こんにちは、ご当地食材に出会うとテンションが上がる、すしログ(@sushilog01)です。
さて、最近イノベーティブも記事に書いていますが、その理由は地産地消の魅力を伝えるためです。
また、鮨・日本料理に無い技法を紹介することで、鮨職人や日本料理人の方にとって面白い記事・情報になればと言う狙いもあります。
すしログ
職人と言う存在は一つの道を極めてこそだとは思いますが、幅広く食べた方が多くのヒントが得られるものだと思います。
これは素人である食べ手にとっても同様。
料理の未来を考えると、狭いジャンルに拘泥せず、「温故知新、地産地消、イノベーティブ(ジャンルレス)」の三つが必須だと感じるばかりです。
表現は特定のジャンルであっても、感性と思考はジャンルレスな方が良い。
その上で、千葉県佐倉の「プレゼンテ・スギ」さんは、全国から訪問する価値のある一軒です。
個人的に、都心から最も近い、地産地消の名店だと思います。
すしログ
心から食を愛している人に、是非とも訪問して頂きたいお店です!
「プレゼンテ スギ」の魅力と杉岡憲敏シェフの凄さ
「プレゼンテ・スギ」のオーナーシェフは杉岡 憲敏さんです。
ゴ・エ・ミヨ(Gault et Millau)や食べログアワード(シルバー)を獲得されるなど、快挙を続けられていますが、姿勢は圧倒的に謙虚で探求心が旺盛な方です。
いつお会いしても、本当に頭が下がります。
お人柄が素晴らしい!
御料理を頂きつつ、杉岡さんの人間力に触れて襟を正してしまうのが、「プレゼンテ・スギ」の魅力の一つです。
反面、独自の世界観の構築のためにはストイックで、ある種頑なな意思を感じます。
例えば「市場では仕入れないこと」を目標に掲げられるなど、探求心は群を抜いています。
佐倉と言っても首都圏のお店にも関わらず、市場に行かない選択をされるなんて、意表を突かれました。
「人と同じ食材を使うと、似た味になってしまうのでは?」と言う想いから、2020年に実践されたのです。
首都圏の場合、全国のピン(一級品)の食材が何でも手に入るのが武器でもあります。
その武器を捨てて自らの料理と向き合う姿勢には、料理人としての潔さと覚悟を感じます。
そして、そのような覚悟と実践を行うシェフは、首都圏では稀有です。
その結果生み出される様々な魅力を列挙すると、以下の通りです。
- 知られざる千葉県産食材との出会い
- 研究者的な食材・調理法への向き合い方
- 実験的な素材の組み合わせや調理でも一体感の高い味覚調整
- ガストロバック、ブラストチラー、パコジェット、マルトセックなどの最新調理技術を駆使しつつ、技術自体が目的化しておらず、己の表現の枠組みに落とし込んでいる
- コースの構成力の巧みさ
- コースの提供テンポが素晴らしい
- 居心地が良い
- 純粋に楽しい!(これに尽きます)
最後に、杉岡シェフが凄いのは、定番の御料理でも訪問する度に味を上げられているところです。
これは鮨職人にも通じる職人魂だと感じます。
そして、日進月歩で味を上げられる方は、非凡なセンスを持つ料理人です。
「プレゼンテ スギ」のコースの詳細
今回9月下旬に頂いたコースの詳細をご紹介します。
コースの内容
- シェフからの最初の贈り物〜定点トマト飴
- 八街産ジャンボタニシ、キノコの発酵ソース
- スズキ、天然ヤナギマツタケ
- フォアグラと人参
- 森の地面
- 利根川産鼈のテリーヌ
- 利根川産モクズガニ
- クロワッサン
- 夏と夏
- 農家さんの贈り物
- GV鰹
- 野菜のフラン
- 鱧
- アイスキャンディー
- 本日の焼き立てパン
- High & Low ステーキ
- 杉寿司
- 〜再生〜
- Sugi畑をお皿に乗せて
- 本日のパスタ
- 秋のエアーアイス
- 桃のニョッキ
- 食べられなそうで食べられる
- 食べられないけど食べられそう
- 食後のお飲み物
シェフからの最初の贈り物〜定点トマト飴
定番中の定番で、『月刊専門料理』でも紹介されたスペシャリテ。
生トマトを使用した飴で、伺う度に味が異なる。
今回のものはトマト味が濃い!
『月刊専門料理』2021年 10月号「作り続ける料理、作り続けたい料理」
八街産ジャンボタニシ、キノコの発酵ソース
八街産のジャンボタニシ、佐倉の卵で作ったマヨネーズ、キノコの発酵ソース。
キノコは麹で発酵させているそうで、香りが良い。
マヨネーズはコクがしっかりしている。
そして、最後にタニシの軽い苦味が広がる。
キノコの食感と柔らかく火入れしたタニシの食感が相性良い。
これは感動的な一品!
