から約2年ぶりの訪問となりました。
その間にも再訪したいと思っていたのですが、なかなか予約が取れず、今回念願の再訪となった次第です。
喜邑(㐂邑)さんの概観
時を経て改めて頂いた感想としては、木村さんの熟成仕事は更に先を行っており、端的に驚きました。
世に定着する熟成とは一味も二味も異なる熟成。
今まで頂いた熟成の中で最も旨味を最大化しつつ、魚の香りと食感と言う個性も活かしておられるのが圧巻!です。
特に今回は脂が乗ったタネを3連発で頂く流れがありましたが、それでもメリハリがあり、木村さんの仕事とストーリーテリングに感銘を覚えました。
一般的な旬のイメージを覆しつつ、季節感も盛り込んだ独特の世界観です。
そして、生命線のシャリはやっぱり美味しい。
酢の風味がスーッと抜けた後に酸味がこみ上げてきて、旨味でまとめるシャリで、己が熟成仕事にピタリと合わせておられます。
硬さについて、前回は「やや硬め」だと感じましたが、今回は「結構硬め」に感じました。
芯が残る手前まで攻めておられる印象です。
喜邑(㐂邑)さんの詳細
頂いたものの詳細をご紹介します。
今回頂いた日本酒
- 澤屋まつもと守破離
- 元坂酒造、酒屋八兵衛
- 仁井田本家、にいだしぜんしゅ
頂いた酒肴は下記の通りです。
なお、前回にも増して創作的かつ洋風なメニュー構成でしたが、こちらで頂くと違和感が無いように感じます。
熟成仕事が個性を貫いており、完成されておりますので、酒肴で遊んでも硬派に感じられるのではないでしょうか。
蛤酒
提供前に熱燗酒を少々垂らした濃厚蛤スープ。
焼き鮎のペースト
肝の香りと甘みを楽しめ、粉砕された骨が香ばしい。
バターも使用されているらしいが、気にならない。
海胆のカペリーニ
カペリーニ!?と驚いたが頂いて納得。
海胆の使用量が半端無く、クオリティ的にも鮨店ならではの一品。
イタリア料理店で塩水海胆を使用されているならば良いものの、明礬が強い海胆を使用されると厳しいので。
アオサを混ぜて和風テイストを高めている。
穴子の焼きもの
皮はパリッとではなく、バリッと弾ける。
そして、肉厚な身はホロホロ、しっとり。
旨味が強く、何よりも香りが良い。
軽く風干ししてから焼いているようで、魅力が凝縮されている。
産地を伺ったところ岩手だった。
鮑の冷製リゾット
鮑は柔らかく蒸されており、強い風味を楽しめる。
個人的に鮑は温かい方が好みだが、これはこれで美味しい。
と言うのも、肝のソースが旨味は濃厚でありながらくどくなくサラッとしており、鮑の量が大量なので、食べごたえが有る。
魚介のスープ
香りは甲殻類ずどん、しかし旨味は複雑なビスク的スープ。
それでいて上品な食後感。
ワタリガニに加えて鰯などなど様々な魚を用い、塩気は酢飯の塩分のみ。
塩気が低くても旨みで牽引する。
バゲットまで登場(笑)
カンジャンケジャン
山椒の風味に加えてブランデーの風味が魅力。
上品に纏めている。
食べ方は下品な方が美味しいけれど。
この後、握りに移行します。
ガリ
酢と塩を両方強く用いており、甘みはゼロ。
旨味が強いため赤酢を用いているのかと推察。
硬さは過去には柔らかく感じたが、今回はそう思わず。
酢飯の試食
まず、海苔の良い香りが伝わる。
酢飯は一粒一粒に存在感があり、美味しい事を痛感する。
白烏賊
極薄切りにして細切り。
よって、舌に瞬時に絡み、とにかく甘い。
シャリと合わせる事を前提にしている包丁仕事だと感じた。
(塩よりも煮キリの方がこちらのシャリに合っている印象)
黒ムツ
あたかもトロのようにねっちりと脂が絡むが、シャリの酸味と合わさり乳化する。
魚自体の酸味と香りも感じられる。
カンパチ
これまた凄い脂で、濃厚!
わずか2貫で夏のイメージを覆す。
あたかも冬の白身魚のようなパンチ力。
イサキ
3週間熟成。
イサキらしいバツッとした食感と雄々しい香りを残しつつ、半端ない脂!
冬の一般的な寒鰤を超える程に脂が回っている。
香りは夏のイサキなのに、味は夏離れしていると言うギャップと意外性が魅力だ。
魚体を聞いたところ、約3.2キロ!
鯖
ゴマサバなので脂はサッパリだが、香りが引き立ち美味しい。
寝かせて脂を回している。
シャリの酸味も引き立ち、パンチ有る3貫の後に少しリセットしてくれる。
金目鯛
銚子産、3週間熟成。
ぷりぷりな食感の後に脂がどんどん広がり、凄い余韻。
脂質過多と言う訳ではないのに、金目鯛の仕事として独特で素晴らしいと再認識。
鮑
波打つ包丁は絶妙。
旨味の合間に香ばしさが感じられ、蒸した後に炙っているのだろうか?
シャリの酸味がサポートし、引き締める。
鰹
漬けではなく、煮キリで洗って暫く置く仕事。
ネギと生姜を合わせた調味料を噛ませる。
脱水感が強めでハムのような食感!
そして非常に強いスモーキーフレーバー。
しかし、脂も強いのでバランスが良い。
鰯
青魚でありながら10日熟成!
皮、脂、身の三重の食感の後に強い脂!
そして、それを超える香り…
熟成で鰯の香りを引き出してるのが極めてマニアック!
マカジキ
濃密なとろけ具合!
もはやソース的なとろけ具合のマカジキ。
漬けにしており、熟成は5〜6日ほど。
江戸前の古典的なタネであるマカジキをこのように仕上げるとは、凄い。
玉子
今まで頂いた中で最もトロトロかもしれない玉子。
極めてスイーツ的に仕上げつつ、表面は食感があるので、「鮨屋の玉子」になっている。
以上、お会計は28,000円。
庶民の自分には頻繁にお伺いできる価格帯ではありませんが、伺って良かった!と思わされる内容でした。
問答無用に美味しく、唯一無二の世界観を持ったお店です。
喜邑(㐂邑)さんのお店情報と予約方法
WEB予約はOMAKASEのみです。
ただ、空席は少ないので、ツテをたどる方が簡単かもしれません。
店名:喜邑(㐂邑、きむら)
シャリの特徴:赤酢の酸味を上品に立て、塩気は穏やかで、硬め。熟成種との相性が抜群。
予算の目安:15,000円~20,000円→25,000円〜30,000円
TEL:092-726-6289
住所:東京都世田谷区玉川3-21-8
最寄駅:二子玉川駅から600m
営業時間:お昼は水曜、日曜のみで12:00~の1回転、夜は17:30~19:30 19:30~21:30の2回転
定休日:月曜
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