こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
以前、鮨職人の系譜をまとめる際に、横浜で気になるお店を発見しました。
お店の名は「鮨 渥美」で、横浜は横浜でも港南台と言う住宅地にあります。
親方は、かつての銀座の鮨御三家「奈可田」で修業した方で、1999年から続いているとの事。
これは確かな実力を持つお店だろうと判断し、車で向かいました。
結果的に、「奈可田」の流れを汲む古典的な仕事に独自性を加えられていて、どちらかと言うとモダンな印象を受けました。
それでいて、都心のお店のようなモダンさとは異なり、住宅地で落ち着いて「鮨屋酒」を楽しむお客さんに愛されるようなモダンさだと感じます。
また、江戸前鮨に無いタネも使用されるので、意外性があります。
特にエリア周辺の方には貴重な一軒だと思います。
港南台・鮨渥美の魅力とは?
鮨渥美の親方は渥美慎さんで、前述の通り「奈可田」で修行されました。
15歳から修業に入った筋金入りの職人さんで、20歳までは関内の「鶴川寿司(現在閉店)」で修行されたそうです。
そして、20歳~28歳まで「奈可田」で修行。
勤務先は帝国ホテル内の「江戸前鮨 なか田」だったそうですが、三代目の中田卓哉親方のご指導を受けられたそうなので、現在の「江戸前鮨 なか田」とは異なる仕事を体得された模様です。
1999年に28歳で独立されてから、ずっと港南台に店を構えられています。
「昔はヤンチャだった」と言う意味合いの言葉を優しい笑顔で語られる渥美親方は、50歳を超えられたところ。
奥様との二人三脚でお店を切り盛りされ、常連さんを数多く抱えられています。
渥美親方の仕事は「奈可田」のエッセンスを感じるものが確かに存在します。
例えば「大ぶりな扇の地紙型のシャリ」や酒肴の「柔らかい蛸の桜煮」など。
反面、「奈可田」とは異なる点も散見されます。
タネの切りつけは「奈可田」っぽくないかもしれません。
玉子は「奈可田」と言えば鱧のすり身を用いるところ芝海老だったり、何よりもシャリが米酢ではなく赤酢であるところなど、親方流の仕事を多々用いられていて、今や「奈可田の鮨」ではなく「渥美の鮨」になっていると感じました。
鮨渥美のシャリについて
鮨渥美のシャリは赤酢と用い、酸味が割と強めで、塩気は穏やか、甘みもある味付けです。
温度が良好で、ほの温かい人肌温のシャリです。
シャリの色合いは濃い目で、お酢は「岐阜の三年熟成のお酢」とのことでしたので、内堀醸造の美濃三年酢だと思いましたが、別のお酢とのことです。
岐阜で静置発酵・長期熟成で造るお酢は多くないので、隠れた醸造蔵をご存じのようです。
検索しても出てこないので、かなりレアなのではないでしょうか!?
総合的に、1999年から20年以上も住宅地で営んでこられただけあると感じさせる、個性派の鮨店です。
【渥美のおまかせ】の詳細
鮨渥美のコースは、お昼と夜で2つずつご用意されています。
昼は【昼のにぎりおまかせ】5,500円と【昼のおまかせ】8,800円で、夜は【にぎりおまかせ】11,000円と【渥美のおまかせ】14,300円です。
今回頂いたものは【渥美のおまかせ】。
内容は仕入れ次第のコースとのことで、訪問日は酒肴4品、握り15貫、玉子、椀で構成されました。
生しらす
神奈川県らしい先付けだが、産地は御前崎(静岡県)。
トロトロと甘く、苦味が軽やかで、臭みが全く無いのが嬉しい。
鰤
羅臼産。
非常に肉厚な切りつけで、脂がしっかり乗っていて、酸味もある。
初秋に珍しいクオリティの鰤。
本日のお出汁
「本日の」と言うことは当日の魚のアラで出汁を取っていると思われる。
落ち着く味わいのスープ。
ミズダコの桜煮
「名物です」とのこと。
正に名物たりうる柔らかさ。
しっとり、さっくり、ホロホロな食感は「蛸はコリコリ」と思っている人のイメージを変えるだろう。
鮨店が少ないエリアでは斬新なはず。
柔らかいだけでなく、蛸の香りもあるのが嬉しい。
磯辺巻き
都寿司名物の酒肴を秋刀魚で表現し、さらに芝海老のオボロと合わせている点が粋。
薬味は使用せず、ガリを加えて巻いている。
これは良い。
しっかり〆た秋刀魚に、オボロの甘みが加わり、ゴマの風味がアクセントとなり、ガリの酸味が引き締める。
渥美の海宝ちらし
酒肴と握りをつなぐ、名物の一品。
