こんにちは、焼鳥が大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
さて、今回ご紹介するお店は、横浜の焼鳥店「1000」です。
2021年5月のオープンから急速に人気を高められていますが、お料理を頂いて心から納得しました。
ご主人の千田健介さんは、間違いなく今後の焼鳥会を背負っていく気鋭の職人さんです。
千田さんは焼きの技術が非凡であり、コースの組み立て方=構成力にも妙があります。
しかも、使用する調味用にも配慮されている上に、ソムリエと酒ディプロマの資格も取られるなど勉強熱心。
さらに、イケメンで、愛妻家&子煩悩。
すしログ
非の打ちどころがありませんね(笑)
弱冠26歳ですが、今後が大いに楽しみな職人さんです!
タップできる目次
横浜の焼鳥店「1000(せん)」の魅力とは?
千田さんは15歳の時に、横浜の名店「里葉亭」にて修行を開始されました。
そして、系列店の「美鶏」も含めて、10年もの間みっちりと修業。
それゆえに、独立時の年齢は26歳とお若いものの、安定感が抜群です。
1品目の胸肉の串で心をつかまれ、「これは巧いな…」とつぶやいたほどです(心の中で)。
胸肉という淡白な部位を用いつつ、味覚、食感、香り、温度の全ての点でバッチリ決めていました。
そして、個人的に、焼鳥店のコースで1品目から焼鳥を出す精神性が素晴らしいと感じました。
その心は、コース主体の焼鳥店で1品目から焼鳥を出すお店はほとんど無いからです。
しかし、焼鳥店で焼鳥を食べたいのは当然の人情。
言わずもがな焼鳥職人さんの技が最も表れるのは、一品ものではなく焼鳥に決まっています。
なので、千田さんは顧客心理を理解されているとともに、腕に自信がある方なんだな…と即座に理解して、称賛を覚えた次第です。
同時に、串と一品料理の構成が巧みで、お腹と心が一杯にならぬよう配慮されています。
しかし、感情の起伏はしっかりあり、最後までワクワクするストーリーテリング。
串打ちと焼き以上にコースの構成はセンスを問われる点なので、これはセンスがある職人さんだと実感した次第です。
焼鳥店のコースの構成については、指摘されている方が稀有な現状ですが、コース主体の焼鳥店が増えている状況なので、今後注目されるポイントだと思います。
百聞は一見にしかず。
当ブログの構成としては変則的ですが、今回は最初にコースの内容を見てみましょう。
「1000」の素晴らしいおまかせコースの内容と構成
- 胸肉(串、塩・本山葵)
- 笹身とキンカンの手巻き
- 鳥の巣に見立てたサラダ
- レバ刺し、笹身刺し(塩・ニンニク醤油)
- 胸肉のタタキ(柚子胡椒)
- ハツ(串、生姜)
- 生野菜と香の物
- つくねの茶わん蒸し
- ちょうちん(串)
- 銀杏(串)
- せせり(串)
- 厚揚げ
- 茄子(串)
- レバーペースト
- 1年熟成のメークイーン(串)
- 口直し:大根とレモンのジュース
- ソリレス(串)
- つくね、田中農場の卵、黒トリュフ
- 手羽先
- 芽キャベツ(串)
- あか(=内もも、串)
- チキンカレー
- 鶏ラーメン
圧倒的な品数です。
串と一品料理、あるいは串打ちしない焼きものを効果的に組み立て、構成力の高さを実感させます。
串打ちは焼鳥の根幹をなす重要な技術ですが、串の枠に拘泥していない点は千田さんのアドバンテージです。
千田さんのお陰で、コース主体の焼鳥店では串を再構築する手法が有効だと感じました。
串から外して頂いた方が美味しい部位や食べ方もあるので、枠組みに拘泥する必要は無いのでしょう。
コースの中で串の本数が一定数をクリアしていれば十分妥当性があります(ただ、鮨店で握りの数が少なく酒肴が多いお店が無粋極まりないように、焼鳥店でも串が少ないと本末転倒となりますが)。
千田さんのコース設計には職人魂が通っていて、職人技が感じられます。
一見するとポップなお店ですが、根底にあるものは硬派だと思いました。
千田さんは日本料理のお店を食べ歩くことで、コースの精度が更に上がると感じます。
