店とは異なる明確な魅力があると実感しました。
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一之江「鮨かの」の魅力とは?
「鮨かの」さんは、現在2代目で、初代が1970年に「すし初」として創業されたそうです。
昔は天麩羅なども出す割烹的な街場寿司店だったものの、2代目の鹿野亮親方が邁進されて江戸前鮨のお店として生まれ変わりました。
この変遷については前述の友人から伺っていたとおり。
しかし、実際に頂いて、想像以上のクオリティに驚きました。
ドラマティックな変遷で、鹿野親方の鮨愛を感じます。
きっと鮨についても、元々は「街場寿司の握り」だったのでしょう。
しかし、現在の鹿野親方の鮨は人気店ともタメを張る「江戸前鮨の握り」です。
使用するタネ、仕事、シャリ、山葵の全てに親方の想いが込められていて、センスを感じます。
「鮨の生命線」であるシャリは完成度が非常に高いです。
2022年5月に大きく変えたそうなので、まさに進化し続けている模様。
お酢は飯尾醸造の3種類ブレンドで、飯尾さんらしい旨味を活かすお酢の使い方。
飯尾醸造の富士酢が持つ酸味や香りを巧く調和させ、赤酢プレミアムの旨味を乗せたバランスの良いシャリ。
飯尾醸造のお酢の良い部分を引き出すシャリ切りだ…と思っていたところ、元々は横井醸造の與兵衛を使用されていたそうで驚きました。
驚いた理由は、お酢の香りのアタックや、酸味や塩味がまろやかで、実にバランスに長けているためです。
僕は昔から「與兵衛は劇薬」と表現していますが、下手に用いると香り・酸味・塩味が全て強くなり、タネとのバランスを崩してしまうお酢だからです。
これは「與兵衛」が悪いわけでは決してありません。
ちなみに、全国で「與兵衛」の使い方が巧いと思う職人さんは、札幌「たな華」の田中親方です。
「鮨かの」さんのシャリに話を戻すと、お米の粒はもっちりしていて、噛み締めると甘味が上品に漂います。
ぱらりとほどけつつ、もっちり感と甘味があるので、お米の品種を伺ったところ、群馬県産コシヒカリと岩手県遠野の「勘六縁」さんのササニシキのブレンドとの事。
コシヒカリは予想どおりでした。
そして、使用する水は鹿児島の温泉水で、塩は東京大島の「海の精」。
細部まで抜かり無く、研究を重ねてこられた事が明白です。
また、魚の仕入れについても独自性が光り、昔から小田原の早川漁港から引いているそうです。
朝に発送され、同時のお昼には到着するそうなので、良き連携が取れています。
仕入れが小田原と言う事が相まって、他店とは異なる魚の味を楽しめます。
そして、最後に、お店の魅力を増幅させているのが女将さんの日本酒のご提案です。
日本酒のラインナップが「本当に日本酒を好きな人のそれ」で、有名酒屋から人気銘柄やプレ酒ばかりを入れるお店とは次元が異なります。
「考えられた日本酒のラインナップ」だと、本当に嬉しいですよね。
しかも、女将さんは燗酒も駆使され、タネの構成によっては1杯目から燗酒と言うのは本当に素晴らしいです。
一昔前の燗酒の悪いイメージは今は昔。
お料理の味を最大化するためには、冷酒だけでなく燗酒も加えた方が明らかに精度が上です。
筆者は昔は鮨店でお酒を飲まず、鮨に愚直に向き合ってきましたが、今、日本酒を勉強すると、鮨と日本酒のポテンシャルは計り知れない事を実感しました。
鮨と日本酒の双方に向き合うお店は、心から応援したくなります。
「鮨かの」のおまかせ・おきまりコースの詳細
「鮨かの」さんは、夜の【おまかせコース】19,800円と、【お昼の握りだけコース】13,200円(2023年4月より15,400円)を提供されています。
ともに完全予約制となりますが、夜のコースをお昼に頂く事も可能です。
僕は「握り原理主義者」なので、初訪問時に握りのみのコースがあればそちらを選択します。
【お昼の握りだけコース】は、握り11貫+先付、巻物、椀、水菓子で構成されていました。
この度頂いたお酒
- 北安醸造 北安大國 純米生原酒 地酒屋こだま別誂 米旨熟成(ひとごこち)
- 向井酒造 京の春 生酛特別純米酒(祝)
- 落酒造場 大正の鶴 rising(朝日)
青海苔餡の茶碗蒸し
握りのコースだが、先付として茶碗蒸しを頂けるのは嬉しい。
青海苔の香りは、食欲をそそる。
ガリ
薄切りで、シャッキリと良い食感。
お酢の酸味は良い塩梅で、甘味は極控えめ。
琵琶鱒(ビワマス)
僕が大好きな滋賀県・琵琶湖の固有魚。
東京では「鮨處やまだ」さんで初めて頂いたが、それから6年以上経っても使用するお店は決して多くない。
鹿野親方の琵琶鱒は、むっちりした食感から脂がとろりと滲み、実に力強く、香りも楽しませてくれる。
名刺代わりの一貫目としては強い味わいのタネであるものの、シャリが良いので味覚的に穏やかに調和し、女将さんの日本酒ペアリングも奏功する。
選択されたお酒は【北安大國 純米生原酒 地酒屋こだま別誂 米旨熟成】のぬる燗で、米の旨味とフルーティーさ(軽い紫ブドウと上品なオレンジ)が魅力。
初手からマリアージュを実感した。
鮨と日本酒の味覚的な調和のみならず、テクスチャーも考えられている。
とろりとした琵琶鱒に燗酒による粘性が極めて相性良く、テクスチャーレベルでペアリングを行うお店は決して多くないので、秀逸だと感じた。
親方と女将さんの二人三脚だ。
鯛
産地は小田原。
これは旨い!
