こんにちは、天麩羅も鮨と同じく延々と食べられる、すしログ(@sushilog01)です。
群馬に住む食通の友人から「凄い天麩羅屋さんがある」と聞いて、訪問しました。
訪問前に立地(と言うか経路)を調べてみたところ、ビックリしました。
なにせ館林駅から7キロも離れていたので!
そして、インスタを見たところ、ご主人自ら「田んぼの中の天ぷら屋」と言うタグを付けられていて、ウケました。
凄い場所に開店されたな…さぞ自信がある方なんだろう、と思って訪問したのですが、開店理由には衝撃の事実がありました。
「天ぷら車」の魅力とは?
「天ぷら車」は意外性のある場所にありながら、開店は2014年なので、既に7年ほど経っている天麩羅店です。
ご主人のお名前は車崎智也さん。
天麩羅の名門「天一」で修業された後、故郷の群馬県館林市で独立されました。
冒頭の通り立地が気になったので、「なぜこちらに出店されたのですか?」とお伺いしたところ、「実家だったので」との事。
商売的に超アウェーの立地なので何か強い理由があるのかと思ったのですが、シンプル過ぎてずっこけました。
しかし、7年以上も集客できていると言う事は、親方の技術が高い証左です。
頂いてみて特に印象的だったのが、衣の口どけと非常に高温である点です。
ご主人は小麦粉をマイナス60℃で保存されていて、グルテン(粘り成分)の生成を抑制されています。
卵は氷水で溶く。
このあたりの管理は「にい留」さん以来の当世流で、抜かりなし。
これらによって、サクサクッと瞬時に弾け、サラッと消えるような衣を表現されています。
そして、衣の中に高温の油が入り、油からタネを引き上げても揚げられ続けます。
上品な衣と激熱なタネのコントラストが印象的な天麩羅です。
なお、マイナス60℃の冷凍庫を持っておられる理由が面白い。
群馬は刺身で鮪を異常に珍重する風土であるらしく、刺身に鮪が無いと怒るお客さんが多いそうです。
それに伴い、開店時は刺身に鮪を入れるようにしていたため超低温冷凍庫を購入されたとの事ですが、結果的に鮪を止めたので、冷凍庫は小麦粉用として活きる事になりました…
鮪は東京の鮨店以上のクオリティや地産のメジマグロなどでなければ、地方で無理に出す意味はありません。
これは群馬に限らず、昭和の時代の消費者がお店に要求した後遺症ですが、鮪は資本主義ゆえに豊洲(過去は築地)に流れます。
よって、鮪に原価を使うと、地方のお店らしさを表現する足かせになりかねません。
すしログ
さらに、車崎親方らしいタネの扱い方としては、活のタネを重視されている点です。
車海老だけでなく、穴子も揚げる直前にさばかれる点には、驚きました。
そして、割きたての穴子を揚げるために油を必ず交換されるところも、多大な魅力だと感じます。
海なし県の群馬県ではタネでの個性が出しづらいところ、仕事で個性を表現されている点が、非常に硬派で好印象でした。
なお、油はマルホンとの事だったので、太白胡麻油をメインで使用されている模様です。
塩は沖縄(糸満)の海水塩で「青い海」を使用されています。
「天ぷら車」のコースの詳細について
ランチは【天丼 特】1,700円から【おまかせコース】5,400円までご用意されています。
そして、ディナーは【ディナーコース 心】5,100円から【夜のおまかせコース】11,000円まで。
今回はランチの訪問でしたが、折角なので友人が気を回して頂き、【夜のおまかせコース】を頂戴しました。
1杯目は地元のお酒である【分福 特別本醸造辛口】を頂く。
スポーツドリンクのように注いで頂き恐縮(笑)
2杯目は【山形正宗 まろら 純米吟醸】。
リンゴ酸を乳酸に変える「マロラクティック醗酵((MLF)」を活用した日本酒で、珍しい。
非常にスッキリした味わいで、これは天麩羅との相性が良い。
鮟肝
先付が鮟肝とは、夜のコースらしい!
さっぱり味なのでランチでも申し分なし。
日本酒を頼んでいて良かった…
刺身
〆鯖、墨烏賊、館山産のクロムツの3種類。
〆鯖は極浅〆でサッパリ。
山葵は鋼鮫でおろしている。
丁寧な仕事が光る刺身であるが、コースによっては生の魚は不使用でも良いかもしれない。
天麩羅店で出てくる魚は天麩羅に使うものだけ、と言う方が粋に感じるものなので。
ただ、海なし県であるからこそ、生魚が無いとクレームになることも多いのではないか?とも思う。
これは居住地で異なる感覚だろう。
車海老の頭
直前にさばいた車海老を使用。
頭はカリカリすぎない揚げ加減で、サクッと弾けた後にしっとりと馴染む。
車海老
甘い!
