すしログ No. 189 初音鮨@蒲田

※本記事については、業態が変わる前の内容となります

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丁度8ヶ月ぶりの訪問となりました。

前回の記事(リンク先の先に2014年からの記事もあります)

前回訪問の後、友人たちから(昨年秋の時点で)既に2017年の予約が一杯になったと聞き、驚嘆を覚えたものです。

それと同時に、お値段が更に上がっているとも聞き、今回は正直なところ戦々恐々の訪問となりました。

しかし、結論から述べると、お会計は過去最高額を叩き出しましたが、内容としては圧倒的であり、誰が何と言おうとも「唯一無二の魅力」があると感じました。

光物が弱い時期なので〆の仕事が無いのは残念でしたが、「足し算・掛け算の仕事」は冴えており、圧倒的なスピード感のある流れでした。

 

【初訪問からの変遷(スコアは食べログ上の自身のスコア)】

2014年12月:常連さんを考慮してスコア伏せ、2.4万円 ※サイトのスコアは3.6弱

2015年11月:4.4(掛け値無しに秀逸)、2.6万円 ※サイトのスコアは4.4

2016年3月:4.2(シャリに乱れあり)、2.6万円

2016年8月:3.6(事件があったが、シャリは安定しており味4.4)、3.2万円

2017年4月:4.0(味4.4、CPを考慮)、3.7万円

→その後、おまかせ45,000円に変更され、更に55,000円になりました

 

毎回シャリに少しブレがあるため、その点についても危惧していましたが、今回は前半の粘度は高いものの、暫くすると安定し、やや強めの赤酢の酸味と塩の塩梅は今まででも上々。

(ただ、矢張り、シャリが安定すると更なる次元に上がれるかと思います!)

 

こちらはとにかく「サプライズ」のあるお店で、人気が出ても輝きは色褪せず。

初回訪問時で体感した「シャリを時間軸で合わせる」テクニックは、タネのクオリティと仕事のパワーが向上する事で、以前ほどには前面に出ておりませんが、一発一発のパワーは昔から比べて向上していると感じました。

予約難度の高さと費用だけがネックとなりますが、1年に1回であれば問題無いのではないでしょうか?

また機会があれば再訪したいお店です。

→おまかせ55,000円〜となってしまい、再訪が非現実的になりました(笑)

頂いた日本酒

日高見・しぼりたて純吟本生、初亀・特純、四季桜(唐墨用に供され常温)、

黒龍・純吟、奥播磨・春こがれて待ち(!)、川西酒造・隆

 

いつも通りシャリの「味見」からスタート! 

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久里浜産。塩揉みした後、焙じ茶で茶ぶりし、醤油と味醂で煮た蛸。酢橘2滴。

過剰な味は付いておらず、蛸の香りが非常に強い。

つけ場の遠くで切り付けられたが、ふわっと香ってきた。

かつて蛸の温度帯が低い気がしたり、後のタネに比べて弱い気がした事もあるが、今回は非常に良かった。

強い香りに加えて、やや生っぽい食感が独特で、個性をしかと感じた。

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アオリイカ

千葉勝山産、2.1kg。

アオリらしく甘みが極めて強い。

そして、歯応えは硬過ぎず、ぐにゃりともしておらず、包丁の入れ方が中々良い。

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鹿児島産の初鰹。これまた素晴らしい香り!

漬けて炙っているようで、鰹の香りが最大化されている。

そして、食感は初鰹の瑞々しさではなく、漬けを以てねっちりさせ、シャリとの相性を高めている。

旨味よりも香り…と言うのが初鰹の常識だが、本日の鰹は旨味も強い。

腹周りの身を細切りにして噛ます工夫も光っているのだろう。

初鰹の仕事としては秀逸であり、江戸ッ子が泣いて喜んだ初鰹を、江戸前の技法である漬けを施し、更なる仕事を2つ加えて江戸前として昇華させている。

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唐墨とゲソ

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たっぷり使用された唐墨はしっとりとした食感で、味覚的、食感的にシャリに合う。

あたかも鱈子のような食感の唐墨。

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そして、さっと湯がいて干して焼いたゲソが香ばしさと食感を加え、唐墨とのコントラストを生み出している。

