
こんにちは、「日本鮨酒文化振興協会」代表の、すしログ(@sushilog01)です。
この度、「日本鮨酒文化振興協会」を発足して初の日本酒ペアリング会を開催しました。
お声がけいただいた料理人は、長野が誇る名店「GUUUT(グート)」の三浦さんです。
ジャンルはイノベーティブ・タイ料理。
三浦さんはご自身でも日本酒と日本ワインを用いたペアリングをされているベテランなので、光栄なお誘いでした。
しかもイベントの募集から51分で席は埋まり、期待の大きさに身が引き締まる思いでしたが、結果的に参加者の皆さまに喜んでいただけて大成功となりました!

本記事では、イベントのレポートと、タイ料理と日本酒ペアリングの可能性についてお話します。

今回の準備と本番で得た知見は自身の財産となりました。
タイ料理はもちろん、ほかのジャンルにも活用できる知見となったので、コラボのご依頼は随時承っています!
タップできる目次
- タイ料理と日本酒ペアリングの可能性
- 今回の日本酒ペアリングのお酒とイメージ
- 「GUUUT(グート)」日本酒ペアリングの内容
- アミューズ:発酵茶葉と飯いいの小さなトマトサラダ × 富久長 海風土(冷酒×ワイングラス)
- 2歳雌鹿のレバーペーストと発酵ビーツの粥、真澄真朱の酒粕 × 神雷 神石高原 生酛純米酒(燗酒×盃)
- 骨つき豚バラ肉のネームとアカヤマドリタケのスープ × 雨降 純米 MIZUMOTO(燗酒×盃)
- 白苺と人参のソムタム ニジマスの熟鮓添え × いづみ橋 とんぼスパークリング(冷酒×シャンパーニュグラス)
- 50センチ級のニジマス 蕗の薹の香り蒸し、コシアブラのリゾット添え × 神渡 純米吟醸ワイン樽貯蔵(冷酒×ワイングラス)
- 2歳雌鹿のロース ラープ仕立て × 米宗 速醸純米 初しぼり(常温×盃)
- 2歳雌鹿のロース ラープ仕立て × 会津娘 長期熟成酒 花佐久良1988(常温×盃)
- 米糠のパンケーキ
- GUUUT(グート)のお店情報
まずは、本題に入る前にタイ料理と日本酒ペアリングの可能性についてお話します!
「タイ料理と日本酒ペアリング」と聞いても、イメージがわかない方のほうが圧倒的多数だと思いますので…
まず、よく聞かれる質問。
「タイ料理と日本酒って合うんですか?」
この質問については、「和食並みに合います!」と即答します。
理由を箇条書きで挙げると以下のとおりです。
- タイ料理は米と合う料理が多い(日本酒の原料は米)
- 日本酒と相性が良い発酵調味料を多用する
- 甘味、酸味、辛味が多い料理なので、日本酒の味覚に合う
- ワインよりも酸味が低い日本酒はオールマイティにカバーする
- 日本酒の香りもタイ料理の香りに合いやすい
- タイ(特に東北イサーン地方)は鮨・鮓の発祥の土地!
しかも、燗酒にも合うのがタイ料理の面白さ。
日本酒は世界的にも珍しい、非常に幅広い温度帯で飲むお酒なので、低温から高温まで合わせられるのは、タイ料理ペアリングの面白さです。
まだまだ先駆的な試みになりますが、著名な千葉麻里絵さんはバンコクにお店を出店されましたし、来日するタイ人は増えているので、タイ料理と日本酒のペアリングは一つの様式にすらなると確信しています。
僕自身、タイ料理が大好きで今まで8回くらい渡泰しているので、いつかタイ現地でペアリング会をしたいものです。
それまで日本で研鑽を積みます!!
さて、本題の「GUUUT(グート)」さんとのペアリングのレポートに入ります。

「GUUUT(グート)」さんとのペアリングで選んだお酒は6種類+1種類です。
メインディッシュのタイミングで、全く異なる方向性のお酒を2種類提供しました。
- 今田酒造本店(広島県):富久長 海風土 冷酒×ワイングラス
- 三輪酒造(広島県):神雷 神石高原 生酛純米酒 燗酒×盃
- 吉川醸造(神奈川県):雨降 純米 MIZUMOTO 燗酒×盃
- 泉橋酒造(神奈川県):いづみ橋 とんぼスパークリング 冷酒×シャンパーニュグラス
- 豊島屋(長野県):神渡 純米吟醸ワイン樽貯蔵 冷酒×ワイングラス
- 青木酒造(愛知県):米宗 速醸純米 初しぼり 常温×盃
- 髙橋庄作酒造店(福島県):会津娘 長期熟成酒 花佐久良1988 常温×盃
全体を通して、「酸味を意識したペアリング」をテーマに設定しました。
タイ料理・発酵調味料が持つ酸味を意識しつつ、日本酒の複数の酸(コハク酸、乳酸、クエン酸)を合わせる試みです。
また、甘味が蓄積しないよう緩急を付けるとともに、タイ料理の辛味に対して幾つかのアプローチでペアリングを行いました。
自身のお酒の選び方については、以下のフローです。
- 知識と経験から合わせる方向性、可能性をリストアップする
- タイ料理やベトナム料理店に訪問して、イメージを広げる
- 三浦シェフから料理構成を伺う
- 自身で近しい味覚、香りで料理を試作して、酒質との相性を確認する
- J-STAGEで味や香りに関する論文を検索して確認する
- 使用するお酒の目星をつけ、試作・試食会に臨む
- 銘柄の調整を行う
「ここまでやる人はいないだろう」というレベルまで徹底しました。
なお、日本酒の銘柄は回転が早く、試作・試食会と本番の間に無くなる銘柄も出てくるので、仕入れが大切でした。
酒蔵の直販サイトから仕入れ、0℃で自宅保管して臨みました。
それでは、具体的な内容を紹介します。
お料理については、日本酒との相性を検証するための試作品であることをご了解ください。
本番のお料理はもっとゴージャスです!(見た目はかなり異なります)
なお、三浦シェフは大作レシピ本を上梓されました。
お料理の詳細を知りたい方はぜひともお手にとってみてください。

