オープン早々に新たな仕事を生み出す気鋭の職人!「鮨 西崎」

鮨西崎外観

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。

すしログ

『料理王国』に連載させて頂けることになり、ここのところ忙しくしています!

「本業」のブログ記事の更新が遅くて申し訳ありません!

さて、この度ご紹介する北沢の「鮨 西崎」さんは、人気店「鮨なんば」の系譜にありつつ、独自性の高い仕事を模索する俊英です。

友人から誘って頂き訪問したところ、期待以上の完成度。

オープン早々に人気が高まっているとお伺いしていましたが、その理由に心底納得しました。

 

有名店で確かな修行を積み、修行先とは異なる自己表現する職人…このような方が出てこられたのは、鮨好きとして心から嬉しく思います。

「鮨こじ」さんでも実感しましたが、「修行は必要」だと改めて感じる、素敵な握りでした。

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「鮨 西崎」の魅力とは

「鮨 西崎」さんのオープンは2022年の4月ですが、オープン早々に予約を取りづらくなっている状況です。

修行先二番手時代からのファンの方が訪問されているようで、食べログでは依然として3.1なのに絶大な人気を誇っています。

 

西崎 亮平親方は日比谷の「鮨 なんば 日比谷」に修行に入り、阿佐ヶ谷「しゅん輔(元・鮨なんば)」も含めて二番手を任されていた腕前。

「鮨なんば」さんは2011年のオープンで、僕は2014年に訪問しました。

ちなみに、訪問時点ではシャリの細かい温度調整を行っておられませんでした。

 

西崎親方の魅力は、確かな江戸前仕事の基礎を武器に、自己表現をされているところです。

酒肴は高級食材を控えめにしてコストを下げ、仕事で魅せる内容です。

そして、握りは12貫で、ほぼ全てに個性を感じました。

 

コースの設計も巧みで、意表を突くタネのストーリーテリングです。

鮨好きなら「こう来るか!」と感じる構成。

鮨に詳しくなくてもワクワクする内容だと感じます。

 

そして、シャリは赤酢と米酢の2刀流。

赤酢はヨコ井の與兵衛を用いつつ、與兵衛特有の香りをマスキングする良き調整です。

與兵衛の強い旨味に塩気を穏やかに利かせ、程良い甘味を付けています。

この甘味が與兵衛に対して奏功していると感じました。

唯一、酸味を強めに浸透させた小鰭のみアンバランスでしたが、全般的に味付けのみならず、温度や硬さも高度に安定しているため、今後が大いに楽しみなシャリです。

 

そして、もう一つの米酢のシャリもヨコ井との談。

酸味が立ち、こちらも塩気は穏やかで、やはり甘味が特徴的です。

 

赤酢と米酢の2刀流は各々の味が違いすぎると違和感を感じがちなので、良いバランスを取っておられると感じました。

また、握りの手数は少なく、一手一手がふんわりと軽やかである点も魅力です。

「鮨 西崎」のおまかせコースの詳細

「鮨 西崎」のおまかせについては、酒肴7〜8品、握り12貫+玉子焼きの構成です。

おまかせの価格は18,000円で、お酒の値付けは良心的。

30種類ほどのお酒を置いているとの事で、ハーフサイズで幾つか頂きました。

鮨西崎酒器

この度頂いた日本酒

  • アリサワ酒造、文佳人夏純吟(磨き50)
  • 酔鯨、クジララベル 純米吟醸 山田錦(磨き50)
  • あたごのまつ、本醸造 鮮烈辛口(磨き70)
  • 南方、超辛口純米 山田錦(磨き60)

前半と後半のギャップが大きく、素敵なご提案です。

 

なお、お皿が隆太窯の中里太亀氏のもので、個人的にテンションが上がりました。

親方は隆太窯に訪問され、特注でお願いされたそうです。

 

