こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
さて、今回ご紹介する「すし家 祥太」さんは超正統派の鮨店です。
オープンは2019年11月ですが、既に常連さんが大勢いらっしゃいます。
すしログ
ド派手なパフォーマンスはゼロ、仕入れを工夫して値段を抑える親方の心意気に感銘を覚えた次第です。
おまかせコースは酒肴は僅か2品だけで、握り中心の構成。
そして、リーズナブル。
アフター鮨バブルの世の中に望まれるタイプの鮨店だと感じました。
韓国から鮨職人を目指して来日された親方は、鮨愛あふれる職人さんです!
タップできる目次
「すし家 祥太」と祥太親方について
まず、一風変わっているのが、親方の名前です。
「祥太」は本名ではなく職人名で、修行先である「鮨かねさか」の金坂真次親方が名付けられたそうです。
祥太親方の本名はムン・ギョンハンさんで、韓国ご出身です。
漫画『将太の寿司』に憧れて鮨職人になったと言うだけあり、作者の寺沢大介氏も開店時にお祝いに駆け付けたそうです。
祥太親方はソウルでスタイリッシュな富裕エリアとして知られる江南で修業を始められました。
新羅ホテル(The Shilla Seoul)の料理長が独立開店したソウルナンバーワンの鮨店”Sushi Hyo”で修業後に来日し、江戸前鮨の修行を開始。
24歳で大阪に渡ったそうですが、江戸前鮨を学ぶため、韓国人の知り合いがいない場所で修業するため、東京を選んだとの事。
「鮨を握りたいから日本に来ました」と言うお言葉に、胸を打たれたのは言うまでもありません。
「鮨かねさか」はミシュラン獲得の有名店で、飛ぶ鳥を落とす勢いの一門です。
あの有名な「鮨さいとう」の斉藤孝司親方も元々は「鮨 かねさか 赤坂店」として独立されました。
▲系譜をまとめています
ただ、面白いことに、祥太親方は修行目当てで「鮨かねさか」に訪問したのではないそうです。
お客として訪問し、味に惚れ込んだ末に弟子入りをお願いされたとの談。
当時は日本語もままならなかったそうなので、金坂親方に鮨愛が伝わったのは我々鮨好きとしても嬉しいところです。
祥太親方の縁が繋がらなければ「すし家 祥太」は無かったので。
「すし家 祥太」は冒頭に記載した通り、握り中心のお店です。
おまかせコースは酒肴2品、握り14貫、巻物、玉子、椀の構成です。
これは今日びの鮨店としては珍しい構成ですが、僕は琴線に触れます。
すしログ
僕は昔から「握り原理主義者」と公言していますが、鮨店は本質的に握りを食べる場所だと思います。
もちろん酒肴が美味しいお店も好きですが、握りの数が少ない鮨店は鮨店ではありません。
しかも、お値段が妥当で、おまかせは17,600円(14,300円からアップ)。
それでいて「鮨さいとう」を始め、有名鮨店と同じ仲卸さん複数から入れておられ、驚きました。
仲卸さんとの信頼関係の強さからも、親方の鮨愛を実感するばかりです。
そして、「すし家 祥太」は「鮨の生命線」であるシャリも魅力的です。
味わいとして酸味がキリリと利いていながら甘みもあり、塩気は穏やかです。
温度は少し高めで安定していて、硬さはやや硬めでほどけ加減が良好。
お酢はヨコ井醸造のものを使用していますが、與兵衛は使われていません。
その理由は、やはり香りとの事です。
與兵衛は強い旨味に加えて香りが特徴的なので、最近は使用されない職人さんも増えています。
全体として見るとニーズは未だ右肩上がりだと思いますが、「とりあえず與兵衛」と言う職人さんが減ってきたのは間違い無いと体感しています。
與兵衛は人気が集中し過ぎて価格が高騰しているので、人気が分散されるのは良い事だと思います。
祥太親方のシャリは全てのタネとの相性が良く、「また食べたい」と思うシャリです。
