こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
さて、コロナ初期の2020年に初めて訪問した「たな華」さん。
時を置いて2022年8月に訪問したところ、更に腕を上げられていました。
田中親方の表情には自信がみなぎっていて、職人として良い顔つきになっておられます。
やはり鮨職人はさらしの商売。
顔つきも味の一つです。
ちなみに、「たな華」さんに初めてお伺いした時、以下のように感じました。
鮨の食べ歩きをしていると、心から驚かされ、興奮を抱く刻(とき)があります。単純に「美味しかった!」というだけでなく、まだ一般的に知られていない鮨店を開拓した時は、お店を出て数時間は興奮が止みません。
今回の「鮨たな華」さんには、本当に心から驚きました。
訪問時の食べログのスコアは3.07で、レビューは4件のみで、2018年以降書かれていませんでした。しかし、僕は「ゆくゆくは札幌を代表する鮨店になる事が間違い無い」と確信しました。
そして、今回訪問して確信を強めました。
「すしログアワード2021」で、その年の「最優秀若手職人さん」に選出させて頂いたのは、間違いなかった。
すしログ
無名時代にも攻めの姿勢を貫いた田中親方の勝利です。
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「鮨たな華」の魅力とは?
「鮨たな華」さんは非常に個性的なお店で、おまかせコースは握りのみで構成されます。
使用するシャリは2種類ですが、それぞれお酢のブレンドを行わず、1種類のお酢で巧みに仕上げます。
しかも、砂糖を用いずにお米の甘味を表現する手法が秀逸です。
順に魅力をご紹介していきます。
親方・田中康智さんについて
「鮨たな華」の親方の名前は、田中 康智さん。
1986年生まれで、16歳で鮨の世界に入った叩き上げの鮨職人です。
初回の記事執筆時点で18年のキャリアを持つお若い職人さんでしたが、おごったところは全く無く、非常に謙虚で、しかも鮨愛がほとばしる好漢でした。
修業は札幌市内の鮨店だったそうですが、途中東京でも修行された模様。
そして、15年の修業を経て独立され、2017年5月に「鮨 たな華」をオープンされました。
「鮨たな華」の鮨・コースの特徴
若手の職人さんですが、価格設定と提供方法は強気です(笑)
コースは【おまかせ】22,000円のみ!
しかも、初訪問時の2020年頃に、【握りのみのおまかせ】にしたそうです。
攻め抜いています。
訪問前は如何せん情報が少ないので、失礼ながら失敗しないか不安でした。
しかし、結果的には良い意味で大きく裏切られる事になりました。
同じ価格帯であっても、東京の鮨バブルで量産されているお店とは別次元です。
しかし、お値段を出した上で特筆したいのが、田中親方の食材や調味料へのスタンス。
田中親方は謙虚で控えめな方ですが、使用する食材については細部への配慮(こだわり)が抜きんでていて、一品一品のクオリティが圧巻です。
例えば、お米は一般販売されていないお米を使用されていて、煮キリは5種類を用意。
使用する醤油は糸島のミツル醤油。
そして、使用するタネは、ご自身の眼と舌で選び抜かれた一級品。
仲卸に言われるがままに皆と同じ産地のタネを揃える職人さんとは趣を異にします。
お話を伺い、「自分が食べたいと思う食材以外、絶対に仕入れない」とのお言葉は心に染みました。
実際に頂くことで、食材を仕入れる時から「この食材を自分ならどう活かせるか」「お客さんに喜んでもらおう」と考えておられるのが、伝わってきます。
残念なことに、食好きならご存知の通り、地方の一級品の多くは地元には流れません。
世間では「〇〇ならば産地の△△に行けば美味しいはず!」(例えば「大間の鮪を食べに大間に行こう」など)と思われますが、現実はそうではなく、美味しい一級品はほぼ全て東京(豊洲市場)に流れてしまいます。
これは各地の職人が頭を悩ませるところで、良い食材を仕入れるための選択肢は2つ。
豊洲市場から「買い戻す」か、生産者と直接取引するか、になります。
田中親方は多くの食材を漁師から直接仕入れる事で、東京の一流店を超えるタネを揃えておられます。
田中親方の仕事について
