
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
さて、岡山で全国的に最も有名な鮨店と言えば、「鮨 縁」さんだと思います。
なかなか予約が取れないので、僕も長らくの課題店となっていました。
この度、念願の訪問を果たしたところ、人気の理由に納得しました。


ママカリやワタリガニなど、ご当地らしいタネに舌鼓を打ちました!
江戸前鮨の仕事で地魚に新たな魅力を与える御当地江戸前鮨が大好きです。

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親方の佐藤 克明さんは「寿司 和食 富久屋」で14年間もの修行をされて、2008年に「鮨 縁」をオープンされた職人さんです。
修行先の仕事を確認したところ佐藤親方のそれとは全く異なるので、独自の仕事を模索されてきての現在があることが容易にわかります。

使用される食材は岡山県産、瀬戸内海産で固められています。
蛸にしても穴子にしても、東京の鮨店でいただく一般的なものとは異なることが、味のみならず香りからもわかります。
今回いただいた中ではママカリが感動的な味わいでした。

ママカリ=サッパはサビキ釣りでも引っかかるので侮られがちな小魚であり、岡山の伝統的な郷土料理の食べ方だとお酢の酸味が強すぎて、しかもお酢のクオリティが低いことが往々にしてございますが、佐藤親方の手によるママカリは今までいただいた中で間違いなく一番の美味しさでした。
このように、江戸前鮨の仕事で郷土料理の味を昇華されると、江戸前鮨の素晴らしさを実感します。
言葉は荒くなりますが、放っておくと若い方が避けそうな味の郷土料理でも、食材本来の味わいを引き出して現代に通用する味わいとなるのが江戸前鮨です。
シャリは赤酢を用いつつ旨味を広げる方向性で、塩気も酸味も穏やかな味付け。
酸味がフィニッシュに広がる点が特徴です。
特に、甘味が強いタネの時に酸味の広がりを感じやすいです。
シャリはは長めの粒感を感じるお米で、硬すぎず柔らかすぎず、温度管理はバッチリです。
旨味と香りから「飯尾醸造さんかな?」と思ったところ、ビンゴでした。
「鮨 縁」さんのおまかせコースは、29,700円が目安(季節の食材によって変動)です。

十八盛 Ace Cat 無濾過火入原酒。軽やかなカプロン酸エチルの香気成分で、青リンゴ、ライチ、パイナップルなどの香りと生酒特有の若々しい香りが同調。甘味、酸味、苦味がキリリと効いた夏らしい味わい。

瀬戸内産。蛸は旨味が非常に強くて、香りも良い。しっとり、さっくり切れて、とにかく芳醇!もずくは極細の岩もずくでジャキジャキと力強い食感。味付けは甘味が極めて上品で、鰹出汁を効かせて塩気と酸味は完全に飲める塩梅で設計されている。

山椒オイルを使用。魅力的なミディアムレアの火入れだ。しっとり感に軽いむっちり感もあり、火入れで表現されている。ネギと山椒の香りと痺れがアクセントになりつつ、太刀魚の香りも楽しめてピュアな味わいだ。

岡山が誇る食材で、もちろん天然もの。身はとろっと脂を滲ませつつ、むっちり感が軽くある。皮もぷりぷりしていて天然らしいタフな魅力。鰹出汁のキリッとした味わい、シャリ酸味もキリッと鮨店らしい魅力的な提供

クラシックな味噌漬けながら味を浸透させすぎず、身のしっとり感も残す焼き加減。付け合せは茎山葵の酢漬け。

香りが良く、魅力的なアテだ。

御前酒 菩提酛にごり酒。ミルキー感がありヨーグルト香が漂う。それでいて旨味、苦味、香ばしさがある食中向けの菩提酛。

かなりのインパクトを放つ見た目。肝ご飯をあたかもソースのように使う設計は初めてだ。鮑は厚みがあり、香りも旨味もたっぷり。肝ご飯は酸味と香りを鮑本体に加えるような使用方法だ。これは油脂を加えていたら完全にアウト(下品)な使い方で、親方のセンスを感じる。

香りが凄く、旨味で食べさせる調味である点が素晴らしい!椎茸本来の香りと強烈なグアニル酸、さらに加熱した香ばしさが波状的に広がる。塩味は卵の甘味も活かす塩梅で調整されている。

