こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
この度、神楽坂の「すし ふくづか」さんからお声がけ頂き、日本酒ペアリング会を行いました。
2022年12月に「築地青空三代目 丸の内店」さんで開催してすぐに、福塚親方とソムリエの藤森さんから打診頂いた次第です。
すしログ日本酒ペアリングの会(第1回&2回):築地青空三代目 丸の内店もちろん快諾しました。
そして、日本酒は福塚親方が常時仕入れている四谷の「鈴傳」さんにて仕入れました。
「鈴傳」さんは創業を1850年に遡る老舗中の老舗。
楽しくお酒を選ぶ事が出来、結果として、鮨会の副会長から「過去で一番奏功している」と評価して頂きました。
これは言うまでもなく福塚親方のお陰です。
事前の打ち合わせから当日のコントロールまで、全てありがとうございました!
僕のペアリングは「SAKE DIPLOMA」の理論と食べ歩きの経験や味覚を組み合わせて行っていますが、ペアリングはサイエンスよりもアートの要素が強く「正解」が無い世界なので、成長出来ているかどうかは不安を覚えるもの。
キッチリ成長出来ている事を実感して、今後の意欲が高まりました。
これからも職人さん、料理人さんとの二人三脚で精度を上げていきたいと思います!
ですので、コラボして頂ける職人さん、料理人さん、随時ウェルカムです!
日々、お酒を飲んでスキルを磨いていきますので、一緒に日本酒の可能性を試しましょう。
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それでは、まず、今回の日本酒ペアリングに用意したお酒を紹介します。
そして、ペアリングのイメージをお伝えします。
今回のお酒は、前述の通り四谷の「鈴傳」さんで仕入れました。
そして、補足的に1種類のみ大塚の「地酒屋こだま」さんで仕入れました。
- 山梨銘醸(山梨県北杜市1750年):七賢 純米 活性にごり
- 吉田酒造店(石川県白山市1870年):吉田蔵u 百万石乃白
- 大木代吉本店(福島県矢吹町1865年):自然郷 BIO(バイオ) 特別純米
- 日々醸造(京都府京都市伏見2021年):日日 山田錦の冷酒とぬる燗(40℃)
- 都美人酒造(兵庫県南あわじ市1945年):都美人 超上撰 山廃仕込み
- 飯沼銘醸(栃木県栃木市1811年):姿 純米吟醸 愛山 無濾過生原酒
5番が「地酒屋こだま」さん仕入れです。
また、今回は「すし ふくづか」さんのソムリエである藤森さんが見事にサーブしてくださり、燗も付けて頂けたのが大変ありがたかったです。
やはり燗が使えると選択肢が広がります。
今回のペアリングのイメージとしては、以下のとおりです。
- 爽やかに始める
- 酸を持続させる
- 低アルコール日本酒を積極的に使用
- 鮪のタイミングで温度変化によりマリアージュを目指す
- 一気にコクと甘味を強め、終盤に向かう
日本酒は基本的に甘味があるお酒なので、味覚的にダレない事、料理にネガティブな影響を与えない事が必須です。
反面、スッキリした味のお酒だけ揃えても、ペアリングの意味を失います。
そして、重視した事項は、以下のとおりです。
- 当たり障りのないお酒は選ばない
- 味覚的にも嗅覚的にも同調を意識する
- 鮨職人が選ばない日本酒を盛り込む
これら3点をクリアしなければ、「食べ歩きのプロ」であり、酒ディプロマを持つ自分がペアリングを行う意味が無い、と考えた次第です。
それでは「すし ふくづか」さんで頂いた内容と、日本酒ベアリングの内容を紹介します。
今回は特別なコースを組んで頂き、お酒の持ち込み料もフリーにして頂きました。
深く感謝いたします。
以下に、選んだお酒ベースで酒肴と握りを紹介していきます。
酒肴の前半に合わせたお酒は、【七賢 純米 活性にごり】です。
・特定名称:純米酒(スパークリング)
・原料米:ひとごこち
・精米歩合:70%
・アルコール度数:13%
「山梨銘醸」さんは2015年からスパークリング日本酒に力を入れてこられました。
そして、直近のIWC(ンターナショナル・ワイン・チャレンジ)の「スパークリング部門」でゴールドを受賞されました。
ヨーグルトのような爽やかさに、ほのかな甘味と端正な苦味を持つお酒なので、爽やかさとコクを合わせるべく選択しました。
合わせる酒肴については、以下の3品です。
佐渡ヶ島産の岩もずく
産直で仕入れているだけあり、鮮度が抜群で、独特の食感も最高!