1尾目のレア揚げの精度が高い。
2尾目とのコントラストはハッキリしている。
ハゼ
浜名湖産。
骨、身、肝の全てを提供頂けるのが非常に嬉しい。
身はホロッホロで、まさに淡雪のような食感だ。
身と衣の間に油が入り、ジュワジュワと揚がっている白身魚の天麩羅は初めて見た。
カリフラワー
朝どれのカリフラワーで、ホロッホロな食感は天麩羅らしい。
真鱈の白子
トロットロで、甘みが強く、口どけも良い。
ぷっつり感やねっちり感は無く、トロトロと揚げられている。
岩もずく
青森産。
一口目は酸味が強いと思ったが、天麩羅店としては良い口直しだと実感する。
胡麻は煎っているようで香りが良い。
椎茸と芝海老真薯
天一らしいタネ。
凝縮された椎茸と芝海老の上品な甘みが相性抜群だ。
ワカサギ
小川原湖産。
稚鮎のように揚げて、可憐な見た目だ。
ワカサギらしくホロッとほどけた後に、香りがバシッと広がり、香りの面で驚きを与えてくれる。
野趣のある香りはワカサギと言う小さな魚の力強さを実感させ、それを活かす仕事に好感を抱く。
さらに、肝の香りと苦味のフィニッシュも実に印象深い。
下仁田葱
ちり酢おろしにガーリックパウダーを加えると言う変化球を用いているが、これが中々に魅力的だ。
サッパリ味の中にパンチがあり、下仁田葱の強い甘みの前では決して自己主張しない。
牡蠣
広田湾産。
みちっとしていて、ジューシィ。
香りも良い。
生っぽさも残しつつ、揚げ切っている牡蠣で、これまた良い揚げだ。
茶碗蒸し
白身魚の身と、帆立、クワイ、木耳を使用したつくね入りで、アオサをまぶしている。
帆立の香りと甘みが芳醇で、美味しい。
穴子
前述の通りさばきたてを使用されるのだが、さばくのが巧み。
産地は対馬であるが、魚体は80グラムと天麩羅には良いサイズ。
身がふわふわ且つしっとりで、衣はサクサクと爽快。
また、食べさせ方が実に良い。
鮨における煮ツメのようなタレを用意されているのだ(本山葵つき)。
丼タレでも天ツユでもなく、穴子の旨味が出ている特製タレは、親方の穴子の印象を強める。
下ごしらえから揚げ方、食べさせ方まで考えられたストーリーがあり、魅力的なタネだ。
スペシャリテと言えるだろう。
茄子
トロットロで甘く、美味しい茄子。
海胆大葉巻き
美味い。
海胆のクオリティ云々ではなく、一体感が高く、食感も魅力的だ。
百合根
北海道のブランドゆり根「月光」を使用。
糖度が高く、ホクホクした食感も良い。
銀杏
天麩羅の最後に可愛らしくて印象に残る銀杏。
お食事
定石通り天丼、天茶、天バラから選べる。
初訪問のお店では必ず天丼を選ぶので、天丼をお願いする。
かき揚げは、帆立と芝海老で作られ、帆立は貝柱をわざわざさばいてから使用する。
帆立の甘みと海老の香ばしさが堪らないかき揚げだ。
衣は丼タレを掛けてもサクサク感が保持されていて、揚げが良い。
香の物も魅力的で、手前は椎茸の軸の佃煮。
留め椀は勿論、赤出汁だ。
キリッとした鰹出汁の蜆の赤出汁で、模範的。
赤出汁を飲みたい気持ち半分で天丼を頼んでいる気すらする。
斉藤いちご園の朝づみイチゴ
品種は「やよいひめ」で、甘酸っぱくて、香りが良いイチゴ。
「天ぷら車」の立地と雰囲気
お店の立地は繰り返しになりますが、攻めています。
ご主人自ら「田んぼの中の天ぷら屋」と呼ぶにふさわしい立地です(笑)
店内はオープンから年月が経っていますが、油臭さは皆無で、清潔感があります。
カウンター席8席に加えて、個室が2つあり、接待や会食ニーズにも応えてくれそうなレイアウト。
立地にふさわしく、仰々しさが無く、瞬時に寛げるアットホームな内装です。
「天ぷら車」のお店情報と予約方法
「天ぷら車」さんの予約は、お電話のみとなります。
店名:天ぷら車(てんぷらくるま)
予算の目安:ランチ【天丼 特】1,700円から【夜のおまかせコース】11,000円〜
TEL:0276-51-5135
住所:群馬県館林市野辺町703-2
最寄駅:館林駅から7km ※タクシーで片道3,000円弱
営業時間:ランチ11:30~15:00(最終入店13:30)、ディナー17:30~22:00(最終入店20:00)
定休日:水曜、第1・第3木曜ランチ、その他臨時休業あり
※完全予約制です
地方の辺鄙な場所で優良店に出会えると興奮が止まらない、すしログ(@sushilog01)でした。
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