前述の通り【おまかせ】は基本的に握りのみで構成されます。
昔の写真を見ると酒肴も出されていますが、個人的に握りのみの方が田中親方らしいと感じました。
それでいて、「飲める鮨」としても優秀で、途中に大阪鮓(押し寿司)も出されるところも素敵です。
酒肴を出さないから、仕事の誤魔化しは効かない。
その結果、独自性の高い親方ならではな仕事が生み出されています。
初回訪問時に印象深い仕事を幾つか楽しませて頂きましたが、再訪時には過去の仕事をバージョンアップさせつつ、新しい仕事も開発されていました。
詳細は後述しますが、個々の仕事が堂に入っていて、時間と労力をかけて試行錯誤された事が明白です。
また、置いている日本酒が「王禄」のみと言う点にも、男気を感じます。
「王祿」は全国で限られた特約店にしか流れない日本酒で、それらの酒屋はマイナス5℃以下の冷蔵庫が必須です。
そして、田中親方も「王祿」を置くために専用の冷蔵庫を導入されたとのこと。
徹底しています。
「鮨たな華」のシャリについて
田中親方はお酢をブレンドせずにシャリを切っています。
これにはビックリされる読者の方も多いでしょう。
酢飯におけるお酢のブレンドは「定石」であり、自身もブレンドで更に美味しくなる事を調理実験によって確認しました。
しかし、田中親方は敢えてブレンドされません。
「美味しく丹念に作られたお酢ならば、その魅力をシンプルに引き出したい」と言う想いが込められているため。
結果的に選んだお酢は、横井醸造(ヨコ井)の與兵衛と、飯尾醸造の富士酢プレミアムです。
前者は言わずと知れたヨコ井の看板商品で、東京の人気店がこぞって使用してブレイクした、赤酢の定番中の定番。
ただ、旨味・酸味・香り・色の全てが強いので、個人的に「劇薬」と呼んでいる赤酢です。
一番有名な赤酢ですが、使いこなすにはセンスが求められる危険なお酢だと考えます。
なので、同じヨコ井の金将や珠玉や、他のメーカーの米酢をブレンドする事が一般的です。
それにも関わらず、田中親方は砂糖さえ用いず、お米、塩、酢でシャリを切り、巧くまとめる事に成功しています。
これは、鮨好きであれば奇跡と思う程のシャリ切りの腕前です。
もの凄いバランスで、再訪時にも驚きました。
そして、飯尾醸造の富士酢プレミアムについては、2020年6月から使い始めたそうです。
米酢の概念を変えるほどに美味しい米酢なので、赤酢のシャリと併用する事に決めたそうですが、その感想には僕も心底納得します。
飯尾醸造のお酢は本当に美味しく、僕も飲み比べをして驚いたものです。
さらに、お酢の勉強をすべく、宮津に足を運んで、製法の凄さに感銘を覚えました。
田中親方の富士酢プレミアムのシャリは、「劇薬」與兵衛のシャリとも双璧を成す美味しいシャリです。
そして、シャリの味わいとしてはお酢のそれぞれの個性を引き出しつつ、味覚を合わせています。
粒は大きめでありながら粘度が弱く、甘みが強いお米。
北海道のお米や、つや姫、ササニシキとは異なる味わいだったので品種を尋ねてみたところ、コシヒカリとの事でした。
新潟県糸魚川の農家と直接契約をされていて、一般流通してしないお米だそうです。
美味しさに加えて、粒が揃ったお米を求めて行きついたとの談。
このお米のお陰で、単一のお酢、まして與兵衛でシャリ切りしても美味しくなるのだと実感します。
田中親方は、電解水素水で洗米し、糠を除去し、雑味を排除し、巧みな炊飯を行うことでお米の甘味を引き出しています。
総括として、田中親方の仕事は唯一無二。
他の職人さんの模倣をせず、自己を貫きながら改良できる潔さは美点です。
今後、田中親方がどのように己の仕事進歩させるのか、心底楽しみです。
「鮨たな華」のおまかせコースの詳細
それでは、「鮨たな華」さんで実際に頂いた内容をご紹介します。
2022年9月に訪問した際の記事
2022年9月に訪問した際に頂いたものは、下記のとおりです。
この度頂いたお酒
- 王祿 出雲麹屋 純米にごり 2018BY
- 王祿 純米吟醸 直汲み R01BY
- 王祿 純米大吟醸 舟掛け三十五 2019BY
活性にごりの上澄み部分を提供。
軽いメロン香がふんわりと漂い、特に青いメロン風の香りで爽やか。
更に、微発泡が加わり、爽快感を強める。
しかし、決して媚びず、旨味がしっかりしているところが王禄だ!
