
こんにちは、鮨だけでなく野生食材が大好物の、すしログ(@sushilog01)です。
さて、都会に暮らす身として、年に2回どうしても旅して食したいのが春の山菜と秋のキノコです。
東京でもそれらの食材を駆使する魅力的なお店がありますが、土地の風や音を感じて食すと感動ひとしお。
純粋な味だけでなく、土地の味を求めて旅をするのが現代都市住民にとってのよすがではないでしょうか?
この度、長野で訪問した「山肴野蔌」さんは、正にそのような欲求を満たしてくれる素晴らしいお店でした。


店名のとおり山野で採れる野草やジビエ肉を好む方なら、確実にヒットします!
食べログには登録すらされていませんが、旅する目的となるお店です。

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「山肴野蔌」さんは2024年5月に、伊那市の長谷という集落にオープンしたお店です。
この集落は非常に魅力的で、道祖神はもちろん「中尾歌舞伎」と言う農村歌舞伎が伝承される土地です。
黄昏時や朝には鹿の声が響き、名所はなくとも風光明媚です。

「山肴野蔌」のオーナーシェフは、「山師料理人」として知られる長谷部 晃さんです。
「ジビエと山師料理の宿」として知られた「ざんざ亭」を営んでおられた方で、僕は茅野の名店「無名」の唐木さんから強く推薦いただいていた次第です。
しかし、訪問のタイミングを窺っていたところ閉店され、その報を聞いた時はショッキングでした。
その後、Facebookの情報を確認し続け、「山肴野蔌」としての復活を心から喜び、今回満を持して訪問しました。

お店の魅力については、長谷部さんが自ら採取、狩猟される山野の食材と、自由な発想で組み立てられる独創的なお料理に尽きます。
食材にしても調理にしても、こちらでしかいただけないものばかり、…と言うよりも、ここでしかいただけないもの「しか」ないので、食べこんでいる人ほど感動が増幅されるお料理たちです。

初めて出会う食材や予想のつかない取り合わせにワクワクする人ならば、コースの最初から最後まで釘付けになるでしょう。
長谷部さんはもともと林業をされていたと聞きますが、だからこそ自由な発想でお料理を作られていて、しかも高度に設計するセンスをお持ちの方だと感じました。

なお、お昼については「食堂 野山」と言う別の屋号で営業されています。
コース料理をワンプレートに集約するコンセプトのもと、魅力的な定食を作られています。
営業は金曜、土曜、日曜の3日間のみですが、いただいてみたいと強く感じました。
「山肴野蔌」のコースについては、おまかせ15,000円の一本です。
そして、ペアリングも行っておられ、お客さんのニーズや飲酒量に合わせて3,000円〜10,000円で提供されています。
僕らはもちろんペアリングでお願いしました。
非常に魅力的な内容なので、お酒が好きな方はマストです!

それでは、2025年4月末にいただいた内容を紹介します。

軽やかな味わいで、お米由来のミルキーな印象があり、ヨーグルト的な香りがふんわりと漂う。甘味が弱く、酸味が爽快で、苦味も軽やかなスッキリした方向性のビールだ。

鹿の血のタルト、チチタケのビスケット。
【鹿の血のタルト】には、グラニースミスの炭火焼きが挟まれている。香りが良く、コクもたっぷりだ!グラニースミスの酸味が魅力的に合う。
【チチタケのビスケット】には鹿のレバーペーストが使用されている。こちらも香り良く、スモーキーフレーバーが活きている。
ともに内臓系を「誰もが美味しい」と感じる形で提供されていて、お店のシグネチャーアミューズとしてふさわしいと感じた。

標高の高いところに生息しているそうだ。殻ごと粉砕して出汁として使用されている茶碗蒸しである。上には身と、タネツケバナをあしらっている。甲殻類系の旨味と香りが楽しめる魅力的な茶碗蒸し。身も旨味がたっぷりだ。

香ばしいフレイバーがザリガニの香ばしさにピッタリ!マスキングすることなく同調させるペアリング。

山菜は、ノビル、蕗、タラノメ、コゴミで、薪焼きにしている。振りかけられている「鹿節」は鹿肉を味付けして燻製させたもので、味わい深い!山菜を薪で美味しく調理したうえで、鹿節が山菜を最高に演出してくれる。

山菜の油脂感や香りに強めの酸味を加えるペアリングで、バランス良し!

