
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
この度、渋谷サクラステージにある「熟成鮨 万 ~離れ~」にお伺いしました。
舌を信頼する友人が何度か訪問していて、「非常に良い」との談で気になっていた次第です。


結果的に、友人の意見に納得。
アクセス至便かつ予約不要なのに超個性的な熟成鮨をおまかせでいただけて、しかも3,300円からとは、なんらかのバグです笑
東京って凄い!と感じました。
ふらっと寄れて、自分の気分でサクッと楽しめるなんて、江戸時代の鮨のよう。
このような攻めている業態でクオリティの高い鮨店が、商業ビルに出店される状況は実に素晴らしいと思います。
一昔前だと予定調和的な資本系のお店が入っていたはずなので、ちゃんとしたお店が入る時代になって良かったな、とも。

タップできる目次

「熟成鮨 万 ~離れ~」は2024年7月に渋谷サクラステージにオープンしました。
上記写真のような立地(ほぼオープンスペース)で、本格的な江戸前鮨、しかも熟成鮨を出されているのは凄すぎです。
こちらは店名のとおり「熟成鮨 万」さんの支店で、看板を任されている職人さんは岸本修弥さん。
「万」に勤めるだけあり、この方もなかなか狂気的な探求を行っている変態職人です(笑)
※全て褒め言葉です

いただいた感想としては、熟成の面白さをカジュアルに楽しませてくれる点が素晴らしく、しかも「熟成」と言っても塩梅を見極めて緩急を付けられているのが良いと感じました。
「熟成」を強調するお店の中には緩急を付けられず、全体的に旨味が強いため途中で失速するお店も存在します。
また、「熟成」と言う技に溺れて、魚の味をゴールから設計できず、何がやりたいのかわからないお店や、魚のネガティブな臭いを出して本末転倒に陥っているお店もあります。
特にオフフレーバーについては、ちょっとでも漂えば地獄。
こちらには、それら熟成仕事の諸刃の剣となりかねない負の要素が無く、終始楽しくいただきました。

「熟成」に限らず、魚で最も重要なのは香りです。
味の面、特に脂の甘味を重視する時代的な流れがありますが、じっくりと魚を味わうならば香りが一番奥深い要素です。
そこを押さえて熟成をされているのは、平凡なお店とは異なり、流石長年熟成に向き合ってこられた白山親方だと感じました。
カジュアルな業態の「離れ」であっても、過去に比べて確かな飛躍を実感した次第です。

こちらのシャリは「熟成鮨 万」と同じく硬めの方向性です。
それでいてアルデンテのヒット率が低く、α化しやすい炊き加減です。
これは「ギリギリのラインを巧みに攻めている」と感じました。
そして、酸味は割と強めなので、旨味を強化した熟成の仕事に合います。
硬めで、酸味が強めながら、お米の甘味をバッチリ感じられる点は良いバランスです。
昨今のシャリのトレンドは5年前よりも少し柔らかめにシフトしているので、こちらの硬さは良い塩梅で攻めていると思います。

フジマックのスチコンで温度調整をされていて驚きです。
1人前のおきまりは5貫3,300円と言うリーズナブルな価格設定。
さらに追加のタネも豊富なので、かなり自由度が高い楽しみ方が出来ます。

僕らは今回、最初から「10貫で組み立てていただき、その後、追加します」とお願いしました。
結果的に14貫+巻物2種類をいただきました。

お酒については他のお店で見たことがない「笑顔百薬」がオススメ。
簡単なテイスティングノートは以下の通りです。
甘味と微発泡が特徴的な低アルコール酒。香りは上品な吟醸香が爽やかに漂い、ふんわりとした苦味がじんわりと広がる。爽やかでありつつ味わい深く、余韻に伸びがあるところが特長で、軽くとも味わい深い。

タンク違いもありました(笑)

ことのほか味が違うので、面白いです。


また、二番手の女性職人さんはソムリエ資格を有する方なので、ワインを巧みにご提案してくださります。
小鰭に赤ワインを提案いただき、面白かった!