爽やかさに旨味。
マイナス5℃の超低温でも旨い、美酒。
熟成によるキノコを思わせる土のニュアンスに加えて、熟したバナナ、豊潤なお米のような香りが加わり、中盤にもってこい。
鮪4連発の前に素敵な提案であった。
純米大吟醸の斗瓶取り!
しかし、渋い味わいだ。
渋いけれど甘味と旨味が炸裂し、華やかさをふんわりと漂わせつつフィニッシュ。
「王禄」のみでも効果的なペアリングを行える事を学ばせて頂いた。
ガリ
程よい甘味に辛味がスッキリと効いているため、キリリとした印象。
そして、旨味がある。
食感はシャクシャクと強い。
星鰈
噛みしめるとみっちりとした反発の後に、旨味がとろりと広がり、シャリの旨味に合致する。
4キロのモノを10日ほど熟成させている。
しかも、サク漬けを行っている点が非常に珍しい!
超個性的な熟成仕事が名刺代わりの一貫目とは面白い(笑)
煮帆立
帆立の紐出汁の煮汁で漬け込んでいる。
生とは全く違う美味しさを楽しませてくれる。
甘味の広がりと香りのふんわりどっしり感が堪らない。
精度の高い火入れと漬けによって演出されている。
なまめかしい食感と軽い凝縮感をほんのりと感じさせる食感が実に良い。
猿払の漁師が直接持ってきてくれるそうだ…凄い(すすきのまで340kmある)。
キチジ
標準和名キンキ。
脂が濃密で、きめ細かく溶けてゆく。
サク漬けにして炙る仕事だが、炙るのは直前ではなく、炙ってから寝かせている。
これによって、煮キリのニュアンスが変わっている。
脂と香ばしさはいかにも寝かせによるものだが、ぷっつりとした食感もある点が魅力だ。
これでトロトロ食感だと、魅力を8割ほど失うだろう。
鮪の尾の身の手巻き
戸井産、延縄163キロ。
鮪よりも海苔に感動する。
クオリティが非常に高く、食感もバリッと弾け、長い間パリパリ食感が続く!!
もちろん香りも抜群で、旨味も凄い。
佐賀県産の自然な青飛びとの事だ。
ヨコ井與兵衛の使い方も巧みで、旨味とコクを活かしている。
お米の甘味も合致する。
鮪の使い方にしても、脂が過多な部位を用いるのではなく、鮪らしさを伝えるところも良し。
鮪の手巻きとしては突出して美味しく、人生トップクラスの美味しい手巻きだ。
鮪赤身
旨味が強い赤身で、酸味は穏やか。
香りは上品だが、ふんわりと血の香りがこみ上げてくるのが嬉しい。
そして、余韻として残る。
これも與兵衛の旨味とお米の甘味が味を支えている。
鮪中トロ
酸味があり、とろけるような柔らかさの中トロだ。
脂がありつつも、酸味が上品に引き締める。
鮪の餌はイカよりも青魚(回遊魚)主体のようだ。
余韻は軽いが、頂いている時は実に中トロらしい。
赤身優先の中トロ。
鮪大トロ
香りが強い大トロ。
そして、大トロらしい脂が広がるが、酸味が大トロとしては強めで、食後感が軽やか。
香りが余韻として残る。
これも柔らかい。
小鰭
駿河湾。
なまめかしい皮の口当たりから始まり、身はしっとり、とろりとほどけ、その課程で脂と甘味、香りを広げてゆく。
小鰭らしさを十分伝えながら、食感と小鰭の甘味の面で個性を感じさせる仕事だ。
シャリのお酢に合わせて飯尾醸造の富士酢プレミアムで〆ている点も抜かり無い。
ちなみに、前回の訪問時に光物の握りが無かったため、今回は訪問前にお願いしておいた。
やはり鮨タネの花形は光物だ。
光物が無くては画竜点睛を欠く。
鯖の押し寿司 ver.2
こちらも富士酢プレミアム〆。
脂が強くとも、〆とシャリの酸味によってバランシングされ、海苔がアクセントになる。
刻み干瓢入りである点が、より大阪鮓感を高める。
ホッカイシマエビ
田中親方が考える「車海老に勝てる唯一の海老」。
甘味と香りが強く、香りに良い意味での渋さがある点が魅力だ。
繊維がしっとり、ホロホロほどけるのは車海老には無い魅力!
