こんにちは、焼鳥が大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
さて、渋谷の「とり茶太郎」と言えば、近年一気に高まった焼鳥マニア垂涎のお店です。
調べてみたところ、2020年頃から注目が集まり、2021年にOMAKASEに登録されてブレイクしたようです。
つまり、コロナ下での躍進!
理不尽な政策も相まって飲食業界に逆風が吹いた中、心温まるエピソードです。
予約が非常に取りづらいお店ですが、今回嬉しいお誘いを頂き訪問しました。
結果的に、期待を大きく超える満足度で、他店にはない魅力を心から実感しました。
ご主人は名門「蒼天」の店長まで務めた方。
ブレイクまで少しお時間がかかったようですが、今後の躍進は間違いありません!
渋谷「とり茶太郎」と店主・金子親方の魅力とは?
渋谷の「とり茶太郎」は、親方の金子 拓也さんが2013年6月にオープンした焼鳥店です。
焼鳥職人を目指されたのは、社会人経験を経た29歳の時。
最初に修行に入られたのは、西荻窪の「やきとり戎」とのことです。
「やきとり戎」は1973年に創業した大衆店です。
隣駅の吉祥寺の「いせや総本店」(創業1928年)に次いで、昼酒が出来る大衆店として老若男女に愛されています。
「やきとり戎」で4年修業を積んだのち、選ばれたお店は大塚の「蒼天」。
「蒼天」でも4年ほど修業され、前述の通り店長まで任されたそうです。
不思議な店名の由来は「蒼天」時代のあだ名であること有名。
オーナーから「お茶出ししか出来ないから茶太郎」と名付けられたことが由来とのことです。
そこから上り詰められたからこそ念願の開店時に屋号にされたのでしょう。
屋号から「蒼天」への経緯と、自身の足跡を顧みる謙虚な精神を感じます。
金子親方の焼鳥の特徴は、一言で表すと「変幻自在」です。
具体的には、複数の鶏・鳥を仕入れ、部位ごとに調理を変えてコースを組み立てる手法。
仕入れる鶏・鳥は、比内地鶏、名古屋コーチン、茶太郎鶏、ホロホロ鳥、かすみ鴨など。
使用する鶏に「日本三大地鶏」のうち2つが入っているところが凄い!(比内地鶏、名古屋コーチン)
そして、生産者さんとのタッグで生産している鶏が茶太郎鶏。
フランス原産の鶏を茨城県で飼育されているそうです。
これらのバリエーション豊かな鶏・鳥を焼鳥(串)だけでなく、一品料理としてもハイレヴェルに仕上げ、ボリューム感のあるコースに仕立てる手腕に息を巻きました。
鶏は巧みに寝かされているようで、旨味が強く、味わいが濃密。
それを「近火の強火」で焼き上げます。
一見するとかなりハードに焼き込んでいるようですが、実際には凝縮感が少ない焼き方です。
この点においては、「近火の強火」の魔術師と言える「鳥しき」とは異なり、面白いです。
そして、個人的に火入れと共に魅力だったのが、串打ち。
一串の中で効果的に強弱をつけた火入れを行えるように設計された串打ちです。
僕は、良い焼鳥は一串の中で様々な味わいを表現したものだと考えます。
金子親方はこの点においても手練れだと感じました。
もちろん、振り塩の塩梅や提供温度についても非の打ちどころがありません。
高度な焼鳥ですが、ストレートに美味しい!と感じ、強い印象に残るのが金子親方の焼鳥です。
「とり茶太郎」のおまかせコースの詳細
「とり茶太郎」さんは、おまかせコース一本です。
そして、焼鳥店に多いストップ制なので、追加のボリュームで変わります。
この度は追加は1串で、お酒を5杯頂き、約15,000円でした。
同じく追加なしで、ソフトドリンク1杯飲まれた方が12,000円ほどだったそうなので、お酒の値付けは良心的です。
そして、コース自体についてもコストパフォーマンスが高いです。
既存の焼鳥としては高級路線ですが、使用している食材と技術を考慮し、他の料理ジャンルと比較すると満足度は高いと感じました。
ちなみに、僕は昔は焼鳥店で日本酒を飲まず、焼酎を飲む方が良いと考えていました。
しかし、昨今の日本酒の進歩を見ると、焼鳥に合わせられる日本酒が増えたことは間違いありません。
まして修行先の「蒼天」は日本酒を得意とするお店。
自身もお酒の勉強をしているので、おまかせで頂きました。
この度頂いたお酒
- 生ビール(キリンブラウマイスター)720円
- 墨廼江 特別純米無濾過原酒 甕口取り
- 天美 特別純米
- 寫楽 純米吟醸 備前雄町
- ハイボール850円
ホロホロ鳥の白レバーパテ
ホロホロ鳥のレバーとしては香り良く、上品な方向性。
これは白レバー(脂肪肝)であることも影響しているかもしれない。
味わいとしては流石に旨く、濃厚な味わいだ。
イチジクのバゲットとの相性がバッチリ!