出汁や塩味、甘味、酸味の使い方などは、必ず今後のキャリアに活きてくるでしょう。
焼鳥職人さんはフレンチやイタリアン、焼き肉の食べ歩きをする方が多い気がしますが、コース主体のお店の場合、日本料理が最も参考になるはずです。
僕は「薄味こそが正義」とは決して思いませんし、豚カツも塩よりソースで頂く方が好きです。
しかし、淡い味を知らねば、濃い味を美味しく表現することは出来ません。
千田さんが若い年齢で「妙味必淡」を知ると、相当強い武器になるのは間違いありません。
また、鶏肉は一つの銘柄にこだわらず、色々使用された方が良いかもしれません。
こちらは【高坂鶏】の上位ブランドである【神戸高坂鶏】を使用されています。
【高坂鶏】は希少性を謳う鶏で、千田さんの手にかかるとバッチリ美味しいと感じました。
同行者の美食家の方は、「他店で頂いた時よりも美味しい」と漏らしており、僕も同感です。
ただ、部位によっては他の鶏の方が最適なのでは?と感じるものもあり、香りが強い部位もありました。
まして、【高坂鶏】については、昨年から気になっているニュースがあります。
これについては、「1000」の話から逸れるため、記事の最後に記載します。
それでは、「1000」で頂いた内容について、ご紹介します。
「1000(せん)」のおまかせコースの詳細
「1000」さんでは、【高坂鶏】を1日2羽のみ使用されているそうです。
そのため、いわゆる「希少部位」の希少性は一般よりもさらに高いと言えます。
今回は「希少部位」も織り交ぜて頂き、大感謝!
しかも仰々しく出されず、サッと出されるところに千田さんの素敵なお人柄を窺いました。
おまかせのコースは、【神戸高坂鶏コース】10,500円(+サ10%)が基本のようです。
2月~3月は【冬トリュフ神戸高坂鶏のコース】11,500円(+サ10%)でしたので、今回はこちらを頂きました。
この度頂いたお酒
- ビール赤星 800円
- 光栄菊、Hello! KOUEIGIKU 雄町純米大吟醸
- 篠峯、山田錦純米
- 十四代米焼酎 950円
- 白州ハイボール 750円
日本酒は1合800円~なので、高級店としてはお酒が良心的な価格設定です。
品揃えにも個性があり、千田さんが勉強されている証だと感じます。
胸肉
バリッ!と皮が弾けるや否や、瞬時に肉汁がジューシィに溢れ出る…さらに胸肉特有の酸味がふわっと広がる。
いやはや、これは巧い焼き方だ。
山葵はもちろん本山葵を使用していて、塩気も丁度良い塩梅。
鮨において僕は一品目を「名刺代わりの一貫目」と表現しているが、千田さんの「名刺代わりの一串目」は焼鳥好きの心に刺さる。
笹身とキンカンの手巻き
一般的には見た目に心を奪われるかもしれないが、僕は心を奪われたのは提供温度だ。
温度への配慮が良い。
提供前に笹身に軽く火を入れているため笹身とキンカンが馴染み、味覚的な一体感が高い。
甘みや旨味がすぐに接続する。
キンカンはとろりととろけ、味付けも良い。
噛み締めていると花穂紫蘇の爽やかさや、海苔の香ばしさなどが鼻腔をくすぐり、食欲を高めてくれる。
素敵な構成力だと、二品で分かった。
鳥の巣に見立てたサラダ
遊び心が大変嬉しい。
チーズはチェダーチーズで、野菜には塩昆布の微塵切りを加え、玄米あられを振っている。
塩気は強めだが、コースの前半で野菜を出されるのは嬉しい(血糖値の急上昇を防ぐ配慮を感じる)。
大根を鳥型に抜いている点に頬がほころぶ。
レバ刺し、笹身刺し
付け合せの調味料はニンニク醤油と、マルドンの塩。
右に添えられているのは、ネギ油とごま油のパウダー。
前提として調味料が良い。
レバーは臭みが皆無で、純粋に香りを楽しませてくれる、甘いレバーだ。
笹身にも確かな旨味がある。
鶏刺しとしては非常に印象深い味わいであった。
胸肉のタタキ
まず、肉質に意表をつかれる。
ムチムチと力強い弾力で、胸肉離れしている。
そして、旨味もある。
冒頭が胸肉の串で始まり、同じ部位であるが、全く違和感を感じなかった。
