一般的に「精進料理」のイメージは、下記のようなものではないでしょうか?
「渋い」「質素」「素朴」
しかし、今回ご紹介するお店は、既存のイメージを打ち砕いてくれる、「華やか」で「楽しく」「美味しい」精進料理です。
華やかな精進料理「黄檗普茶料理」とは?
日本における三大禅宗のうち、「最も中国的な様式」と言われる宗派が黄檗宗です。
日本には1654年に隠元隆琦によってもたらされたので、国内では比較的若い宗派とも言えます。
そして、その黄檗宗とともにやって来た料理こそが、普茶料理です。
同じ精進料理だと大徳寺、永平寺、高野山の系譜もありますが、黄檗普茶料理は特に中国的なテイストを残し、肉や鰻を模した料理を作るところが魅力です。
鰻を模した料理は当時ヒットしたようで、江戸の料理本『料理通』にも紹介されていて、むしろ本物の鰻の蒲焼以上の手間を掛けて作っているのには驚かされます。
大徳寺の精進料理についてはこちらの記事をご参照ください。
今回ご紹介する黄檗普茶料理お店、白雲庵さんは黄檗宗の総本山である萬福寺の目の前にあります。
萬福寺は確かに建築の随所に中国的なテイストを感じさせ、存在感のある「三門」は一見の価値があります。
普茶料理は精進料理と言えども「もてなし」の要素が強く、こちらのお店も旅館然とした優雅な空間となっております。
窓から見える中庭も中々乙です。
黄檗普茶料理の名店、白雲庵さんのお料理の概要
頼んだのは6,500円の【月】コース。
料理名も変わっており、頂いた順に下記の通りとなります。
- 干菓子、煎茶
- 澄子(スメ):蘭茶
- 蔴腐(マフ):胡麻豆腐
- 雲片(ウンペン):13種類山菜・根菜の吉野煮
- 冷拌(ロンパン):生麩の時雨煮
- 笋羹(シュンカン):菜煮の盛合
- 油滋(ユジ):味付天麩羅
- 素汁(ソジュウ):後汁
- 醃菜(エンサイ):香の物
- 行堂(ヒンタン):季節のご飯
- 水菓子1:豆乳の杏仁豆腐
- 水菓子2:野菜の虹色羊羹
料理名からして、食好きならば惹かれるのではないでしょうか?
かなり変わっていますよね。
お料理を頂いた感想としては、下記が非常に印象的でした。
- 食感を巧みに計算している点
- 殊のほか強い味や油も使う点
- 生麩の扱いに長けている点
一般的に精進料理は「質素」や「淡白」とイメージされがちですが、普茶料理は輪郭がしっかりしている為、興味本位以上に楽しめる料理です。
苦手意識を持っている人に力強くオススメできる精進料理の名店の一つです。
黄檗普茶料理の名店、白雲庵さんのお料理の詳細
御料理の詳細については、以下のとおりです。
干菓子
澄子(スメ):蘭茶
蔴腐(マフ):胡麻豆腐
雲片(ウンペン):13種類の山菜・根菜の吉野煮
ケシの実と松の実の風味がパンチになっている。出汁は椎茸が強い。
冷拌(ロンパン):生麩の時雨煮
肉を模したカッティングに妙有り。
細かいものと粗いものでリズムを付けている。
笋羹(シュンカン):菜煮の盛合
これは見た目からして楽しい。
「天井昆布」という長い昆布を巻いたもの
鰻もどきは芋を用い海苔で皮を表現。
油滋(ユジ):味付天麩羅
梅干しの天麩羅、蓮根間に味噌を挟みコクを。
素汁(ソジュウ):後汁
やや強めの昆布出汁。
醃菜(エンサイ):香の物
行堂(ヒンタン):季節のご飯
桜ご飯。
塩漬けの桜から薄紅色を移し、香り豊か。
糯米をブレンド。
水菓子1:豆乳の杏仁豆腐
豆乳の風味が非常に強い。
抹茶、水菓子2:野菜の虹色羊羹
何よりも美しい色合い。
お店を出る頃には、きっと癒やされていることかと思います。
お店の情報
店名:白雲庵(はくうんあん)
食べるべき逸品:華やかな精進料理、黄檗普茶料理
予算の目安:5,500円〜
TEL:0774-32-0700
住所:京都府宇治市五ヶ庄西浦30
最寄駅:黄檗駅から140m
営業時間:11:00~16:00(L.O14:00)
定休日:木曜
※本記事は「すしログ日本料理編 No. 5」をリライトしました
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