日本が誇る銘酢【富士酢】を作る醸造元!京都宮津の飯尾醸造〜お米からお酢の旅〜

暖簾

こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

以前、当ブログでお酢の飲み比べ企画を行わせて頂いた飯尾醸造さん。

飯尾醸造さんはもともと【純米富士酢じゅんまいふじす】と言う上質なお酢で定評を得ていました。

さらに、ここ数年で鮨店での使用が増えたため、鮨好きの間で知名度が高い醸造蔵になりました。

この度、幸運にも五代目の飯尾彰浩社長にご案内頂きましたので、記事にまとめます。

酒蔵とお酢蔵の両方を見させて頂いたところ、あっという間の2時間でした。

 

そして、僕は20代の頃から【純米富士酢】を愛用しているのですが、改めて「銘酒」ならぬ「銘酢めいす」だと実感しました。

原材料と造り方が素晴らしい事は文字情報で認識していましたが、現地に行かなければ分からなかった事が多々あります。

とりわけ、従業員の方々が素敵である事と、宮津の自然が魅力的である事は肌で感じなければ分かりませんでした。

全てが優れているから「銘酢」が生まれるのだ…と実感したのです。

すしログ

現在はコロナの影響で蔵見学を中止されています。

ついては、読者の皆さまの心を宮津にいざなう事が出来れば嬉しく思います!

飯尾醸造とは? 飯尾醸造のお酢造りが崇高である理由

入り口

飯尾醸造さんは京都府京丹後エリア(宮津市)にあり、1893年(明治26年)に創業された老舗の醸造蔵です。

第二次世界大戦中は原料のお米を統制された都合上、多くのお酢蔵がお酢造りを断念させられました。

しかし、飯尾醸造さんは舞鶴の軍隊の御用達であったため、不幸中の幸いでお酢造りを続ける事が出来ました。

 

先々代の頃から非常に先進的な試みを行っておられ、なんと昭和39年(1964年)から無農薬米を使用するお酢造りを開始されました。

高品質なお酢のために、敢えて難易度が高く、原価が掛かる方法を採られる崇高な醸造蔵です(その理由については順にご説明します!)。

 

宮津市は山と海に恵まれる土地で、景観は風光明媚です。

日本三景の天橋立は言うまでもなく有名ですが、むしろ個人的には生活のそばに根差した自然が豊かである点に、土地の美しさを感じました。

 

例えば、飯尾醸造さんのすぐそばには海が広がります。

海

家と家の合間の小道には、キラキラと輝く水面が踊り、潮の音が優しく反響しています。

お伺いした時期は丁度ナマコ漁を行っていて、小舟が青い海をたゆたっていました。

 

そして、由良工場のすぐ裏手には標高640mの由良ヶ岳がそびえます。

山

山からの伏流水でお酢を造られているのですが、生活と自然が一致している自然環境に豊かさを感じました。

僕が田舎出身でありながら長らく東京に住んでいて、都会の街路樹や公園の緑に満足していないので、なおさら強く実感しました。

 

飯尾醸造さんのお酢造りが独特である理由は幾つかあるのですが、無農薬米での製法に加えて、原料の「酢もともろみ」=お酒も造っている点は特徴を決定付けています。

なにせ、お酒を醸してお酢を造る蔵は今や稀有なので(日本で2つのみ)。

お米からお酒を造り、お酒からお酢を造る。

これこそが日本古来のお酢の造り方ですが、現在はたった2つの蔵になっている事実はショッキングです。

しかも、日本に存在するお酢メーカーの数は400社ほどあるものの、自社でお酢を製造しているのは僅か3分の1以下と言われます。

「えっ、お酢メーカーなのにお酢を作っていないってどういうこと??」と思われるでしょう。

実は、圧倒的多数のメーカーは酸度が高いお酢を仕入れて、水で薄めて製品化している現状なのです。

メディアや広告では「お酢は健康的」と喧伝されますが、飲むお酢を選ばなければ健康的とは言えないのが事実。

お酢に限った事ではありませんが、知ろうとしないと分からない現実なので、スーパーで食品ラベルを見る、そして自分でも調べる行為は非常に重要なのです。

すしログ

あまりショッキングな情報ばかり書くと本旨から外れてしまうので、以降は明るい情報を書きます(笑)