「すし家 祥太」のおまかせコースの詳細
それでは、おまかせの詳細をご紹介します。
2021年12月に訪問した際の記事
下記に2021年12月に頂いたおまかせの詳細をご紹介します。
この度頂いた日本酒
- 越乃寒梅、純米大吟醸 無垢
- 白鶴、オルタナティブ純米大吟醸
海鼠
柔らかくもコリコリ感を残した食感が良い。
酸味が強い三杯酢で頂く。
産地は青森。
白甘鯛の酒蒸し
昆布を上品に利かせている。
皮下脂肪がねっちりと問答無用で旨い。
ガリ
酸味と辛味が穏やかで、旨味が強いガリ。
ホウボウ
むっちりした食感で、旨味が非常に強い。
シャリの酸味と相まって印象が強まる。
縞鯵
脂が乗っている。
ホウボウの旨味の後に、脂によって食欲が刺激される。
4日寝かせているそうだ。
クロムツ
炙りの香ばしさと濃厚な脂が先行し、シャリの酸味が味わいの底を支える。
酸橘を4滴使用しているが、やや多めなので減らした方が良い。
鮪赤身
強めの漬けでねっちり、とろとろの食感に。
旨味を強く感じさせ、しばらく後に血の香りが味を引き締める。
とにかく血の香りが強いので産地を伺ったところ、前回と同じアイルランド産で、魚体は170~210キロのものだそう。
鮪中トロ
身質が柔らかく、脂も溶けて甘い。
これも時間差で血の香りが漂う。
ホヤと海胆の塩辛
青森産。
香りが良いホヤ。
唐墨とボラの白子の西京漬け
唐墨は1週間程度の乾燥なので、しっとり且つねっちりしている。
白子の甘みと西京味噌の香りとの相性が良い。
小鰭
しっとりと柔らかい小鰭。
酸味は軽やか。
墨烏賊
バツバツ、ゴリゴリと力強い食感で、これは良い。
それでいて、噛むと墨烏賊ながらに甘みが高まる。
しかし、あくまでも食感を楽しませる仕事であるのが粋。
柔らかさや甘みに走り墨烏賊を長く寝かせるのは、個人的には無粋だと感じる。
車海老
肉厚でむっちりした食感。
甘みが強い。
茹で上げで、シャリ温も上げて提供する。
鯵
鹿児島産との事なので出水か。
大葉を噛ませて、当たり葱を使用。
脂は予想した通り弱い。
故に大葉で印象を強める調整か。
冬に鯵を出すならば脂に対してシビアになるべきだと感じる。
赤貝
ヒモを噛ませて握る。
香りが良く、甘みも強く、噛み締めると旨味が高まる。
白海老
白板昆布〆。
甘みが抜群で、昆布の香りも良い塩梅。
鰹
脂の乗った迷い鰹だが、酸味がキリリと引き締める。
美味しい鰹だ。
穴子
ふわふわ且つしっとりな食感で、繊維質を程良く残している。
煮る際の甘みも良い塩梅だ。
生シラス軍艦
これは試作品との事で、サービスで頂いた。
海胆と卵を混ぜたものそ使用。
シャリが美味しいと大衆的な生シラスでも美味しさがアップすると感じる。
また、海苔のクオリティも味を大きく底上げしている。
椀
日月椀風の意匠。
前回と同様に意外性があり嬉しいねぎま汁。
干瓢巻き、鉄火巻き、トロたく巻き
干瓢は前よりも醤油と甘みが強め
トロたく巻きは細切りの沢庵が良い。
玉子
きめ細かいペースト状の玉子で、香りが良い。
2021年10月に訪問した際の記事
下記に2021年10月に頂いたおまかせの詳細をご紹介します。
この度頂いた日本酒
- 日高見、超辛口純米酒
- 醸し人九平次、火と月の間に、純米吟醸
- 農口尚彦研究所、純米 無濾過生原酒2019
- 〆張鶴、純米吟醸
先付
白魚は北海道産で、海ぶどうは沖縄産…つまり「北と南の食材を合わせてみた」との事でユニーク。
限られた酒肴2品のうち1品がユーモラスな選択なんて、独特のセンスを感じさせられて良い。
どこのお店でも見る酒肴に縛られていないところも素敵だ。
シシャモの一夜干し
豊洲に入った初シシャモ。
しっとりと柔らかく仕上げていて、嬉しい!
