すしログ日本料理編 No. 58 大徳寺一久@紫野(京都府)

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京都が誇る精進料理の名店、大徳寺一久。

こちらにはお弁当形式の【大徳寺精進料理縁高盛】4,160円と、

2人以上から頂ける【本膳】8,320円、11,850円、14,260円があります。

3月に訪問した際は1人であったため【縁高盛】を頂き、名物である大徳寺麩、犠牲豆腐、筏牛蒡も頂けて満足した次第です。

しかし、やはりお店の真骨頂である【本膳】を頂いてみたく、この度友人と共に再訪しました。

頼んだコースは14,260円のものとなります。

 

頂いた感想としては、【縁高盛】よりも【本膳】の方が面白いと感じました。

一品一品に勢いがあるため、総合力が高い。

大徳寺精進料理は味覚のコントラストが強いため、コースの方がメリハリが利き、料理としての魅力を向上させる印象です。

ただ、如何せん価格に開きがあり、調理法が「個性的」なので、人によって費用対満足度が大きく変わる可能性があります。

興味のある方は最初は【縁高盛】が良いかも…

そして、古い仕事や精進料理を好む方はコースを頼まれては如何でしょうか。

 

ちなみに、【本膳料理】とは、室町時代に成立した武家の接待料理の形式となります。

明治時代に廃れてしまったため、頂けるお店は少ないのが現状。

【本膳料理】を精進料理に適用したコースこそが【お盆料理】となります。

【お盆料理】は基本的に二汁五菜から成り、以下の形式を採ります。

1. 本膳:膾(なます)、坪(前菜)、一の汁、飯

2. 二の膳:平(炊き合わせ)、千代口(和えもの)、二の汁

3. 皿(焼ものや揚げもの)

 

更に、こちらは【お盆料理】に【茶懐石】の流れを採り入れた豪華な内容だと思います。

【茶懐石】の流れ

1. 飯、汁、向付

2. 椀盛

3. 焼もの

4. 強肴

5. 小吸いもの

6. 八寸

7. 湯桶、香の物

8. 菓子、濃茶 

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上記の流れを参考に、頂いた料理は下記のように分類出来ると思います。

こうして見ると、結構変則的な流れのように感じます。

1. 本膳
膾:ずいきの酢味噌和え
坪:犠牲(擬製)豆腐、大徳寺麩、香茸、栗、青梅
一の汁:白味噌の椀
飯:松茸ご飯
(以下は二の膳とならず、懐石的な流れ)
・胡麻豆腐
揚げもの:いかだ牛蒡の揚げものと湯葉
焼もの:賀茂茄子
二の汁:揚げ湯葉と松茸の椀
強肴:クロカワと菊の酢のもの
小吸いもの:葡萄と針生姜の吸いもの
八寸:百合根の茶巾絞り、松茸、揚げ昆布
湯桶、香の物

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膾:ずいきの酢味噌和え

ずいきのシャクシャク感と爽やかな塩梅の酢が良いバランス。

銀杏がアクセントになっている点も魅力的。

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【犠牲(擬製)豆腐】と【大徳寺麩】がこちらの名物。

【犠牲豆腐】はしっかりした甘みにみっちりした食感。

噛み締める喜びがある。

食において噛む事で満足感が向上する事は自明。

食感により食の満足度を高めると言うのは、精進料理の工夫の一つではないだろうか?

【大徳寺麩】も濃い目の味付けで、「肉代わり」としている事は明白。

名物は前回と同様に満足度が高かったが、香茸はやはり甘みが強く、香りが弱い。

香茸好きとしては、これは少々モダンにアレンジしても良いかと感じる。

(或いは香りが強いと食欲が増進されてしまう為、敢えてこのような仕事なのだろうか)

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一の汁:白味噌の椀

しっかりと白味噌を利かせた椀。

懐石料理店のそれを大きく超える濃度なので、「精進料理」の一般的なイメージを持って伺うとビックリする。

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松茸ご飯

質素なイメージの精進料理に松茸とは意外に思われる方もいるかもしれないが、松茸は昔は大量に採れた食材。

ご飯に精彩を与えてくれる魔法のような食材であっただろう。

こうして頂くと歴史を感じる。

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いかだ牛蒡の揚げものと湯葉

【いかだ牛蒡】もこちらの名物。

衣の食感が独特。山芋を使用しているのだろうか…

柔らかく炊いた牛蒡にしっとりした食感の衣が特徴的な組合せ。

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胡麻豆腐

柔らかく仕上げ、風味の強い胡麻豆腐。

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賀茂茄子

ジューシィな旨味がじゅわーっと滲み出て、濃厚な柚子味噌が混ざり合う。

野菜でも十分「メイン」に成り得る事を伝えてくれる。

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揚げ湯葉と松茸の椀

松茸が豪勢だが、ほうれん草の味わいが深く印象的だった。

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クロカワと菊の酢のもの

酢を非常に強く利かせている。

クロカワの苦味に強い酸味が協奏。

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葡萄と針生姜の吸いもの

昆布の出汁の塩梅が良く、葡萄を違和感無く食べさせる。

これは特に印象深かった。

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百合根の茶巾絞り、松茸、揚げ昆布

優しい甘みで、ほくほくした百合根から大徳寺納豆が現れるサプライズ。

昆布はしっかりと味を付けて揚げている。

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焦がし湯(湯桶)、香の物

大根の漬物はしっかりした味わいで、茄子を甘めに調味している点が個性的。

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メロン

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薯蕷饅頭と大徳寺納豆

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濃い抹茶で〆

 

改めて魅力を認識する再訪となりました。

漆器も雰囲気も実に素晴らしいです。

歴史に裏打ちされた京都の凄味を感じさせてくれる名店だと思います。

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店名:大徳寺一久(だいとくじいっきゅう)

食べるべき逸品:大徳寺精進料理

予算の目安:縁高盛4,160円、本膳8,320円、11,850円、14,260円 (全て税サ込)

最寄駅:北大路駅から1,090m

TEL:075-493-0019

住所:京都市北区紫野大徳寺下門前町20

営業時間:12:00~18:00

定休日:不定休(大徳寺の行事日程にあわせて休業とのことです)

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