こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
こちらは六本木にある「もう一つの奈可久」です。※2023年2月23日に麻布十番に移転
六本木には「本店」こと鈴木親方のお店(ミッドタウン前)がありますが、お弟子さんである木戸親方の仕事も抜群。
奈可田・奈可久の仕事を踏まえつつ、鈴木親方とは異なる仕事をされています。
一斉スタートではなく何時でも予約を取れるところ、お客の好みに合わせて酒肴や握りの量を調整されるところなど、昔ながらの鮨店の魅力が詰まっています。
最近はおまかせ一本&一斉スタートのお店の方が多いので、改めて昔ながらのスタイルの魅力を噛み締めました。
すしログ
そちらの方が難しくはありますが、本来の鮨店らしくて、お客にとっても職人さんにとっても面白いと思いますので!
本記事では、「材木町 奈可久」さんの魅力とともに、系譜を巡る鮨の食べ歩きの醍醐味もお伝えしたいと思います。
タップできる目次
「材木町 奈可久」の魅力と木戸隆文親方の仕事
「材木町 奈可久」の親方は、木戸隆文さんです。
木戸親方は大阪生まれで、大阪の天保年間創業の料亭「花外楼」で修行された後に上京されたそうです。
23歳の時に鮨職人に転向し、六本木の「奈可久」さんに修行に入られました。
その後、鈴木親方のもとで36歳まで13年間修行されて、2009年に暖簾分けで独立されました。
すしログ
「材木町 奈可久」の魅力
冒頭に記載した通り、お客の好みや使い方に応じてコースを組み立てられる点は大きな魅力です。
これはもともと鮨店ならば当たり前のことでしたが、今や魅力になりえます。
木戸親方は「今日はどのようにいたしましょうか?ウチはお客様のお好みを伺ってご提供しますので」と仰られます。
僕は久々に「それでは、握りを多めにして頂きつつ、握りで出されない魚を酒肴でお願いします」と言うことが出来ました。
冒頭から本当に気持ち良かったです。
しかも、驚くべきことに初訪問時には「煮もの」からスタートしました。
握りでも最後の方に出るのがセオリーである「煮もの」です。
これには痺れました。
なんて粋なんだと。
そして、その後も酒肴に唸り、鮨の仕事に魅了されました。
酒肴の焼き物や煮もの、〆ものを頂けば、修行の凄みを実感します。
世の中には「修行不要論」もありますが、それは曲学阿世の徒の言説だと痛感しました。
理由は、仕事の精度と味が全然違うから、です。
やはり一つのお店での長期修行は強い。
長い職人人生で効いてくるものだ…と感じ入りました。
これは「すきやばし次郎」で15年以上修行された、「鮨みずかみ」の水上親方の鮨を頂いても感じることですが。
そして、木戸親方の鮨と酒肴は「変わったこと」をしていないのに、メチャクチャ美味しい。
そこで、『HUNTER×HUNTER』が好きな自分としては、「鮨は、誓約と制約の料理ジャンル」だと感じました。
日本料理ほどに表現の幅が広くないけれど、限られた中での表現であるからこそ面白い。
これは前々からの持論ですが、「誓約と制約」によって魅力が強くなるのが本物の鮨だとしみじみ感じた次第です。
最後に、木戸親方のシャリは「奈可久」の系譜らしく米酢100%のシャリです。
キリッとした酸味に、米の甘みを感じさせる塩梅の塩気。
硬く炊くことなくパラリとほどける握りの妙。
お酢はヨコ井のものですが、現在主流の赤酢のシャリとは大きく異なります。
すしログ
それでは、実際に頂いたものをご紹介します。
「材木町 奈可久」の酒肴と握りの詳細
「材木町 奈可久」さんでは「軽く酒肴を頂きつつ、握り主体でお願いします」とオーダーしています。
たっぷり頂いても15,000円強とリーズナブルです。
親方いわく「2万円を超える方が難しい」との談(笑)
一等地でスタッフを数名雇っておられるのに、心強すぎます。
→麻布十番に移転後、ちょこっと値上がりされましたが、非常に良心的です。
2023年4月に訪問した際の記事
直近の訪問記録については、テンポ良く写真のみで紹介します。
酒肴の盛り合わせ
若芽
鮃の刺身
鯛の刺身
鰹の刺身
メジマグロのタタキ
椀
タイラギ磯辺焼き
青柳の串焼き
鰯の竜田揚げ
墨烏賊
鮃
春子、小鰭
小柱軍艦
鰯
赤貝
車海老
オボロ
鮪赤身
鮪トロ
穴子
玉子焼き
トロ鉄火巻
干瓢巻
2022年4月に訪問した際の記事
春が深まり、早くも初夏の香りすら漂う2022年の4月中旬。
タネからも春の終わりが見られ、季節の変わり目を感じる良き訪問となりました。
ホタルイカと酢味噌、菜の花、白魚
この組み合わせは鮨好きならば感涙モノだろう。
墨烏賊
墨烏賊らしくぶちぶちしつつ、とろとろにとろけ、甘い!