甘過ぎない香りは松の木を思わせ、香りが持ち味だと実感する。
前回のボタンエビよりも個性を打ち出すことに成功している。
いくら軍艦
半熟に火入れしている。
濃密でトロットロ。
きめ細かくとろけ、力強い。
鰹出汁の醤油が巧く馴染んでいるのは、火入れのお陰だろう。
鰹醤油が前面に来るお店も多いが、田中親方のいくらは様々な味わいが時間差で押し寄せてくる!
このいくらの仕事は、新潟の郷土料理から着想を得たそうだ。
これは、個人的に嬉しい。
前回頂いた際に「バッチリ美味しいが、個性的な仕事が多い職人さんなので、変化球を求めてしまうのは我儘か?」と感じたためだ。
紫海胆軍艦
余市産。
実に香りが良く、とにかく濃密で甘美な香り。
そして海胆らしい香りも高まる。
甘味も強い。
そして、キリッと引き締めるような一面も漂わせてフィニッシュ。
香りも味も凝縮感が強い。
なお、余市の漁期は終わっていたので、今年最後であった。
田中親方は「脱水氷感熟成」と言う独自の仕事を用いるため、時間差で取り置いて頂けた次第である。
エゾバフン海胆軍艦
さらに濃密な味わいを堪能。
最早これは最高に美味い玉子かけご飯に海胆を混ぜたような味わいだ。
しかし、香りもあり、海胆の香ばしさも楽しませてくれる点が魅力である。
穴子
加温は古典的な笹の葉炙りで。
面白いことに、笹を焦がしてスモーキーフレーバーを強く加えている点だ。
穴子は色黒ながら味付けは上品。
ホロッ、しっとりとほどけつつ、穴子の香りも楽しませる。
そして、スモーキーフレーバーとも調和する。
煮ツメはコクがあり、甘味が上品だ。
穴子の味と笹の葉炙りの仕事を強く伝える一貫。
椀
前回はキチジの出汁も合わせていたが、今回は蜆のみのようだ。
ストレートにシジミのコハク酸を感じ、海の味を伝える調味を行っている。
玉子
しっとり感に加えて、香ばしさと甘味の程良さが持ち味だ。
舌と喉に感じる甘味が上品。
芋の使い方も良い。
しっとり感に加えて、じゅわっと感やふわっと感も全て表現している。
2020年12月に初訪問した際の記事
2020年12月に初訪問した際の内容については、下記のとおりです。
なんと、頂く前に蜂蜜が登場!
これにはビックリしましたが、握りのみのコースなので血糖値を急に上げないためのご配慮でした。
ハンガリー産のアカシア蜂蜜で、GI値が一般的な国産蜂蜜の半分との事!