石鎚 純米吟醸 朝日米55。酒蔵は愛媛だが、お米は岡山。香りは上品なバナナ、青メロン、洗練されていながら旨味があり、酸味も効いていて苦味のキレもある。

甘味を排除して辛味が走るガリ。完全に口直し仕様の味付けだ。

旨味があり、皮目から香りと脂の甘味が一気に開く鯛。

昆布〆。みっちりと〆つつ鱚の淡い脂の甘味を引き出して、昆布の旨味と香りが広がる。

標準和名はコウイカであり、江戸前鮨の墨烏賊だ。パツパツ感の中に柔らかさがあり、新イカに近い食感だ。包丁が少なく、イカの味を活かす点が好感。甘味も楽しめる。

重くなく、コクと鮪の香りのある中トロ。香りに血のニュアンスが少ないが、これは2025年の特徴であるように感じる。夏鮪であっても爽やかさが少ないものが多かった。海水温の上昇とスルメイカの致命的な枯渇が原因であろうか?

甘味と香りがたっぷり。可食部が少ないカニなので、たっぷり使用されているのが嬉しい。ただ、今年は少なすぎるそうで、昨年も瀬戸内のワタリガニは少なすぎると聞いていたところ気がかりである。

岡山で最も有名な郷土食材だろう。標準和名はサッパ。本来は岡山県産を仕入れたいものの、産地は大阪湾。もはや近場で見かけないそうだ(お土産屋さんで売られているママカリは海外産が多かった)。〆で旨味を引き出し、香りも然り。完全に小鰭の新子の仕事を応用されている。ご当地江戸前鮨にとって貴重な魚だ!塩気と酸味を効かせるのが旨い〆加減で、記憶に焼き付く一貫であった。

燦然 特別純米 朝日。上品な青メロンとお米の香ばしさ。甘味が広がりつつ、日本酒らしい苦味が広がる。良いご提案だ。

お酢の酸味から春子の甘味が力強く広がる春子。

鯵の味が良いので、上質な海苔の旨味と香りと調和し成立する。浅葱、生姜、胡麻。このような魚の使い方は意外にもポテンシャルがあると実感する。

小浜産。ピュアな香りの中に良い意味で血を思わせる雄々しい香りが滲む赤海胆。甘味は強く、塩水海胆か。丁寧に水を抜いて提供されている。

「サイマキ」とのご説明で、なんて謙虚な(天麩羅では区別するが江戸前鮨では車海老は車海老)。茹で上げからの寝かせを適切に行い、甘味を楽しめる。

岡山名産品の黄ニラを使用。しっかりした鰹出汁と味噌のコク、酸味が実に良い。黄ニラは食欲を刺激する香りである。

ふっくらしていて香りがある穴子。しかしながら脂は軽い。個人的にはこのような穴子こそが「江戸前鮨らしい穴子」だと思う。最近は対馬の大型の穴子が主流であるが、脂がノリノリの対馬の穴子は唯一の解ならずであることを認識すべきであろう。穴子も希少性が高まっているからこそ、本質的な江戸前鮨らしい穴子と向き合うタイミングかなと感じた。職人さんにとっても消費者にとっても。

炙りたての海苔で歯切れ良く、香りも旨味もバッチリ。トロも切り身から使用し、コクたっぷり。

温製いなりとは珍しい。甘味を下げており、香ばしさを感じさせる調理。胡麻の香りも加わり、ある種スイーツ的な香ばしさに感じつつ、シャリの酸味を感じる点が江戸前鮨店らしいいなりだ。

表面は焼き込み、中はしっとりと軽くジューシィな玉子。独特の香ばしさがあり、これは甲殻を使わず白身魚を使用されている為だ。甘味は和三盆と甘酒でつけられている。
なお、最後のお茶は「玉露か!?」と思うほどにグルタミン酸が強くて驚いた!!
「鮨 縁」さんについては、OMAKASEでの予約となっています。
アラート設定は必須ですね。
店名:鮨 縁(すし えん)
シャリの特徴:シャリは赤酢を用いつつ旨味を広げる方向性で、塩気も酸味も穏やかな味付け。
予算の目安:おまかせ29,700円~
最寄駅:西川緑道公園駅から200m
TEL:086-232-8168
住所:岡山県岡山市北区平和町3-11 つるべマンション 1F
営業時間:18:00一斉スタート
定休日:月曜
土地らしさを感じる鮨店を愛する、すしログ(@sushilog01)でした。
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