こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
最近「鮨バブル」と言う言葉が、鮨好きな人たちだけでなく、広く知り渡るようになりましたね。
自分が初めに鮨バブルと言う言葉を使ったのは2017年2月でしたが、実際には2016年頃からその傾向がありました。
つまり、4〜5年続いた結果、インバウンド需要の低下やコロナ禍の影響は少なく、定着している状況と言えます。
すしログ
特に、修行先と揉める職人や修行先の近場に出店する職人、修行先よりも高い値付けを行う職人のお店などは、消費者側も注意した方が業界のためだと思います。
しかし、そのような鮨バブル下で、良心的なお店も登場していて、大いに期待が持てます。
若い職人さんでも客単価1万円代の低価格で勝負したいと仰る方が増えています。
今回ご紹介する「鮨 北條」さんも、無理のない金額でおまかせを出されています。
雰囲気も相まって誰もが寛げる街の鮨店と言えます。
両国「鮨 北條」の魅力とは?
「鮨 北條」の北條充親方は老舗の蛎殻町「都寿司」で修行された職人さんです。
つまり、「日本橋蛎殻町すぎた」の杉田親方の弟弟子ということになります。
「都寿司」の後はマンダリンオリエンタル東京に入っていた(現在は変転した)「鮨そら」で親方を務められ、その後、両国で独立されました。
両国は江戸前鮨発祥のお店の一つとして知られる與兵衞壽司があった場所。
開店された理由が気になりお伺いしたところ、一番は「落ち着いているため」との事でした。
ただ、やはり江戸前鮨発祥の地である事も意識されているご様子でした。
ちなみに、與兵衞壽司の跡地は「鮨 北條」さんから500m足らずの場所です。
そして、「鮨 北條」さんの魅力は、握り自体にあると感じました。
1貫1貫の存在感があり、力強い握りです。
サイズも大きい握りですが、味自体が力強い。
実は訪問した際は時化と台風の影響で、河岸には魚が少ないタイミングでした。
しかし、それでも楽しませて頂き、力強さを感じました。
特に握りについてはバリエーションに富んでいて、オーソドックスな江戸前のタネの合間に、モダンなタネが挟まれます。
なので、幅広い層の方が楽しめる鮨だと思います。
「鮨 北條」のシャリについて
「鮨 北條」さんのシャリは、酸味がしっかりしていて、塩気は穏やか、甘みは付けられていないシャリです。
硬さは標準的で、必ずしも硬くなく、温度も巧く管理されています。
親方は街場寿司のような気楽さを志向されていますが、シャリについては街場寿司ではなくモダンな江戸前鮨の仕様です。
お酢のブレンドは非常に個性的。
岐阜・内堀醸造の3年熟成の赤酢と、和歌山・九重雑賀の純米大吟醸赤酢、そして、ミツカンの白菊(米酢)をブレンドされています。
酒肴には白菊と雑賀を使用されているそう。
九重雑賀を使用する江戸前鮨のお店自体が少ないですが、この組み合わせは初めて出会いました。
米については、福島県産コシヒカリと宮城県産ひとめぼれをブレンドされているそう。
しかも古米ではなく新米を用いているそうですが、コシヒカリの粘りはブレンドとシャリ切りで巧くコントロールされていて、口の中でのほどけ加減は良好です。
「鮨 北條」のおまかせの詳細
コースは2つあり、【鮨10貫コース】8,800円と、【おまかせコース】13,200円です。
【鮨10貫コース】は、鮨10貫+先付、巻き物、玉子、椀で構成されます。
そして、【おまかせコース】は、鮨8貫+酒肴5品、巻き物、玉子、椀です。
握り好きであれば、【鮨10貫コース】に握りを追加する手もアリだと思います。
この度は禁酒法のため、炭酸水で。
つるむらさきのお浸し
香ばしく、軽くねっとり感があり、初手に嬉しい先付。
出汁がキリッと利いている。
真子鰈
塩で〆て2日寝かせている。
しっとりした身質で、プリプリ感や香りよりも旨味方向の仕事。
塩は父島のもの(「小笠原 島塩」か?)。
酢橘を掛けられていたが、個人的には蛇足かと感じた。
真子鰈の淡やかな夏の香りを楽しむならば。
ツブ貝
ツブ貝らしいコリッコリな食感を楽しめ、旨味が強い。
煮蛸
ホロッホロで、ひたすら柔らかな繊維質の煮加減。
太刀魚の焼きもの
塩気がかなり控え目。
肝和え(塩辛)
スッキリ味の塩辛で、肝の香りも苦味も強すぎず、美味しい。
