こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
今回ご紹介する鮨利﨑(すしりざき)さんは、鮨愛好家の読者さまにお誘い頂き、初めて訪問しました。
マニアックなブログを運営していると、マニアックな読者さんから連絡が入るのが役得です(笑)
すしログ
さて、こちらのお店は訪問前に少しググってみたところ、「親方が2人いて、タッグで握る」と言う情報が…
なんてパリピ感が漂うお店だ…と戦々恐々しながら訪問したのですが、実は違いました。
現在はオープン時とは異なる方向性でお店をされていて、今後も意欲的に展開される予定があるそうなので、目が離せない一軒かと思います。
鮨利﨑(すしりざき)さんの「2人の親方」について
上述の通り、もともとは親方が2人いる一風変わったお店で、サイトによっては「ダブル大将」などと記載されています。
これを見た時は、「ま、まさか(僕が苦手な)エンタメ性重視のお店か…?」と言う不安を抱いたのですが、実際には2つの意味で異なりました。
まず、現在は親方は1人でした。
そして、エンタメ性重視ではなく、真面目な鮨店でした。
さて、現在つけ場で握っておられる親方の名は、毛利太祐さん。
15歳から自由が丘の「鮨 幸」で修業を開始された叩き上げの職人で、その後、中目黒の人気店「鮨 尚充」でも修行されたそうです。
ともに芸能人とのエンカウント率が高い鮨店として知られますが、実際はどうなのでしょうか(笑)
ちなみに、もう一人の親方は塩崎竜大さん。
塩崎さんは目黒の「鮨りんだ」で修行された方で、コロナをきっかけに経営に回ることにされたそうです。
お店は2019年7月のオープンで、当初から鮨好きの評判が良いお店でした。
鮨利碕の立地と雰囲気
場所は、いわゆる「奥渋谷」と呼ばれる非常に落ち着いた一角にあります。
千代田線・代々木公園駅からも歩ける立地です(と言うか最寄り駅)。
暖簾をくぐると控えめな照明のもとに総ヒノキのL字カウンターが現れます。
住宅地にありながら、非常に洗練された雰囲気の鮨店。
カウンターは10席で、握りは下駄(鮨皿)ではなく、つけ台に直接置くスタイルです。
つけ台には照明がバシッと当たり、写真映えが良く、このあたりはモダンな鮨店だと感心しました。
店内の雰囲気はその時のお客さん次第かもしれませんが、鮨店としては結構にぎやかな印象です(決してうるさくはありません)。
鮨利碕のシャリと仕事について
利碕さんのシャリは、美味しいだけでなく、非常に変わっています。
何故こんなに個性的なのだろう?と思って食べていましたが、お話を聞いて理由に納得しました。
即ち、使用するお米もお酢も個性的だからです。
お米は「いくよちゃん(東北194号)」と「笑みの絆(えみのきずな)」のブレンド。
お酢はヨコ井の「琥珀」と「白寿」に、村山酒造の「千鳥酢」をブレンド。
「いくよちゃん(東北194号)」は名前が昭和のテイストですが、比較的最近生み出された新種です。
「ササニシキ」と「ひとめぼれ」の掛け合わせ。
個人的に「酢飯好適米」の一つだと感じている「ササニシキ」は耐冷性・耐病性に弱いため、作付け面積が大きく減少しました。
そこで、ササニシキの味を継承しつつ、耐冷性・耐病性を備えるお米として生み出されたのが「いくよちゃん(東北194号)」です。
「上品な甘みとアッサリした味わいで、粘度が低く、米粒がほぐれやすく、冷めても硬くなりにくい」性質があると思います。
そして、「笑みの絆」は「寿司専用米」と呼ばれる、公式の「酢飯好適米」です。
こちらも「粘度が強すぎず、米粒の表面は滑らかでほぐれやすく、アッサリした味わいで、酢に馴染む」と言う性質を持ちます。
お酢は、赤酢と米酢のブレンドに妙があります。
酸味を利かせ、ぱらりとほどけるお米で。米粒の輪郭が独特だと感じました。
現在でもキリリと酸味が利いていますが、以前に比べるとお酢の量を80%に減らしたそうです。
さらに米酢のブレンド比を高めているそうで、試行錯誤して今の味に行きついた模様。
しかし、親方の口ぶりからすると、シャリの進化は更に続きそうでした。
親方の意欲を見て、僕が愛する「富士酢」をオススメしました(笑)
赤酢と米酢のブレンドは現在のトレンドですが、毛利さんのシャリはしっかりと個性を感じさせてくれる上に、最後まで美味しく頂けるシャリだと感じました。
硬さや温度にも気を払われていて、シャリの交換タイミングも計算されている点が好ましいです。
同時に、タネにシャリの温度を合わせるなど、モダンな仕事も採り入れているので、工夫を感じます。
タネは全体的に旨味や脂の含有量が多いものが多く、このあたりは現在の流行りを押さえている内容だと感じました。
たまたまかもしれませんが、淡い魚味の白身魚や貝類よりも、脂の乗った鰆や黒ムツ、赤貝などが主体なので、全体的にパワフルな味わいの構成だと思います。
これでシャリの味が強すぎると舌が疲れかねませんが、上記の通りシャリの完成度が高いので、最後まで美味しく頂ける鮨に仕上げておられます。
個人的には、淡い味わいの白身魚も食べたいですが(笑)
鮨利碕のおまかせコースの詳細(頂いたもの)
この度頂いたお酒
大洋酒造・無想辛口純米、而今・特別純米にごりざけ、あぶくま・純米吟醸夢の香、金冠喜久泉・吟醸、楯野川・無我ブラウンボトル純米大吟醸、大信州・手の内純米吟醸
鰹
壱岐産。爽やかな味付けのおろしがたっぷり。
鰹の香りを楽しむならば、もう少し量を減らしても良いかと!