パンはヴィロンのものとのことで、細部にも抜かりなし。
ホロホロ鳥の砂肝
ホロホロ鳥のモツ類が連続とは面白い導入だ。
もぎゅっとした筋肉的な弾力のある砂肝だが、繊維質は柔らかくほどける。
そして、砂肝であるが確かな旨味を感じ、味が濃い。
比内地鶏の胸肉
「近火の強火」の技が遺憾なく発揮されている。
煙がもうもうと上がるほどに焼いているが、皮はバリバリ過ぎず、むっちり感もある。
身はジューシィで、同時にしっとりとほどける。
皮とのコントラストが抜群だ。
力強さを感じさせた後に上品に着地させる焼き方。
他にない焼きであることが、この時点で既に分かる。
柚子胡椒の使用量も適切だ。
振り塩と柚子胡椒の塩味のバランスも考えられているように感じる。
かすみ鴨の胸腺
胸腺、すなわちリードヴォー。
食感の三重奏が魅力的で、ぷりぷり、コリコリ、とろーり感が共存している。
一串で多層的な表現をされていて見事!と感じる。
タレの串を前半に持ってくる点も好みに合う。
かつては焼鳥にしても豚かつにしても「塩原理主義」のような風潮があったが、個人的には異を唱えていた次第。
タレの甘みも落としていて、前半に出して違和感が無い。
ここで頼んだおまかせの日本酒が素晴らしい選択であった。
【墨廼江 特別純米無濾過原酒 甕口取り】
トップノーズは軽いマスカットに梨を思わせる。
頂いてみると、苦味に酸味のアタックがあり、酵母っぽい風味が広がる。
バッチリのご提案だと感じる。
かすみ鴨のもも肉とホロホロ鳥の金柑、黄ニラのユッケ
ホロホロ鳥の笹身とエシャレットのなめろう
こちらを頂き、甘みや塩気のコントロールに妙がある、と再認識する。
ユッケは「誰もが好きな味わい」だが、迎合していない味付けだ。
ニラでもネギでもなく黄ニラである点も好ましい。
【ホロホロ鳥の笹身とエシャレットのなめろう】はホロホロ鳥の笹身はむっちりした弾力がありつつ、ねっちりと舌に絡み、コクが強い。
比内地鶏のねぎま!
コースの構成=ストーリー性が良い。
ここで、酒肴から串に転じて、香りが変わる。
食感と脂も勿論だが、香ばしさで食欲にアクセルを掛けてくる構成だ。
ワイルドな串打ちも奏功している!
焼きの難易度が高い串打ちだが、見事に焼き切っている。
火が入りやすい最下部はもぎゅっと力強い食感だが、きっちりしっとりとほどける。
ネギの火入れもまた秀逸。
じゃっくりと軽妙な音を響かせた後、とろりととろけつつ、あくまでもジャキジャキと食感を楽しませる。
あたかも焼きアスパラガスのような食感に仕上げている。
ホロホロ鳥の白レバー
これはもうフォアグラ!!と感じるばかりの表現だ。
表面はカリッと焼き込んで、中はとろっとろ。
加熱して下ごしらえしたものを焼いているのだろう。
レバーのクセは無く、脂の旨さをストレートに味わわせ、甘美な甘みに浸らせる。
アスパラガス
ねぎまのネギでアスパラガスを想起していたところ、時期もののアスパラガスも登場。
アスパラガスの青々しい香りを維持し、瑞々しくとも食感が強めなので、噛み締める喜びがある。
串打ちの順番と火入れも良い。
二番目は香りが強く、最後は甘みが強い。
パーツごとに異なる味わいを楽しませてくれる野菜串は素晴らしい。
かすみ鴨のロース
みちっとした弾力の後にジューシィな肉汁があふれ、鴨の香りを楽しませる。
タタキの2点盛り
ここで真打の茶太郎鶏が初登場!
