こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
今回、長崎で訪問した「鮨政」さんは今後が大変楽しみな鮨店です。
現在のところ知名度が高くなく、食べログでも3.23の状況です。
長崎は街場寿司はあっても江戸前鮨の文化が根付いていない土地なので、目を皿にしてリサーチして2022年に見つけました。
そして、2024年8月に訪問しようとしたところ敢え無く巨大台風とバッティング。
親方も残念そうでしたが、諦めました…。
しかし!
どうしても訪問したかったので、キャンセルとなった日の翌日、長崎を離れる前に次の長崎行きのフライトを予約!
すぐさまリスケの予約も取って、今回悲願の訪問を達成しました。
使用する魚は地魚で、仕事は江戸前鮨のそれ。
包丁も握りもハイレヴェルなので、今後人気が高まるのは間違いありません!
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「鮨政」の2代目親方である井手 宗一郎さんは、ほぼ修行経験なくして看板を継ぐ事になったそうです。
福岡の鮨店に修行に入ったところ、ご尊父が脳出血で倒れてしまい、急きょ戻る事に。
修行2~3年で実家に戻り、日々奮闘されている現在29歳の俊英です。
ご尊父は今もご健在とのことで安心しました。
僕がお店にお伺いしようと思った理由は、3つあります。
- 長崎県の地魚中心に提供されている
- 包丁の切りつけが綺麗
- シャリが扇の地紙型
実際に訪問したところ完成度が高く、シャリが扇の地紙型であるばかりでなく、握る際に掌を打ち鳴らさず、捨てシャリも無く、まして形を整えるために手数を増やすこと無く見事でした。
シャリは、ぱらりとしていて、軽くもっちりした良い炊き加減です。
お酢は赤酢で、砂糖による甘味を用いない古典的な江戸前のスタイル。
酸味がキリッと立ちつつ後味は酸っぱくなく、塩気も効いているけれど残りません。
酸味、塩気を効かせながら主張が穏やかなシャリはセンス無くして切れません。
完成度が高いシャリですが、個人的には気になる点もあったので、最後に打ち解けたタイミングでお伝えしました。
井手親方ならば確実に修正されると確信しました。
僕が訪問した時は、時化のタイミングで魚が弱かったそうです。
しかし、見込みで仕入れられていて、全てが長崎県産!
さらに追加のタネも用意されているなんて、言うことがありませんでした。
都会の人気店でも追加のタネを仕込んでいない事態に遭遇する世の中なので、親方の気概や天晴です。
追加のタネも全て長崎のものでした。
酒肴には野菜を積極的に用いられていて、これも先進的で魅力的な試みだと感じました。
僕は記事の中で何度も言及していますが、おまかせのコースの場合、酒肴の前半に野菜があると非常に嬉しいです。
かつてのお好み可能なクラシックな鮨店ならば魚だけ食べるのが粋ですが、モダンなおまかせのお店ならば野菜も採り入れて頂けると魅力が向上します。
しかも、親方は先付に低GI値の菊芋を使用されている点が意識的だと感じました。
最後に、特筆すべきは日本酒ペアリングの精度です。
幅広い酒質の日本酒をご自身の酒肴、鮨に合わせて的確にご提案され、かなりのセンスだと感じました。
どこかで勉強されたのか伺ったところ、独学との事です。
さらにポテンシャルを感じます。
お酒は大阪の名店「山中酒の店」から仕入れているそうで、大阪に行った時にたまたま訪問して取引する事にされたとの談。
なお、8月にお伺いしようとしていた時はペアリングコースがありましたが、現在は無いので理由を尋ねたところ、ペアリング目当てで月に何度も来られるお客さんがいらっしゃり、銘柄を切り替える事が難しいので、現在は適宜ご提案されるスタイルに変更されたそうです。
なるほど(笑)
「鮨政」さんのコースについては、下記のとおりです。
- 昼 5,500円 鮨と小鉢2品 8貫程と汁物
- 昼12,100円 鮨と料理 5品と8貫と汁物
- 昼16,500円 鮨と料理 7品と10〜12貫汁物
- 夜 7,700円 鮨と小鉢2品 10貫程と汁物
- 夜12,100円 鮨とお料理 5品と8貫汁物
- 夜16,500円 鮨とお料理 7品と10〜12貫汁物
僕は握り原理主義者なので、夜の7,700円のコースを頼み追加しました。
お酒は「ほぼペアリング」で出して頂きました。
お酒が好きな方は同様にそう頼まれると良いかと思います!