鮨西崎蛸

愛媛産で、雄。

西崎親方は蛸の性別を厳密に分けて使用されている。

しっとりと、ペースト的にほどけつつ、味付けが極控えめ。

よって、蛸の味が強い。

食感を柔らかく仕上げる場合、味付け(特に甘味)を強く付ける傾向があるため、この意識的な仕事には感心する。

酒肴の一品目から琴線に触れた次第である。

 

枝豆と湯葉の茶碗蒸し

鮨西崎枝豆と湯葉の茶碗蒸し

豆乳入りの茶碗蒸しと、センスが良い。

まず、頂く前から枝豆の香りが漂うところも夏らしい趣だ。

頂くと大豆の味がたっぷり。

口当たりが濃密である点も印象深い。

 

刺身

鮨西崎刺身

水蛸、スズキ、メカジキの湯霜。

スズキは脱水がしっかり目なので、香りと軽い酸味を楽しめる。

水蛸は包丁の入れ方が良く、食感がコリッとしつつも柔らかい。

アオリイカの時期に酒肴で水蛸の刺身を出すところは面白い。

鮨西崎刺身02

メカジキは脂があり湯霜で巧みに封印し、低温でサッパリと食べさせる。

単なる生の刺身ではなく、随所に鮨の仕事を入れるところが良い。

 

白バイ貝

鮨西崎白バイ貝

滋味深い白バイ貝で、軽い甘味をアクセント的に用いている。

肝は火入れが穏やかなので、とろりと滑らかだ。

 

鰯の酢漬け

鮨西崎鰯の酢漬け

鮨店で【南蛮漬け】とは意外だが、これは住宅地にあるため、ほっこりするものを入れたかったためだそう。

試みは奏功している。

ただ、家庭的な味付けではなく、出汁を用い、玉ねぎの食感を活用している点などはプロのそれだ。

 

カマスの炙り、蒸し鮑

鮨西崎カマスの炙り蒸し鮑

カマスの炙りは安定感ある上品な脂と香ばしい香り。

千葉県産のメガイアワビ。

みっちりとした身からゼラチン質が滲み、旨い。

 

鮟肝

鮨西崎鮟肝

これは白眉。

醤油をほぼ使わないため、凝固していない。

箸を運ぶとぷるっと揺らぎ、口に入れるととろろんととろける。

甘味はそこそこあるのに、嫌みが全く無い。

鮟肝自体の甘味と脂をピュアに楽しめる仕事だ。

聞くところによると、自ら血抜きをしているそうだ。

雑味が皆無。

しっかりと火を入れているのに低温調理のようにとろんとろんな仕事は、誰もの印象に残るだろう。

 

セロリの梅酢漬け

鮨西崎セロリの梅酢漬け

梅酢に鰹出汁を用いて漬けている。

 

ガリ

鮨西崎ガリ

辛みがビリッと広がり、旨味があるガリだ。

 

白烏賊

鮨西崎白烏賊

超極薄切りを5枚使用。

最初は予想に違わずとろけるような食感だが、きっちりと弾力もあり、食感のスパンがある点が魅力だ。

シャリの酸味の後に、白烏賊らしい強い甘味が広がり、塩気が味を引き締めて、甘味が再度強まる。

名刺代わりの一貫目で、切り付けによって味の変化を表現している点に親方の自負を感じる。

仕事で魅せよう、という姿勢が粋だ。

 

白海老

鮨西崎白海老

白烏賊に続き甘味系のタネ2連発ながら、白烏賊の後だと甲殻類の軽い香りを鮮明に楽しめる。

白海老は海老としては香りが弱いため、これは面白い発見だ。

昆布〆の塩梅は良く、昆布のグルタミン酸が浸透しすぎていない。

 

