高知県の郷土料理と言えば、何を思い浮かべますか?
間違いなく9割くらいの方が、鰹のタタキを思い浮かべるのではないでしょうか?
実際、現地に行くと何処もかしこも鰹のタタキを推しており、目を瞠るものがあります。
しかし、僕を驚かせたのは、高知に郷土寿司文化が定着していること。
様々な寿司が飲食店だけでなく、市場やスーパーで普通に売られており、高知の方がここまで郷土寿司を好きだとは、想像だにしませんでした。
まず、初日の晩に頂いた寿司が、これ。
土佐巻です。
具は鰹のタタキで、タレに軽く漬けた後に巻いております。
面白いのが薬味で、紫蘇以外にニンニクを使っております。
タタキ単体だと確かに必須の薬味ですが、寿司にまで用いるとは!
それでいて、ニンニクは水にさらして苦味を除去し、水菜も入れて瑞々しさと食感を与えております。
予想外に完成度の高い巻き寿司でした。
そして、次に頂いたのは、田舎寿司。
田舎寿司とは、高知の山間部で食される郷土寿司で、タネに野菜を用いるところがポイント。
さらに、酢飯の酢には柑橘類を用いることが多く、柚子が一般的なようです。
見た目は何とも可愛らしいですが、これが素朴ながらに美味しいのです。
使用される野菜タネはタケノコ、ミョウガ、椎茸に加えて、コンニャクやリュウキュウ(ハスイモ)など。
野菜の寿司なんて!と思われるかもしれませんが、馬鹿に出来ない個性があり、一度頂くと印象に残る味わいです。
個人的には、田舎寿司を食わずして高知を去るなかれ、と感じました(笑)
野菜を用いてまで寿司を食べようとするなんて、素晴らしい寿司愛じゃないですか。
そして、最後を飾るのは、鯖寿司。
まるまる一尾使用した、姿寿司もありましたが、京寿司と同じく巻いてカットしたものが一般的でした。
鯖寿司は本当に何処でも売られており、驚きました。
しかし調べてみると、足摺岬近海で獲れる鯖を「清水さば」として売り出している模様。
この界隈の海流は激しいため、引き締まった身の鯖を楽しめるようです。
〆たもの以外に、焼き鯖寿司もありました。
なお、鯖以外に、鯵、カマス、太刀魚を用いた寿司もあり、高知の方が「おにぎり感覚」で寿司を食べられていることを知りました。
主要な寿司文化と言えば、京都、大阪、東京(江戸)をイメージし、その他の地方は江戸前鮨(握り)を独自に進化(ないし応用)させている状況ですので、
高知で郷土寿司が独自の発展を遂げ、定着していることには心から嬉しく思いました。
なお、オマケで、今回頂いて印象深かった食材・料理も下記にご紹介します。
ウツボ
美味しくなさそうな外見をしているウツボは、実は大変美味。
身はプリプリしており、力強い食感。
皮の下には芳醇なゼラチン質が控えており、噛みしめるとじゅわっと旨味が滲みます。
脂の粒子は細かく、ねっとりと下に絡み、やみつきになります。
断じてゲテモノではありません(笑)
タタキでも頂きましたが、身の繊維質をより楽しめました。
脂を楽しむなら揚げ物、身を楽しむならタタキという印象です。
鯨
高知には江戸時代から捕鯨の文化があり、今でも至るところで鯨料理を楽しめます。
江戸の捕鯨風景のジオラマ
市場では上記のような煮込みが売られ、料理店では繊細な料理に出会えます。
コウロウ(石垣鯛)
東京では馴染みがやや薄いものの、高知では一般的に食されるようです。
何とも言えない甘くもさっぱりした脂と、固有の香りが美味しいです。
蛤
東京で国産の蛤と言えば、三重県のものがダントツの知名度ですが、
高知県産も非常に強い旨味を持っております。
滋味に溢れるつゆに浸かった肉厚な蛤にうっとりしました。
はちきん地鶏
地鶏ながらに繊維は程よく切れ、皮下の脂はぷるっとほどけます。
食べやすく旨い地鶏だと感じました。
土佐あか牛
熊本県のあか牛とは異なる香りがあります。
熊本のあか牛は野性味があり、高知のあか牛は爽やかな印象です。
最も、様々な部位ごとに食べ比べていないので、これ以上の感想は控えておきます。
斯くの如く、高知県は食材の宝庫で、行く前のイメージが一新されました。
初鰹、初夏だけでなく、四季を通して各々の魅力があり、
聞けば、地元の人は秋が一番美味しい食材が多いとのこと。
これは何度か行かなければならないなと思いつつ、高知を後にしました。
【参考:この度お伺いしたお店です】
割烹、ふじ味さん。5,000円からお任せで、一級品の食材を頂くことが出来ます。
活気のある居酒屋。ご主人は「名物」みたいです。→閉店してしまったようです
利酒師の方が営む居酒屋。 仕入れにこだわりが見えます。
ベタですが、ひろめ市場は手っ取り早く食文化を俯瞰することが出来ます。
鰹だらけですが…(笑)
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