こちらは堺で1948年に創業された、穴子寿司の人気店です。
縁者の方は明治時代から続く穴子の卸をされており、お店は持ち帰り専門で朝から賑わっております。
大阪の寿司と言えば、何と言っても箱寿司とバッテラ。
穴子は箱寿司において、鯛や鱧と並んで無くてはならないタネとなります。
戦前は堺の出島港において、穴子の延縄漁が活発だったそうで、現在の堺区出島町1丁界隈は「穴子屋筋」と呼ばれていた程です。
10数軒の穴子屋が軒を連ね、「下関の河豚、堺の穴子」と評されていたそう。
かの北大路魯山人も、『魯山人の食卓』において、「穴子の美味いのは、堺近海が有名だ。東京のはいいといっても、関西ものに較べて調子が違う。焼くには堺近海のがよく…」と言っていた程です。
ちなみに、鰻については関東風一辺倒なので、穴子と鰻で扱いが違うと言うダブルスタンダードっぷりを発揮しています(笑)
更に堺出島の歴史を見ると、非常に興味深い。
出島漁民のルーツは唐からの渡来人の末裔だったそうです。
遣唐使が移り住んだ広島県蒲刈島から朝臣大伴氏の一族が追われ、更なる移住先として定めたのが堺。
その後、浜が開拓され、出島港の原型が形成されたそうです。
このような漁業の古い歴史を持ち、穴子のブランド産地であった堺ですが、現在は良質な穴子を殆ど獲る事が出来なくなり、他の海域から仕入れております。
堺の穴子に限った話ではありませんが、産地の盛衰は全国津々浦々で聞かれる事。
残念な気持ちはありますが、モノは無くとも仕事は残る、と言う点が伝統料理の面白さの一つでしょうか。
深清鮓さんに話を戻しますと、休日の9時半のオープン後に伺ったところ、電話が鳴り響き、予約注文分と来店注文分を凄い勢いで作られており、人気のほどに圧倒されました。
穴子寿司に関しては、【穴子にぎり】900円と【穴子箱】600円があります。
大阪寿司と言えば矢張り箱だろうと、【穴子箱】を入手。
出来立てを頂くべし、と駐車場に戻ってすぐに車内で頂いてみました。
穴子箱
穴子は旬を外している事もあるのか、身が薄い。
しかし、濃厚な煮ツメが補強し、食べ応えを強化します。
煮ツメは穴子の旨味よりも甘みが強く、正に「タレ」と言った感。
穴子はふっくら炊かれており、タレとよく絡みます。
酢飯はほのかに甘く、酸味は穏やか。
干瓢の微塵切りを噛ませている点に、大阪寿司らしさを感じます。
旬以外の穴子も上手く食べさせる仕事だと感じました。
穴子が云々ではなく、人情を感じさせる味です。
店名:深清鮓(ふかせずし)
予算の目安:穴子箱600円、穴子にぎり900円
最寄駅:湊駅から350m
TEL:072-241-4593
住所:大阪府堺市堺区出島町1-1-22
営業時間9:30~18:00
定休日:火曜
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