他の岩もずくと異なる食感を楽しめる。
酸味が少し強めなので日本酒とのバランスを心配したが、杞憂に終わり、お酒が受けとめてくれた。
これについては、にごり酒を選択して良かったと実感する。
村公一さんの真鯛の刺身
身質は寝かせによりしっとりしつつ、香りが抜群な真鯛。
余韻が強い。
合わせる塩は真鯛と同じ徳島の海水塩。
鰯の磯辺巻き
海苔の口どけが非常に良く、一体感が高い磯辺巻きだ。
ガリの甘味部分が酒に接続されて、酢〆の鰯とネガティブな反応を示さず安心する。
酒肴の後半に合わせたお酒は、【吉田蔵u 百万石乃白】です。
・特定名称:非公開(モダン山廃)
・原料米:百万石乃白
・精米歩合:60%
・アルコール度数:13%
「百万石乃白」は2020年に誕生した新しい酒米で、酒蔵独特の造り「モダン山廃」は低アルでも味わい深く、爽やかな酸味を実現します。
酒肴の脂や香りを切る【マスキング】ペアリングを意識して選択しました。
メジマグロの藁焼き
漬け焼きではなく、山葵と塩で提供頂いた。
脂だけでなくメジマグロの酸味に酢酸イソアミル系の香りのモダン山廃が非常に合う!
毛蟹の漬け
噴火湾産。
西酒造の芋焼酎でシェリー樽と樫樽でブレンドして9年間の熟成を行う【天使の誘惑】に漬けている。
握りの前半に合わせた1種類目のお酒は、【自然郷 BIO(バイオ) 特別純米】です。
・特定名称:特別純米酒(生酛造り)
・原料米:夢の香
・精米歩合:60%
・アルコール度数:16%
生酛系酒母特有の酸味を「柑橘的」に使うイメージです。
キレとともに甘味と旨味があるお酒なので、【補完】ペアリングを意識しました。
煮烏賊
食感が絶妙で、ぷりっとした身はパツッと切れる。
73℃の低温調理が奏功している。
シャリの温度は50℃。
提供温度的にシャリの酸味がキリッと立つが、米の甘味も感じるのでバランスが取れている。
春子
しっとり、ほろっほろな食感で、繊細な繊維から鯛の甘味が横溢する。
そして、【自然郷 BIO】が酢橘の酸味とオボロの甘味を受け止める。
オボロは海老ではなく真鯛で作っているそうで、これが高い一体感の理由。
鮎
握ってから大葉でしばらく〆るスタイルで、古来の関西鮓を彷彿させる。
鮎の肝の苦味と香りが活きていて、大葉の香りやシャリの酸味もバランス良く調和する。
握りの前半に合わせた2種類目のお酒は、【日日 山田錦】です。
・特定名称:非公開(生酛造り)
・原料米:山田錦(東条産)
・精米歩合:非公開
・アルコール度数:13%
「すし ふくづか」さんは鮪に力を入れているため、鮪専用の日本酒として選びました。
理由は、蔵元杜氏の松本日出彦さんと鮨をご一緒した時、「中トロに合う」と言われていたためです。
さらに、福塚親方は鮪の途中にシャリ温を上げられるので、日本酒の温度も上げました。
冷酒の後に40℃のぬる燗を合わせ、相性を向上させるとともに燗酒の魅力も伝えたいためです。
温度帯変化で【調和】と【相乗効果】のペアリングを狙います。
鮪小トロ(背トロ)
これは純粋に旨い…脂、柔らかさ、旨味が揃っていて実に良い。
こちらについては【日日 山田錦】がマスキングの方向性で作用する。
鮪赤身
旨味が強い鮪に【日日 山田錦】が自然に馴染む。
一体感が高いペアリング。
鮪中トロ(背)
鮪大トロ
トロについては、【日日 山田錦】の温度を上げて大正解であった。