酸味が利いたシャリとのバランスが良く、甘みを引き立たせる。
寝かさずにこの味わいの墨烏賊とは恐れ入る。
シャリは温かめで、温度も甘みの感じ方に貢献している。
真子鰈
寝かせていないそうで、歯ごたえがしっかりながら異様に旨い。
とにかく甘みが溢れ出る。
ごく軽い昆布〆…というか、昆布を軽く当てるだけのような塩梅で仕事を施しているように感じる。
ハッキリ言って、この真子鰈を頂き、2日以上寝かせる仕事は不要なのでは?とすら思った次第。
新わかめ
真鯛
とにかく脂が強い!
そして、香りも強い!
真子鰈に続きメチャクチャ旨くて感動した。
脱水の塩梅が絶妙なのだ。
鮃
今度は趣向を変えて、少し強めの昆布〆だ。
みしっと沈んだ繊維質から昆布の旨味と香りがぐんぐんと広がる。
しかし、水分を犠牲にすることなどなく、瑞々しさも内包している点が粋と言える。
青柳
表面に醤油を塗っているため、軽く焦げて香ばしい。
この磯辺焼きの香が発する誘惑から、日本人が逃れることは不可能ではないだろうか…
しかし、中はとろっと艶めかしく、青柳の甘みに再度魅了される。
赤貝
大ぶりで、昆布香がふんわりと漂い、旨味が広がる。
決して力強くはないが、味わい深い赤貝だ。
赤貝の漁獲量が非常に厳しい年なので、嬉しい限り。
トリ貝
極めてなまめかしい食感で、トロットロ。
甘みも強いが、香りは上品。
爽やかな磯の香りを持った甘くとろけるトリ貝だ。
サッと火入れを行い、トリ貝の魅力を引き出されている。
槍烏賊
子がパンパンに詰まっている、名残の子持ち槍烏賊だ。
とろっとろで、もちっとした食感。
煮ツメも旨い。
香ばしさ、コク、軽い苦味が絶妙だ。
ここまで美味しい煮ツメには、若手職人さんのお店では中々出会わない。
小柱軍艦
これは青柳に続き嬉しい一貫だ。
実に鮨店らしい。
春子
しっとりと滑らかにほどけるテクスチャーに、オボロの甘みと香りが実に良いバランス!
蛤の椀
このボリュームは感慨無量!
旨味の強さと香りに引き込まれ、微動だにせずに椀と向き合った。
アオサの量にセンスがあり、味覚的に決して障らず、上品なアクセントになる。
小鰭
みしっと〆ているので初手は古典的に感じるが、途中からとろりとほどける。
旨味、甘み、香りのバランスに加えて、皮の食感も程よく、絶妙な〆の仕事だ。
これは若手職人さんに是非とも食べて欲しいと感じた。
鰯
脂の甘みと〆によるお酢の酸味が好対照。
これも強い〆加減だがが、バランスが実に良い。
香りに青臭さは一切なく、爽快感すら与える。
鮪赤身
名物の切り身の漬け。
ねっちりとした食感になった鮪はシャリと一体化し、最後に香りが広がる。
鮪中トロ
車海老
黄身酢オボロのお酢が入り過ぎちゃたので…とのことで2尾(笑)
確かに凝縮感はあるが、仕事の魅力を十分に楽しませて頂いた。
大根の漬物
べったら漬けではない漬物。
穴子
みちっと引き締まった食感の穴子で、当世流のふわふわ穴子とは異なる味わいを楽しませてくれる。
玉子
大和芋を多めに使用し、みっちり、ねっちりした食感が魅力の玉子だ。
トロ鉄火巻き
スモーキーなニュアンスがあり、これは旨い。
干瓢巻き
甘みが強めの干瓢だが、バランスが良いと感じるのは、シャリの味ゆえ。
シャリベースで仕上げられる干瓢の仕事だ。
「材木町奈可久」のお土産の魅力!