凡庸な技術であれば、被っていると感じただろう。
付け合わせの柚子胡椒のクオリティも高く、頂く前から香りが良い。
柚子は粗微塵切りで、皮の苦味も活かしている。
ハツ
最初の串がハツとは面白い。
ぷるんぷるんと食感が良く、これは腕が良いと実感する。
ハツ自体のクオリティも良いのだろうが、何よりも技術に驚いた。
また、使用している生姜の量も良い。
生野菜と香の物
つくねの茶わん蒸し
つくねを蒸して提供するサプライズが良い。
つくねの食感はむっちりしていて、軟骨も加えているためコリッと弾ける。
つくね以外には百合根を使用していて、具がゴテゴテしていない点が美点。
ただ、難点があり、それはツユの甘みである。
百合根の甘みを活かすべく、ツユに強い甘みは不要だ。
ちょうちん
キンカンの濃密な味わいは鉄板で、これは期待を裏切らない味。
銀杏
ねっちりした食感で、甘みとホロ苦みを活かす焼き加減。
せせり
超肉厚でむっちりと力強い食感。
脂よりも肉質を楽しませるせせりだ。
肉厚でありながら野暮ッたくないのは、焼きの腕ゆえだろう。
厚揚げ
予想外の味わいで、皆の心をつかんだ一品。
ガリッガリッ!と非常にハードな食感で、香ばしい。
出汁と酸味を利かせた合わせ醤油も合っている。
茄子
とろっとろで、甘くて美味しい。
それゆえに錦胡麻は要らないのではないかと感じる。
錦胡麻は色合い的に目立つので、多用するよりも必然性の高いものに使用を限定した方が印象が強まる。
翻って、複数の品に使うと目立ちすぎる。
茄子に使用するのであれば金胡麻などに変えるのが良いだろう。
レバーパテ
臭みは無く、乳脂肪のコクがあるレバーパテ。
メークイーン
一年熟成させたメークイーンとのことで、非常に甘い!
意外性が凄い。
本当は2年熟成したものを使用していたそうだが、無くなったとのこと。
2年モノも頂いてみたい!
口直し:大根とレモンのジュース
大根臭くなく、あくまでも香りとして楽しませる。
大根の甘みとレモンの酸味が自然で嬉しい。
シャーベットよりも食材の素朴な組み合わせで口直しを提供するセンスが素晴らしい。
ソリレス
皮はバリッバリで、身はむっちむち。
大変力強い食感のソリレスだ。
【高坂鶏】の独特の香りを最も強く感じた。
つくね
田中農場の卵、黒トリュフとともに。
茶碗蒸し、ちょうちんに続いて3品目のつくねなので、つくねが多いなあ感じたのは事実だ(笑)
そう言えば、キンカンと卵黄も3品目だ。
とは言え、濃厚な卵と相まって問答無用に美味いヤツである。
手羽先
湘南ゴールドを合わせている点がユニークだ。
手羽先は力強い脂と肉質。
芽キャベツ
こんがりと焼き込んでいて、香りが良い芽キャベツ。
あか(内もも)
むっちりした身から肉汁がジューシィにほとばしる。
旨味と脂がたっぷりなのに爽やかに感じるのは肉質と焼き方ゆえだろうか。
焼鳥を食べる醍醐味を感じさせてくれる一串でフィニッシュとなる。
チキンカレー
鶏の旨味を感じさせるためには、塩分を落とした方が良いように感じる。。
鶏ラーメン
超純水を使用している点に気迫を感じる(※ラーメンを食べている人ならばすぐに分かるが、超純水と言えば成瀬の名店「天国屋」が頭に浮かぶ)。
出汁は鶏の旨味が濃厚で、昆布の旨味が底を支え、鰹節でキリッと引き締めている。
昆布は羅臼で、鰹節は本枯れ節との事。
こちらも出汁を活かすために塩気を大幅に落とすと更に美味しくなる。
また、ぶぶあられを入れず、ネギのみの方が良さが活きると感じた。
「1000(せん)」の立地と雰囲気
お店は関内駅からほど近い場所にあり、入口がちょっと怪しいビルに入っています。
エレベーターで3階に上がると、ユーモラスでスタイリッシュな壁と暖簾が出迎えてくれます。
お店は広々していて、清掃状態もバッチリ。
上質さとポップさを合わせ持つ雰囲気で、気兼ねなく寛げます。
この点は焼鳥店らしくて良いと感じました。
また、空間が広いので、友人と多少ワイガヤしても他のお客さんへの迷惑にならないので、楽しい雰囲気です!