2日ほど寝かせているため、身は軽くねっちりしつつ、ぷっちりした食感もほのかに残しているのが良い。
そして、寝かせつつ香りもしっかりあるところが魅力だ。
鯛を寝かせる仕事で、食感と香りをともに失っているものは旨味が強くても失敗である。
ホウボウ
小田原産。
食感はみっちりしていて、噛み締めるとぷちりぷちりと実に良い歯応え。
寝かせで強化された旨味にホウボウの香りをしっかりと楽しませる仕事。
鰯
小田原産。
脂が乗っているので、旨味が強い親方のシャリと合う。
しかし、脂の乗りに対して香りが爽やかな鰯だ。
脂が重たすぎずに乗っている。
槍烏賊の印籠詰め
春先に鮨店訪問のお目当てとなり得る、伝統的な江戸前鮨のタネだ。
子がパンパンに詰まっていて、食感はとろーり、ぷっちり。
煮ツメ濃い点も嬉しい。
伝統的な江戸前鮨のタネを用いた煮もので煮ツメが軽いと肩透かしを食らうもの。
シャリには刻んだガリと椎茸、胡麻を混ぜていて、味覚も香りも良い。
車海老
繊維質はみっちりしていて甘い。
香りも良い。
食感が茹で置き、茹で上げと異なるので伺ったところ、酒蒸しとの事であった。
鮪赤身
下田産の150キロ。
みしっとした食感の後に、しっとりとほどける。
時期的に香りが爽やか。
舌にコクを残しつつ、血の香りと軽い酸味が余韻としてふんわりと漂う。
鮪中トロ
脂が乗りつつ、とろーりではなく、しっとりとほどける点が魅力だ。
そして、酸味がある。
これは、甘味と酸味ががある赤磐雄町の燗酒とバッチリ合う。
小鰭
むっちりとした身質に酸味をやや強めに浸透させている。
これは鮪中トロの後の構成を意識する〆加減だろう。
個人的には鮪を意識せず、小鰭自体の旨味を最大化するアプローチの方が、鹿野親方のシャリとの相性が高いと感じた。
海胆
函館産。
甘味が強く、クセは皆無な海胆。
穴子
基本的にふんわり、しっとりな煮穴子ながら、焼き込みで表面を凝縮している部分や香ばしさも加えている点が美味しい。
椀
蜆の味噌汁で、蜆に火が入りすぎていない点が上品で好ましい。
干瓢巻き
秀逸な干瓢巻きだ。
栃木の生産農家さんから仕入れているそうで、硫黄を用いていない。
完全に乾燥しておらず半生のような状態から仕込む。
柔らかくとも食感のある干瓢で絶妙だ。
甘味がありつつ醤油を効果的に利かせる。
最後まで口当たりが滑らかな干瓢で印象深い。
小松菜のアイス最中
名産である小松菜を色付け程度に使っている。
「小松菜」と聞いてイメージする青臭さは無い。
味わいとしては、ヨーグルトの酸味、地物の蜂蜜の甘味を活かしている。
爽やかで美味しいアイス最中だ。
「鮨かの」のお店情報と予約方法
予約については、ネット予約が可能です。
公式で各種SNSを活用されていて、ブログも書いておられるとは、精力的な職人さんです。
店名:鮨かの(すしかの)
シャリの特徴:飯尾醸造のお酢3種類をブレンドし、旨味を活用するシャリ。酸味と塩味が穏やかなので食べ疲れしない。
予算の目安:夜の【おまかせコース】19,800円、【お昼の握りだけコース】13,200円(2023年4月より15,400円)
電話番号:03-3652-2704
住所:東京都江戸川区江戸川4-25-7
最寄駅:一之江駅から850m
営業時間:夜18:00~(平日最終入店19:30)、お昼(予約制)土日祝日11:30~
定休日:水曜+不定休
郊外の鮨店も積極的に応援したい、すしログ(@sushilog01)でした。
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