鰯と薬味の海苔巻き
都寿司を代表する酒肴。
杉田親方も作られていて、ファンを大幅に増やされた。
鰯は脂が非常に乗っていて、しっかりと酢を浸透させている。
コントラストが強烈で良い〆の仕事。
鰯の産地は銚子とのことであった。
茶碗蒸し
煮穴子入りで、優しい甘みの穴子が東京っぽい。
出汁が利いた餡と山椒が掛けられている。
この後、握りに移行します。
ガリ
甘みじんわり、旨味が来て、酸味、辛味の順に到達するガリ。
好きな方向性のガリだ。
新子
4枚づけ。ほろりとした身と皮の柔らかさを楽しむ季節物。
旨味は勿論弱くてアッサリだが、この価格帯のおまかせの1貫目に出されてビックリ。
親方いわく、普段は新子には手を出さないが、価格が落ちていたのでついつい買ってしまったとのこと。
こう言った感覚で仕入れられるのは嬉しい。
九絵
萩産、6キロの九絵。
みっちりと力強う食感の身に包丁を細やかに入れて歯切れを良くしている。
脂がしっかり乗っているので、シャリとの相性が抜群に良い。
鮪赤身
気仙沼産、161キロの巻き網。
時期にしては旨味を感じるのは、魚体とシャリの酸味のお陰かと思われる。
余韻は爽やかな鉄の風味が漂い、爽やか。
エゾイシカゲガイ
今や夏の貝として定番のタネになったエゾイシカゲガイ(イシガキガイ)。
肉厚で、とろりと柔らかな繊維質で、とにかく甘い。
しかし、媚びること無く、軽い苦味と強い旨味が味を引き締めていく。
さらに、香りが良く、磯の香りでありながらフルーティな印象さえ与える。
車海老
小柴産の天然モノと、珍しい。
茹で上げで温度を寝かせてから握られていて、加減が良い。
しっとり、ホロホロと、かなり良い食感。
海老味噌の風味も良く、記憶に強く残る一貫。
鮪トロ
直前にシャリを交換され、温度を上げてから握られているので、脂と酸が乳化する。
海胆軍艦
やや収斂味があるものの、濃厚な甘みの海胆。
白烏賊
見た目以上に細やかな包丁が入れられていて、ねっちりとろりと柔らかくとろける。
ただ、冒頭の真子鰈と同様に酢橘の使用量が多過ぎると感じた。
蛤
ほのかに温めて提供されているのが心ニクい。
穏やかな甘みの漬け込みだ。
噛みしめると蛤の旨味が溢れ出る。
火入れも噛みしめさせることを想定している塩梅。
煮ツメは薄くも濃くもなく、調和している。
小鰭 追加
バシッと〆て旨味を凝縮させて、お酢の酸味も浸透させる仕事。
強めの〆なので、白板昆布との相性が良い。
鯵 追加
出水産で、初手ではなく途中から脂の甘みを楽しませてくれる。
最近ブランド鯵もブラインドで分かるようになってきたが、出水は徐々にシャリと調和して最後に深い余韻に導いてくれるところが鮨に合う産地だと感じるばかりである。
干瓢巻き
醤油をしっかりバシッと利かせた干瓢で、食感は柔らかめながら、味わいとして力強い。
シャリの酸味と合っていて、美味い。
玉子
みっちり詰まった玉子、海老の香りが良い、みっちり系は珍しい
椀
小川原湖産の大ぶりな蜆を用いた味噌汁。
火入れが柔らかく、ぷりっとした食感を楽しませてくれるところが魅力だ。
「鮨 北條」の立地と雰囲気
お店は前述の通り両国にあり、両国駅から徒歩5分程度の好立地です。
お店の外観から緊張感を感じさせない優しい雰囲気が漂っています。
店内に入ると想像以上に広く、贅沢な造りです。
カウンターはヒノキ製で、白木ではなくニス塗りされています。
木の自然なRを活かす湾曲が妙に落ち着きます。
店内の雰囲気やカウンターの意匠などが全てリラックスできます。
お一人客から若いカップルまで、幅広く楽しませてくれる進化系の街の鮨店だと感じます。
「鮨 北條」のお店情報と予約方法
予約についてはお電話のみとなります。
女将さんとお二人のお店なので、営業時間を外してお電話しましょう!
店名:鮨 北條(すし ほうじょう)
シャリの特徴:珍しい3種ブレンドを行い、酸味を立たせ、塩をキリッと利かせた砂糖不使用の赤酢のシャリ。
予算の目安:鮨10貫コース8,000円、おまかせ12,000円
最寄駅:両国駅から290m
TEL:03-6659-9300
住所:東京都墨田区両国4-28-2 小谷野ハイツ1F
営業時間:17:00~22:00
定休日:月曜
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