辛味と酸味がバシッと効いていて、力強い味わいのガリ。旨味が強化された熟成鮨にアジャストされているガリだ。

1~2週間ほどの熟成。長期間であるが、ねっちり、むっちりした食感がある。熟成させつつ身の反発があり、鮃の旨味と酸味が高まる変化のある味わいだ。

5日。旨味が強く、シャリの酸味と相まってどことなく関西鮓を思わせる方向性だ。「進化系小鯛の雀鮨」と感じた。これを昆布無しで表現されているのは、素晴らしい。春子は鮨職人の技量とセンスを色濃く表すタネで、水ッぽかったり、昆布〆の昆布の香りと旨味が強すぎたりすると、人気店であろうがなかろうがまだまだである。

ワタを脱水して炭で焼き付けたものとネギを合わせたペーストを噛ませている。、鰯の脂と香りが魅力的!4日熟成してから朝〆たものを使用されていて、プロセスに独自の方法論がある点が興味深い。

32日熟成!柔らかいテクスチャーで、脂だけでなく旨い。これは面白い鰆の表現だ。熟成鮨ならでは。

濃密な甘味で、ねっちり感がありつつ、軽くぷりっとしている。5日熟成との談。ボタンエビらしい魅力を壊していない点に魅力あり。

10日。軽くぷっちりしてトロトロととろける。香ばしさが強く、炙りの香ばしさだけでなく熟成による良い香りが込み上げてくるのが面白い。

とろける身から旨味と酸味がこみ上げる。

低温調理して漬けるという変則的な仕事。甘味が強く、食感や香りも良い。

9日。産地は長崎。むっちりしていて食感が面白い。そして、旨味が強烈だ。

肝はスチコンで脂を活性化させてから使用。海苔とシャリの相性が良い。身は細切りで軍艦ながら一体感がある。肝も熟成させていて、4~5日がベストだそう。

57日!強烈な旨味で味蕾がビリビリするほど。そして、香りがこみ上げる。この香りはなんだろう…?と思いを巡らせたところ、生ハム的だと感じた。余韻も長い。

国産のサーモン。身はみっちりしていて、脂と旨味が引き出されている。これは生のサーモンの鮨よりも美味しく、熟成を適用するポテンシャルを提示している。

1週間熟成から10%の塩酢で〆て1日寝かせているそう。中に柚子を噛ませている。皮目も身も食感が独特だ。少し鰯らしい印象を与える。しかし、小鰭の香りがふわりと広がる。

熟成させているので煮キリを瞬時に染み込むそうで、即席の漬けとなる。旨味と乳製品的なニュアンスが面白い。その後に鰤の香りがこみ上げる。

先ほどの仕立ての帆立を巻物にするとはユニーク。甘味と海苔の香りが実に合う。

トロタクで沢庵を自家製しているとは見上げた心意気である。初めて出会ったかもしれない。発酵による旨味、塩味とカリッとした食感があり、美味。どうしても買ってきた「黄色い沢庵」は味わいも香りもジャンキーなので、ここまで徹底されると惚れ惚れする。実は、一流店や人気店でも「黄色い沢庵」を使用している職人さんを見ると「何故なんだろう??」と無頓着っぷりを不思議に思っていた次第である。魚以外も気にかけた方が絶対に良い。

熟成魚の味噌汁。甘味がしっかり!麦味噌と八丁味噌を併用されているそうだ。麦味噌のコクと八丁味噌の酸味がキリッと調和。熟成魚の骨周りを使用しつつ、ネガティブな臭いはゼロであった。

粒子がサツマイモっぽくキャラメル的なフレイバーもある。ふんわりとセドリックカサノヴァ(オリーブオイル)の香りが広がり、なんとも優雅だ。
「熟成鮨 万 ~離れ~」については、カジュアルな業態なので予約なしでの訪問となります。
混んでいた場合、時間をつぶせる場所は近くにたくさんあるので、問題なしです。
店名:熟成鮨 万 ~離れ~(じゅくせいずし よろず はなれ)
予算の目安:5貫3,300円~
TEL:03-6427-0462
住所:東京都渋谷区桜丘1-4 サクラステージ 4F
最寄駅:渋谷駅から300m
営業時間:11:00~14:00(L.O.13:30)、17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:水曜
「熟成鮨 万」本店

面白い業態の鮨店に鮨業界の将来にワクワクする、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事のリンクには広告がふくまれています。