シャリの上に蝦夷鮑の蒸し鮑、キタムラサキ海胆、イクラを乗せたミニ丼だ。
むちむちと魅力的な食感の蝦夷鮑に、海胆の甘みとイクラの醤油漬けがバランス良好。
この後、握りに移行します。
ガリ
甘みのあるクラシカルタイプ。
スズキ
1貫目が昆布〆とは、硬派な展開。
昆布の風味をしっかりと浸透させ、赤酢のシャリと合わせる〆。
鰯
岸和田産の鰯。
岸和田産としては脂が穏やかで、お酢の酸味を浸透させた〆加減。
ノドグロ(アカムツ)
ノドグロらしくとろとしつつ、脱水でぶっちり感も表現している点が良い。
鮪中トロ
産地は大間で、血合い下の中トロ。
秋の大間らしく脂が乗ってきているが、まだ酸味がある点は夏の名残を感じさせる。
香りが良い。
エサが変われば如何にも大間らしい味になっていく。
鮪大トロ
脂しっかりだが、クドくない大トロ。
これもまた中トロと同様に香りもある大トロ。
キビナゴ
えっ!?キビナゴ!!と驚いた一貫。
江戸前仕事の〆で身を引き締め、酸味を加えており、それがオボロの甘みとよく合う。
食感はみっちり、しっとりしている。
珍しいタネを用いつつ仕事が江戸前のそれなので、発想勝負の創作寿司とは異なる。
新烏賊 ファーストバイトから墨烏賊らしい食感が高まっていること実感する。
しかし、とろりとした滑らかさもあり、これはまだ新烏賊らしいと感じる。
新烏賊のゲソ
酒肴ではなく握りでゲソとは大衆店のようではあるが、火入れが魅力的だ。
「ミディアムレア」な火入れで魅せる。
甘海老 車海老ではなく、旬モノの甘海老を用いる。
これも魅力的。
しかも、食感が最初はぶちっと力強く、その後甘海老らしくトロトロととろける。
香りもあるし、魅力的な選択。
甘海老は回転寿司やスーパーでのイメージがあり、印象が悪い人も多いが、上質な国産の甘海老は本当に美味しいものである。
鰤 酒肴と同じタネ!?と思ったが、包丁仕事で異なる味に表現している。
包丁を細かく入れて、味蕾に触れる面積と食感を変えることで、鰤の酸味をより強く感じさせ、柔らかさを演出。
シャリと合っている。
脂が乗った鰤で頂くと更に印象が強まる仕事だろう。
北寄貝
トロトロと柔らかく、北寄貝のホロ苦味と旨味が広がる。
ツブ貝
コリコリした食感と苦味を楽しませる。
蛤
みっちりした食感で、しっかり味を入れる漬け込みの仕事で、大変クラシカル。
それでいて、煮ツメは軽い味わいで現代的。
穴子 本牧産!
臭みはなく、甘みを利かせた煮加減で仕上げる。
甘みが結構強め。
椀
濃厚な潮汁ベースの出汁の赤出汁。
具はシンプルにワカメのみ。
味噌の味も濃く、魅力的な椀。
玉子
上部が少しとろりとしているところが魅力的な玉子焼き。
干瓢巻 追加
コースに巻物が無かったので追加。
コリッとした食感があり、甘みは程良く、醤油は穏やかな干瓢巻。
胡麻をアクセントに使用している。
港南台・鮨渥美の立地と雰囲気
駅から離れていて、幹線道路に面しているため、知っているか近所に住んでいないとたどり着けない立地だと思います。
かなり「穴場感」があります。
店内に入るとカジュアルさと上質さをあわせ持つ雰囲気。
そこに親方の「いらっしゃいまし!」と言う江戸弁が響き、心地よくなります。
カウンターは白木の年季が入ったものですが、緊張感は全く無く落ち着く空間です。
寛ぎと大人の安らぎがあるので、住宅地では大変貴重なお店だと思います。
女将さんの手によるイラストが可愛らしい。
すぐに親近感を覚えるお店です。
港南台・鮨渥美のお店情報と予約方法
お店は完全予約制となるので、要注意。
WEB予約にはぐるなびのみ可能なようです。
営業時間などの最新情報は公式サイトをご参照ください。
店名:鮨 渥美(すし あつみ)
シャリの特徴:赤酢を用い、酸味が強めで、塩気は穏やか、甘みも付けたシャリ。
予算の目安:【昼のにぎりおまかせ】5,500円、【昼のおまかせ】8,800円、夜【にぎりおまかせ】11,000円、【渥美のおまかせ】14,300円
TEL:045-847-4144
住所:神奈川県横浜市港南区日野南6-29-7
最寄駅:港南台駅から1,250m
営業時間:12:00~13:45、17:00~21:30
定休日:水曜
※完全予約制です
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