すしログ:3種のシャリと山葵を使い分ける鮨のラボ!神楽坂の鮨ふくづか

看板

こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

神楽坂の路地にある鮨ふくづかさん。

こちらは「鮨のラボラトリー」と形容したくなる鮨店です。

なにせ、シャリを3種類使い分けるに留まらず、ガリと山葵も3種使い分ける変態職人さんなので。

お店は高価格設定でお酒のペアリングも行っている点においてハイエンドな「鮨レストラン」としての方向性ですが、並の鮨バブル店とは次元が異なります。

調理の選択の一つ一つに、福塚親方の凄味とポテンシャルを感じたもの。

今回は「山葵食べ比べの会」を実施されるとの事で訪問しました。

すしログ

福塚親方とTwitterで盛り上がり、共同経営者の藤森さんとInstagramで話してイベントが決まった…と言う点が現代的です(笑)

訪問前はどことなくミーハーな印象を抱いていましたが、実際に頂いてみると期待を大きく超えてきました!

すし ふくづかさんの立地と雰囲気

お店は「まさに神楽坂」と言うべき、奥まった場所の路地にあります。

僕は学生の頃から神楽坂の雰囲気が好きでしたが、昨今は資本系の開発が進み、神楽坂通りは賑やかになっています。

しかし、未だに道を曲がるとしっとりした影が落ちる路地があり、石畳の風情を楽しませてくれるのが神楽坂。

鮨ふくづかさんは静かな一角にある建物の2階に入っていて、アプローチから素敵です。

黒く大きな暖簾がはためき、中が分からない意匠なので、初めて訪問すると期待を高めてくれます。

 

そして、店内に入ると期待が更に高めてくれる雰囲気があります。

白木のカウンターは控えめな照明で穏やかな光を帯びる。

壁は光を吸収し、席に着くとすぐに寛ぎを与えてくれる空間設計です。

いかにも東京カレンダーに登場しそうな雰囲気ですが、決してゴージャスではなく、幽玄さを含んだ上質な意匠。

寛ぎと共に五感が刺激され、漬け場の親方の一挙手一投足を眺めながら、鮨に没頭できます。

 

独自スタイルのおまかせ

お店を特徴づけるユニークな点は、冒頭で書いた通りシャリ、ガリ、山葵をそれぞれ3種類使い分けるところです。

自分は、1種類のシャリで全てのタネに合わせる職人さんに職人の粋を感じる人間ですが、福塚親方のレヴェルまで高められると、亜流も王道に比肩すると実感します。

温度管理や硬さなどが高位安定しているので、シャリを変えても不自然な印象が皆無です。

そして、何よりも使用する醸造会社が1社である点に哲学を感じます。

京都宮津の飯尾醸造のお酢3種(富士酢、富士酢プレミアム、赤酢プレミアム)を適宜ブレンドされ、タネごとの魅力を引き出す事に徹底されています。

 

そして、今回のテーマである山葵の3種使い分けはハッタリではなく、確かに味覚の調和として奏功しています。

通常営業時から3種類使い分けているそうで、説明が無ければ認識する人は少ないかもしれませんが、それほど調和している事の証左と言えるでしょう。

今回使用する山葵を変えて同じタネの食べ比べを行う事で、完成度の高さを実感しました。

 

お店は2018年3月のオープン時には、おまかせ20,900円、おまかせ&ペアリング27,500円でしたが、現在はおまかせ29,700円、おまかせ&ペアリング38,500円。

お値段としては大体の人間にとって少し勇気が要る価格帯ですが、「鮨の可能性」を知りたい方であれば、訪問して損はないかと思います。

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3種類の山葵と食べ比べした感想

山葵

今回食べ比べした山葵は、左から奥多摩産(実生)、安曇野産(鬼緑・極早生)、伊豆天城産(真妻・晩生)の3種です。

安曇野産は1年もの、伊豆天城産は2年半ものとの事。

さらに、おろし金(銅板)、鮫皮、鋼鮫の、3種類のおろし器を用いて頂きました。

おろし器によって山葵の辛み、甘み、香りの感じ方が異なってくるのは、僕も自身で実験した際に体感しました。

福塚親方は通常は銅板を使用されておらず、理由は鮨においては雑味が混じるためとの事です。

銅板を用いると辛味と苦味が甘みを超えるケースがあるので、これには納得しました。

真鯛01

まずは、真鯛を用いて山葵の食べ比べをスタート!