お酒の甘味とコクが引き立ち、テクスチャー的にもトロの脂に馴染みやすい。
握りの後半に合わせた1種類目のお酒は、【都美人 超上撰 山廃仕込み】です。
・特定名称:普通酒(山廃造りのアッサンブラージュ)
・原料米:麹米/五百万石、掛米/一般米
・精米歩合:70%
・アルコール度数:16.5%
酒蔵は1945年に国策で10蔵が統合した蔵で、現在の杜氏はかの農口尚彦さんの弟子。
しかも、酒造りで最も重要とされる「麹」を担当していた実力派です。
このお酒は究極的な食中酒だと思うので、日本酒はブランドではない事を伝えるために選びました。
光り物には【マスキング】しつつ、お米の旨味を乗せるイメージです。
小鰭
福塚親方らしい皮抜きでの提供。
以前よりも味の精度が上がっており、皮無しでも小鰭の旨味と香りを楽しませてくれる。
【都美人】はドンピシャの相性だ。
クラシックな日本酒の相性の良さを伝えてくれる。
鯵
脂がノリノリなので、【都美人】がマスキングする方向性。
口直しの桃
煮蛤
巨大な蛤を80℃で5分火入れ!
絶妙な火入れによって、甘味、香り、旨味が引き立っている。
握りの後半に合わせた最後のお酒は、【姿 純米吟醸 愛山 無濾過生原酒】です。
・特定名称:純米吟醸酒
・原料米:愛山
・精米歩合:70%
・アルコール度数:17.3%
こちらは「鈴傳」のスタッフさんにお酒のイメージをお伝えして、最後のお酒としてご提案頂きました。
イメージは、海老などの甘味やコクに【調和】させるフルーティな日本酒です。
香り酵母である「きょうかい1801号」酵母を使用しているので、ややリスキーな選択でしたが、結果的にバッチリでした。
車海老の唐子づけ
エビの甘味とオボロの甘味の二重奏に【姿】が上品に調和する。
黒雲丹
淡路島産。
海胆の美味しさだけでなく、高温のシャリや海苔の香りなど細部まで抜かり無い配慮がされている。
最後にシャリの酸味が引き締めるのも巧みな設計だ。
海胆は甘味が魅力であるものの「甘~い!」だけで終わるのは鮨で頂く意味が無い。
煮蛸
あたかもペーストのようにとろけゆく煮蛸。
以前は前半に出されていたが、テクスチャー的に後半に配置されるのがベターだと実感する。
鮪出汁ラーメン
干瓢巻き
海老おぼろと干瓢を合わせる。
この組み合わせは嬉しい。
玉子
奥久慈軍鶏、群馬若鶏、鶉の卵を使用し、3層構造に分ける玉子焼き。
デザート志向のモダンな玉子焼きだ。
べったら漬け
水菓子
「すし ふくづか」のお店情報と予約方法
「すし ふくづか」さんは、OMAKASEでWEB予約が可能です。
店名:すし ふくづか
シャリの特徴:飯尾醸造のお酢を3種類用い、ブレンド比を変えて3種類のシャリを使い分ける。硬さや温度管理は申し分なし(過去から改良されました)。
予算の目安:おまかせ35,000円ほど
住所:東京都新宿区津久戸町3-5 2F
最寄駅:飯田橋駅から450m
TEL:03-5579-2860
営業時間:12:00~、14:00~、18:00~、20:30~
定休日:月曜
日本酒ペアリングは本当に奥深いので、これからも追求していきます!
すしログ(@sushilog01)でした。
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