すしログ No. 151 鮨一幸@札幌(北海道)

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こちらは札幌にあって全国に名を知らしめる鮨店。

食べログの鮨ランキングで全国トップ10に入っており、東京以外の都道府県でトップ10に入っているお店はこちらと小倉の天寿しさん(京町店)のみ(※執筆当時の記録となります)。

そして、天寿しさんが「九州前」であるのに対して、こちらは江戸前で勝負されております。

北海道のタネは「必要とあらば使う」と言うスタンスを取っておられ、いわゆる「蝦夷前」と呼ばれる北海道の鮨とは趣を異にします。

また、北海道でも流行りつつある、和喜智さんのような熟成×赤酢のシャリとは真逆の、必要最小限の寝かし×米酢のシャリで勝負されております。

僕は和喜智さんも好きなのですが、こちらのご主人・工藤順也氏のセンスと自負心には心を打たれました。

東京の江戸前鮨店と比較しても既に非常に高いレヴェルの領域に入っておられ、1981年生まれで、現在34歳と言う事を考慮すると、今後の伸び代は非常に大きいと感じます。

真駒内と言う札幌の外れにあり、当時赤字であった街場寿司店を継ぎ、ここまでにしたセンスは半端ありません。

「苦労話」と言う陳腐なものには収まりきらない才能と覚悟を感じる鮨です。

全国の名店を食べ歩き我流で構築された味わいは唯一無二と言えましょう。

個人的には、こどもの国のおとわの相澤さんと並ぶセンスの持ち主だと感じます。

(ともに米酢のシャリですし)

有名店を出て、銀座の中心地で一流のお店をオープンする職人さんも立派ですが、我流ゆえの「覚悟」に基づいた求道精神は、心から応援したくなります。

ただ、唯一、評価を分けるかもしれない点は「蝦夷前ではない」点でしょうか。

使用するタネのクオリティが一流であるため、価格帯は札幌にあって高級。

道外から訪問した方が、対価として江戸前仕事をどう捉えるか。

それこそが分水嶺で、お店の長所であり短所であると感じました。

こちらのシャリは前述の通り米酢のみを使用した淡麗な白。

やや硬めのシャリは握りのスキルも相まって美しくほどけ、温度も均一でブレが少ない。

塩、酢の加減は優し目で、赤酢のシャリに慣れた方にとっては特に穏やかに感じる筈。

全体的に「端正さ」と「優しい包容力」を持ったシャリだと感じました。

シャリに加えて煮キリも穏やかな味わいなので、個人的にはもう少しキレを利かせても面白いかな?と思いました。

最も、鮨はシャリと仕事の合一であり、全体的なストーリー性あってのものなので、このままご主人がどのような世界観を構築されるのか見届けていきたいと感じました。

実は、店内に入り天井が打ち放しコンクリートであったり、店内に薔薇が生けてあったり、お酒専門のスタッフがおられたり、煮キリの器が優雅なフォルムの花瓶だったりと、一見すると「やり過ぎでは?」というきらいがありましたが、いざ頂いてみると心から安心しました(笑)

また、そういった雰囲気も実にしっくり来ており、嫌味になっておりません。

味と雰囲気は両輪ですね。

お酒専門のスタッフの方も優しく面白い方でした。

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頂いた酒肴、握りは下記の通りです。

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真鯛

香りと甘みが非常に強く、北海道で頂く鯛とは思えない程。

食感はねっちりとしているが、ほぼ寝かしていない模様。

札幌に在って敢えて正統派の白身魚を、名刺代わりに繰り出されるだけはある。

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蒸し鮑

独特の器から取り出されるや否や、芳醇な香りにうっとりする。

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鮑はゼラチン質の濃厚な旨味のみならず、火入れによる食感と、香りが妙だと考える。

その意味においては、頂いた鮑は完璧に近い。

産地を聞いたところ兵庫県の津居山。

遠く離れた北海道で、連れてこられた鮑も本望でしょう(笑)

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キンキのしゃぶしゃぶ

標準和名キチジ。北海道が誇る上質な白身魚。

甘みが極めて凄く、火入れも良く身はぷりっぷり。

噛みしめると瞬く間に恍惚となる味わい。

この鮑、キンキの流れには恐れ入った。

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トリ貝

京都府宮津産。肝が甘く、美味。

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鮟肝

ムースのように滑らかな食感。

絶妙な火入れで雑味無く、深い甘みと上質な香りで構成される。

産地は矢張り余市かと思ったが、噴火湾。勉強になります。

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ガリ

酸味はシャープで、辛味もあり、シャキッとした食感。

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春子

これは面白い仕事。

春子には珍しい細かい包丁によって、甘みと食感を合わせており、とろける味わいで春子を再構築。

シンプルな中に工夫とセンスが見られる一貫。

一幸鰯

写真を見ての通り非常に脂が乗っているが、中々の〆加減で、強すぎず弱すぎず丁度良い塩梅。

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金目鯛

まろやかな甘みを提示する炙り加減。

強く炙り香ばしい香りを前面に出す仕事が多いが、こちらは上品。

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鮪中トロ

富山県氷見の定置網。またマニアックな。

旨味、甘みがしっかりしているが、香りが弱いのは時期故。

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鮪大トロ

濃厚ながらに上品な脂。

この時期、北海道でここまでのクオリティを入れておられるのは、本当に凄いです。

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海胆軍艦

まだ利尻のバフンウニは出ていなかったが、中々。

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ノドグロ

アカムツ。これは握りで勝負して欲しかったかな。

酢橘も少し多めでシャリとの一体感が乏しかった。

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これは春子同様に食感と旨味の合一を志向する握り。

やや脂が弱いが、たまたまでしょう(また、僕の鯵に対する基準は高いので)。

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帆立

これは素晴らしい。

煮キリを塗り炙った貝柱を軽くほぐして握る。

食感が非常に良く、帆立の甘みがシャリに合っている。

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蝦蛄

白眉。時期が限られている子持ちの蝦蛄を低温で火入し、卵を半生で提供。

卵が「ソース」となり、新たな蝦蛄の魅力を楽しませてくれる。

味付けも良く、完全にone and onlyな一貫。

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穴子

穴子は瀬戸内の人間としてはまだまだかな(笑)

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玉子

しっとり、ふんわり柔らかで、非常に美味。

中心部はじゅわっとしており、これは全国で見ても数少ない味わい。

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食用鬼灯(ほおずき)

鮨店で出会ったのは二回目。好きです。

酒肴5品、握り11貫、玉子、日本酒1.5合を頂き、お会計は21,000円。

日本酒は川西屋酒造店・丹沢山の赤ラベルを1合と白隠正宗辛口純米を半合。

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個性的な仕事とタネのクオリティを考慮すると高額ながらに腑に落ちる内容でした。

酒肴の完成度が満足度を高めております。

ただ、同回転のお客さん分を一気に握り、溜める点は頂けない。

札幌市内の他の有名店、人気店でも見かけましたが、握り溜めは北海道の文化なのでしょうか?

握りとは、職人と食べ手が向き合うところに魅力がある。

完全に悪習なので早急に脱却される事を切望しております。

また伺う日を楽しみにしつつ!

店名:鮨一幸(すし いっこう)

シャリの特徴:米酢を使用し、硬さと温度に妙がある。優しい味わい。

予算の目安:20,000円〜 →おまかせ28,000円~

最寄駅:西四丁目駅から260m

TEL:011-200-1144

住所:北海道札幌市中央区南2条西5-31-4 スカレッタビル2F

営業時間:18:00~23:00 ※2回転制

定休日:水曜

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