塩気はやや強いもののシャリと合っている。

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ガリ

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真鯛

千葉勝山産。こちらの名物的な仕事。

塩で〆てから8日寝かせており、鯛の旨味を強く引き出している。

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海松貝

通常は水管のみを握るが、ヒモと未成熟の卵巣も使用。

卵巣は非常に甘く、水管、ヒモと、異なるレヴェルの甘みが複合的に押し寄せる。

貝にも創作的な工夫を加えるのは、こちらならではだろう。

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真子鰈

江戸前の初物。身、縁側、肝を使用。

走りなので旨味は旬の物に劣るが、肝で補強している。

蛸、初鰹、真鯛、真子鰈など、タネは紛れも無い江戸前を用いており、他には無い仕事に仕上げている点は変わらぬ魅力だ。

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熊本産。腹と尾側を両方用いる。

鰻も相変わらず良い仕事。

鮨で鰻を出されると「江戸前ではない」と言う人が未だにいるが、それを言うとノドグロ(アカムツ)や鰆を用いる事も「江戸前ではない」と言う事になる。

結局、好みと印象の問題なのだろう。

鰻を「江戸前ではない」と言う人は何故だか他の「非江戸前のタネ」に言及しないのが不思議である。

鰻はシャリとの相性が良く、香りと脂の力強さにシャリの酢の酸味が混ざり、濃厚な味わいを楽しませてくれる。

パリッとした皮の食感も、海苔以外に痛快な食感を交える事が出来る。

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虎河豚白子

切り付けられた時、とても握りに用いるとは思えないボリュームで失笑した。

しかし、巨大な白子を炙り、見事に握りとして提示。

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ボリュームに反して味覚的、食感的バランスは良好で、それは抜群の火入れ抜群が成すところだろう。

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ひたすらねっとりと甘みが舌に絡まり、焦げ目に煎餅的な香ばしさがあるため、舌が疲れない。

二貫目は酢橘を絞って提供。

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鮪赤身

那智勝浦産のはえ縄で、245.6kg。

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得意の漬けの仕事は、火入れしながら煮詰めて育てた11年モノ。

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赤身は時期ゆえにサイズが大きくても甘みが弱く、香りと鉄分も軽やか。

赤身の好みを左右する旨味と酸味のどちらに対しても弱い。

尚、鮪は以前2貫出して、塩と漬けで食べ比べを提案されていたが、現在は止めておられる。

理由を伺ったところ、鮪にばかり引っ張られて(コストがかさみ)、全体に影響を及ぼすのは本意では無いと感じた、との事。

その志に心からの賛同を覚える。

そして、実際にこの度は全体的な構成が秀逸であった。

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鮪中トロ

こちらは塩で。

甘みと繊維質のほどけ方は中々良いが、やはり爽やかな味わいである。

また、親方流の心意気なのかもしれないが、流石にシャリに対してタネが大きすぎる(笑)

握りとしてのバランスを崩しており、今の時期の鮪を活かし切れていない印象。

恐らくバブリーなお客さんはサイズや産地で喜び舌が曇るのだろうが、握りは全てタネとシャリのバランスに尽きるもの。

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毛蟹

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香りが素晴らしく良く、ザ・蟹!と言う存在感。

茹でたての熱々な蟹をすぐさま捌く事によって感じられる香りと甘みがある。

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尚、蟹のパーツを酢飯に混ぜ合わせられるのを見て、今更ながら「シャリの水分含有量が上がって味が落ちないか」と不安を抱くも、頂いてみると上記の通り杞憂に終わる。

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時が経ち硬くなってきたシャリに蟹エキスが浸透し、絶妙なタイミングでシャリを活かす。

そして、丁寧に噛みしめてみたところ、食感の組み立て方も巧い事に気付く。

ほぐしていないしっかりした身も効果的に配合され、

完全にほどけさせるよりも「蟹らしさ」を強く与える事に繋がっている。

これには間違い無く進化していると感じた。

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鮪大トロ

矢張り、この香りには問答無用で食欲と感情を揺さぶられる。

心からテンションが上がる。

そして、炙る事で適度に大トロの脂が落ち、表面の身が引き締まり、魚味が活きる。

大トロについては赤身、中トロよりも今の時期の鮪を活かし切っていると感じた。

漬けと炙りを駆使した新生江戸前仕事。

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鮪極太巻

ほぼ鮪であり、大トロの炙りと共に「初音鮨に来たな」と実感させ、喜びを与える太巻。

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干瓢巻

食感はシャクシャクと強めで、甘みも強いところが特徴。

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玉子

芝海老を用い、ふっくらしっとり丁寧に焼き上げている。

干瓢とのワンツーで美しいフィニッシュとなり、江戸前鮨店として、干瓢、玉子で終わらせるのは様式的に美しい。

 

写真撮影禁止の頃から今後とも、応援しております。

 

店名:初音鮨(はつねずし)

シャリの特徴:甘みを排除し、赤酢と米酢をブレンド。味わいを時間軸でコントロールする。

予算の目安:20,000円~26,000円→2019年よりおまかせ45,000円~→2020年おまかせ55,000円~(前払い)

最寄駅:蒲田駅から360m

TEL:03-3731-2403

住所:東京都大田区西蒲田5-20-2

営業時間:17:30、20:00開始の2回転制 →15:00、17:00、19:00の3回転制

定休日:日曜、祝日 →水曜、木曜、日曜、市場休場日

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