※本記事は移転される前の情報です
かつて浅草(元は根岸)に存在した高級店「高勢」の流れを汲む鮨店です。
ちなみに、「高勢」のエピソードは中々興味深く、政財界重鎮の御用達店で、毎晩お店の前には黒塗りの車。
しかし、本業以外の事情で、バブル崩壊と同時に閉店…。
ひとつの時代を感じさせるエピソードです。
高勢の系譜については、浅草の橋口さんの記事にまとめました(記事の最後にリンクがあります)。
さて、こちら大塚高勢さんには、金曜、土曜のみ提供されているランチでお伺いしました。
鮨勝さんとは目と鼻の先で、外観は大塚の歓楽街の名残を思わせる渋い雰囲気。
こう言った町並みはいずれ無くなってしまうので、懐古趣味をお持ちの方はお早めに。
お店に入ると、寿司屋台を彷彿させる暖簾があしらわれております。
かなり風情のある雰囲気です。
こちらのシャリはやや柔らかめで、酢が立ち、ほんのりと甘みを残す。
タネの切りつけに合わせてシャリを成形しているところがクラシカルな印象。
当店はランチでもおまかせとなります。
まずは先付が届き、順次握りに移行します。
握りの特徴としては、昆布〆の鯛に「梅紫蘇唐辛子」という自家製調味料を用いたり、鱸に木ノ芽をかますなど、奇抜な創作性に富んでおります。
それでいて、印籠詰や煮蛤は濃厚な煮ツメで味わわせる古典的な仕事。
全体を通して、純粋な江戸前仕事と言うよりも、創作を取り入れた仕事であると感じました。
タネは玉子の後に中トロと始まり、意表を衝かれました。
玉子
芝海老の風味が強くしっとりした食感の玉子。
鮪中トロ
変わった切りつけですが、ランチとしてはレベルが高く、温度も良好。
墨烏賊
包丁が甘く、食感の爽快さに欠けます。
鯛
昆布〆、梅紫蘇唐辛子と独特の仕事。
シャリにタネが勝ってしまっているものの、「料理」としては美味しいです。
赤貝
超巨大で度肝を抜かれました。
タネとのバランスは考慮の外。赤貝を丸ごと食す為の一貫です。
鱸
木ノ芽を噛ませた鱸。
白身の旨味に輪郭を与え好印象です。
烏賊の印籠詰め
胡麻は控え目で、上品な仕上げ。
濃厚な煮ツメで勢いを付けております。
ランチのお任せで印籠詰めを頂けるのは、非常に嬉しい。
煮蛤
火入れはじっくり目。
これもまた煮ツメが奏功。
海胆飯
ここでも酢飯の柔らかさが気になりましたが、軍艦にするよりは良いように感じます。
干瓢巻
硬めの戻しで、比較的上品な味付け。
海苔は直前に炙っており、香りが満足度を高めます。
椀
蟹入りの白味噌仕立て。
出汁がしっかりしており手抜きの無いところが好印象です。
水菓子
抹茶のゼリーと餡。
こちらは独特のストーリー性があり、それなりのタネを使ってもいるので、お値段は、老舗としては必ずしも高くは無いと思います。
(8貫相当+先付、玉子、椀、水菓子+干瓢巻追加で3900円)
シャリと仕事のトリッキーさについては、個々人の好みでしょうか。
ただ一つ、頂きながら気になったのが、まな板周りの所作。
一言で述べてしまうと、美しさに欠けます。
タネを切りつけた後の包丁やまな板の管理が杜撰で、他のお客さんの水菓子を切った後の包丁を俎上に乗せられたのには閉口しました。
本山葵を頻繁にすりおろされたり、海苔は握る前に炙られたりと、細かい気配りをさりげなくされているだけに、残念さが強く残ります。
また、山葵がタネからベチャッとはみ出している鮨も、久々に見たような…。
全体的に、江戸前仕事をベースに個性的な仕事を展開する、高級な街場寿司といった印象です。
シャリとタネの合一感よりも、タネの味付けやインパクトで食べさせる握りかと思います。
店名:高勢
シャリの特長:やや柔らかめで、酢が立ち、やや甘め。タネに応じて形を変化。
予算の目安:昼3,900円〜、夜10,000円
最寄り駅:大塚駅から346m
TEL: 03-3941-0984
住所: 東京都豊島区南大塚1-45-3 →東京都豊島区南大塚1-42-11
営業時間:12:00〜13:30、17:30~23:00 ※ランチは金曜、土曜のみ
定休日:日曜、祝日の月曜
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