スズキ、天然ヤナギマツタケ
ご自身で釣ってボート上で津本式血抜きを施したスズキを使用。
天然モノのヤナギマツタケ、アルギン酸ナトリウムを用いたオリーブオイル(いわゆる「Ferran Adriasのオリーブオイルキャビア」)とともに。
むっちりした食感で旨味のあるスズキに紫蘇の実の爽やかな香りと、ヤナギマツタケの香りが加わる。
オリーブオイルも相性が良い。
そのままかけるのではなくキューブなので上品にまとまっている。
オリーブオイルキャビアは「単に使いたいだけ」で、料理としては失敗しているレストランもあるが、杉岡さんの使用法は絶妙だ。
フォアグラと人参
構成要素は上からブラックオキザリス、ローズゼラニウムのゼリー、下にフォアグラ。
人参は柚子を加えてエスプーマで泡にしていて、フルーティーなニュアンス!
香りを変化させるために技術を用いているのが素敵。
ゼリーには甘みがある。
複合的な甘みと香りが魅力だ。
森の地面
今朝採取されたヤマドリタケ(ポルチーニ)を使用した、極薄のフリット。
黒い粉は土をイメージした黒鮑の肝のソース、葉っぱは雪の下。
鮑の肝の香りがぶわっと広がり、ヤマドリタケはとろりと滑らかな食感で、香りが良い。
海と山の幸の組み合わせが魅力的。
利根川産鼈のテリーヌ
利根川の天然モノの鼈を使ったテリーヌ!
テリーヌは薄切りにして、空芯菜と野生のミョウガのマリネを添えて。
鼈の香りがふんわりと広がる点がユニークだが、あくまでも鼈に苦手意識がある人でも美味しいと感じる味に仕上げている点が流石。
和のエッセンスも加えつつ、和食にしないバランス感覚も良い。
利根川産モクズガニ
利根川産のモクズガニの内子、外子、身を使用した、アメリケーヌソース和え。
さらにアカヤマドリタケ、タマゴタケを加え、パン、小ネギとともに。
キノコの旨味とカニの強烈な旨味が一体化!
両方の魅力をキッチリ楽しませてくれる逸品。
焼きたてのクロワッサン
いつもながら抜群に美味しい。
上の粉は六条大麦で、香ばしい。
夏と夏
鰻は利根川産の天然モノ!
身はコンベクションオーブンと遠赤外線で火を入れているが、炭は皮焼きであり、バッチリ押さえておられる。
添えている野菜はヒマワリで、花と茎を使用している。
茎はピリ辛味で生姜、コリアンダーとともにピクルスに。
鰻の皮はバリッ!と弾け、むっちりした身を楽しませてくれる。
香りは正に天然モノで香しい。
身はしっとりのところ、皮下脂肪がたっぷりで、とろんととろける。
農家さんの贈り物
紫人参、イタリア産生ハム、完熟梅のソース。
無農薬で生産されている農家のもの。
紫人参は1時間ほど低温で火入れして、5~6時間乾燥焼きしている。
あたかも焼き芋のような香りだが、甘みとごく軽い酸味は人参らしい。
生ハムとの相性も抜群で、完熟梅のソースの酸味が引き締めてくれる。
GV鰹
鰹の厚みがアップして、より存在感が増している。
鰹にはGV=ガストロバックを施していて、鰹のアラの出汁とフランボワーズのスープが含まされている。
皮はブラストチラーで瞬間冷凍した後に炙っているため、身に全く火を入れずに炙る事に成功している。
ビーツのマリネ、脱水した八千代牛乳で作ったヨーグルトが爽やかかつコクを加える。
この料理はエキス=出汁の味わい深さが凄い。
旨味を感じ、鰹の酸味が高まり、血の香りも優雅に漂いながら味を引き締める。
鰹のテクスチャーは鮨における漬けの仕事よりもねっちりしている。
野菜のフラン
地元農家の玉ねぎを使用し、シャモの卵で蒸し固めたフラン。
ガルム(魚醤)と蜂蜜をガストロバックした焼きトウモロコシ、パプリカソース、自家菜園のイタリアンパセリのエキスを抽出したオリーブオイルとともに。
玉ねぎの香りと甘みが非常に強い。
パプリカのソースも香りが良く、舌に辛みをほんのりと感じる。
前よりも更に野菜を引き立てている印象だ。
きめ細かいフランに甘みやコクが加わり、ソースが効果的にアクセントとなる。
甘いトウモロコシにガストロバックによる味付けが上品に奏功している。
鱧
利根川産の干しカワアナゴのスープをガストロバックした鱧のフリット。
ソースはマスタードソースで、添えられているのはゴーヤー。
鱧はぷりっぷりで驚く!
