1474年に有馬貴純によって大村藩を奪われた大村純伊。
現在の唐津の方まで逃れ、7年後の1480年に大村を奪還する。
その際、領主の勝利と帰還を喜んだ領民が生み出した寿司こそが、大村寿司です。
なんでも、「もろぶた」と言う浅く大きな木箱に酢飯を広げ、具と酢飯を交互に挟んで作った押寿司で、武士が脇差しで切ったと言う伝承があります。
ゆうに540年ほどの歴史を誇る郷土寿司。
540年前と言えば、鮓の歴史としては、早鮓が生み出された頃に該当します。
鮓は現在で言う関西(滋賀〜和歌山エリア、京都〜大阪エリア)で生まれたため、九州の「端っこ」とも言える大村湾の周辺で、このような酢を使った早鮓が生み出されたとは、食文化史的には中々興味深いように感じます。
(滋賀〜和歌山エリアで生まれた「ナレ」は、室町時代以降に発酵期間を短縮した「生ナレ」となり、その後、発酵を伴わない早鮓へとなりました)
文献が見当たらなかったため、この度は史料による裏付けが出来ませんが、相当昔から根付いている事は間違いないため、鮨好きとしては訪問せざるを得ません。
大村寿司の歴史の長さもさることながら、こちらのお店も大村では老舗で、100年以上の歴史があるそうです。
(寿司の歴史からするともっと古い老舗があっても良いように感じられるかもしれませんが、もともとはお祭り、祝い事で作られる郷土寿司なので各家庭で作られていたのでしょう)
お店は結構な席数があり、地元の方々は大村寿司よりも他の食事目当てで来られております。
こちらの寿司作りで凄いなと思ったのが、酢飯へのこだわり。
シャリ切りは店主自らが行っておられ、米は新米に古米をブレンドすると言う。
江戸前の握り鮨なみの酢飯への思い入れには頭が下がります。
頂いたものは、【角ずしとお吸い物のセット】890円。
素材感のある出で立ちとボリューム感なので、届いた瞬間に「おおっ」思います。
これは現代でも特別感がありますので、当時はもの凄いインパクトがあったのではないかと想像出来ます。
味わいとしては、まず気がつくのが甘み。
長崎の料理の特徴は甘みにありますが、大村寿司もまた然り。
酢飯も通常の寿司に比べて甘みが立っており、表面(錦糸卵)も甘めの仕様です。
どうやら、グラニュー糖と甘酢をまぶしておられるそう。
このように書くと、大変甘いのではないか?と思われるかもしれませんが、実はしつこくない甘みなので、さして気になりません。
言うなれば、優しさのような甘みです。
具は、薄切りにした干瓢、椎茸に醤油で炊いたゴボウの微塵切り。
更にシャクシャクした微細な食感があり、なんと奈良漬。
食感と風味が加わり、これは面白い。
錦糸卵の下には二色の蒲鉾がまぶされており、色彩を与えております。
一般的な押寿司のようにみっちりと詰めておらず、割と軽やかなところが印象的でした。
なので、見た目のボリューム感とは裏腹に、最後まで飽きずに頂けました。
確かに郷土寿司的、家庭的な味わいですが、本場で頂けて良かったと思います。
自身で作るならば、現代的に穴子や魚の切り身を混ぜたいと思いますが(笑)
店名:元祖大村角ずし やまと(がんそおおむらかくずし やまと)
予算の目安:720円〜
最寄駅:大村駅から850m
TEL:0957-52-3546
住所:長崎県大村市本町474-5
営業時間:10:00~20:00
定休日:火曜
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