こんにちは、関西鮓も大好きな鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
本記事でご紹介するのは、天保2年(1831年)に創業された大阪屈指の老舗、「たこ竹」さんです。
【ばらちらし】と【箱寿司】が名物の大阪鮓のお店でしたが、敢え無く2018年に閉店…
全国にファンを持つお店だったので、各地で涙を流した方が多数いたようです。
僕も同様です…
しかし、なんと2020年に復活を遂げました!
お店のあった松屋町(まっちゃまち)から「日本一長い商店街」である天神橋筋商店街に場所を変え、屋号そのままで再開されたのです。
その後、店舗を再度移転され、現在は「帝国ホテル大阪」のご近所にお店を構えておられます。
立派なお店となり、応援している僕としては感動の一言!
大阪で美味しい寿司を求める方には、心からオススメの一軒です。
タップできる目次
名店「た古竹(たこ竹)」と6代目大将のお話
「たこ竹」さんは前述の通り天保2年(1831年)に創業をさかのぼる老舗です。
歴史のある大阪鮓・関西寿司の専門店ですが、百貨店への出店はしてこなかったそうです。
その心は、5代目が「手を広げると味が落ちて結果的にお客を失う」と言う信念を持っておられたため。
また、テナント料をカバーするための値付けを是としなかったため、ずっと松屋町で商売を営んできたそうです。
近年は5代目の女将さんと職人さんで切り盛りされていましたが、女将さんが80歳を超えて体調的に厳しくなってきたので、閉店せざるを得なくなりました。
本来の後継者である5代目は魚を食べられない方だったので早々に職人になることを断念。
そして、6代目は雇われの職人さんだったため、お店を継ぐことはされず、閉業に至りました…
しかし、失ってみると大切さに気付くもの。
閉業を嘆く声が非常に多く、同じ鮓店を経営する社長が6代目に熱い声援を送り、物件まで調達されたそうです。
無事に「たこ竹」の暖簾が引き継がれのです。
その6代目の職人さんのお名前は、岡山正さん。
二十歳の頃から40年以上も「たこ竹」で腕を磨かれた方です。
もともと「たこ竹」には職人さんが5人以上いらっしゃったそうですが、徐々に辞めてしまったそうです。
その結果、岡山さんは早々に仕事を任されて、仕入れから仕込みまで一人で行い、「たこ竹」の味を体得されました。
とは言え、道筋は平坦ではありませんでした。
先輩職人が辞める際、残されたのは走り書きのメモのみ。
魚に塩をあてる時間について「鯖は○分、鯛は○分…」と書かれている程度のメモ。
ただ、岡山さんは頼るものが他にないので、メモに従い「たこ竹の味」を作りました。
しかし、ある時、お客さんから「たこ竹、自分が作ったすし、食べてる?」と聞かれたそうです。
そこで、味を見たところ、塩気が強くて「たこ竹の味」では無かったそうです。
岡山さんはハッとされました。
そこから、深夜の2時〜3時まで作られたり、ご自身で〆について研究されたりして、今の味にたどり着きました。
魚体、脂のノリ、旬など複数の要素を鑑みて塩梅を変えることで「たこ竹の味」が実現されたのです。
これはレシピだけでは真の美味しさを作れないことを示しています。
岡山さんは謙遜され、「自分は何も出来ない」、「せいぜい幾つかの鮓を作るだけしか出来ない」とおっしゃります。
しかし、伝統の味を守り、時代に合うような仕事を編み出されている時点で卓越した職人だと言えるでしょう。
また、松屋町のお店が閉まった後も、先代の女将さんのお世話をなんと2年もされたそうです。
大阪鮓を求めて伺ったところ、鮓の魅力のみならず義の大切さまで教えて頂きました。
現在の店舗には立派なイートインスペースもあります。
現在の店舗は岡山さんの今までの頑張りが具現化したかのようで、感慨深く感じました。
「た古竹(たこ竹)」の大阪鮓の味とは?
それでは、「たこ竹」さんの大阪鮓のお味についてご紹介します。
「た古竹(たこ竹)」のメニュー
「たこ竹」さんの名物は、こちらの3品です。
現在の店舗では天神橋筋商店街の時には中々頂けなかった【穴子の棒寿司】も頂けます。
他にも季節のタネを用いた棒寿司を得意とされるので、電話予約の上で訪問されてください。
「た古竹(たこ竹)」の3名物
「た古竹(たこ竹)」さんの3名物は、下記の通りです。
- 箱すし
- 上ちらし
- さば棒すし
品物ごとに包装紙が違うところが素敵です。
箱すし
最初に酢飯が柔らかめかと思いきや、ぱらりとほどけ、もっちり感のある酢飯です。
昆布出汁が利いている点が大阪らしく、酸味と甘みのバランスが絶妙な酢飯です。
まろみのある酢飯は江戸前鮨の赤酢のシャリとは全く異なる魅力があります。
鯛は昆布〆ながら、身がしっとり、ホロホロとほどけます。
間に海苔を噛ませて香りのアクセントに。
海老はしっかりと茹でて塩を利かせた後に酢で洗う仕事。
具単体だと味が強いものの、酢飯の甘みとのバランスが良好です。
椎茸やキクラゲの食感も魅力。
ケラの玉子はきめ細かく、しゅわっとちぎれる良い焼き加減。
塩を利かせて、これも酢飯との相性を高めています。
穴子は醤油を利かせて香ばしく仕上げています。
これも江戸前の煮穴子とは完全に異なる美味しさ。
キクラゲと椎茸が名脇役!