2024年11月に頂いた内容をご紹介します。
出汁をしっかりと効かせており、菊芋の野趣を卵の甘味に上品に接続する味覚設計となっている。茶碗蒸し自体もトロトロで、「す」が入っていない丁寧な調理(…と、わざわざ書く理由は都内の人気店でも「す」に当たる事がある為だ)。
蛸は島原産。マッシュルームソースとは鮨店において奇抜な試みだが、煮蛸との香りと味の一体感が非常に面白い。蛸は長崎らしく甘味を付けている。そして、柔らかく仕上げつつ食感も楽しめる煮方。噛みしめると後から蛸の香りが込み上げてきて、マッシュルームソースと馴染んでゆく。ソースに海苔を加えている点が魅力的な調整。
そして、お酒は【みむろ杉 Dio Abita】の甘酸っぱさが料理の味に同調し、良い提案である。
蓮根は諫早産。サクサク切れて、シャッキリした繊維質で、甘味と香りのある蓮根に海苔を混ぜて香ばしく揚げている。
【奈良萬 純米吟醸 酒未来】は酢酸イソアミル系の吟醸香で、甘味がありつつ苦味がキリッと味を引き締める。良い相性。
ほのかなカボス酢の塩梅によって、どことなく山椒っぽい香りを感じさせる漬物。新生姜以外の時期は季節で野菜を変えているそうだ。
むっちりとした強い食感の身を噛みしめると、旨味が込み上げてくる。昆布〆にしているが、昆布の当て方のバランスが非常に良い。昆布の香りにしても旨味にしても時差的に高まり、魚味を一切阻害していない。名刺代わりの一貫目に白身魚を選択し、しかも長崎らしい力強い味わいの白身魚を配置する采配に期待が高まる。
甘味が強く、トロトロしたテクスチャー。包丁を細かく入れて、とろけ方を向上させている。それでいて繊維質を楽しめる範疇に収めていて、咀嚼する喜びもしっかりと維持している。
〆てから1日寝かせる事で身質をとろりと柔らかくさせて、脂をダイレクトに楽しませる仕事。そして、鰯の香りが後から込み上げてくる。薬味の使用量も程良い。薬味の使用量一つ取っても、親方が鮨を好んで食べ歩いておられ、そこから学びを得ている事が分かる。
漬け。ねっちりした食感。このタイミングで甘味を効かせつつ、ヤイトの旨味や脂と合わせて否応無しに「旨い」と思わせる仕事と構成。柔らかい食感も万人受けするので、九州においてお店のシグネチャーとなりうるタネだ。
赤身の魚とこの方向性の香り(カプロン酸エチル)は相性が良好。それでいてアル添をしているのでキレがあり、失速しない。
対馬産。脂がしっかり乗っているが、北海道のものよりは軽く、シャリの酸味によって脂の印象を強く感じさせる印象だ。
言わずと知れた【日高見弥助】。辛口の方向性だが、お米の甘味が活きる。提供のタイミングが重要な銘柄だ。
煮キリ醤油に加えて、海老の殻を味噌ごと揚げて作った海老オイルを使用している。周囲は火入れによってしっとり、ホロホロとほどけ、中身は生ながらぷりぷりしすぎない範疇で火を入れている。海老オイルは海老の香りを鮮烈に付加するが、決してオイリーではない。ちゃんと海老の甘味と食感に向き合っている素晴らしい仕事で、地海老の魅力を引き出している。このようなトリッキーな調味料を用いた際に料理人のセンスがダイレクトに表れる。
かなり軽めの〆なのが九州らしい仕事で、身はむっちり、ぱっつりしつつ、しっとりほろりとほどけてゆく。鯖の脂の甘味と香りがこみ上げてくる。〆が軽いので塩と酸の影響が少なく、鯖の脂をまろやかに活かす仕事である。
壱岐産。ジューシィな脂で、脂の濃密なコクが印象的。壱岐は個人的に応援している鮪の産地だ(サステイナビリティの観点より)。
ここで【いなば鶴 純米酒 生酛強力】とは魅力的なシフト。生酛の燗は鮪に鉄板だ!と再認識する。
甲殻類も含めたアラ汁ベース。
対馬産。甘くとろっと煮て、塩で提供する仕事は長崎においてレアな仕事だろう。
合わせる王祿は力強い旨味と苦味によって濃い味の料理を切る方向性。
以上で握りのコースは終了なので、3貫追加した。以下以外のタネは縞鯵と鮪大トロであった。
漬け。脂が乗っている鰆で、噛みしめると香りも脂も高まる。力強い味わいだ!