1品目にスッキリとスタートしていただくための選択。そして、酸味の調和をはかるペアリング。飯の酸味(乳酸)やトマトの酸味(クエン酸)に、お酒の酸味(クエン酸)を合わせる。お酒の酸味は強すぎず、甘味もあるので、爽やかながらまろやかに調和する。低アルコールである点も1杯目に良い。

お酒は燗冷まし(40℃弱)での提供。旨味や甘味を調和させつつ、お酒の生酛由来の酸味、八反錦らしいキレ、ミネラル感でのマスキングも行う(マスキングによってコースの持続性を高める)。また、レバーペーストは粘度が高いので、テクスチャー(粘性)を高めるために燗酒を選択。酒粕の真澄真朱は山廃なので、生酛でバランスを取る意図もある。木桶仕込みで軽く熟成させた辛口方向の生酛純米なので、重くならずに調和させることが可能。

大谷が提唱する「モダン燗酒」の魅力を伝え、温かいスープと同調させる。燗酒によってお酒の甘酸っぱさを活かす。料理の酸味にお酒の酸味を合わせ、甘味やコクで料理を包み込むイメージ。燗にすると発泡性が際立ち、酒米の愛山らしい優雅な甘味が広がる。味わい深くともスッキリとしている点が魅力。

甘酸っぱさで同調させ、清涼感を与える。白イチゴの芳醇な香りと甘味に、甘味のあるうすにごりのスパークリングは好相性だ。料理に寄り添いつつ、スパークリングによって爽快な後味に持ってゆく。フルーツに日本酒を合わせるのは少し難しいが、可能であることを伝えたいペアリング。

ソース(ココナッツシュガー、ナンプラー、唐辛子)との調和を最も意識している。この銘柄は赤ワイン様の香りと樽香が広がり、ヨーグルトとミネラル、グレープフルーツ、イチゴ、ラズベリー、スミレなど日本酒には無い香りが魅力だ。辛味には日本酒の甘味で包むアプローチが有効だが、他に香気成分で緩和する方法もあり、ワイン樽熟成由来のラクトン=ヨーグルト様の香りを合わせている。香りだけでなく、お酒の程よい甘味も終盤にあって活きる。

完全発酵を行う酒蔵で、この銘柄も速醸なのに「酵母無添加」で仕込んでいて、キレイな香りと味わいながら旨味が強い。そして、酸味も強い。これは当初の牛肉ではなく鹿肉を使用されることになったので選択した。お酒の強い酸味と複雑な旨味を鹿肉の味に合わせる。メインなのでボディしっかりなお酒でバランスを取りつつ、スッキリ感を残す。
さらに、肉の仕込み段階での調理方法に合わせて熟成酒も提供。肉は12種類ほどのスパイスオイルで低温調理されている。スパイスと日本酒の熟成香=ソトロンは相性が良いため、香りの調和を図る選択。熟成酒は牛肉の場合に用いる予定だったが、タイプ違いの飲み比べも一興と思い、シークレット酒として持ち込んだ。熟成酒は好みが分かれるが、日本酒業界で注目されている潮流でもあるので紹介していきたい。

食感と香ばしさが秀逸で、一般的にイメージする米糠感は無い。自家製の無農薬栽培の米の米糠を使用されている点が崇高である。
お店が気に入った方は、ぜひとも現地のお店を訪問してみてください!
また、三浦シェフは定期的に東京でのイベントを開催される意欲をお持ちです。
再び開催される際には、ご応募よろしくお願いいたします!
店名:GUUUT(グート)
予算の目安:里山タイ料理コース11,000円(2〜6名)、モダンタイ料理コース6,600円(4〜6名)
最寄駅:沢駅から350m
TEL:090-1541-0215
住所:長野県上伊那郡箕輪町中箕輪542-1
営業時間:18:00~23:00
定休日:水、木、金曜
日本酒ペアリングのポテンシャルを確信する、すしログ(@sushilog01)でした。
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