すしログ日本料理編 No. 61 銀座しのはら@銀座

2016年10月に滋賀から東京に移転したしのはらさん。

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滋賀時代から全国の食通を唸らせてきたお店の東京進出であるため、移転前から食べ歩き好き達の間で話題を集めておりました。

僕は滋賀時代に予約を試みつつも2回振られていた為(笑)、僕も折を見て伺いたいな…と思っていたところ、ありがたきお誘いを頂き、11月末に訪問する事が出来ました。

事前より料理が「個性的」である事は知っておりましたので、銀座出店後の情報や料理写真は一切見ずに訪問しました。

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料理を頂いた感想としては、率直に、ご主人の篠原武将さんは非凡な才能をお持ちであると感じました。

初回訪問でそのように感じた理由(=料理の魅力)は下記の3点。

1. 古典的な調理や食材を用いつつ、モダンにアレンジする事に成功している、

2. 自由な発想で食材を選択しつつ、日本料理の枠組に収める事に成功している、

3. 調理は基本的に雄々しいものの、細やかな仕事を施し繊細さも併せ持っている

1と2は言葉で言うのは簡単ですが、日本料理で重要な「ギリギリのライン」を超える可能性を孕んでいる為、センスが要求されます。

ラインを超えない為には、包丁や火入れと言った基本的な技術を以外の部分で、料理人の味覚、嗅覚、独創性が必須であると思いますので、篠原さんのセンスを体感した次第です。

上記1〜3は期せずして全て逆説的な表現ですが、即ち「意外性」こそがこちらの魅力ではないでしょうか。

一般から玄人まで幅広く響く、驚きが仕込まれた料理。

銀座の一等地において食材のクオリティを保てるかどうか懸念する声もありますが、銀座の荒波の中で基本的な技術を向上させつつ今のスタンスを貫けば、日本を代表する料理人になる事は間違いないのではないかと思います。

反面、東京は現在、にわかバブルにあり俗な食べ手が増えている状況なので、それに流されてしまっては停滞しかねないリスクも有るかと思います。

地方の名店を食べ歩いていると、東京、銀座は恐ろしい街だと感じます。

泰然自若の心境で道を極めて頂きたいと思います。

(※但し、異なる季節に2度訪問したところ、御料理の内容・調理法が今回とそっくりで衝撃を覚えました。よって、再訪記事は書いていません。)

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春慶塗のお盆 

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先ずは淡い香煎を一服

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先付

ブドウエビ、柴山のズワイガニ、佐渡のワタリガニ。

ブドウエビにはキャヴィアを添えているが、嫌味にならず仕事と調和。

土佐酢のジュレの出汁と甘みにキャヴィアの塩気、ひいては風味が合っている。

あしらいの菊の花にも仕事が施されており、染み込んだ出汁と食感により、全体的な味の連結が良好である。

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穴子のつとむし

穴子は明石産。銀杏、山栗など秋の素材を用いており、見た目も紅葉した晩秋の風情。

江州の餅米の甘みに穴子の香ばしさが宿り、藁の香りが鼻孔をくすぐる。

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実に穏やかで旨い一品。

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椀もの

こちらの椀は山中塗り。

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椀種は帆立の真薯と車麩で、大黒本シメジとバチコをあしらっている。