粋な計らいですね。
ガリ
甘みが強めで、食感はシャキシャキ。
シャリに砂糖を用いていないので、バランスを取っている事が分かるガリ。
最後まで頂き、鮨處やまだの山田親方のようにガリを出さなくても成り立つ内容だと感じた。
ガリを求める声もあるかもしれないが、無くても成立させられる職人さんもいると昨今思う次第。
星鰈
函館産。
バツッ!と力強い弾力を示し、旨味が強い。
寝かせている事は明白だが、なんと骨付きで2週間熟成させた3kgアップの星鰈であった。
熟成期間に対して食感は意外な程に強く、これは親方の熟成のセンスを感じさせる。
白身魚を熟成させて食感と香りを失わせてしまう職人ならば、熟成に手を出さない方が良い。
さらに着目すべき点は繊維質のほどけ方。
強い食感の後にふつふつとほどけていき、力強さの後に繊細さを感じさせる。
また、熟成により旨味が引き出されていて、それが酢の甘みを実感させる(流石、富士酢プレミアム)。
名刺代わりの1貫目、個性を生み出しにくい白身魚で強烈な個性を見せられた。
キチジ(キンキ)
網走産の釣りもの。
脂が非常に強い…が、上品な印象を与える。
脂の質がクドくなく、ぷりっとした身がホロホロとほどけるのと同時に、脂を楽しませながら決して同じ場所に留まらずに去り行く。
香箱蟹(勢子蟹)
淡路産。
「握り」ではないが、酢飯と合わせて酒肴的に提供する。
香箱蟹と米酢のシャリの香り、旨味、甘みのバランスが良い。
鮪の脳天
大間産、延縄161キロ。
仲卸は「やま幸」で、仕入れ値にこだわらず入れ続けているそう。
その甲斐あって力強い美味しさを、鮪の旬の時期に楽しませてくれる。
手巻きの鉄火巻きを前半で出すのはイレギュラーだが、その理由は「鮨屋の華だからこそ冒頭で出したい」ため。
海苔も美味しく、丸山海苔の「初代彦兵衛こんとび」との事。
鮪赤身
もっちりした身で、香りと酸味がしっかり目。
味わいは淡白だが、血の余韻が良い。
鮪中トロ
腹中の中トロ。
脂は強く、軽やかな酸味が味を支える。
ヨコ井の與兵衛との相性はバッチリだ。
鮪大トロ
脂は穏やかながら香りがある大トロ。
旬の時期の鮪3連発はすきやばし次郎の系譜の必殺技だが、北海道で楽しませて頂けるとは。
鯖の押し寿司
噴火湾産の鯖を大阪流の押し寿司器で押し、少し寝かせてから提供する。
これは素晴らしい!
味も申し分ないが、試みに惚れ惚れする。
大阪では急速に衰退している大阪鮓の文化だが、他の土地で技術が使われ、新たな文化となるのはご当地前の江戸前鮨と全く同じ事。
鯖は塩と酢のみならず昆布で〆ており、鯖の魅力と仕事の精度を体感させる押し寿司!
文化的貢献度が極めて高い事をお伝えしたところ、親方は通年で押し寿司を出されていて、季節でタネを変えているそうであった。
ボタンエビ
礼文島産。
濃密な食感で、非常に良いクオリティのボタンエビ。
漁師から直接入れておられ、ボタンエビの濃密な甘みが主人公で、火入れした海老味噌の甘みと香りを調味料的に、卵の食感をアクセントに用いる。
真鱈の白子
根室産。
昆布を敷いて炙る仕事。
一体感が抜群で、海苔ならびに飯尾醸造プレミアムの塩梅が良い。
鱒の介(マスノスケ)
根室産。
香りと旨味が非常に素晴らしい。
軽い漬けによって個性を引き出している。
国産のキングサーモンだからと言って脂の強さのみに注目するのは、食べ方が浅い。
マスノスケの真骨頂は香りにありと考える。
漬けで味付けを行いながら香りを殺さず、むしろ引き出している点に仕事の妙を実感する。
いくら
根室産。
バッチリ美味しいが、個性的な仕事が多い職人さんなので、変化球を求めてしまうのは我儘か?
海胆
親方いわく「脱水氷感熟成」。
これには心から驚いた。
久々に海胆で感動を覚える味わいで、高級な箱海胆では体感出来ない感動!
仕事は、浜中の海胆を殻から剥いた後に脱水させて熟成すること、なんと10日!!