真鯛は徳島の著名漁師である村公一さんのものです。

村さんは漁師として初めて「情熱大陸」に出演した方ではないかと思います。

ミシュラン3ツ星のカンテサンス岸田周三シェフも初期から使用されていることで知られます。

真鯛02

僕が実感した山葵ごとの違いについては、以下の通りです。

なお、甘みと辛味は全て兼ね揃えた良質な山葵なので、以下の感想は比較の上での特徴となる事をご了解ください。

  • 安曇野産(実生):さっぱり味
  • 奥多摩産(実生):辛味が強めでスッキリ
  • 伊豆天城産(真妻):バランスタイプで、辛味と甘みが両方強い、鮪にピッタリ

鮪

そして、次に、鮪の赤身の握りで食べ比べを深めました。

青森県大畑町で揚がった139.6キロの背中の赤身(延縄)。

鮪01

鮪02

鮪03

一体感を高めるため細かく包丁を入れている点が印象的です。

 

さて、次項では赤身以降の握りの詳細についてご紹介したいと思いますが、その前に福塚親方の独創性の高さについてお話しいたします。

冒頭に書こうと思ったのですが、ここ10年の鮨史(スシヒストリー)の情報が過多になってしまったので、中盤に持ってきました。

興味のある方のみ御覧ください(笑)

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すし ふくづかの独創性の高さを鮨史(スシヒストリー)から読み解く

通好みな特徴としては、昨今の鮨のトレンドを押さえつつ、独自のアレンジを加えている点です。

主に以下を挙げることが出来ます。

  • 高温度帯のシャリ
  • シャリとタネの温度管理の徹底
  • 鮪に入れる包丁の数の多さ
  • 古典的な仕事の再解釈

お客さんの入店後にシャリを切り、高温度帯のシャリを使い始めた職人さんは、初音鮨の中治勝親方。

今のように有名になる前から駆使されていて、初めて頂いた時は驚嘆を覚えました。

念のため説明しておくと、これは完全に鮨のセオリーを無視した手法です。

シャリはシャリ切りした後に落ち着かせ、人肌の温度(35~37℃)で握る事がセオリーであったところ、高温度帯で始めて、次第に温度を下げる手法は極めて画期的でした。

 

その後、鮨處やまだの山田裕介親方もタネごとに温度を合わせる手法を取られ、コースの途中に温度を上げたり下げたりされました。

そして、現在は一時閉店してしまったすし佐竹の佐竹大親方は、更に高温のシャリを脂の乗ったタネに合わせたり、怒涛の如く熱いシャリを3貫連続で出されたりされる手法を発明。

上記の皆さまは、常識やセオリーよりも自らの直観に基づいて鮨と向き合った結果、新たな技を編み出したのだと思います。

 

福塚親方はタネごとの温度調整は頻繁にされませんが、基本的に50℃のシャリを使用されます。

メニュー

これは既存のセオリー(人肌温度)+15℃の高温度帯のシャリです。

高温すぎるのでは??と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、以外にも違和感は皆無で、しっかりとタネと調和します。

シャリ

最初に切りたてのシャリを提供するスタイルは、初音鮨へのオマージュと見た。

 

そして、「鮪に入れる包丁の数の多さ」については、かつて六本木の「すし通」に在籍されていた藤永大介親方が編み出された手法。

表面に50カ所以上の包丁を入れて繊維を断ち切る仕事ですが、福塚親方は更に部位ごとに複数の包丁技を使い分けておられます。

柔らかい鮪にはそのような仕事は不要!と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、鮪の異なる楽しみ方を提案する手法として考えると、僕は不要とは断じません。

 

最後に、「モダンな鮨」や「ガストロノミックな鮨」を実現する上で重要なファクターは、古典的仕事への造詣だと思います。

新しい仕事だけでは、一時的にメディアは食いつくでしょうが、普遍性に欠けてしまいます。

古典的な仕事を再解釈する事で、新たな文化を生み出すのではないでしょうか。

福塚親方は煮帆立や煮蛸などの古典的な仕事も押さえておられ、それらを独特の味に仕上げている点が美点だと感じました。

よって、以上のような特長をお持ちの方なので、西洋料理の高級食材は使わない方が良いとお伝えしました。

キャヴィアやトリュフなどは日本の自然に無いので、無粋な存在です。

和食は食材で季節を表現出来る点に美しさがある料理です。

半可通はキャヴィアやトリュフでコロッと転がりますが、本当に食べ込んでいる人間は逆に辟易してしまいます。

百譲って国産のキャヴィアなら許容範囲内ですが、それをやって良いのは生産地のみだと思います。

 

和食の神髄は身土不二(しんどふじ)。

季節のもの、土地のものを食すことが日本人の幸せに繋がり、周囲五里(20km)内の旬の食材を頂く事が身を作る…と言われていて、僕はこの言葉が大好きです。

都会に住んでいる現在人として実践は不可能に近く、都会の料理店の魅力としては全国のみならず全世界の料理・食材を頂ける事だと認識していますが、料理の根底にある精神として大切にしたいと個人的に感じています。