上ちらし
タネは基本的に【箱すし】と同じですが、味の構成要素は多いです。
木ノ芽、三ツ葉、紫蘇などの香りが爽やかで、オボロと錦糸卵の甘みが加わり、優しいまろやかな味を楽しませてくれます。
オボロは自家製で、甘みが控え目。
貫禄のあるちらし寿司です。
江戸前のばらちらしとは異なる仕事を伝えてくれる、文化財的なちらし寿司だと思います。
ちなみに、ちらしはセイロで蒸しても美味しいです。
蒸すときは薬味類と鯛を外して、後から乗せるのが美味しさの秘訣です。
さば棒すし
鯖の棒寿司は竹皮を開く際に心が踊りますね。
なんと鯖を2尾使用!
鯖は塩気をバシッと利かせて〆していて、鯖の食感はみしっ、ほろっ。
白板昆布は厚みがあり、食感があり、甘みは控えめです。
力強い味わいの鯖寿司です。
全体的に、伝統的な大阪鮓の仕事を伝えるとともに、関西らしい甘みのある酢飯の魅力を伝えてくれるお店です。
なにせ味覚のバランスが良いので。
酢飯に甘みを付けつつ、他の仕事でバランスを取る技は、非凡だと思います。
季節替わりの棒寿司も絶品!
たこ竹さんは、季節替わりの棒寿司も秀逸です。
直近の訪問では【鯵の棒寿司】と【穴子の棒寿司】をハーフ&ハーフで頂きました。
鯵の棒寿司
これまた〆の技が光る!
鯵の脂が持ちうる特有の生臭さは皆無。
身はしっとりホロホロとほどけゆき、旨味と香りを楽しませてくれます。
大葉があくまでも上品にふうんわりと香り、昆布が名脇役。
大阪らしい甘味のある酢飯の魅力を伝える傑作と言えます。
穴子の棒寿司
おそらく地焼きでふんわりと仕上げている。
故に、酢飯と馴染み、しっとりとほどけて、しかも香ばしい。
上品な穴子の棒寿司で、これを超えるものは決して多くはありません。
椎茸も良い仕事で、旨味と香りを加え飽きさせない仕組みです。
11月の訪問時に頂いた季節の棒寿司も格別でした!
頂いたものは【甘鯛】と【車海老】のハーフ&ハーフです。
甘鯛の棒寿司
昆布の香りが強めながら嫌みにならない範疇。
脱水されておらず、身はしっとりしていて、むっちり。
塩気を効かせて脂を制御し、酢飯の酸味が全体の味をふんわりと引き締めます。
細切りの黄柚子の香りが実によく調和しています。
細部と一体感に技を感じる棒寿司です。
車海老の棒寿司
塩と酢の当て方が絶妙。
車海老の香りと甘味を大阪流で活かす!
これは江戸にはもちろん、大阪の他店にも無い妙技とも言える仕事です。
また、大阪鮓らしい刻み椎茸も名脇役を演じ、醤油と甘味をバッチリ効かせています。
全てを一緒に頂くと完全に調和する棒寿司です。
そして、旧店舗時代に頂いた際の記事はこちらになります。
旧店舗時代に頂いた際の詳細
2015年6月訪問
こちらは天保二年(1831年)創業の、大阪を代表する大阪寿司の名店です。
松屋町(まっちゃまち)という花火の卸売店が軒を連ねる一角にあり、建物は戦後の再建らしいですが、中々風情のある佇まいと内装です。
大阪寿司の老舗といえば、淀屋橋の吉野寿司(吉野鯗)さんも有名ですが、あちらは高級な雰囲気で、こちらは庶民的な雰囲気です。
まさに立地に依拠した雰囲気のように感じます。
しかし、味は甲乙つけがたく、特にこちらの穴子寿司とちらし寿司は必食の価値があります。
僕は箱寿司とちらし寿司を両方頂きたかったので、二日に渡りお伺いしました。
箱寿司はお持ち帰りで頂きました。
こちらの箱寿司はお店特注の木箱で作っておられます。
一人分を無駄なく作れるように開発されたそうです。
自家製の椎茸おぼろを噛ましておられるところも特徴的。
辛すぎず、甘すぎず、良いバランスを取ってくれます。
鯛
強めの〆が関西の寿司らしい。
昆布の旨味もしっかりと付けられております。
穴子
炭火で焼かれており、香り豊か。
ケラ(海老、鯛)
ケラ(海老、玉子)
そして、2日目はお店でちらし寿司を頂きました。
ちらし寿司は作りたてをふんわりと頂くと喜びひとしお。
自宅で作る場合は、時間が立って味が馴染んだものも乙ですが、酢飯と具がふんわりとしている状態で、薬味たっぷりで頂くのが、実に美味しい。
こちらの酢飯は関西の寿司としては甘みが低く、塩も割と利かせております。
ちらし寿司は、具は基本的には箱寿司と同じですが、個々の味が協奏しており、一体的な味わいが魅力的。
