こんにちは、オーベルジュ(料理旅館)が大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
さて、山形の赤湯温泉は由緒正しく、1093年に源義綱によって発見されたと伝えられます。
もともとは落ち着いた(ひなびた)小さな温泉街だったようですが、「山形座 瀧波」さんが出来てから、都市部からの交流人口が急増している模様です。
すしログ
雰囲気に加えて、温泉、サービス、お料理の全てが大満足でした。
一言で述べると、記憶に鮮烈に残る宿。
新しい施設も造られていて、今後さらに人気が出るのは間違いありません!
「出羽屋」さんと並び「そのためにその土地に行く理由」となる一軒です。
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赤湯温泉「山形座 瀧波」の魅力とは?
「山形座 瀧波」さんの魅力は、宿のコンセプト通り「山形のショーケース」である点です。
空間、設備、プレゼンテーション、お料理、ドリンクの全てに必然性があり、「山形のショーケース」として機能しています。
形容するなら「総合芸術を感じさせるお宿」。
きめ細かい接客と雰囲気づくりには非の打ち所がありません。
オーベルジュのクオリティは、お料理の味、雰囲気、サービス、コストパフォーマンスで評価する人が圧倒的多数だと思いますが、「山形座 瀧波」さんは全てが高水準です。
それ故に上記の「総合芸術」と言う感想を抱く次第です。
これは、経営難に陥った際に救いの手を述べた現社長の手腕が発揮されているのだと思います。
また、アドバイザーとして入った「自遊人(里山十帖)」の岩佐 十良さんのディレクションも大いに奏功しているのでしょう。
小規模のオーベルジュとは異なり、ダイナミズムが魅力のオーベルジュとも言えます。
お料理に使われる食材は大半が山形県産で、生産者さんのお名前を紹介されるところも素晴らしいと感じます。
生産者無くして美味しい料理はあり得ません。
公式サイトでは食材の簡単な紹介を行っておられるので、関心のある方は是非!
お料理については日本の一般的な旅館の食事とは別次元のクオリティで、その土地で頂く必然性とサプライズがあります。
個々の調理に向き合うと微妙な改善点はあるものの、こちらのクオリティで20人以上さばくのは圧巻です!
日本の圧倒的多数の一般的な旅館も見習って、旧態依然とした昭和の料理スタイルから脱却して頂きたいものです…。
高度経済成長期以降のバリューである「質より量」を重視するあまり、ご当地以外の食材(どこに行っても鯛や鮪、牛肉etc)が氾濫し、作り置きの料理がひしめき合う旅館の料理は、未来に残すべきものではありません。
最後に、お料理を頂くダイニングの名前は「1/365」。
「その日」は、スタッフにとっては365/365の日常ですが、お客にとっては1/365の特別な非日常。
そのような想いが込められているのでしょうか?
シンプルに、宿泊客ひとりひとりに向き合う想いを表現していると、しみじみ感じました。
「山形座 瀧波」の雰囲気について
「山形座 瀧波」さんは、元々は古めかしい温泉旅館だったそうですが、大規模なリニューアルによりモダンに生まれ変わっています。
築350年を超える庄屋の曲がり家(門は築400年)を中心に、3つの蔵、大正期の木造小学校をリノベーションして構成されています。
かつての客室数は35部屋に及ぶ旅館だったそうですが、2017年のリノベーション以降は、わずか19室。
延べ床面積は3,000㎡との事なので、非常に贅沢な空間です。
「山形座 瀧波」の雰囲気とサービス
まずは、到着と同時に期待を高める問構え。
そして、門を超えると東北らしい切妻造に立派な破風がお出迎え。
建物の中に入るとモダンな雰囲気に様変わり。
意表をつかれているとスタッフの方が流麗にご案内され、ウェルカムドリンクが供され、帳場が無い事に気付かないままチェックインとなります。
出来合いの菓子類ではなく、山形名物の【玉こんにゃく】と【焼き芋】とは嬉しい限りです。
そして、共有スペースにはドリンクコーナーがあり、なんとアルコールを含むドリンクがフリーフロー!
しかも、フルーツジュースもコーヒーもクオリティが高く、山形の上質なものを提供したい気概にあふれています。
期待が高まる廊下を進むと、各種レイアウトが異なる部屋が現れます。
部屋ごとに雰囲気が結構異なるようなので、次回は違う部屋に泊まってみたい!と感じました。
「山形座 瀧波」の部屋付き温泉の誘惑!
