こちらは店名こそふざけておりますが、1917年(大正6年)創業と言う、大阪きっての老舗鮨店です。
お店の歴史としては福喜鮨さんと並ぶ格式となります。
(福喜鮨さんさんは1910年に東京で創業、1916年に大阪へ移転)
その格式で、この店名は何故?と訝しく思いましたが、二代目が変えてしまい、今に至るとの事です…
店内は歴史とは裏腹に重苦しいところが無く、店員さん、お客さん共に和気藹々と親密な雰囲気が漂っております。
それでいて、使い込んだカウンターは歴史の長さを感じさせ、無数に吊り下げられた瓢箪は温かみがあります。
街に馴染んだ気取らない老舗と言う印象を受けました。
こちらは酒肴が豊富で、握りのタネも全てメニューに表示されており、価格は記載されていないものの良心的な鮨店だと思います。
僕は酒肴を2品ばかり頂き、あとは握り中心で組み立てました。
お酒は軽くビールを飲み、後は日本酒を2合。
日本酒は日本盛の惣花純吟、日本盛はアル添の大量生産品も造っておりますが、惣花純吟は食中酒に最適なバランスの取れた味わいです。
尚、こちらのお茶は濃いめの粉茶と、老舗鮨店らしい佳き味わいです。
頂いた酒肴。
いわし酢
比較的強めに酢を浸透させているが、嫌味は無い。
脂が乗った鰯の旨味を封印しており、土佐酢も美味い。
若狭鰈一夜干し
子持ちの若狭鰈。鰈特有の香りがしっかりとあり、モノの良さを感じさせる。
鰈の一夜干しは部分部分で異なる味わいを楽しめるため、一人酒に最適だ。
この後、握りをお好みで頂きました。
シャリは大阪らしく甘みがあり、老舗らしく温度はやや低め。
しかし、それが悪いと言う事は決して無く、大阪の鮨としてタネと楽しめる。
粘度が高く無い点も良い。
ガリは甘みが非常に強いが、辛味を残している。
鯛、鮃
鯛は芳醇な香りで、ともに肉厚な切り付け。
この切り付けや白身魚の提示法はいかにも大阪らしい。
鱧、針魚
鱧は流石に旨く、甘みが強い。
添えられた梅肉餡も鱧を邪魔せぬ良い塩梅。
針魚はしっかりと〆ており、凝縮された旨味が良い。
鯵
鯵は噛み締めるや否や甘みが横溢する。
限りなく生に近いが、酢で軽く洗っているように感じる。
しかし、海苔は蛇足。
握りの鯵に対して海苔は風味が野暮ッたく感じられ、鯵の風味を邪魔してしまう。
鰯
鰯はしっかりと〆ており、針魚と同じく〆の仕事の精度の高さを感じさせる。
小鯛しそ
握りだが限り無く大阪鮓の味わいを楽しめる小鯛。
鯖
棒寿司のような姿が特徴的な一貫。
これもしっかりと〆て、脂を堪能させてくれる。
全体を通して、こちらは〆ものが旨いと実感した。
山葵はもっと頑張って欲しいが…
玉子
超ふわんふわんで、しっとりした食感。
完全なる江戸前の玉子で、大阪では珍しいのではないだろうか。
穴子
「えり巻穴子」と呼ばれる、こちらの名物。
予想を遥かに超えるサイズで、届いてびっくりした。
これは兵庫、大阪で「伝助穴子」と呼ばれる大きな穴子かと思われる。
頂いてみると、とにかく穴子。
シャリとのバランスは考慮せず、穴子を食らい尽くす、穴子好きには喜ばしい一貫だと感じた。
穴子の旨味のみならず、タレを塗った後に焼いているため香ばしい
途中に頂くと重いかもしれないが、〆で頂くにはインパクトも含めて良い。
以上、お酒と酒肴2品、握り10貫を頂き、お会計は12,960円。
もちろん安い金額ではありませんが、タネのクオリティを考慮すると、決して高くは無いと感じました。
モダンな東京の江戸前鮨を食べ慣れている人はクラシカルに感じるかもしれませんが、東京の老舗とは異なる大阪の老舗ならではの楽しみがあるかと思います。
雰囲気、接客も含めて、大阪が誇る鮨店であるのは間違い無いのではないでしょうか。
店名:英ちゃん冨久鮓(えいちゃんんふくずし)
酢飯の特徴:大阪らしい甘みを利かせたクラシカルなテイスト。
予算の目安:10,000円~15,000円
最寄駅:難波駅から120m
TEL:06-6211-1256
住所:大阪府大阪市中央区道頓堀2-2-13
営業時間:12:00~22:30
定休日:日曜
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