札幌で若い職人さんの比較的新しいお店があると聞き、機会を逃さず訪問しました。
親方とお話をしたところ、そもそも年齢に驚きました(笑)
貫禄がありすぎる風貌ですが、なんと31歳!
カウンター商売で貫禄は百利あって一害無しだと思います。
それでいてシャイで謙虚な印象を受けました。
オーナーがいるお店の雇われ職人さんですが、シャリも仕事も自己流で表現されております。
親方の小伊勢健太さんは北海道を代表する鮨店で修行された方。
すし善に始まり、伊勢鮨、鮨処有馬と、ザ・蝦夷前と言うべき系譜。
都内では有名店出身の若い方が新規店を出される際、修行先より「少し安い」客単価2万円以上で始める事が多いですが、こちらは上記のお店出身ながら、おまかせ1万円の一本勝負。
タネの仕入れは北海道が多いのかな?と思いましたが、酒肴から握りに移行するや否や道産食材を駆使してこられ、効果的に仕入れておられる様子。
てんちじんさんの概要
シャリは酸味も塩気も穏やかで、赤酢主体ながらにバランスが良い調味。
お米は秋田産あきたこまちを使用。
温度や硬さは丁度良いです。
お酢は横井の赤酢(與兵衛では無いとの事)、岐阜の内堀醸造・美濃三年酢、ミツカン・三ツ判山吹の三種をブレンド。
この組み合わせはマニアックだなあと感じました。
酒肴もオリジナリティがありつつ、握りを邪魔しないものが多い。
親方は敢えて回転制を導入されず、同時に低価格での提供を心掛けておられ、時代の流れと良い意味で逆行されております。
おまかせ1万円は額で言うと一般的にはもちろん高額ですが、鮨である事と内容を考えると大変リーズナブル。
若い人も訪問出来る、若い親方のお店です。
ちなみに、店名はオーナーが付けられたそうで、スタイリッシュなロゴも然りとの事です。
頂いたお酒
ビール650円、日本酒は概ね900円くらいで、二世古・特別純米吟風、上川大雪・特別純米、鍋島・特別純米三十六萬石
てんちじんさんのおまかせの詳細
水蛸2種の食べ比べ
北海道らしい水蛸から始まり、食べ比べと言うのが面白い。
期待感を高めてくれる演出だ。
片方はほうじ茶で煮て、もう片方は甘みを付けた要は桜煮。
双方に共通する魅力は、食感。
柔らか過ぎず、むちむちした身はぷちっと弾ける。
そして、香りを上手く残している。
水蛸で真蛸と同じ調理法だと詰まらない。
よく工夫されている。
ガリ
冒頭からガリが登場。
新生姜を用いており、食感が良く、甘みがありつつキリッと爽やかな辛味。
ボタン海老の内子と紹興酒漬け
(中国料理で言う)酔蝦とは!ただ、香りの嫌味は無い。
ねっちりした身はぷちりと千切れる。
鰹
気仙沼産。エシャレット(≠エシャロット)微塵切り、ミックスナッツの燻製フレークを添えて。
鰹は酸味がしっかりしつつ、旨味も十分。
ナッツの燻香は初手から香る。
みぞれがけ
お弟子さんから、具は椎茸、舞茸…と聞いたが、実際は海鮮の方がメイン。
この後、握りに移行します。
シシャモ
なんと一貫目は初もののシシャモ!
鵡川町に行かずに済んだ(笑)
身はホロッホロで、香りが抜群。
軽く火を入れつつ、極レアに仕上げた労作。
羅臼の昆布塩と共に。
これは初手から心を掴まれ、今までに北海道で頂いた、いわゆる「蝦夷前」のタネの中でも満足度が上位。
帆立
目の前で殻から剥かれる。
美味しいだけでなく、嬉しい。
帆立は言うまでもなく甘く、付け合わせの干し貝柱のフレークも考えられている。
縞鯵
漬けは漬けでも、白醤油の漬け。
白醤油故に淡い風味と塩分であり、同時に漬けの時間も短いため、浸透も淡い。
しかし、身はねっちりと旨味が封印されており、漬けにする意義がある。
鰊
食感はタフで、脂は乗り乗り。
ぶりっ!バツッバツッ!とした身から脂が溢れ出て、エシャレットの風味と一味唐辛子の辛味が引き締める。
予想通り軽く脱水しており、酢で〆る事なしない。
鰊の持ち味を殺しておらず、これは函館の梅乃寿司さんよりも遥かに良い。
鰆西京漬け(焼きもの)
これは火入れが強過ぎてイマイチ。
鮑
肝は卵黄、生クリームと混ぜ、黒胡椒を振って。
鮑の味は弱く、火入れが強めの作り置きだが、低価格帯で鮑を出される心意気は素晴らしい。
だからこそ、今や一般化した調理法ではなく、独自の調理法で提供しても良いだろう。
蒸し鮑を極軽く炒って香ばしさを付与し、山わさびの千切りをあしらうなど。
鱚
みっちり〆ており、美味い。
金目鯛
むっちりした身で、これも脱水されている模様。
炙らずして金目鯛の魅力を引き出している。
鮪赤身
湯霜にして漬ける古典的な仕事。
しかし、浸透は浅く、古典的ながらモダンに仕上げている。
身はみっちり、しっとり。
鮪トロ
脂が強く風味は弱めで分かりやすいトロ。
筋に対する包丁の入れ方が良い。
産地は少し想像したが、矢張り大西洋クロマグロで、ボストン。
小鰭
北海道でも小鰭を出されるのが良い。
かなり脂が乗っており、しっかり〆ても旨い。
身の食感はみっちりながら塩気、酸味の浸透は穏やか。
ノドグロ(アカムツ)
島根産。つまり、錦織圭選手が「食べたい」と言ったヤツ(笑)
生を炙っているが、脂がてろってろじゃない点が良い。
牡蠣
仕事は漬け込み。
食感が秀逸で、ホロホロホロとほどけ、とろりと溶けるかのよう。
火入れに技があり、大変魅力的な一貫。
海胆
積丹産の名残。名残でも甘く、季節の最後に頂けたのが嬉しい。
初物のイクラとの出会いも嬉しい限り。
岩海苔の赤出汁
北海道らしい椀種。
現時点で完成度が高く、個性もバッチリなので、今後が大いに楽しみです。
一つだけ、お茶が薄く、少量かつ器がガラス製と言うのはオーナーの方針でしょうか。
オーナーも鮨好きとの事ですが、鮨好きならばお茶にも配慮された方が良いかと思います(笑)
すし てんちじんさんのお店の情報
すし てんちじん(食べログのリンク)店名:すし てんちじんシャリの特徴:3種類の酢をブレンドし、全てのタネにバランス良く合わせる予算の目安:おまかせ10,000円〜
最寄駅:すすきの駅から190m
TEL:011-211-1170
住所:北海道札幌市中央区南4条西5-8 F-45ビルB1F
営業時間:17:00~24:00
定休日:日曜、祝日
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