こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
さて、【江戸前の握りずし】が大好きな自分ですが、大阪や京都の寿司も大好きです。
しかし、違いについて細かく説明しているサイトが少なく、説明していたとしても情報が間違っているサイトすらありました。
これはあまりにも悲しいので、今回まとめようと思い立った次第です。
すしログ
ですが、タイトルにある通り「実はおもろい」のが大阪を中心とした関西の寿司です!
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現在「すし」と聞けば、大半の人が【江戸前鮨=握り鮨】を頭に浮かべると思います。
しかし、「すし」の歴史を考えると、大阪や京都の【関西寿司】の方が古い歴史を持ちます。
そもそも中国から日本に【ナレズシ】が伝わった事が「すし」の起源となり、滋賀で鮒を用いたナレズシである【鮒鮓】が生まれ、定着しました。
他にも鯖を用いたナレズシや鮎を用いたナレズシが関西各地で生まれ、和歌山県では今でもその名残を見られます。
こう言ったナレズシはお米を乳酸発酵させて酸味を加えた「すし」となります。
紛れもなく【関西寿司】の原点ではありますが、近現代の【関西寿司】は発酵料理ではありません。
(※ちなみに、押し寿司などについて「発酵によって旨味が増す」と説明する方がいらっしゃいますが、発酵ではなくせいぜい軽い熟成です)
時代の変遷に伴い保存性よりも味や調理スピードが優先され事により、お米を発酵させるのではなく、酢によって酸味を加えたものが【関西寿司】です。
その後、江戸(東京)で更に調理のスピードが求められ、編み出されてすぐに大流行したのが【握りずし】となります。
押し寿司、棒寿司よりも手っ取り早く食べたいと。
【関西寿司】なくして【握りずし】が生まれたかどうかは不明です。
代表的なものは、鯖を始めとする各種【棒寿司】に始まり【小鯛の雀鮨】、【箱寿司】、【蒸し寿司】、【バッテラ】など。
「関西寿司」と一口に言っても、大阪と京都で微妙に異なります。
【鯖の棒寿司】は大阪・京都の両方にありますが、京都の方が店舗数は多めです。
それは恐らく「いづう」さんの功績と影響が大きいでしょう。
いづうさんは1781年(天明元年)創業の老舗で、八坂神社の前にある有名ないづ重さん(1868年創業)はいづうさんの暖簾分けです。
さらにいづ重さんからの暖簾分けも生まれ、京都を代表する郷土寿司となりました。
なお、【鯖の棒寿司】のルーツは福井県若狭湾にあります。
昔は若狭の鯖を、現在の福井〜滋賀〜京都を走る「鯖街道」を人力で運びました。
若狭でさばいて塩を振り、京都に着く頃には〆が回って寿司になったと言う算段です。
思うに当時は【鯖の棒寿司】も保存性が重視されたのでしょう。
現在よりも塩気が強かった事と推察します。
そして、現在に残った理由としては時代に応じて調理と調味を変えて来た結果だと思います。
【鯖の棒寿司】には、郷土寿司が今後生き残るノウハウが有るように感じます。
そして、「京都らしいすし」と言えば【鯖の棒寿司】に加えて【蒸し寿司】なのではないかと個人的に思います。
【蒸し寿司】は京都の冬の風物詩の一つで、街を歩いていると湯気を上げるセイロを見かけるかもしれません。
こちらは新京極の乙羽さん。
商店街に面しているお店なので、多分にお客さんの目を引くパフォーマンスの意味もあるのかと思います。
しかし、京都の冬は寒いので、効果は抜群で、ついつい食べたくなります。
一度食べたことがあると、「蒸し寿司」の張り紙を見た途端、あたかも夏に「冷やし中華始めました」の張り紙を見たのと同じくらい食欲に訴求してきます。