「材木町奈可久」さんはお土産も魅力的なので、ご紹介します。
「材木町奈可久」のばらちらし
こちらが、「材木町奈可久」さんの【ばらちらし】です。
キュウリ以外は仕事を施した魚のみ!
しかも、季節を盛り込んでいるところが嬉しいです。
「材木町奈可久」さんは煮ものが素晴らしいので、お土産でも味わえるのは幸せの一言。
「材木町奈可久」の握りの折り詰め
こちらが、「材木町奈可久」さんの【折り詰め】です。
めくる喜びがあります。
美しい!
ご家族がいらっしゃる方は、100%喜ばれるので、ぜひ!
2021年9月に訪問した際の記事
初めて訪問した時の記事は、こちらです。
煮もの3種盛り(煮蛸、墨烏賊(頭部周り)、鮑)
初手が煮ものなんて格好良いなあ!と思って頂いてみると、味も個性的で素晴らしい。
鮑は予想外に醤油がスッキリ、キリリと利いていて、香りが良い!
サクッ、むっちり、こりっとした重層的な食感も魅力だ。
旬の名残のメガイなので普段なら買わないそうだが、仲卸に泣きつかれて入手したそう。
仲卸さんの泣き落としに感謝する。
煮蛸はしっかり煮てホロホロな食感で、墨烏賊は対照的にコリッコリと艶めかしさが残る火入れ。
メリハリがあり、一発で心を掴まれる一品目だ。
ガリ
甘みがありつつ、酸味強めでキリッと辛いガリ。
フルーティかつスッキリな方向性。
鮃
むっちり、もっちりした食感で、柔らかくもマットな鮃。
旨味があり、香りも楽しませてくれる。
真鯛
むっちりした食感で、香りが良い。
脂が乗っていて旨い鯛だ。
むっちりとした身から脂が滲み、シャリに絡んでゆく。
皮も魅力的な食感を添えている。
墨烏賊
ゴリッと力強い反発を示した後にコリコリッと弾け、とろりととろける。
鮃
今度は昆布〆の鮃。
昆布の旨味と香りをしっかりと乗せつつ、身はしっとり感がある。
よって、古臭さが皆無で、むしろ昆布の残り香が印象的だ。
独自性のある昆布〆に満足。
北寄貝の焼きもの
香ばしさ、焼くことで高められた甘み、内側のとろみの三重奏が実現している。
そして、北寄貝の貝柱とヒモの串焼き。
身だけでなく、他の部位も出すところが自分の好みに合う。
多様な高級魚をありがたがる人は、鮨の食べ手としては青いと感じる。
腕利きの職人さんは、一つの魚介で多様な面白さを表現するものだから。
鮪中トロ
「炙り漬け」ではないので、中トロながら鮪の酸味を感じさせる点が爽やか。
また、味付け自体が穏やかなので、重すぎない。
サクサク感と香ばしさは言わずもがなに食欲を刺激する。
小鰭
バッチリ〆ているのに、柔らかくて旨いっ!
皮目がとろけるで、小鰭の甘みを感じさせ、さらに香りも楽しませる見事な仕事。
一枚漬けサイズの新子ではあるものの、柔らかさと味わい深さに驚嘆を覚えた。
鯖
脂が乗っている鯖を三枚漬けにすることで、魅力的な食感に仕上げている。
むちっ、とろっと瞬時に変わる食感が魅力だ。
明日葉のお浸し
出汁を利かせたお浸し。
口直し的な一品。
鰯
比較的強めに〆て、脂をとろりととろけさせ、敢えて強めに握って提供する。
吸い物(青銀杏、松茸、穴子、百合根)
穴子は対馬産だが、香り良い。
100グラムほどのサイズだ。
鰹と昆布を用いた柔らかな出汁も合っている。
イクラ
ねっちりと濃厚で、旨い!
