
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
この度、2024年11月にお伺いして「長崎を代表する鮨店だ!」と確信した「鮨 政」さんが、移転・リニューアルオープンを遂げました。

お店の名前は「鮨 白雲」。
井手親方の気合と想いが込められた新店です。
オープン後1週間ほどのタイミングで訪問したところ、相変わらず高品質な御当地江戸前鮨を握られていて、新店ながら安定感が抜群でした。


こちらは長崎を代表する鮨店、いや、ジャンルを超えてグルメな方に愛されるお店となります。
日本酒ペアリングについても、全国トップクラスのセンスと提案力を誇ります。
親方が肩の力を抜き、ご自身の才なり得手を自然に認識した瞬間に、真の覚醒が始まることは間違いありません。

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「鮨 白雲」は2025年10月10日にオープンした鮨店です。
親方である井手 宗一郎さんは、移転前の「鮨 政」の記事に書いた通り、ほぼ修行経験なくして職人となった方です(経緯については上記記事をご参照ください)。
2024年11月にお伺いしたところ鮨の完成度が高く、シャリが扇の地紙型であるばかりでなく、握る際に掌を打ち鳴らさず、捨てシャリも無く、まして形を整えるために手数を増やすこともされず、実に粋な実力者だと感じました。

そして、使用する魚はほぼ全て長崎県産。
井手親方のように地魚を用いて洗練された江戸前鮨を出すお店は長崎には無いので、今後「長崎の鮨と言えば白雲」と言われるようになるはずです。
今回の訪問では天候の都合で県外の魚も使用されていましたが、基本的には地魚メインでされたいと意気揚々で頼もしい限りです。

生命線のシャリは比較的硬めの炊き方ながら軽くもっちりしていて、移転前から変わらぬ良い炊き加減。
お酢は赤酢で、砂糖による甘味を用いない古典的な江戸前のスタイル。
酸がふわりと立ち、長崎においては大変洗練されている印象を与える調味です。
塩気も良いバランスで、移転前よりもより上品な方向性にシフトされている用に感じました。
温度は人肌で、タネによって微調整されています。

移転後の店舗は有名な老舗「吉宗」からすぐの好立地。
店内の意匠はしっとりした雰囲気で上質ながら重たすぎず。
BGMはJAZZピアノでシックです。
「鮨 白雲」のおまかせコースについては、夜は1回転のみで18:30からの【夜のおまかせコース】16,500円となります。
お昼は2回転制で価格を変えており、①12:00【お昼のおまかせ握りとお料理のコース】16,500円、②12:30【お昼の握りおまかせコース】8,800円と、ニーズに応じた利用が可能です。
井手親方の「幅広い方に来て欲しい」との想いが込められたシステムです。
お酒についてはこの通り。

個人的には日本酒ペアリングを強くオススメします!

東京から訪問すると10月中旬と言っても暑く感じる一日だったので、一杯目はビールからスタートしました。
一杯目にビールやハイボールを頼んでも、魅力的な日本酒ペアリングをご提案いただけます。
2025年10月の訪問でいただいた内容です。

先付の器から気合いを感じた。すり流しの温度はほんのりと温かく、甘味と出汁を楽しませてくれる温度帯。酢橘の皮も爽やかかつ程良い使用量だ。

次いで九谷。開店に合わせて器を多数新調されたそうで、器も抜かり無し。カマスの産地は伊王島。皮のみサクッと、身はむっちり、しっとりと焼き上げて艶かしく。脂をナチュラルに表現している。玉ねぎ醤油は甘味があり長崎らしい味に感じるが、あくまでも上品な範疇で舌を決して甘やかさない。

冷酒用の酒器は薩摩切子。

五島の金目鯛酒粕のソース、焼き茄子のお浸し、鮟肝、メヒカリの揚げもの、鮑、焼きいちじくの白和え。金目鯛は直前に炭火焼きを行い、八寸としてバッチリの配慮(全て作り置きだと興ざめだ)。さらに火入れが魅力的で、あくまでも脂を溶かす程度で衒いが無い。金目鯛の香りも活かす仕事である。金目鯛自体の脂の乗りは凄い。水揚げ20本の内の1本だったそうだ。メヒカリも揚げたて。いちじくの白和えはいちじくの甘味が濃密ながら焼きによる香ばしさといちじくの爽やかな香りと酸味が加わりバランスは良好。鮑はしっとりと柔らかくむちむち。塩気もバッチリで、肝に油脂を加えないサラリとした自然な方向性もまた好感。鮟肝も然り。定番の提供法ではなく裏ごししたピュレで供し、ぶぶあられを加えて香ばしさと食感、もち米の甘味を加えているのがお洒落だ。

一杯目に秋あがり(ひやおろし)の特別純米とは、センスが良い。純米吟醸、まして純米大吟醸ではなく、旨味を合わせつつ料理を邪魔しない提案だ。

ガリ代わりの蕪の上品な甘酢漬け。

この後、握りに移行するので燗酒を織り交ぜてペアリングが展開される。

寝かせによるねっちりとした食感がシャリに馴染み、強い脂を横溢させる。酸味の効いたシャリとのコントラストが魅力的で、現代的なタネと仕事を用いてキャッチーな名刺代わりの一貫を表現している。