イスはハイチェアですが、幅があるので疲れません。
すしログ
ただ、【高坂鶏】専門店を謳う以上、鶏についても書く必要性があるため、下記に情報をまとめます。
高坂鶏を取り巻く状況について
【高坂鶏】と言えば、グルメな人で知らない人はいない、昨今人気が高まるブランド鶏です。
ミシュラン三ツ星の名店「カンテサンス」で使用されたことを皮切りに、今は無き焼き鳥の名店「たて森」でも使用され、一躍人気を高めながら現在に至ります。
ただ、昨年2021年に白金の「やきとり 嶋家」さんを訪問した際に、下記のニュースを知りました。
指摘されている問題点は、鶏舎の設置届の不届、設置基準違反、農地の無断転用、産廃の不法投棄、悪臭被害。
非常に長期化している問題です。
また、直接的な被害以外に、僕は他にも問題があると感じています。
それは、使用している料理人さんが事実を知らないことです。
同時に、世間で「グルメ」と呼ばれているブロガー、レビュアー、インスタグラマー、YouTuberなども知らないことも問題です。
「グルメ」な方々は「幻の鶏」と喧伝しています。
僕はいち食べ手として気になったため、TwitterとFacebookで情報を集めました。
最近、高級焼鳥店で取り扱いが増えている【高坂鶏】。
公害問題が指摘されているので、僕は【高坂鶏】を頂く際に気になっています。もしも事情について詳しい方がいらっしゃれば、教えて頂ければ幸いです!https://t.co/xL5xg7F0TM
— すしログ@鮨歴10年超えの”食の変態” (@sushilog01) February 18, 2022
Twitterではインプレッションが53,000を超える反響がありました。
Facebookでは畜産関係者の方が「焼き鳥達人の会」に共有頂きました。
今やコンプライアンスが重視される社会であり、SDGs(Sustainable Development Goals)が掲げられる世の中です。
料理人、消費者が「単に美味しい」だけでなく、事実を知って食材と向き合うことは必須なのではないでしょうか。
今回の件については、生産者さんが真摯に課題と向き合うことを切に願います。
住民の方々の苦悩が一日でも早く解消されることを…
【2022年3月30日追記】
生産者さんから「公害問題は存在しない」との声明が出されました。
それに対して、「桑原環境を考える会」からはサイト上で反論がなされています。
2022年3月末に髙坂鶏農園のホームページが更新されました。
その中で、「公害問題について-現在の状況-」と題する部分がありますが、事実を偽り、また誤解を招く表現が多くありますので、桑原住民の立場から真実を指摘し反論をさせていただきます。
最後に、念のため強調しておきますが、「1000」の千田さんは紛れも無い逸材です。
本記事は個々のお店を貶めるつもりは毛頭ありません。
むしろ千田さんは腕が立つ逸材。
将来のことを想うからこそ、客観的事実を記載させて頂きました。
食で考えるべきは美味しさだけでなく、食材=命だと信じています。
「1000(せん)」のお店情報と予約方法
予約については、原則的にWEB予約のみで、OMAKASE経由となります。
大変な人気を誇るお店なので、アラート設定は必須です!
店名:1000(せん)
予算の目安:【神戸高坂鶏コース】10,500円+サ10%、2月~3月【冬トリュフ神戸高坂鶏のコース】11,500円+サ10%
TEL:045-307-9666
住所:神奈川県横浜市中区相生町2-52 金子ビル3F
最寄駅:関内駅から450m、日本大通り駅から500m
営業時間:18:00~23:30
定休日:日曜、他不定休
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