なにはともあれ、飯尾醸造さんのお酢はお米の段階からお酢の段階まで、一貫して管理されている点が信頼の証です。

お米については、原価が通常よりも8倍以上のお米を仕入れ、量も通常の8倍以上も使用して、「お米の美味しさを活かすお酢造り」をされています。

日本人はお米が大好きな民族。

日本らしいお酢が、宮津にあります。

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飯尾醸造が取り組むお米作りとお酒(酢もともろみ)造り

今回最初に見学させて頂いたのは、由良にある酒蔵です。

由良蔵

蔵を見学して最初に驚いた点は、やはりお米です。

お米

飯尾醸造さんはお米を契約農家から仕入れていて、以下の3点を遵守されています。

  1. 地元産
  2. 新米
  3. 無農薬・無化学肥料

しかも、契約農家からは相場の2.5倍の価格で買い取られるとの事です。

さらに、400万円もする田植機と田植用のシート(紙マルチ)を寄付されているので、実に手厚いと舌を巻きました。

ここまで生産者想いの調味料メーカーは珍しい。

今後の日本のロールモデルになるのではないか…と希望を心に抱きました。

日本は食と農で豊かになれる国だと信じている人間なので。

精米機

そして、収穫されたお米は、大型の精米機を用い、自社精米してからお酒を醸します。

酒蔵における自社精米は「800石(112t~120t)以上が利益を確保できる水準」とされるところ、飯尾醸造さんは350石~400石(49t~60t)で実践されているので、驚きました。

しかも、酒屋じゃなくて、お酢屋ですからね。

徹底した原材料管理と製品への矜持を感じました。

 

お酒に使用するお米はコシヒカリと五百万石です。

そして、磨き(精米歩合)は75~80%で、日本酒の味で言うと「淡麗辛口」ではなく「旨口」あるいは「濃醇甘口」のお酒を目指しているそうです。

お米の甘みとコクのあるお酒で造られるのが【純米富士酢】と【富士酢プレミアム】です。

そして、お酒造りで生じる酒粕で造られるのが【赤酢プレミアム】です。

赤酢プレミアム

 

精米を終えたお米は洗米後に一晩水に浸し、特大の蒸し釜で約60分蒸します。

今回僕は「釜場」でお米を蒸しているところから見学させて頂きました。

 

巨大な釜から蒸し上がりのお米をクレーンで引き上げ、すぐさま手作業でお米にもやし(麹菌)をまぶします。

その後、放冷装置を通って「醪場もとば」に運ばれます。

そして、麹菌を繁殖させるために麹室へ運ばれます。

麹室

麹室の中は室温29℃、湿度70%ほどに保たれています。

ここで2日掛けて手作業で麹を作ります。

麹となったお米たちは、その後、麻布の上に広げて冷まされます。

麻布

米麹造りの後は、酒母しゅぼ造りに入ります。

タンクに水と麹、酵母、蒸し米を入れて、酒母の仕込みが行われます。

その後、7℃から20℃の間で、2週間(14日)かけて酵母を増殖させるのですが、phを下げるために醸造用乳酸菌を使わず、富士酢を使用される点が飯尾醸造さんならでは!

これは非常に画期的なので、マスク越しに思わず笑顔になりました。

4日、6日、8日、10日…と2日おきの状態を見させて頂きました(なんて貴重な経験)。

酒母造り01

酒母造り01

見学のお陰で、お酒が生き物である事を実感しました。

 

そして、酒母が出来ると、大きなタンクに移し替えて遂にもと(=お酒)の仕込みに入ります。

水、麹、蒸し米の順にタンクに投入されるのですが、発酵力を高めるため、3回に分けて仕込まれます。

これが「ソエナカトメの三段仕込み」です。

この後、約30日かけて醪(お酒)を仕込むそうです。

醪の仕込み01

醪の仕込み02

杜氏さんは泊まり込みで醪(酒)の状態を確認し、深夜でも深夜でも発酵の具合を踏まえて櫂を入れるそうです。

酒

出来上がった「酢もともろみ」は澄んでいて美しいです。

これが飯尾醸造さんのお酢の原料です。

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飯尾醸造のお酢造り

酒蔵で造られた「酢もともろみ」は、8kmほど離れたお酢蔵に運ばれます。

お酢蔵
なぜ距離が離れているかの理由は、水にあります。

前述の由良ヶ岳の伏流水の方がお酢造りにも適しているため、車で何往復もかけて水を搬送しているそうです。

 

お酢蔵に運ばれた「酢もともろみ」は、水、種酢(全体の3分の1量)とともにタンクに移されます。

そして、40℃に温められ、水面に「酢酸菌膜さくさんきんまく」を浮かべます。

A4用紙ほどのサイズの「酢酸菌膜」を浮かべると、わずか2〜3日後には表面を覆い尽くすそうです。

酢酸菌膜

この「酢酸菌膜」は創業から使い続けているそうなので、ゆうに120歳以上の菌!