宮田村で養殖される「息吹サーモン」を、ワッカアグリの糠でマリネしている。今の時期は鱒の脂が抜けるため、穴熊を併用している…と言う発想がユニークだ。さらに、クリタケの発酵ソースを用い、糠漬け、二輪草をあしらう。鱒自体の味わいに穴熊の油脂が自然と調和する点が驚きだ。そして、クリタケの香りが上品に漂い、再仕込み醤油のコクが印象を接続させる。そして、鱒の香りも楽しませる。かなりサプライズがある創作料理である。

上品な青メロン香に清涼感あるセルフィーユ。原酒の香りと微発泡。ふくよかな甘味がありつつ、キリッとした旨味ある苦味のフィニッシュ。酒米は金紋錦。

レバーは低温調理を施し、ヤブカンゾウ、コシアブラ、アマドコロを使用した春巻きだ。ソースは宮田豆腐と「鹿もろみ」で作られている。噛み締めた瞬間に、山菜の香りと味わいが複雑に広がる!レバーの香りも良く、油脂の中で活きる山菜のホロ苦味はもはや快感と言っても過言ではない。取り合わせの妙だ。ソース単体だと酸味が強めに感じるが、春巻きの油脂や山菜の苦味と合わせるとバッチリの相乗効果を発揮する。これは鮮烈な印象を与える一皿だ!

まろやかな甘味にキレのあるコクを与える苦味。生酛造りのお酒としてはドライな方向性なので、味わい的に同調しつつ春巻きの後に軽やかなフィニッシュへと導く。

鴨はカルガモ、鴨出汁、燻製鹿のかえし、矢澤農園(中川村)の発酵レモン、浅葱、タケノコ、花山葵。血の香りは優しく、カルガモかつ日本らしい仕立てだ。軽やかに美味しい。ただ、酸味があり、血の香りはじわじわと高まるので、ジビエ好きでも物足りないと言うことは無いはずだ。

出汁が旨くて印象深く、発酵レモンの酸味とホロ苦さも素敵なアクセント。そして、浅葱の香りがあるとなんだか安らぐ方向性になるなあ…と実感。

あたかも上品なイチゴのジャムのように合う。全般的に素晴らしいペアリングであり、ワインの使い方が日本の食材、調味に合うと感じた。

鹿肉は外ももの薪焼き。ソースは香茸、醤油、味醂、鹿出汁。山椒は、ヤブカンゾウ、花山椒、わらび、コシアブラ、クレソン。鹿の香りと旨味を満喫できて、やはり鹿の魅力は血の酸味だとしみじみ実感。筋肉質で噛みしめて旨い部位を薪焼きで提供する点も魅力。ソースは香茸の香りが上品で、甘味を付けつつも味醂なので後味が軽い。山菜に苦味があるので実にバランスが良い。

スパイシーな香り、酸味と苦味のキレが山菜ならびに鹿の血のニュアンスに合う。

山菜ご飯、猪の首肉を用いた味噌汁、香の物は自家製すんき。パーフェクトな景色。

山菜をシンプルに塩で食べさせる、実に素晴らしいご飯だ!お米ももっちりして、甘味もあって美味い。すんきは清涼感のある酸味と香りが魅力。

猪の首肉自体は意外にも歯切れが良い。噛みしめると脂がジュワッと滲み、どことなく「上品にジャンキー」なテイストだ!肉を噛み締めた時の香ばしさが素晴らしい。

塩漬け桜入りケーキ、杉の森酒造の酒粕入り。ウワミズザクラの葉入りのアイスクリームなので、杏仁豆腐の香りを思わせるアイスクリーム。甘味を抑えていて、バランスが素晴らしい。葉の塩気も相まってコースの最後に絶妙だ。季節感も感じられる。

落ち葉を乾燥させたカツラの葉、いちじくの葉、かきどおしのハーブティー。小菓子は伊那谷の蜂蜜を用いたフィナンシェ、ヤマグルミと黒糖のクッキー。
「山肴野蔌」さんは、Facebookメッセンジャーでの予約となります。
山肴野蔌(食べログのリンク)
店名:山肴野蔌(さんこうやそく)
予算の目安:おまかせコース15,000円、ペアリング3,000円~10,000円
TEL:なし
住所:長野県伊那市長谷中尾512
最寄駅:なし
営業時間:18:30~
定休日:不定休
※夜は限定1組となります
伊那の魅力的なお店たち


ご紹介いただいた唐木さんの「無名」

食のために死ぬまで旅行し続けようと誓う、すしログ(@sushilog01)でした。
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