嫌みにならない範囲でカワアナゴの旨味が加わり、バランス感覚にも驚かされる。
厚みのある鱧を2枚重ねてフリットにしているため、印象が特に強まる。
鱧の脂とゼラチン質がマスタードソース乳化し、相性抜群の組み合わせ。
なお、干しカワアナゴはこのようなお姿だ。
見るからに良い出汁が取れそうではないか。
マスタードソースの原料は佐倉産のイエローマスタード。
農家さんにお願いして種取りやゴミの除去をお願いしているそうで、苦労がしのばれる。
アイスキャンディー
今回は八街産のブルーベリーと野菜を使用。
野菜はトマトっぽい爽やかさが印象的で、甘くないアイスなのでサッパリだ。
本日の焼き立てパン
クラスとはガリッとしていて、クラムはもっちりなフォカッチャ。
チーズの風味が利いている。
High & Low ステーキ
お肉は通常の豚肉からオプションで牛肉に変更、部位はヒレ。
“High & Low”である理由は、調理方法と温度変化。
肉を24時間マリネして、低温で3時間火入れして、マイナス25℃で表面を冷した後に、薪の高火力で焼き上げる技法です。
その結果、杉岡さんのステーキは肉汁の流出がゼロで、ムチャクチャ柔らかくて感動必至だ。
脂の甘みと赤身の酸味や旨味を余すところ無く楽しませ、上品に牛肉の香りを楽しませる。
薪の香りも食欲をダイレクトに刺激する。
合わせる塩は日本では非常に珍しい、エジプト産フランス加工の「砂漠塩」(以前はキプロスの塩を使用されていた)。
7,000万年前の海水がミネラルを残したまま結晶化している塩だ。
砂漠塩は塩気がキリッと利いて、コクが強い。
そのまま食べると鋭くないので、お肉に合わせる理由に納得。
杉寿司
イタリア料理の【インサラータ・ディ・リゾ】、つまりお米のサラダを再構築したもの。
鮨ではなく、サラダ料理だ。
メバチ鮪の中トロに乾燥ヤマドリタケのスープをガストロバックし、新米コシヒカリを紫黒米と炊いてフランボワーズビネガーでシャリ切りしている。
シャモの卵黄を塩漬けにして乾燥させて削ったものと、黒トリュフとともに。
以前よりも、より漬けのようなねっちり感が強まっていて、一体感を大きく向上させている。
ガストロバックによる旨味が凄く、この点において漬けとは異なる。
しかし、ねっちり感があるのは、ガストロバックの後に2時間寝かせてから握っているためだろう。
〜再生〜
鼈、ナラタケ、ノゲノリ、オリーブオイルのスープ。
濃厚な鼈出汁にナラタケとノゲノリの香りが良い!
Sugi畑をお皿に乗せて
自家菜園の野菜とエディブルフラワーを使用した定番のサラダ(紫キャベツと黒豆は農家さんから)。
マルトセックしたレモン風味のオリーブオイルパウダー、パチパチとともに。
今回はバラの香りが印象深かった。
本日のパスタ
チチアワタケとチチタケの、冷製キタッラ。
魚はスズキで、カルピオーネ風にマリネしている(フランス語だとエスカベーシュ、日本で言えば南蛮漬けだ)。
ヒマワリをアンティチョークのようにマリネしている点が斬新。
ピリ辛、トマトの甘み、ヒマワリの苦味が実に個性的な味覚の組み合わせ。
麺は歯ごたえの強い低加水な剛麺で、粉を楽しませてくれる。
秋のエアーアイス
なんと、ヤマドリタケのアイスクリーム!
八千代牛乳の作りたてヨーグルトを掛けて、エディブルフラワーを添えている。
味はまさしく、キノコの味!
バシッとヤマドリタケの味が広がりつつ、ヨーグルトの酸味が上手くまとめる。
新しい味覚と香りの調和を感じるアイスである。
桃のニョッキ
生のジャガイモからでんぷんを抽出してわらび粉と合わせた「ニョッキ」風のわらび餅スイーツ。
鎌ヶ谷産の桃、セロリのアイスを添えて。
わらび餅よりも弾力があり、もっちりしている。
ジャガイモ特有の土っぽい香りは無い。
セロリのアイスが溶け出すと面白い一体感を楽しませる!
食感的にも香り的にも斬新な表現のドルチェ。
食べられなそうで食べられる
バターの代わりに猪のラードを使用し、マテバシイ(ドングリ)、自家製竹炭も用いたフィナンシェ。
自家製竹炭のシャリシャリ食感が心地よい。
食後のお飲み物
食べられないけど食べられそう
中は訪問してのお楽しみ。
「プレゼンテ スギ」のお店情報と予約方法
予約は4ヶ月先まで受け付けておられますが、かなり早い段階で埋まる状況です。
なので、相当余裕を持って予約を押さえる必要があります。
店名:プレゼンテ スギ (PRESENTE Sugi)
予算の目安:コース14,300 円
TEL:043-371-1069
住所:千葉県佐倉市白銀2-3-6
最寄駅:佐倉駅から1,800m
営業時間:Lunch Time11:30~14:30、Dinner Time18:00~22:00
定休日:月曜日、火曜日
※完全予約制です
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郊外に素敵な地産地消の個性派レストランが増え続けて欲しいと願う、すしログ(@sushilog01)でした。
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