冬の京都で【蒸し寿司】を食べたことがない人は、是非とも試してみてください。
さて、天下の台所・大阪と言えば【箱寿司】です。
「二寸八分の懐石」と呼ばれ、味のみならず、見た目も重視される洗練された関西寿司です。
※「二寸八分」とは箱寿司のサイズを指します
各種魚に仕事(=調理)を施した後、専用の箱型で押して作るため、手で酢飯を整形して合わせる握りずしとは全く別の「すし」となります。
美しさと味の完成度の高さは間違いなく「二寸八分の懐石」の名に恥じぬもので、文化水準が高い江戸期の大阪だからこそ編み出された鮓だと感じます。
実は、江戸前鮨(握り鮨)が編み出される前の江戸(東京)でも、箱寿司は大変一般的であった模様です。
庶民はより簡便でリーズナブルな押し寿司を食べていたようですが…。
また、【バッテラ】も大阪を代表する有名な関西寿司です。
不思議な響きの名前の由来はポルトガル語。
鮓の見た目から小舟が連想され、それを意味するポルトガル語「bateria(バッテイラ)」が訛って【バッテラ】になったとされます。
元々はコノシロ(小鰭の成魚)を用いていたそうですが、コノシロの価格が高騰したため鯖で代用して現在に至るそうです。
以下に、関西寿司の美味しいお店を紹介します。
まずは、京都のお店をお届けします。
前述の通り屈指の老舗です。
お店にお伺いしたところ「うちは歴史が無くて、大戦の後どす」と言われました(実話)。
「大戦」とは言わずもがな、応仁の乱(1467年〜1477年)ですね。
僕がお伺いした時は残念なクオリティでしたので、リベンジしようと考えています。
関西寿司も職人さんによって味が大きく変わるんだな…と言う勉強になりました。
錦市場、伊藤若冲の生家跡地近くにある、隠れた名店です。
鯖の棒寿司、蒸し寿司ともに美味しい街に馴染んだ老舗の名店!
特に鯖の棒寿司は京都トップクラスです。
観光地にありますが、バッチリ美味しいです。
街に馴染み、ゆるい雰囲気ですが、大変上品な【蒸し寿司】を頂けます。
次に、大阪の美味しいお店を紹介します。
大阪でも相当好きなお店!
イチオシです!
僕が頂いたのは東京・青山の店舗なので恐縮ですが、大阪寿司でこちらを採り上げないとモグリなので…
美味しさと美しさを兼ね揃えており、調理上のオリジナリティもバッチリです。
天保12年創業の大阪寿司の老舗。
高級志向の上品な箱寿司と、大阪ならではな鯛や穴子の仕事が魅力ですが、過去に比べて味にムラがある点が気になります。
持ち帰りがベターかも?
バッテラ発祥のお店でありながら、1980年代に一度暖簾をおろされ、30年後に代を変えて復活を遂げられたドラマティックなお店です。
知る人ぞ知るバッテラの美味しいお店。
知らないと入らない雰囲気(笑)ですが、大変美しく美味しいバッテラです。
非常に風情のある外観と内装のお店で、これぞ街の大阪寿司!
味だけでなく人情も味わわせてくれる名店です。
江戸時代から続く大阪寿司の老舗で箱寿司も作られていますが、一番人気は【鯖松前寿司】。
京都の鯖寿司とは異なる仕事が魅力的で、「おもろさ」を重視する大阪の文化をこう言ったところでも感じられます。
「言い訳寿司」の異名を持つ大阪寿司。
美しい見た目に家人が騙されて、遊び人を許してしまうそうですが、成程と納得。
流石大阪人、良いネーミングを考えるなと心底思います。
最後に、兵庫県の美味しいお店を紹介します。
脱サラして関西寿司職人に転向した大将の関西寿司。
薬味をたっぷりと用い、爽やかで美しい棒寿司。
ちなみに、これ程までに握りずしが全国に広まった理由は、何だと思いますか?