煮蛸、蒸し鮑
煮蛸は食感が強めで噛みごたえがあり、割と珍しい食感の仕上げ。
味付けは甘み強め。
鮑は大変柔らかく、それでいて食感を楽しませてくれ、香りも良い。
ガリ
酸味がしっかり利いていて、甘みは弱く、薄切りでありつつじゃくじゃくした食感が魅力のガリ。
鰆
スモークを掛けていて、繊維はホロッとほどける。
燻香で食欲を刺激し、シャリの美味しさを伝える名刺代わりの一貫目。
墨烏賊
パツパツした食感を優先する仕事で個人的に好きな食感。
鮟肝
定番の余市産。プリン的な食感と甘みのあるあんきも
真鱈の白子
香ばしく焼いていて、味付けはかなり控え目。
シャリと混ぜると香りと味覚の一体感が非常に高い。
濃密な味でありながら全くクドくない。
熱源は炭火か?
鰯
脂が乗った鰯をしっかりと〆ていて、良い〆加減。
赤貝
旨味は程々だが、香りの良い赤貝。
シャリの温度を上げて合わせられ、赤貝に高温シャリをぶつけるとは、斬新で面白く感じた。
黒ムツ
皮を炙り、かなり香ばしさを与えている。
脂が乗っている魚なので、温かいシャリが合う。
香箱蟹の茶碗蒸し
恐らく「ほぐし身の香箱蟹は色々なお店で食べられるから」との思いで作られたのか、嬉しい味わいの一品。
香箱蟹をしっかりと楽しめる上、茶碗蒸しは非常に滑らかで一体感がある。
鮪
仲卸は樋長で、魚体は大間の176.4kg延縄。
鮪赤身(血合いギシ?)
旨味が強めで、酸味と香りは穏やかな赤身。
鮪大トロ
シャリとねっちり乳化する。
腹カミの大トロで、脂は過多でなく、酸味と香りが有り、旨味もしっかり。
鯖
しっとりと〆つつ、お酢は浸透させ酸味がしっかりしていてジューシィ。
臭味が皆無なので〆鯖に苦手意識を持つ人のイメージを変えて、驚きを与えてくれるだろう。
白板昆布は甘みよりも酸味を利かせていて上品。
ボタンエビ
細かく包丁を入れて口どけを良くしてシャリとの調和も高める仕事。
食感を意識した包丁の扱いが魅力。
実際にシャリと見事に一体化して、上質な甘みを楽しませてくれる。
バフン海胆軍艦
見た目が美しく、海胆もとろっと甘い。
いくら
敢えて軍艦で出さず、いくらの味わいをストレートに表現。
皮の食感と濃密な卵液に、手ほぐしである事が分かる。
赤出汁
しっかりと濃い味の赤出汁が気持ちを引き締めてくれる。
穴子
非常にトロトロの煮加減で、甘みを付け、対馬(恐らく)の穴子らしい脂を全面に出す仕事。
玉子
カステラ玉子ではなく出汁巻きである理由は、「昔ながらの鮨の楽しませ方だと、出汁巻きがベターだと思う。出汁巻きが好きなんですよ」との事。
僕はカステラ原理主義ではないので、全体の流れの中で職人さんが選択すれば良い事だと思う。
トロたく巻
大変贅沢なトロたく。
鯖 追加
追加のタネは鯖のみだったので、鯖でキリリと締める。
お酒を一人3合頂き、1貫追加してお会計は約2万円。
コストパフォーマンスの高さから人気の理由に納得です。
シャリが印象的でしたので、これから更に伸びる職人さんだと思います。
店舗情報と予約方法
予約については各種WEB予約に対応されています。
店名:鮨 利﨑(すし りざき)
シャリの特徴:独特のお米2種類、お酢3種類をブレンドし、硬さ・温度まで気を払われた万能タイプの赤酢のシャリ。
予算の目安:おまかせ¥16,500(税込)〜
電話番号:03-5738-8293
住所:東京都渋谷区神山町8-2
最寄駅:代々木公園駅から600m、渋谷駅から1,000m
営業時間:【第1部】18:00~20:30、【第2部】20:30~23:00
定休日:日曜、祝日
※前日までの完全予約制で、日曜・祝日は3日前までに
http://tabelog.com/btb/28840fd8f29900dddcb9676f5b661b6c605bec994374e9f0cf57c5b6fc6a67fb/
本記事のリンクには広告がふくまれています。