味付けは醤油を用いず、軽く塩を用いている。
鰯の竜田揚げ
これは旨いに決まっているが(笑)、握りとは異なる楽しさがあるのが良い。嬉しい。
小柱軍艦
香りが良く、小柱の甘みとシャリの強い酸味のコントラストが魅力。
鮪赤身
漬け。修行先の「本店」と同じく、切り身で漬けるスタイル。
よって、食感がねっちりしている。
味付けが強いので、シャリの量を増やす工夫をされている。
鮪の香りと酸味を活かす漬けの仕事。
鮪赤身
これは漬けとは異なる旨さがある。
親方のシャリとの相性で赤身の良さが引き立つ印象だ。
そして、香りがふんわりと残る。
産地はボストンとのことであるが、下手な国産よりも印象が強いのは、仕事とシャリのお陰だろう。
鮪中トロ
部位違いの中トロ2貫で、手前が血合いギシ、奥が背側。
濃厚な脂があり、とても柔らかいところが印象的であった。
クロマグロの香りは国産の方が上。
背側の方が脂が強かったのが、意外であった。
穴子
炙りによる軽いサクッと感、香ばしさ、焦げの苦味と濃厚な煮ツメの相性が抜群だ。
玉子
大和芋を多めに使用しているため、みっちり、ねっちりしている。
これはモダンな若手職人さんの仕事とは異なるが、スイーツ感はある。
軽やかなスイーツ感。
大和芋が多めなだけでなく、芝海老が不使用で、白身を用いているところも独自性に繋がっている。
鮑
酒肴よりも切りつけが少し厚めにしているため、むちっむちっと食感を楽しんだ後にシャリと一体化する。
車海老
鈴木親方が生み出した黄身酢オボロ漬けの車海老!
食感は、みちっみちっ、ぶっちりと力強く、噛みしめると甘みがこみ上げてくる。
「奈可久の黄身酢オボロ漬け」は茹で置きの車海老の仕事としては、一つの到達点である。
鯛
今度は昆布〆で。
鮃よりもみちっと強めに〆られていて、後半戦でも全く弱くない鯛。
鰯
酢〆の鰯を炙っているので、脂を爽やかに楽しめる。
〆の炙りは〆の仕事がダメだと嫌な部分が出てくるが、全くそのようなところは無い。
干瓢巻
食感は柔らかめながら、ぶちっと千切れる感覚がある。
甘みも醤油もバランス型。
シャリの塩気と山葵の辛みで引き締める。
トロたく巻
トロたくに大葉と梅を用いて爽やかにまとめている。
オボロ巻
海老の風味は上品なオボロ。
材木町奈可久の立地と雰囲気
「材木町」はヒルズから近い場所にありますが、非常に落ち着いた雰囲気で素敵です。
道すがら、空気感が軽く穏やかになっていくような感覚があり、お店はビルの地下にあるので更に静かです。
通り過ぎないよう、要注意です。
Google Mapでも脇道を誘導してくるかもしれませんが、道路に面しています。
店内にはギラついたところが皆無で、大人の上質な雰囲気です。
それでいて親方は超フレンドリーなので、硬派系の経営者にウケるのではないかと感じます。
店内には奈可田・奈可久の系譜を象徴する「氷柱」がそびえ立っています。
初めて見る人は「なんのために!?」と思うかもしれませんが、これはタネを冷やすためです。
程良く年季の入った白木のカウンターは大変落ち着きます。
9席で席の間隔も広いので、寛いで頂くことが出来ます。
材木町奈可久のお店の情報と予約方法
予約についてはお電話のみとなります。
店名:材木町 鮨 奈可久(ざいもくちょう すし なかひさ)
シャリの特徴:米酢のみを使用し、スッキリした酸味とお米の甘みを楽しませるシャリ。
予算の目安:お腹いっぱい頂いて15,000円ほど
TEL:03-6440-0240
住所:東京都港区西麻布3-2-15 藤田萬年堂ビル地下1階
最寄駅:六本木駅から500m
営業時間:18:00〜翌1:00(L.O23:00)
定休日:月曜
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これからも「奈可久」の系譜が続くことを願う、すしログ(@sushilog01)でした。
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