意外に思われるかもしれませんが、震災と戦争が理由となります。
1923年の関東大震災までは握りずしの職人と言えば、ほぼ東京(関東)に限定されていました。
しかし、震災で失職した職人たちは職を求めて全国に移り住んだのです。
いわば「東京の郷土料理」であった握りずしが、全国区となるきっかけです。
そして、第二次世界大戦後の制度変更が決定的に握りずしを優位にしました。
実は1947年に制定された「飲食営業緊急措置令」によって、日本人による飲食店の営業は禁止されてしまいました。
鮨のみならず全ての料理人にとって厳しい時代が到来したわけですが、鮨に関しては「委託加工販売」によって法令の網の目を抜ける事が可能でした。
これは、配給されたお米と調理代金をお店に持ち込む事で、握りずしと交換してもらえると言うシステム。
お米1合と調理代40円を持ち込めば、握り10貫と交換してもらえました。
「闇鮨」とも呼ばれたとか。
この制度は「すし」の中でも「握りずし」のみに限定されました。
それゆえに、関西寿司のお店でも、生活のために江戸前鮨に切り替えるお店が増えるきっかけになったようです。
その後、鮨=握りと言うイメージが強まり、握りずしの普及スピードがどんどん上がったのだと思います。
さらに、回転寿司が生まれて大衆化して現在に至るわけですね。
多様性こそが寿司・鮨・鮓文化の魅力です。
個人的に考える「江戸前鮨と関西寿司の味覚上の違い」を述べて、まとめとさせて頂きます。
調理方法については大きく異なるのでさて置き、それ以外で個人的に着目する相違点は酢飯だと思います。
そして、要素としては粘度と甘み、出汁。
江戸前の【握りずし】の場合、酢飯は「すっきりした味」で「米粒がほどけ易い」事が重視されます。
かたや【関西寿司】では、多くが圧縮(押す、巻く)された状態で提供されるので、少々事情が異なります。
関西寿司であっても粘度について意識的な料理人はいらっしゃいますが、握りずしほどには深刻な問題ではありません。
そして、粘度以上に、重要な要素としては、酢飯の甘みだと思います。
【関西寿司】では【握りずし】よりも砂糖を用いた甘みが強いです。
これはある程度の期間お米を美味しく保たせるためであり、現代的な江戸前の握りずしよりも魚を強く〆るためとなります。
この伝統、習慣が今でも活きているため、【関西寿司】だけでなく、【関西の握りずし】のシャリも甘く、まろやかなものが多い次第です。
さらに、炊飯時に昆布出汁を用いるお店も多いのが特徴です。
以上の要素を総合的に考えると、まろみを帯びた味こそが関西のすし飯の味と言えます。
今日びの赤酢のシャリに慣れた人は、【関西の握りずし】のシャリは「甘すぎる」、「大人しすぎる」と仰るケースがありますが、こうした文化的な理由を念頭に置くべきです。
大阪寿司は今の世でポテンシャルが非常にあると思っており、大阪寿司を愛する一心で書き上げました。
大阪も新店はほぼ全て江戸前の握りずしですが、大阪寿司でも勝負出来ると思います。
なお、「自分で作りたくなった!」と言う方には、以下の書籍をオススメします。
30年以上前に刊行された本となりますが、古いからこそ、今では貴重な情報が目白押しです。
定価は7,000円オーバーの本なので、古本の流通価格は大変リーズナブルかと思います(執筆時点)。
近年発刊された関西寿司の本は極端に少ないのが残念ですね。
頼みの綱の「あまから手帖」も握りが主体ですが、それは世の流れ(店舗数)的に仕方が無いのかもしれません。
なお、寿司の専門書籍ではありませんが、江弘毅氏の『いっとかなあかん店 大阪』は大阪好きなら必読です!
江弘毅氏は『Meets Regional』を創刊した編集長だけあり、コアなお店を多数紹介されていて、これは名著だと思います。
関西寿司の人気が高まれば特集本もお店も増えるので、気になった方は是非とも巡ってみてください!
関西寿司も大好物の、すしログ(@sushilog01)でした。
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