こんにちは、ここのところ天丼の魅力に取りつかれている、すしログ(@sushilog01)です。
さて、こちらは銀座で知る人ぞ知る、隠れた天麩羅の名店です。
天麩羅通であり鮨通の知人からオススメされ、長らく伺いたいと思っていました。
訪問が叶ったのは代替わりされた後でしたが、天麩羅の味は格別!
すしログ
ご紹介頂いた方も「先代の技を完璧に習得している」と太鼓判を押すだけあり、今後が更に楽しみなお店です。
なお、東京の江戸前天麩羅は幾つかの系譜に分類されますが、こちらはどこにも属しません。
独自の技が光る天麩羅は、数多くのお店を巡ってきた人をも満足させる天麩羅だと思います。
銀座・茂竹(もちく)とは?
銀座・茂竹は創業を1914年(大正3年)までさかのぼる老舗です。
そして、100年以上の歴史を誇りながら、銀座にひっそりと佇んでいるところが、通好みで趣深い所以。
銀座の大通り(西銀座通り)のビルの2階にあり、階段は細く、知らなければ入らない外観かもしれません。
しかし、お店に入ってすぐ広がる、渋い雰囲気に癒されます。
年季の入った白木のカウンターは8席ほど。
厨房も狭く、今の銀座のイメージとは大分異なるかと思います。
しかし、白木のカウンターに映える塗り物のお盆を見つめていると、昼に趣を味わう悦楽があります。
現在は3代目の内田勝男さんから、4代目の西澤祐太さんに代替わりされています。
西澤祐太さんは築地の「新喜楽」で修業された経歴を持つそうです。
「新喜楽」は「日本三大料亭」に数えられる老舗料亭で、芥川賞と直木賞の選考会に使われることで有名ですね(ちなみに、「日本三大料亭」は他に吉兆と金田中です)。
西澤祐太さんはお話が大変面白く、特に料理の話は尽きないほど。
包丁や鍋の扱いを見ていると、料理を愛されていることが分かりました。
お店は女将さんとの二人三脚で営んでおられます。
よって、和やかな気持ちで御料理を頂けます。
渋い雰囲気の店内と温かみのある接客で頂く極上天麩羅は、銀座広しと言えども他には無い気がします。
銀座・茂竹の天麩羅の魅力
銀座・茂竹は揚げ方と使用する油に特徴があります。
頂いて感じた揚げ方の特徴は以下の通りです。
- タネは小ぶりでそろえる
- 揚げ油の量は少量
- 揚げ油の温度は低温
- 揚げ時間は長め
- 衣の作り方に妙があり、細やかな粒がサクサクと軽い
現在主流(人気)になっている、山の上やみかわ系統の揚げ方とは全く異なる揚げ方です。
頂いたものは天丼ですが、タレの味付けや量が抑制されているので、天麩羅としての魅力や特徴が直ぐに分かりました。
そして、油は特徴的な風味で、関根油店の玉締め搾り胡麻油を使用されています。
「玉締め搾り」は江戸時代中期に発明された製法で、人の手で三日三晩かけて絞る(手間が掛かる)ため、現在は廃れてしまっています。
「玉締め搾り」は低圧力・長時間で搾るため、摩擦熱で脂が焦げず、甘く香ばしい香りの胡麻油に仕上がります。
香しい胡麻油の香りはお店の外に上品に漂い、先付のサラダを頂いている時も食欲を刺激してくれます。
お話を伺ったところ、鍋の素材も独特の仕上がりに影響していることが分かりました。
こちらで使用されている鍋は砲金製です。
砲金とは銅90%・錫10%程度の合金になりますが、現在はコストと職人さんの問題で生産が少なくなり、価
値が急騰しているそうです(数千円から数十万円までに高騰)。
なお、天麩羅店の多くは銅製の鍋を使用されていますが、西澤さんは炊飯と雪平に銅製鍋を使用されています。
銀座・茂竹の天麩羅の詳細
この度頂いたものは【盛り合わせ天丼】です。
定価3,300円+サービス料330円とちょっと贅沢ですが、味わいはもっと贅沢なので、コストパフォーマンスが抜群だと感じます。
また、10数年前から値上げされていない点は、銀座で驚嘆に値します。
サラダ
天丼で最初に野菜とは嬉しい。
血糖値の上昇を防ぐことが出来るので、安心だ。
盛り合わせ天丼
まず、白く美しい衣に目を奪われる。
これぞ上記で挙げた技の集大成。
頂いてみると、全てが軽やかで、衣を楽しませつつ、素材の魅力を引き出している。
この度頂いたタネは海老、鱚、メゴチ、空豆、オクラ、ブロッコリー、ズッキーニ、茗荷、茄子だ。
5月下旬の訪問だったので、春と夏の橋渡し的なタネの構成が嬉しい。
鮨も同様だが、タネで季節感が分かるのは嬉しいし、野菜も季節感を演出してくれる。
江戸前天麩羅はもともと野菜を使わないものだったので、先代の頃は女将さんと揉めたそうだが、老舗なのに時代に合わせて変化されている点が素敵だ。
空豆はホクホクと甘く香り良い。
鱚はホロッホロでお手本のような揚げ方である上に、鱚の香りも楽しめる。
オクラ、ブロッコリー、ズッキーニ、茗荷は全て瑞々しい。
野菜で特に感銘を覚えたのが茄子で、極めてジューシィな仕上げであった。
旬の名残のメゴチも、ぷりっぷりの海老も全てが美味しく、最後までついつい寡黙になってしまう天麩羅だった。
前述の銅鍋で炊くご飯も素晴らしく美味しい。
米粒がパラッとしつつ、お米の甘みを楽しませてくれる秀逸な炊き加減。
パラパラと甘みを両立させることは中々に難しいのだ。
しかも、天麩羅にピタリと合うところも印象に強く残った。
タレは甘みを抑えた上品な味わいで、掛ける量も少量なので、天麩羅そのものを楽しめる。
とは言え、こちらはご飯もタレもお代わり自由なので、濃口が好きな人は遠慮なくお伝えすると良いだろう。
最後に、ご飯のみならず赤出汁も香の物も美味しい。
細やかな賽の目切りにされた豆腐の赤出汁はキリッと端正な味。
糠漬けの浸かり具合もバッチリだ。
あらゆる定食料理と言うものは、主食だけ美味しくても成り立たないと言うのが自分の自論。
豚カツなどでも顕著だ。
主食、ご飯、椀、香の物の全てが揃って初めて名作と言えるはずだ。
茂竹のお店情報と予約方法
老舗ですが、各種WEB予約に対応されています。
店名:茂竹(もちく)
予算の目安:お昼・盛り合わせ天丼3,300円ほか、夜・天ぷら定食15,400円ほか、サービス料別途10%
TEL:03-3571-1578
最寄駅:銀座駅から200m
住所:東京都中央区銀座6-5-16 三楽ビル2F
営業時間:11:30~14:00、17:00~22:30
定休日:不定休
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