手前が茶太郎鶏の胸肉で、奥がホロホロ鳥のもも肉。
胸肉は、「えっ、胸肉?」と思うほどの味わい深さだ。
しっとりときめ細かくほどける繊維質も印象に残る。
ホロホロ鳥のもも肉も美味しいが、イメージを超えたのは茶太郎鶏である。
ここで日本酒は味わいをガラリと変え、【天美 特別純米】。
日本酒好きとして楽しくなるご提案を行うお店だ。
つくね、エル・フランス
比内地鶏、茶太郎、かすみ鴨、ホロホロ鳥のあいびき。
肉肉しさをストレートに表現しているつくねだ。
もぎゅもぎゅと弾力があり、しっとりほどけ、非常にジューシィにフィニッシュ。
肉の香ばしさに燻香を付加している点が巧みだ。
下はカリッと焼き上げている。
【エル・フランス】は、フランス原種の国産ウズラの特大卵だ。
トロットロで、超濃厚。
大ぶりなので食べ応えがある。
手羽めし
手羽中の骨を抜いて、山椒ご飯を詰めて焼いている。
むっちりとした肉感と濃密な脂の手羽にご飯を合わせるまでは一般的な創造の範囲内だが、ご飯が山椒ご飯であり、しかもピリッとではなくビリビリと利かせている点に妙がある。
ハラミと新玉ねぎ
力強い繊維質のハラミに玉ねぎの甘みを合わせている。
タレは前半よりも濃口に感じる。
燻製の盛り合わせ
比内地鶏の手羽もと、ホロホロ鳥の金柑、スピッチコチーズ。
これはずるい組み合わせだ。
「名物」と言われる酒肴のようで、酒飲みには嬉しい。
名古屋コーチンの胸肉
むっちりした食感と、力強い脂の胸肉だ。
登場した時は「意外なタイミングで出される」と感じたが、後半に出す理由が分かる味わいの胸肉である。
比内地鶏の胸肉とゴーヤーの三杯酢漬け
こりっとした食感が気持ち良く、味わいも強い胸肉なので、ゴーヤーに合っている。
口直しを挟み、コースのフィナーレに向かう。
名古屋コーチンのもも肉の炙り
メスの10ヶ月で、力強い旨味。
食感も強い。
脂だけでなく旨味が強く、濃い味わいだ。
ホロホロ鳥の皮 追加
皮は自身にとって、焼鳥店の串打ちと焼きのメルクマールだ。
サクサク感は短い間に終わり、皮のぷりぷり感を活かす焼き方。
香ばしさが強い。
鶏スープ
重くなく、塩気も穏やかで、旨味とゼラチン質が強めの鶏スープ
「とり茶太郎」の立地と雰囲気
お店は渋谷駅から離れた場所にあり、再開発エリアを超えた先にあります。
一部で「渋谷のガンダム」と呼ばれる「青山製図専門学校一号館」の近くです(笑)
非常に落ち着いたエリアで、初めて訪問する人は「渋谷にこんな一角があるんだ…」と思うはず。
内観は渋めの照明で、カウンター内厨房が見渡せる内装です。
劇場的な趣がありつつ、寛げる瀟洒な雰囲気です。
なお、煙はもうもうと上がっても排煙設備のスペックが高いので、煙たくはなりません。
「とり茶太郎」のお店情報と予約方法
「とり茶太郎」さんは予約難易度が高いため、OMAKASEでアラート設定は必須です。
キャンセル枠を狙うか、毎月1日の8時の予約開始時点で狙いましょう。
店名:とり茶太郎(とりちゃたろう)
予算の目安:11,000円~15,000円
TEL:03-6416-0364
住所:東京都渋谷区鶯谷町7-12 TAKビル1F
最寄駅:渋谷駅から500m
営業時間:【火~土】17:30~20:30、20:40~23:30、【日】17:00~20:00、20:15~23:00
定休日:月曜(月に2回火曜休み)
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