日本人が和食に期待するのは和の食材であり、各地の名生産者さんのストーリーを頂きたい次第です。

 

長くなってしまいましたが、頂いたお料理の詳細をお伝えします。

 

山葵の食べ比べコースの詳細(実際に頂いたもの)

ガリ

通常はガリ3種類のところ、今回は2種類プラス山葵漬け。

ガリは上品な甘みを付けたものと、辛味が強いダイスカットもの。

山葵漬けは仙禽の酒粕を用いた自家製で、甘みが自然で大変美味。

仙禽

仙禽はお酒もあると聞き、迷わずオーダー。

同席されていた他の方も皆オーダーされ、素晴らしい!と心から実感(笑)

 

鮪中トロ

鮪中トロ
使用する山葵は天城。

高めの温度のシャリが実に奏功し、トロの脂と乳化する。

これは精度が高いシャリ温の仕事。

天城の山葵は鮪の風味と味わいを殺さず、それでいて山葵の甘みと辛味を楽しませてくれるので、鮪との相性が良い。

 

小鰭

小鰭

使用する山葵は安曇野。小鰭の産地は天草。

面白いことに皮を剥いで握る仕事。

小鰭は皮目の食感が好きな人がいるのも事実なので、リスクを負いつつ新しい仕事に挑戦されている姿が素晴らしいと感じる。

気になる結果としては、成功。

小鰭の香りと瑞々しさ、旨味をストレートに表現する仕事。

粗めのオボロも相性が良く、〆も含めて考えられた仕事だ。

 

春子

春子

使用する山葵は安曇野。

食感はしっとり、ふんわりと柔らかく、モダンな方向性の〆加減。

 

槍烏賊

槍烏賊

使用する山葵は天城。産地は青森。

コリコリ感を演出し、その後、とろっととろける食感を活かす包丁仕事。

 

蛸

使用する山葵は奥多摩。産地は神奈川県佐島。

食感はホロホロになるまで柔らかく煮ていて煮ツメも濃厚だが、香りも楽しめる点にセンスを感じる。

香りを失ってしまった蛸は作り手のエゴで蹂躙された蛸だ。

辛味ある奥多摩の山葵が相性良し!

 

白海老

白海老

使用する山葵は奥多摩。

昆布〆でしっかりと脱水していて、これは巧みな白海老の仕事。

昆布は一年寝かせたものを使用しているそう。

これも奥多摩の辛味がアクセントになり、奥多摩の山葵は甘みの強いタネとの相性が良い事を知る。

 

帆立

帆立

クラシカルな煮帆立は硬く煮るものだが、柔らかく仕上げて古典を再解釈。

しっとり、ホロホロ、しかしシャクシャクな食感。

煮ツメが濃厚である点も魅力的。

海胆01

海胆

海胆02

海胆2種類をブレンドして使用。

山葵は選択制で、奥多摩をチョイス。

 

穴子

穴子
豊洲の有名な仲卸ウエケンのSP穴子。

しっとり、ホロホロと繊維がほどけ、トロトロ過ぎない点が魅力。

 

漬物

漬物

 

干瓢巻き

干瓢巻

甘みのある干瓢に山葵はピッタリ。

昔は干瓢巻に山葵を入れるのは無粋とされた時代があったそうなので、トレンドや文化というものが嗜好に基づき変化し続ける事を体感する。

 

椀

 

想像以上に面白い鮨店です。

イベントでお伺いしましたが、今後折を見て足を運び、福塚親方の進化を見届けたいと感じました。

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すし ふくづかさんのお店の情報と予約方法

各種WEBサービスで予約が可能です。

すし ふくづか(一休のリンク)

すし ふくづか(ぐるなびのリンク)

すし ふくづか(食べログのリンク)

店名:すし ふくづか

シャリの特徴:飯尾醸造のお酢を3種類用い、ブレンド比を変えて3種類のシャリを使い分ける。硬さや温度管理は申し分なし。

予算の目安:おまかせ29,700円、おまかせ&ペアリング38,500円

最寄駅:飯田橋駅から400m、神楽坂駅から600m

TEL:03-5579-2860

住所:東京都新宿区津久戸町3-5-2F

営業時間:お昼12:00~13:50(L.O.13:30)、ディナー(三部制)、14:00、18:00、20:30

定休日:月曜

 

【関連する記事】

自身で行った山葵の食べ比べ記事です。

ワサビ01 ワサビの世界~金おろし・サメ皮・鋼鮫を比較~ワサビを知ると和食が更に面白くなる!

姉妹ブログに鋼鮫と伊豆のお取り寄せ山葵の記事を書いています。

https://sushi-blog.com/feast/haganezame/

https://sushi-blog.com/feast/izu-wasabi/

 

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