温泉宿では、チェックインの後に湯に浸かりたいもの。
各部屋には温泉が付いていて、1階は天然の蔵王石をくりぬいた岩風呂で、2階は檜風呂。
今回泊まった部屋は、中庭が見える露天風呂です。
驚くべき事に、温泉はタンクからの循環式ではなく、100m離れた源泉から各室にダイレクトに届けられているそうです。
もちろん加水無しの「源泉かけ流し」。
温泉の温度は常に43℃になるよう湯守が管理されています。
ビールを頂きながら露天風呂に浸かると、一瞬にして癒されます。
そして、温泉に浸かった後は、南 浩史社長の蕎麦打ちを見学させて頂きます。
南社長の蕎麦打ちプレゼンテーション
チェックイン後、しばらく経ったタイミングで南社長の蕎麦打ちプレゼンテーションが始まります。
「社長が蕎麦打ち!?」と意表をつかれますが、これは「山形座 瀧波」さんを楽しむ上で必須な要素だと感じました(初訪問の場合は特に)。
夕食への期待が高まりますので。
ちなみに、蕎麦は十割で、加水率は驚きの47%。
一般的に十割蕎麦の加水率は55~65%と言われますので、かなりの低加水です。
さらに、蕎麦打ちプレゼンテーションでは、夕食の際に頼める日本酒のテイスティングをさせて頂けます。
なんてサービスでしょうか。
お酒のメニューは、料理ごとにペアリングが意識されている点に驚きました。
驚くべきことに、南社長はソムリエの資格とSAKE DIPLOMAの資格を所持しており、スタッフにも受験を奨励されています。
SAKE DIPLOMAが複数名いるお店に出会ったのは初めて!
凄いな…と、心から感心しました。
なお、南 浩史社長は、「瀧波」創業家の末子として生まれた方で、東京大学を卒業した後に建設省(現・国土交通省)に入省され、その後、奥さんの実家の大島造船所の社長に就任し、経営破綻した「瀧波」の社長に転向し、約5億円かけてリノベーションを行って経営再建をされた方。
エリート中のエリートですが、温かみのあるフレンドリーな接客からは経歴を想像させません。
「山形座 瀧波」の夕ご飯の詳細
それでは、「山形座 瀧波」の夕ご飯を紹介します。
2021年の秋から、原田 誠シェフが参加され、和伊折衷の形式を採っておられます。
原田シェフは新潟のイタリアン「イル・リポーゾ」でミシュランの一ツ星を獲得された方。
なんと現在、原田シェフのための建物を建設中で、2023年の春からはオーベルジュ・プライベートキッチンとして運営を開始されるそうです。
原田シェフはご挨拶で「次の10年のキャリアは山形、瀧波で」と仰っておられたので、凄い信頼関係だと感じました。
シャンパーニュJacques Businをサービスで頂きました。
この度頂いたお酒
- 龍龍龍龍(てつ) 1,200円
- イエロー・マジック・ワイナリー GROOOVE デラ野郎2021 1,000円
- にいだしぜんしゅにごり1,100円
「小寒」芹乃栄の頃のコース内容
- 迎春:男爵、ずわい蟹、洋梨、唐墨大根
- 冬霞:三陸 真牡蠣、椀
- 山海:氷見産の寒鰤、雪中大根、三陸女川産の帆立、情熱果実
- お凌ぎ:打ち立て蕎麦
- 冬化粧:真羽太、塌ター菜
- 郷土:山形地鶏、舟形マッシュルーム
- 口直し:グラニテ
- 置賜:米沢牛イチボのSukiyaki
- 馳走:南陽のお米を土釜で
- 留椀:自家製味噌、豆もやし
- お楽しみ
迎春:男爵、ずわい蟹、唐墨大根
イノベーティブ系のアミューズを思わせるプレゼンテーション。
唐墨大根には酸味を効かせて爽やかに調整し、大根が瑞々しいところにも惹かれる。
ずわい蟹は香り良く甘いのは勿論、ラ・フランスとディルと調和している。
「男爵」はジャガイモのフリットで、フレンチのドフィノワを意識した調理。
カリッ!と弾けた後にジャガイモの甘味を感じさせる。
冬霞:三陸 真牡蠣、椀
牡蠣出汁と一番出汁を合わせた吸い地。
牡蠣の香りがたっぷりで、鰹出汁が主張しすぎずキリッと引き締める。
潮汁にしない設計はモダン。
牡蠣と海をシンプルに頂く椀として楽しめる。
山海:氷見産の寒鰤、雪中大根
魚介類は日本海と太平洋経由で、良いとこ取りの模様。
野菜は地元産で、大根は島崎さんのもの。
山葵も山形県産との事で意識が高い。