寝かせた【貴 特別純米 ふかまり】を燗にすることでコクと香ばしさを開き、苦味も効果的に用いて合わせる。
炭火炙りにより脂を活性化させているカマス。長崎のカマスは実に美味しい。
そこに熟成感、コクのある独楽蔵の燗。香ばしさを合わせる提案。
大村湾のものとの事でレア。明礬不使用。濃密な甘味に強い針葉樹的な香りがある。入れ物はプラパックとの事なので、木箱の香りではなく海胆自体の香りの個性だと思われる。
【瀧自慢 JAPAN PROUD 純米酒】。燗酒から冷酒に戻す提案は自身も行うので好感を覚えた。
長崎の地で干瓢巻とは痺れる。コリコリした食感かつ甘味のある干瓢。故にシャリの酸味を強く感じさせる。これは良い構成。干瓢巻きは自身のシャリのプレゼンとなる。
完全に「プリン」として作っている玉子焼きでフィニッシュ。
「鮨政」さんは長崎の中心地からバスで20~30分離れた「飽の浦」にあります。
周囲には三菱関係の工場、企業が多いので、それらのニーズを見込んで先代が開業されたのでしょうか。
周囲の人以外はなかなか訪問しづらい場所で、しかも日本酒は飲んだ方が良いお店なので、バス、タクシー、代行のいずれかが望ましいです。
ただ、バスを降り間違えると次のバス停が2.2km先になり、トンネルの中を延々と歩いて戻らないといけないので要注意です。
お店は外観も内装も如何にもな街場寿司店で、これはこれで落ち着きます。
とは言え、内装的に街場寿司仕様のため、漬け場とカウンターのデザインは盛り込みが前提になっていて、昨今の提供スタイルだとお客さんへの提供がやや難しそうでした。
立地的にも内装的にも移転リニューアルを模索されているようなので、今後にご期待ください!
「鮨政」さんについては、お電話もしくはインスタグラムのDMでの予約となります。
店名:鮨政(すしまさ)
シャリの特徴:シャリは、硬さ、温度、粘度ともに良好で、赤酢のみ、砂糖を用いない江戸前のスタイル。
予算の目安:おまかせ7,700円~
TEL:095-861-6672
住所:長崎県長崎市入船町12-2
最寄駅:なし(公共交通機関はバスが便利)
営業時間:昼12:30一斉スタート、夜18:00~20:45の間の受付
定休日:不定休
長崎でお気に入りのお店です。
長崎が誇る、全国から伺うべきレストラン!雲仙「villa del nido(ヴィッラ デル ニード)」 歴史や伝統を超えて、郷土の美食を伝える名店!長崎「史跡料亭 花月」
鮨が弱いエリアでご当地江戸前鮨に出会うと感動を覚える、すしログ(@sushilog01)でした。
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