海胆は超絶濃密な甘みで、香りも抜群に良い。
海胆でこのような味を引き出せるとは、人間の凄さ、鮨職人の凄さを教えてもらった。
穴子
対馬産だが脂に加えて香りもあり、上物である事が分かる。
食感はふわとろ。
椀
キンキとシジミの潮汁。
玉子
甘海老を用いた玉子焼き。
「鮨たな華」の立地と雰囲気
北海道随一の繁華街であるすすきのの喧騒から離れた好立地にあります。
世間一般の「好立地」とは繁華街の中心なのかもしれませんが、個人的にはアクセスし易いのに静かなエリアが好立地だと思います。
喧騒から離れた場所でありながらアクセスは至便なので、お店を出た後に満足感と幸福感を静謐の中で楽しめるのは贅沢なひと時だと言えるでしょう。
お店はビルの1階に入っていて、ガラス戸の先にあるインターフォンを押して入店します。
完全予約制のお店でインターフォンだと、初めての訪問の際には少しためらうかもしれませんが、看板が掲示されているので迷う事は無いと思います。
店内は誰もの予想を裏切る広い空間です。
玄関で靴を脱いで、カウンターに腰をおろします。
席のゆとりはバッチリで、清潔感も申し分無し。
空気が心地良く、親方と女将さんの接客もフレンドリーで魅力的です。
なお、部屋の端にスタインウェイ製のグランドピアノがあり、親方が弾くのか!?と思ったものの、イベント時にピアニストを呼んで演奏してもらうとの談でした。
「鮨たな華」のお店情報と予約方法
予約についてはお電話のみとなります。
文中に記載の通り前日までの完全予約制で、日曜・祝日は3日前までの予約が必要です。
また、キャンセルや予約人数の減少については、予約日の3日前からコース料金100%を人数分お支払する必要があります。
これは日本では導入するお店がまだ少ないものの、海外では当たり前のルール。
それだけ凄い食材を仕入れ、仕込みを徹底されている証ですので、ご理解の上で訪問しましょう。
拙ブログの読者様にそのような方はいらっしゃらないかと思いますが、様々な料理人から苦言を伺うので念のため…。
店名:鮨 たな華(すし たなか)
シャリの特徴:赤酢、米酢のシャリを別々に用意し、お酢1種類で絶妙に仕上げる。
予算の目安:おまかせ¥22,000(税込)〜
電話番号:011-215-0120
住所:北海道札幌市中央区南六条西1丁目 6.1ビル1F
最寄駅:豊水すすきの駅から150m
営業時間:17:00~23:00
定休日:不定休
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鮨は最高の料理だと確信する、すしログ(@sushilog01)でした。
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有馬をベースに一幸と和喜智のエッセンスを加えたお店ですね。
ピアノ置くようなオーナーから離れて独立されたら伺いたいですね。
それなら有馬くらいの値段でやれるでしょうし。
笹様
>有馬をベースに一幸と和喜智のエッセンスを加えたお店ですね
有馬さん、一幸さん、和喜智さんは全て伺っていますが、そのようには感じませんでした!
オリジナリティがある仕事をされていますよ。
また、オーナーはいらっしゃいません。
どこからそのような情報を入手されたのでしょうか?
ご教授頂けましたら幸いでございます。
ご確認のほど、よろしくお願い申し上げます。
いつもブログを参考にしております。
2021/7月に鮨たな華に伺い、とても美味しかったのでコメントします。貴ブログの通り脱水熟成したバフンとムラサキウニ、鯖の押し寿司とか珍しい仕事や道内タネも堪能できました。
米酢と赤酢のシャリはシンプルだし、日本酒は王禄しか無いし、職人としてのこだわり抜いてる部分も良かったです。
ちょっと残念だったのはちょうど光物が無かったのと、アナゴは個体が悪かったのか臭みがあったくらいです。
握りのみ2万2千円でも満足度は高かったですが、
酒豪の自分としては酒肴も楽しみたかったですね。
たびモン様
コメントありがとうございます!
江戸前鮨を謳うお店で光物が無いのは気になりますね。
実は、他の方からも同じご指摘を頂いたところでした。
大変もったいないので、親方にお伝えしておきます!
お若い方なので、修正されて更に良くなることを願っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
こちらこそ、SNSとか苦手で初めてコメントしましたがよろしくお願いします。
自分も田中氏は良い職人と思いますので、札幌に行く際はまた伺おうと思います。
今後も参考にしたお店に行きましたらコメントさせて頂きます