すしログ No. 126 しみづ@新橋

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こちらは1866年創業の浅草弁天山・美家古鮨の流れを汲む鶴八の系譜にある鮨店です。

美家古鮨で修業された師岡親方は神田に鶴八を開業し、鶴八で修業された石丸親方が新橋に新橋鶴八を開業。

そして、石丸親方のもとで11年間修業されたのが、こちらの清水邦浩親方となります。

系譜の通り、根底に流れるのは正統派江戸前の仕事。

ただ、清水氏は正統派の仕事に独自のアレンジを加えておられます。

「進化する古典」である点が最大の魅力なのではないかと感じます。

実際に、硬派な仕事はプロをも惹きつけており、地方の職人さんに「東京で好きな鮨店は?」と聞くと、非常に多くの方が「しみづ」だと答えられます。

また、信頼する鮨通の方々も、こちらを絶賛されており、長らく訪問したいと思っていた次第です。

 

そして、こちらの代名詞のように語られるものは、「赤酢のシャリ」。

今や赤酢のシャリが隆盛しておりますが、こちらのシャリは完成度が極めて高い。

赤酢をしっかり使用し、茶色の酢飯となっておりますが、酢の尖った酸味や香りは無く、握りを立て続けに頂いても、舌が疲れたり、飽きが来ることがありません。

硬さ、温度は安定しており、赤酢ながらに殆どのタネと調和します。

これはひとえに握りの技術によるものでしょう。

シャリの味付けのみならず、硬さ、温度、握りの加減によってタネと調和させる技こそ、「寿司」ではなく「鮨」、江戸前の握りの真髄だと感じます。

 

こちらは当日予約で伺えて、お好みで頂けて、昔ながらの落ち着く雰囲気。

その上、納得出来る明朗会計。

これぞ、在るべき姿の鮨店なのではないでしょうか?

11月に訪問した小笹寿しと並び、鮨店らしい鮨店に出会う事が出来て幸いです。

米酢のシャリならば小笹寿し、赤酢のシャリならばしみづと、今後足を運んで四季を楽しみたいと思います。

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先付

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ガリ

砂糖を使用しておらず、シャープな味わいで、食感も強い。

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肉厚だが、噛みしめると甘みが滲み出る。

厚切りにする事で赤酢のシャリにもたじろかず、白身の旨味を楽しめる。

ただ、シャリとのバランスで考えると米酢である小笹寿しが流石に上か。

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墨烏賊

かなり無骨な食感でハード!

しかし、噛みしめていると最後にとろりと烏賊の旨味と香りが漂う。

非常に満足度の高い墨烏賊。

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針魚

昆布で強めに〆て、食感と香りを凝縮している。

タネが舌に触れた瞬間に旨味を感じるような仕事。

こう言った針魚は結構珍しいです。

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小鰭

かなり強めの〆だが身がやつれておらず、旨い。

塩気は思いのほか低く、香りは爽やか。

皮目の香りと身の旨味が混然一体となり、強めの〆加減の小鰭としては非常に印象深い味わい。

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これも強めに〆つつ、鯖の旨味をダイレクトに突きつける。

噛みしめると、下の上に脂のコアがどんと鎮座する。

素晴らしい塩梅の〆。

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塩気が強く、香りたっぷりで、程良い硬さ。

蛸らしい歯応えを残した食感。

柔らかくするために使用したものは大根か? 

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赤貝

噛みしめると繊細な粒子の旨味が瑞々しく弾け、良質なモノである事を実感。

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小柱軍艦

小柱の甘みがシャリと合う。

シャリが多く腰高だが、そこまで気にならず。

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鮪赤身

鉄の香り、甘み共に強い。シャリとの相性も抜群。 

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脂と赤酢がぴったり合っており、鰤の香りと余韻が心地良い。

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海老

素晴らしい火入れで見事。

甘みがドスンと伝わり、海老味噌の旨味が絡まる。

繊維質はゴワつかず、ほろほろとほどけゆく。

茹で上げた後、暫く身の内の余熱で火を入れている模様。

茹で上げの海老としては、今年頂いた中でもトップレヴェルだった。

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海胆軍艦

こちらも小柱と同様に腰高なシャリだが、口の中での弾け加減が良い。

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レアな火入れの後、じっくりと漬け込んでいる。

柔らかい身を噛みしめる快感がある。

煮ツメは濃厚で、シャリの酸味がピッタリと合致。

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穴子

極めて柔らかい穴子。

下味もしっかり付いており、塩で頂いても濃厚な味わい。

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干瓢巻き

かなり甘めで、比較的柔らかめの干瓢。

塩気がシャープに伝わる。

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玉子

食感がしっかりしており、海老の香りは控えめ。

赤酢のシャリと合わせても甘みが浮いておらず良き〆となった。

 

以上、15貫と巻物1本を頂き、芯の通った仕事を実感しました。

現在の若手の鮨のように華美や端正さはないものの、圧倒的な存在感のある握り。

ゆえに、若手の職人さんも敬愛し、勉強に訪問されているのかもしれません。

ちなみに、上記に加えて日本酒(日高見の純米?)を2合頂き、14,600円。

タネのクオリティのみならず、唯一無二の硬派な仕事を考慮すると、非常にリーズナブルな価格だと感じます。

新橋に来る理由が見つかりました。

 

店名:新橋しみづ

シャリの特徴:赤酢を強く利かせつつタネとのバランスが良いシャリ。温度、硬さは安定。

予算の目安:10,000円~15,000円

最寄駅:新橋駅から200m

TEL:03-6264-5855

住所:東京都港区新橋2-15-10

営業時間:昼11:30~13:00、夜17:00~21:30

定休日:月曜

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