本当の初シシャモはかなりの原価であるので、お客さんを喜ばせるための仕入れを感じる。
ガリ
甘みにほのかな酸味と辛味が程よくキリリ。
旨味が強い。
鮃
むっちりした食感で、寝かせていない。
食感と共にシャリを味わい、お店の世界観に入ってゆける。
鰤
脂がノリノリ。
しかし媚びたところが無く、鰤らしいほのかな酸味が味を引き締める。
香りもバッチリ良い。
鰆
桜チップで軽く燻製させている。
藁よりもスモーキーフレーバーが強めだが、加減が上品で良い。
燻製掛けました!と言う印象は全く無く、きっちり鰆を活かしている。
香りで食欲をそそらせた後は、脂がトロトロと滲み、力強い味わいに満足を覚える。
鮪赤身
当世としては少し長めの漬け時間で、殊にねっちりした食感だ。
しかし、鮪の旨味が強く、酸味と香りも楽しませる仕事。
産地はアイルランドだが良い仕事で魅力を高めている。
鮨は仕事で魚を旨くする料理なので、ピン(一級品)を用いずに楽しませてくれる職人は手放しで信頼できる。
鮪でピンを使うと明確に価格に影響するので、お客想いと言える。
鮪中トロ
酸味とともに後味に血の香りがあり、嬉しい中トロ。
小鰭
しっとりと柔らかで、香りがやや強めながら上品な範疇。
モダンかつ小鰭らしい〆加減の小鰭。
墨烏賊
バチバチと力強い食感。
ほのかにとろりととろける。
墨烏賊らしい王道の食感を表現する、包丁仕事だ。
車海老
シャリを交換して温度を上げて提供。
海老の仕事は茹で上げで、温か目。
甘みがしっかりと感じられる。
鯵
むちむち、ぷりぷりで、脂も中々。
夏のピークから落ちはするものの、名残として車海老の後に頂く流れは良い。
赤貝
名産地の閖上ではないが、むちむちシャクシャクした食感、旨味、香りも十分楽しめる。
下手な閖上よりも美味しく、目利きが良いと実感する。
蛤
シャクシャクとクラシカルな火入れかと思いきや、実際はしっとりしていて、漬け込みはしっかり目。
しかし、甘みは程よく、上品な後味。
これも仕事で満足度を高めている。
甘海老
昆布〆。
プチッと弾けて、トロトロとろける。
昆布の主張は強すぎず、甘みの中に昆布の香りがふんわりと漂う。
いくら軍艦
甘みがほのかにある出汁の漬け込み。
穴子
対馬産。
とろんとろんながらギリギリのところで繊維質を楽しませ、甘みく媚びてこないところが良い。
ねぎま椀
まさかの嬉しい江戸料理風の椀!
味も良し。
葱が何気に焼き葱で小技が利いている。
干瓢巻き
巻物が鮪ではなく干瓢である点に、親方の鮨愛を感じる。
甘みが強めの味付けで、ジャクジャクした食感は軽めの干瓢。
香の物
玉子
プリン状の玉子焼き。
「すし家 祥太」の立地と雰囲気
お店は麻布十番の1番出口から徒歩2分程度の場所にあり、アクセスは至便です。
外観から落ち着いていて、しっとりした雰囲気を感じます。
店内は7席とこぢんまりとしていますが、決して狭くはなく、むしろ温かみのある空間です。
カウンター席と漬け場の距離が近く、全てのお客さんが親方と直接対話しているような距離感です。
祥太親方は客あしらいが巧く、さらしの商売を出来る点でも鮨職人らしい方だと感じました。
素敵な笑顔でハキハキとお話される姿は清々しい。
鮨店は握りだけでなく親方の人柄も味に影響するものなので、祥太親方ならば鮨店が初めての方でも心から楽しめるはずだと確信しました。
「すし家 祥太」のお店情報と予約方法
WEB予約については、一休経由で可能です。
貸し切りだとかなり先まで埋まっていますが、少人数のランチならば直近でも取れる様子です。
店名:すし家 祥太(すしや しょうた)
シャリの特徴:ヨコ井の與兵衛ではなく熟成期間の短い赤酢をブレンドした、バランスタイプのシャリ。
予算の目安:17,600円(税サ込)
TEL:03-6722-6588
住所:東京都港区麻布十番3-3-10 LANIビルⅡ 1F
最寄駅:麻布十番駅から160m
営業時間:12:00~14:30(L.O 14:00)、17:30~22:30(L.O 22:00)
定休日:水曜、第1・3火曜
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毎年毎年、年を追うごとに鮨が面白くなっていると感じる、すしログ(@sushilog01)でした。
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