漫画『もやしもん』の菌が見える主人公、沢木惣右衛門直保ならば、もの凄い菌が見える事でしょう。

「酢酸菌膜」が表面を覆い尽くすと酢酸発酵が始まり、遂にお酒がお酢に変わり始めます。

静置発酵

飯尾醸造さんのお酢造りを特徴づけているのが発酵方法で、静置発酵せいちはっこうと呼ばれる方法です。

これは端的に言うと、長時間と手間を掛けて造る方法。

酢酸菌の力でアルコール分をお酢に変えるナチュラルな製法で、【純米富士酢】の場合、発酵に80日から120日も掛けるそうです。

なお、圧倒的多数のお酢メーカーは機械を用いて、わずか1日で発酵を終えてしまいます(「静置発酵」に対して「全面発酵」と呼ばれる方法)。

自然に酢酸発酵させるか、強制的に酢酸発酵させるかで、お酢の造り方が分かれるわけですね。

すしログ

真面目なお酢を見つけるポイントは静置発酵か否かですね。

また、自分が徹底しているポイントは醸造用アルコールを使用していない事です。

飯尾醸造さんは開放タンクで発酵を行うため、発酵後には5%も減ってしまうそうですが、伝統的な製法で味を守ります。

 

さらに、飯尾醸造さんは熟成にも時間を掛けます。

発酵を終えた後、最低240日から300日も掛けて熟成されます。

発酵と熟成の期間を足すと320日から420日お酒造りを加えると365日から465日も掛かるので、お米の段階から大変長い旅路です。

 

そして、熟成の過程では、蔵に寝かせておく(=放置する)のではなく、タンクの移し替えを5回以上繰り返し、おりを除去するとともに、お酢を空気に触れさせて美味しさを高めます。

ワインで言うデキャンタ―ジュをお酢造りで行うとは…!

これによって、まろみのある美味しいお酢が誕生します。

言うまでもなく手間が掛かる方法ですが、全ては味、品質のためなのだと、最後の最後まで一貫した職人気質を感じました。

 

飯尾醸造のお酢をご紹介

代表的なお酢は【純米富士酢】と【富士酢プレミアム】です。

富士酢
鮨職人のためのお酢である【赤酢プレミアム】を含めた飲み比べ企画については、過去の記事をご参考にして頂ければと思います(文末にリンクを張ります)。

 

この度は新商品の酢酸菌入り【にごり酢 富士酢プレミアム】を試飲させて頂き、あまりにも印象的なお酢で衝撃を覚えました。

酢酸菌入り富士酢プレミアム

通常の【富士酢プレミアム】でも旨味が強くて驚くところ、【にごり酢 富士酢プレミアム】は更に旨味を複雑に感じます。

新たなお酢の世界を切り開く味に感動し、公式WEBショップですぐに注文しました。

しかも、酢酸菌は花粉症などのアレルギー症状を抑える働きがあると報告されているそうなので、春に向けて嬉しいところです。

出典:NHK BSプレミアム「美と若さの新常識」

 

また、飯尾醸造さんは【紅芋酢】や【無花果酢】と言ったユニークな「果実酢」も造られています。

紅芋酢ソーダ

ソーダで割って飲んでも良し、料理に使っても良しなので非常に魅力的なお酢です。

飯尾醸造さんが刊行された『京都のお酢屋のお酢レシピ』では、【紅芋酢】をポテトサラダに使用されていて、ユニークです。

マヨネーズを使わずとも美味しいポテサラなので、長年料理をやっている自分でも画期的で驚きました。

流石、お酢屋さんのお母さんと娘さんだと感じるレシピばかりの名著です。

 

そして、こちらが以前行った飯尾醸造さんのお酢の飲み比べ記事です。

すしコラム No. 10 飯尾醸造「富士酢プレミアム」「赤酢プレミアム」の比類ない魅力!

 

以上をもちまして飯尾醸造さんのお酢のご紹介を終えます。

鮨好きが情熱で行った取材記事で拙い点が多々あるかと思いますが、お楽しみ頂けましたでしょうか?

これを機に飯尾醸造さん、お酢、鮨に関心を寄せて頂く方が増えましたら、幸甚の極みです!

本当に美味しいお酢なので、気になった方は是非ともお試しください。

公式サイト:https://www.iio-jozo.co.jp/shop/

 

年間何リットルのお酢を摂取しているか分からない、鮨ブロガーのすしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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