鮨西崎鱚

これも秀逸な仕事だ。

皮目と身の食感のコントラストが大きい。

皮はぶりっと、身はしっとり。

身にはお酢が程良く入っている。

そして、特筆すべき点は、鱚の香りを感じさせるところだ。

塩〆と酢〆を施しつつ、香りが良い。

鱚は鮨種としては結構難しいタネだ。

魅力を引き出すのが難しい。

よって、斬新な表現をされていて、感銘を覚えた次第。

 

鮨西崎鰹

千葉勝浦産。

身はもっちりしていて、旨味と酸味のバランスが良好。

タマネギを噛ませてアクセントに。

訪問時は鰹の状態が厳しかったそうだが、上質なモノを四分一で残してもらったそう。

信頼関係がある職人さんは消費者も信頼できる。

 

鮨西崎蛤

63℃の低温でじっくりと火入れし、強い味付けの漬け込みはしていない。

蛤の旨味と苦味、香りを鮮烈に感じさせる煮蛤だ。

低温でネガティブになり得るぶにゅっとした食感にもなっておらず、噛みしめる喜びがある。

蛤の煮汁の煮ツメを使用している。

 

鮨西崎鯵

食感と旨味が強めである点から出水産である事が分かる。

もっちり感とスッキリした脂は気品がある。

 

鮪赤身

鮨西崎鮪赤身

塩釜産、巻き網。

軽い漬けにしている。

香りが強く、旨味のある赤身だ。

漬けにより酸味は軽減している。

 

鮪中トロ

鮨西崎鮪中トロ

佐渡産、定置網。

シャリ温を上げて提供。

脂のコクがあって旨い中トロだ。

酸味と香りもふんわりと有るので、爽快な印象が夏。

尚、仲卸は樋長。

 

小鰭

鮨西崎小鰭

赤酢のアタックが非常に凄い。

これは小鰭の酢の浸透ゆえか。

かなりのインパクトだ。

シャリは酸味が強くなく、甘味が支える仕様なので、〆による影響が大きいと思われる。

 

黒鯥

鮨西崎黒鯥

藁で燻してる。

表面はカリッとしていて、ストレートなスモーキーフレーバーが広がる。

こちらは赤酢のシャリとタネのバランスが良好であった。

 

海胆

鮨西崎海胆

北海道、福島町のキタムラサキウニ。

ムラサキとしてはコクがあり、香りも良い。

 

穴子

鮨西崎穴子

煮ツメのパフォーマンスは系譜ゆえだろうか?

個人的には全く不要。

他が硬派なので浮くのではないだろうか(笑)

穴子自体を美味しく食べさせる量だけで十分である。

 

玉子焼き

鮨西崎玉子焼き

見た目はプリンっぽいが、帆立の風味がしっかりと利いている。

食感はとろり。

「鮨 西崎」の立地と雰囲気

鮨西崎外観

お店は外観からすると鮨店があるとは思えません。

入口の足元にある灯りが唯一の目印です。

鮨西崎灯り

自分は見落としていて、素通りしてしまいました。

 

しかも、お店は地下1階にあり、かなり意外性のあるアプローチです。

店内は決して広くはありませんが、狭く感じさせない効果的な造作で、寛げます。

「鮨 西崎」のお店情報と予約方法

予約についてはポケットコンシェルジュ経由で可能ですが、空席がめったに無い状況のようです。

毎月1日の10時から2ヶ月後の予約が開始されるため、そのタイミングで狙いつつ、空席通知を設定しておくのが得策かと思います。

 

鮨 西崎(食べログのリンク)

店名:鮨 西崎(すし  にしざき)

シャリの特徴:米酢と赤酢の2種類のシャリを併用(ともにヨコ井)。甘味を効果的に用い、温度管理や硬さは絶妙。

予算の目安:おまかせ18,000円

最寄駅:東北沢駅から500m、笹塚駅から700m、代々木上原駅から850m

TEL:非公開

住所:東京都世田谷区北沢5-3-12-B1F

営業時間:18:00〜 20:30〜

定休日:不定休

 

新たな表現に出会うと応援したくなる、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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