鰤は酸味を強く感じたが、これは提供温度の低さが問題。
勿体ない。
冷たすぎるために味覚的なズレが生じている。
脂の甘味が広がる前に酸味が伝わり、薬味の香りも広がるため、咀嚼回数に対して魚が活きない。
この鰤ならば提供温度を上げた方が確実に旨いので、残念に思う。
山海:三陸女川産の帆立、情熱果実
帆立はスモークして長芋、山形県産のパッションフルーツと合わせている。
パッションフルーツの酸味や香りと違和感が無い点が素晴らしい。
長芋はテクスチャーとして良いつなぎになっている。
お凌ぎ:打ち立て蕎麦
在来種の「でわかおり」と「最上早生」のブレンドで、加水率は47%。
最初は塩で頂くと、蕎麦は香りが強く、ほのかに甘い。
香りにやや渋い幽玄なニュアンスが含まれていて、これは良い香りだ。
十割で食感強めに仕上げている点も良い。
ただ、社長の蕎麦打ちの技術に対して、茹でが残念であった。
人数が人数なので仕方ないが、蕎麦は打つだけでなく茹でにも技術が必要なので、タイムラグが生まれるとしてもターンを分けて茹でて頂きたい。
ツユは鰹節とアゴ出汁との事。
醤油も甘味も穏やかで、蕎麦を活かす方向性。
塩気はあり、淡口を使っていると思われる。
茹での技術はさて置き、何よりもプレゼンテーションが良いと感じる。
社長のおもてなしの精神を具現化した蕎麦だ。
僕は、こう言った心がこもった料理に弱い。
ここで蕎麦同様に口の中の味をシフトチェンジすべく、デラ野郎を投入。
冬化粧:真羽太、島崎さんの塌菜
真羽太はポワレにしている。
塌菜の軸をネギのように切るとは、素敵な試みではないか。
ポワレなので、皮バリッと、身はむちむちの食感だ。
塩気と油脂を軽くしている点がモダン。
ちなみに、塌菜には和名もあり、すなわち如月菜。
僕は中国料理も大好きだが、名称としては和名の方が素敵に感じる(塌=潰れたような、という意味)。
郷土:山形地鶏、舟形マッシュルーム
山形地鶏はクロケッタ(イタリアのコロッケ)に。
泡もマッシュルームが原料なので、マッシュルームの香りがたっぷり!
山形地鶏よりもマッシュルームの為の料理である。
口直し:グラニテ
「ハンドレッドフルーツ」さんのブルーベリーのアイスクリームを添えて。
西洋ヨモギのリキュールがミントのような爽快感。
置賜:米沢牛イチボのSukiyaki
米沢が近いだけあり、気合いが入っている。
イチボは鉄板焼きで、地元野菜のフレッセを添え、ソースは山椒。
卵黄とソースですき焼き風の味わいになる点が面白い!
マイクロセロリの香りが強く、椎茸の強い旨味もアクセントになる。
Sukiyakiに合わせて、お酒は【にいだしぜんしゅにごり】の燗酒を頂いた。
仁井田本家は福島県のドメーヌ蔵。
酒蔵の方から聞いた必殺の燗付けが光る。
にいだにごりを70℃に上げて、原酒を入れて60℃に下げて燗にするとの事。
馳走:南陽のお米を土釜で
お米は黒澤ファームさんの「夢ごこち」との事で、抜群に美味しい。
香りも甘味も秀逸だ。
「夢ごこち」は一般的には「低アミロース米」として知られ、粘りが強いお米として有名な「コシヒカリ」よりもアミロース含有量が低く、アミロペクチンを多く含むお米だ。
しかし、粘りが控えめで、メチャクチャ美味しかった。
この抜群に美味しいお米を頂くと、今流行りの油脂が強めの炊き込みご飯や混ぜご飯、さらには炭水化物を多数提供するスタイルは本当に必要だろうか?と実感する。
自分は以前から「白米こそが最高の贅沢」だと言い続けている。
根幹の白米を美味しく炊くよりも、味付けの足し算に時間とコストを使う傾向はよろしくない。
なお、夕飯に「夢ごこち」使われているところ、朝食は「つや姫」との事。
朝夕で使うお米を変えているなんて、そりゃあ楽しくなる。
留椀:自家製味噌
味噌が自家製とは嬉しい限りだ。
合わせ味噌仕立てとの事。
そして、椀種には生産者が2軒しか残ってない豆もやしを使用との事で、なお嬉しい。
味噌は塩味が穏やかなのにコクがしっかりで旨い。
豆もやしは、食感はもちろん、香りが良い。
お楽しみ
米こっこ地鶏の卵を使ったカタラーナ、ラングドシャ、キャラメルジェラート、苺のソースのドルチェ。
これはストレートに美味しい!