ただ、聞くところによると、こちらには後継者がおらず、今の代のご主人で暖簾を下ろしてしまう可能性が高いとのことです。
かなりショッキングなお話ですので、機会があるたびにお伺いしたいと思います。
→後日、休業中であることを耳にしました。お店再開の情報を入手された方は、お伝え頂けましたら大変嬉しいです。大阪に行く際には、必ず訪問しますので。
→読者の方から復活の情報を頂きました!心底感謝です。
「た古竹(たこ竹)」が伝える大阪鮓の魅力と未来
「たこ竹」さんの鮓を頂くと、大阪鮓の魅力は最低3つあると感じます。
- 握り鮨とは別物の美味しさ
- 独特の仕事
- 美しさ(造形美)
僕は前々から言っていますが、大阪鮓には可能性があると思います。
多くの大阪鮓のお店は、戦後に握り鮨に移行した経緯があります。
この理由は「鮨の委託加工制度」。
「委託加工制度」は、戦後の食糧統制下において、営業が禁止されている鮨店であっても、お客が米を持参すれば加工して販売して良いと言う制度です。
東京の鮨職人がGHQに直談判してこぎつけた…と言う一説がある通り、スシは「握り鮨」に限定され、関西寿司は対象外でした。
よって、戦後に大阪で江戸前鮨店が急増したことは致し方ないと思いますが、今の鮨ブーム・鮨バブルの世の中においても「鮨店と言えば握り鮨」と言う状況になっています。
ただ、これは人気の問題もさることながら、ビジネスモデルの問題だと思います。
新たなビジネスモデルさえ構築できれば大阪鮓の新たな展開が出来るのではないでしょうか?
「たこ竹」の岡山さんからもお伺いしたのですが、大阪鮓は「お腹にたまる」とか「高い」といったイメージがあるようです。
なるほど…これはヒントになりますね。
また、職人さんにしても「仕込みの労力に対して割に合わない」と考える人も増えてきたそうです。
これらは逆説的に考えれば新たな展開が出来ると感じます。
コースで組み立てる大阪鮓…新たな形を作り出せば、消費者にも職人にもWIN-WINなビジネスモデルを作れるはずです。
「た古竹(たこ竹)」のお店の情報
「たこ竹」さんは、嬉しいことにかなりの人気を博しておられます。
なので、お持ち帰り主体のお店であっても、前日までの予約が望ましいです(「予約優先販売」とのこと)。
特に遠方から訪問する場合は予約必須です!
店名:た古竹(たこ竹、たこたけ)
予算の目安:2,500円~
TEL:06-6881-2200
住所:松屋町住吉3-8 →大阪市北区天神橋3-8-1 シンワビル1F →大阪市北区天神橋5-7-21 まるまん寿司 天五店 2F →大阪市北区松ケ枝町1-29
最寄り駅:大阪天満宮駅から750m
営業時間:11:00~20:00
定休日:木曜
関連する記事
関西寿司のまとめ記事
握りとはちゃうで!実はおもろい関西寿司の世界!郷土寿司のまとめ記事
【隠れた名物!】日本全国各地の郷土寿司おすすめガイドとランキング大阪を代表する大阪鮓の老舗高級店・吉野鯗
すしログ No. 249 吉野鯗@淀屋橋(大阪府)大阪人にも大阪鮓の魅力を伝えたい、すしログ(@sushilog01)でした。
※旧店舗時代のNo. 72(2015年6月16日公開)に新店舗の情報を数回追記してリライトしています
本記事のリンクには広告がふくまれています。
たこ竹 何と 天神橋筋商店街で復活しました。
期間限定と謳っていますが 「注文が少なかったら 閉めなくては・・・」
とのことでした。
又、あのチラシが食べられると思うと 本当に嬉しい限りです。
もちろん 注文しました。
天満様
なんと!貴重な情報を頂きまして、ありがとうございます!
東京在住でコロナ下なので、すぐに動く事は出来ませんが、是非ともお伺いして応援したいところです…
しがない鮨ブロガーが心から愛しているとお伝え頂けましたら幸いです(笑)
たこたけさんの5代目(になる筈の)の中学高校時代の友人でした。そう当時から、本人はお寿司は食べられないし大嫌いだと言ってましたねえ…そんな彼の家業、歴史あるお店が今も無事に職人さん達の熱意で引き継がれ守られているのをこの記事で知り嬉しく感じました。ありがとうございます
☺️
けん様
なんと…貴重なエピソードをお伝え頂き、ありがとうございます!
移転を繰り返しながら立派なお店を構えられて、僕も心より安堵しました。
これからずっと続いて欲しい、素晴らしい味の名店だと思います。