吸い地は昆布のしっかりした旨味と鰹の力強い旨味が加わり、塩気は穏やか。

塩気をぶ厚いバチコが補強し、実に雄々しい椀。

帆立の真薯は食感ぷりぷりで、甘みが横溢する。

葛の打ち方が優しく巧いと感じた。

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お造り

明石のハリイカ(東京で言う墨烏賊)と増毛のボタン海老。

ハリイカは力強い食感だが、噛みしめるとトロトロと甘みが溢れ出る。

江戸前の王道鮨種だが、お造りだとまた異なる魅力。

ボタン海老は活きたものを入れておられ、ぷりぷりで旨い。

海老は鮮度がモノを言う(蟹もですね)。

調味料は土佐醤油とちり酢。

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続いて、氷見の鰤と大間の鮪。

素材のブランドとしては共に一流どころを合わせておられ、インパクトがある。

鰤、鮪の組み合わせは下手すると重くなりがちだが、ともに酸味があるためサラッと頂けた。

個人的には、あしらいの岩茸と昆布醤油の煮凝りが印象深い。

昆布醤油の煮凝りは醤油よりも魚味を邪魔すること無く、脂に寄り添う。

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八寸

実に見目麗しき八寸。

草喰なかひがしさんに匹敵する素敵なヴィジュアル。

八寸を出すお店自体、東京には少ないので、嬉しい。

そして、随所に古い仕事が散見され、感銘を覚えた。

クラシカルな料理をモダンな調味で仕上げ、華やかなプレゼンテーションで供している。

例えば、大徳寺麸。

大徳寺一久では日本屈指の精進料理らしく濃い目の味付けに仕上げ、「肉代わり」としていた事を伝える点が興味深い。

反面、篠原さんは芥子と黄身鮨(裏漉しした卵黄と蒸した山芋を合わせ酢飯風の調味を施したもの)を噛ませ、甘く炊いた大徳寺麩に酸味と卵のコクを与えている。

純粋な精進料理をアレンジしつつ、魅力を高めている点が素晴らしい。

こう言った調理法、見せ方であれば現代人も喜び、伝統を未来に伝える役割となるだろう。

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取り皿に盛り付け

手前は近江蕪の菊かぶら、甘く炊いた水口干瓢(滋賀県甲賀市水口町の特産)。

割れ山椒のカボスに入っているのは、燻香しっかりな余市産鮟肝。

その左隣が玉子真薯でふんわり、シュッとほどける食感。

さらに左隣の椿の葉に乗っているのが鮎のナレズシ(後述)。

中心部が前述の大徳寺麩と佐島の蛸の桜煮。

京都の伝統料理と江戸の伝統料理が並んでいるの面白い。

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海胆、ほうれん草、なめこと面白い取り合わせ。

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鼈の竜田揚げと海老芋

鼈はゼラチン質がねっとりトロトロ、海老芋は出汁をしっかり滲ませ揚げている。

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黄瀬戸の器が良い。新蕎麦の実をとろろ芋で伸ばしたもの。

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鮎のナレズシ

食感はとろけるように滑らかで、熟成させた香りは結構しっかりだが、臭くはない。

あまりにも印象的な食感なので伺ったところ、熟成期間は2年少々との事だった。

鮎の香りは余韻的にふわりと薫る。

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ボタンエビの頭

塩を利かせカリカリに焼き上げ、酒肴的。

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鰻の焼きもの

ご主人は800~900gが好きとの事。

この度は琵琶湖産で1週間熟成させている。

「鰻に果たして熟成は必要か?」と言う議論は有るが、こちらのものは技術が良好で、旨い。

旬モノの香り高い鰻に施した仕事を体感してみたい。

皮はパリパリ、身はねっちりに焼き上げ、焼きの技術も秀逸。

もっと食べたくなる鰻だった(笑)

添えてあるおかひじきは強めの出汁で炊いており、華を添えている。

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フォアグラ最中

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突然の飛び道具だが、違和感は無かった。

創作性が嫌味になっていない理由は、フォアグラを出汁で炊いている点、あんぽ柿の和の甘みを加え、最中の香りに接続している点。

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いちじくの胡麻味噌焼き

いちじくと胡麻味噌は半々の量との事で、実に合っている。

いちじくの甘みと味噌の風味が堪らない。

ソースには柚子を用い、極めて高い一体感を作り出している。

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月の輪熊と九条ネギの鍋

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月の輪熊は熊の中でも殊に力強い旨みだが、極薄切り故に終盤でも食べ易い。

半端無い旨味を上品に楽しめる。

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九条ネギもシャキシャキで香り高く、瑞々しい。

出汁も完成度が高く、熊肉を活かしている。

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お食事

蟹味噌と蟹の殻で炊いたご飯。

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蟹の濃密な存在感を感じさせ、米はアルデンテと言うべき硬さで仕上げている。

更に面白いのが、その後ご飯を2種類供されるところ。

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2番目が鼈出汁の錦糸フカヒレ掛けご飯

旨味と甘みを強め、ギアを上げる。

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3番目は熊出汁のかきたまご飯

たっぷり頂いてもストーリー性が有るので、最後まで満喫させて頂いた。

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香の物

べったら漬け、蕪甘酢漬けに加え、香茸があるのが嬉しい!

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水菓子

百合根と黒糖の葛焼き。

百合根のほっこりする甘みに黒糖の強い甘みが滲み、香ばしいお菓子。

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抹茶

 

実に満足度が高く、食通が惚れ込む理由に納得です。

この内容に対して23,000円で税サ込と言う価格設定は、銀座においてはCPが高く、篠原さんの戦略勝ちだと感じました(笑)

お酒については割り勘となってしまった為、単価が不明でしたが、少々高いかもしれません。

何れにせよ、更なる高みに登られる事を祈念しております。

 

店名:銀座しのはら

食べるべき逸品:伝統をモダンにアレンジした唯一無二の日本料理。

予算の目安:おまかせのコース23,000円(税サ込) →おまかせ30,800円

最寄駅:銀座一丁目駅から100m

TEL:03-6263-0345

住所:東京都中央区銀座2-8-17 ハビウル銀座2B1

営業時間:17:00~23:00

定休日:日曜

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