最後にフルーツカクテルのサービス。
なんてきめ細かいサービス!
ラ・フランスのスムージーにウォッカを少量加えている。
ラ・フランスの香りを堪能するとともに、上記ドルチェとの相性が抜群だ。
夕ご飯の後は部屋で寛いでも良し、シェアスペースで寛いでも良し。
フリードリンクに日本酒やハードリカーが加わり、至れり尽くせりのサービスだ。
「山形座 瀧波」の朝ご飯の詳細
料理旅館と言えば、朝ご飯も楽しみの一つ。
まずはりんごジュースで喉を潤す。
期待を裏切らない朝ご飯だ。
アブラボウズとさくらんぼの煮付けは珍しい。
山形と言えば、漬物が楽しい土地。
そして、メインデュッシュの白ご飯は「つや姫」。
煮もの椀は山形名物の【芋煮】で、贅沢にも米沢牛を使用。
朝ご飯の「つや姫」の方が粘度を感じ、もっちりしていた。
一般的には逆なので意外に思う。
朝ご飯は小さな土鍋ではないので、炊飯方法も大きく影響している筈。
更に味噌汁でなめこ汁、秘伝豆で作った豆腐も登場し、盛りだくさん。
そして、卵料理は、米こっこ地鶏の卵を使った【たきなみ玉子】か【出汁巻き玉子】を選べる。
僕は卵の味わいをストレートに感じて見たかったので、前者を選択した。
結果的に大正解!
黄身が非常に濃厚な味わいで、臭みも無く、美味しい卵だ。
…ただ、まだ食べかけだったものを、気付いたら下げられていたのは残念無念(笑)
一番美味しいところを残していたのに!
ご飯と混ぜて頂こうと思っていたのに!
他のお店でも若いスタッフが途中で下げる事があるが、目配りのスキルの前に、お料理への敬意を抱いた方が良い。
お料理への敬意があれば、お客さんのお料理にも自然と気を配れるものなので!
デザートは「飯豊ながめやま牧場」のヨーグルトにブルーベリーソース、干し柿。
「山形座 瀧波」のお店情報と予約方法
「山形座 瀧波」さんは各種旅行サイトから予約が可能です。
普段使用しているサイトから簡単に空室確認と予約が可能です。
店名:山形座 瀧波(やまがたざ たきなみ)
予算の目安:1名48,400円〜2名133,816円くらいのプラン
TEL:0238-43-6111
住所:山形県南陽市赤湯3005
最寄駅:赤湯駅から2,000m
営業時間:チェックイン15:00・チェックアウト11:00
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山形が誇るもう一つの名オーベルジュ「出羽屋」さん
山形は面白い!と感じる、すしログ(@sushilog01)でした。
ちなみに、チェックインの後は街歩きが結構楽しいです。
そして、南陽市で300年以上もの歴史を誇る「ゆうき酒店」さんの支店があります。
こちらでは山形県産の日本酒とワインを試飲させて頂けます。
結構良いラインナップなので、お酒が好きな方は購入を前提に訪問してみてください!
ちなみに、赤湯と言えば「龍上海」が有名ですが、2〜3時間も並ぶと聞いて、僕は隠れた名店を探しました。
「いもせ食堂」さんは「食堂」の皮を被った醤油ラーメンの名店だと思います。
詳しくは食べログにレビューを書きましたので、ご参照ください。
また来たいと思えるのが山形県です。