攻めている日本酒のチョイスだ。香の物、特に奈良漬けのようなペアリングが印象的であった。

塩と酢橘で提供。トロトロの中に細切りの輪郭を感じさせる。甘味が強く、酢橘は極めて上品な使用量なのでアオリイカの味を満喫できる。

まさに桃のような甘酸っぱさ!そして、フィニッシュは軽く、硬水らしい苦味がありながら重たくならない。甘味の強さの理由は麹歩合が高く、酸味を感じさせるのは白麹ゆえかな?甘さと酸味に振りつつ、低アルコールでも旨い。アオリイカの甘味にポップな果実的なペアリングだ。

脂が乗っていてぱつり、むっちりと食感も快感。寝かせているが食感と香りも活かす仕事は見事。香りは寝かせる前よりもこなれていて、食欲を刺激する方向性に変化している。大葉を噛ませつつバランスが良い。シャリの酸味も活きる。

石鎚のペアリングはバッチリだ。香りも味も行き過ぎたところが無く調和する提案。実に硬派。

海老オイルが過去よりも上品に用いられている(海老オイルは海老の殻を味噌ごと揚げて作ったもの)。火入れが半生故に印象を強める調味料で、活きている。半生でむっちり、しっとりした食感だが、甘味を十分に感じさせてくれるのが良い。オリジナリティあり魅力的な仕事かと!

山三の金紋錦。強い酸とコクのある苦味が持ち味で、ぬる燗にしてまろやかさをアップさせている。

〆つつむっちり感を出し、ぷりっとした食感。五島でこの脂の弱さは海の状況を慮るばかりだ。しかしながら仕事は良い。ベストの鯖でいただいてみたい!と思わされる。

磐城壽をさらに温度上げて燗酒に。ナイス。燗酒でも原酒のパンチがあるが、加温によって甘味も高めている。鯖の香りが強いので良い提案だ。

漬け。脂が強いトロなので塩味がやや強めの漬け加減が相性良く、同時に甘味を控えているのが良い。ペアリングすると相乗効果が抜群だ!

九州初上陸とのこと。酒米は高精白可能な越淡麗だが精米歩合は70%。新潟らしく淡麗辛口の方向性ながら旨味があるお酒を温度高めの燗酒で甘味を引き出してトロに合わせるペアリング。

産地は諫早の小長井。痺れるほどのバッチリ〆だ!塩気や酸味は九州としては強めながら上品な範疇である。しっとりしていて、極軽くとろりとした食感。〆てから寝かせは4日か?と聞いてみたところ、ビンゴであった。

小鰭に水酛を合わせるとは素晴らしい!!冷酒での提供。ミルキー感が抜群に合う。小鰭には酸を乗せるかミルキー感を合わせるのが良いと確信する。

島原。強烈な甘味があり、香りも苦味もネガティブな要素は無し。シャリは低温で提供し、バランスを取っている。

林の雄町を冷酒で。香ばしさと苦味を添える。海胆に対して酒質を重たくせず、それでいてコクや香ばしさを添える提案は絶妙だ。温度のバランスも良し。

対馬。ホロホロな食感で、甘味は抑えめ。煮ツメのコクと香りがバッチリ。煮ツメに軽い酸もあり、これが良い。

ここで山廃!旨味と酸味がバッチリで、燗酒であるのも最高だ。

上品な甲殻類系の出汁の味噌汁。ゴリッとした食感のネギが爽快。まろやかな味噌とのコントラストを食感で付けていて良きアクセント。

デザート志向のプリン玉子で、移転前から変わらず。ぷりっとした部分ととろりとした二層。卵のコクと香りがあるのがデザート志向の玉子焼きとしては非常に良い。

彩來 Sara the starry night Altair。かなり面白い提案だ!玉子と合わせると、お酒の甘味以外の味覚が際立つ。酸と微発泡。これは玉子単体でもお酒単体でも味わえない体験で、ペアリングの妙。

キリッとした方向性で、メイラード反応の香ばしさとホロ苦さを感じさせるのが素晴らしい!何よりも長崎でバッチリ用意されているのが素晴らしい(しかも、柔らかめ、甘めの方向性ではなく)。
「鮨 白雲」さんについては、テーブルチェックでWEB予約が可能です。
鮨 白雲(食べログのリンク)
店名:鮨 白雲(すし はくも)
シャリの特徴:赤酢を巧みに用いて酸味を立たせ、塩気の塩梅も良し。温度管理もバッチリ。
予算の目安:夜18:30【夜のおまかせコース】16,500円、お昼①12:00【お昼のおまかせ握りとお料理のコース】16,500円、②12:30【お昼の握りおまかせコース】8,800円
最寄駅:思案橋電停から220m
TEL:080-6413-4406
住所:長崎市万屋町5-29 樋口ビル1F
営業時間:12:00~、12:30~、18:30~
定休日:不定休
長崎で僕が愛するお店


御当地江戸前鮨をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)でした。
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