すしログ:広島らしさを追求する超個性派鮨店!「鮨 稲穂」

稲穂暖簾

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

さて、今回ご紹介するお店は広島で「広島らしい鮨」を模索する親方の鮨店です。

 

冒頭から恐縮ですが、広島はお隣の岡山県や愛媛県に比べると「江戸前鮨が弱いエリア」です。

岡山県や愛媛県は若手職人さんの次期名店が現れているので、広島県も続いて欲しい。

しかし、広島はジャンル全体で見ると名店が増えてきていますし、食材にも恵まれているので、今後伸びるのは間違いないと信じています!

 

今回ご紹介する「鮨 稲穂」さんは独自のスタンスを持っており、「広島で鮨好きが通うお店」の一つとして知られます。

仕事は創作色を強めつつ、江戸前で押さえるところは押さえています。

広島の鮨店ツートップと言えば「吉鮨」さん「鮨処ひと志」さんが頭に浮かびますが、どちらとも異なる仕事を追求されています。

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鮨 稲穂の魅力と三原美穂親方の仕事について

「鮨 稲穂」の親方は三原美穂みはらよしほさんです。

三原親方は広島出身の方で、広島、大阪で和食と鮨の修行を経て、2014年3月に独立されたそうです。

そして、2017年3月に移転し、現在の場所にお店を構えられたとの事。

 

親方はシャリを重視されていて、この点において街場寿司店とは一線を画します。

温度管理は良好で、ほどけ方もパラッとしています。

温度と粘度は鮨店の実力と格式を考える上での重要なメルクマールです。

 

コースはシャリ切りから始まり、マニア心をくすぐります。

そして、生み出されるシャリは広島県のお米とお酢を用いた広島のシャリ。

 

お米は広島産のコシヒカリの新米と古米をブレンド。

お酢は4種類ブレンドで、後藤商店、ヨコ井の輿兵衛、米酢、穀物酢との事です。

後藤商店は広島県庄原市東城町が誇る醸造蔵で、創業を1896年(明治29年)まで遡ります。

伝統的な「静置発酵」でお酢を造り、混ぜ物を入れていない赤酢です。

 

シャリの酸味については、お酢のブレンド内容からすると意外や意外、程々です。

赤酢主体らしい旨味があり、西日本らしく甘みも付けられています。

甘みについては「西日本らしく」と言っても大阪などの関西寿司のスタンダードからすると、控えめな甘みです。

三原親方は「広島人の舌に合うシャリ」を志向されているようです。

すしログ

これについては非常に良い試みだと感じます。

「日本全国、何処どこ彼処かしこも東京のトレンドと同じ強い赤酢のシャリ」にする必要は皆無なので。

食べ手も東京以外でシャリの甘みを批判したり、東京の赤酢のシャリをスタンダードに考えたりする人が増えていますが、僕からすると愚の骨頂。

鮨はもともと郷土寿司であり、江戸前の握り鮨ですら郷土寿司です。

よって、土地にある酢飯や基層文化の味を活かし、新たな江戸前鮨に昇華させる事が職人冥利であり、鮨のポテンシャルを信じる事に繋がります。

 

三原親方は「シャリは鮨の源」とおっしゃっています。

これからも独自のシャリを追求して頂きたいと感じました。

 

また、「鮨 稲穂」を特徴づける点は独創的な酒肴です。

独創的すぎて鮨店の枠を少し出ているものもありますが(笑)、三原親方は「遊べるのは前半4品程度」と言われていたので、試みを応援したいと感じます。

コースは酒肴6品+10貫、椀、玉子なので、標準的な鮨店のおまかせコースの内容に準拠しているかと思います。

 

そして、もう一つ面白いのが、独自性のある仕入れです。

まず、一流どころだと有名な「さかな人」の長谷川大樹さんから仕入れられています。

長谷川さんは神奈川県横須賀市の長井漁港の漁師で、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」にも出演された方です。

まさか広島の鮨店で長谷川さんの魚を使用されているとは、驚きました。

 

同時に、広島県内からの仕入れも面白いです。

今回頂いた鰻は広島県の内陸部で養殖されている鰻でした。

そして、穴子については、敢えて瀬戸内産の養殖穴子を使用されているそうで、興味深いです(今回は頂きませんでしたが)。

天然モノを中心に組み立てなければ一流の鮨店ではありませんが、サステイナビリティを考慮した仕入れを行うことは今後の飲食シーンでは重要なので。

 

最後に、個人的に親方の心意気を感じたのは「名刺代わりの一貫目」に小鰭を出されたところです。

鮨は小鰭に止めを刺す。

鮨は小鰭に始まり小鰭で終わる。

江戸前鮨の魂であるタネだと信じていますので、ブレずに広島流の江戸前鮨を探求頂ければと思います。

試行錯誤の過程だと思いますが、広島らしい江戸前鮨が完成する日を楽しみにしています。

広島産・瀬戸内産の魚介が増えると更に面白くなるはず!と感じました。

 

鮨 稲穂のおまかせコースの詳細

「鮨 稲穂」のおまかせは13,200円で、2021年6月から始められた予約制のランチは6,050円です。

ディナーでもお酒込みで2万円を切る内容なので、満足度は高いと思います。

広島に限らずどこでも同様ですが、初めての鮨店を知るならばランチが最適なので、ランチ営業は素晴らしい試みです。

僕も豊洲で仕入れてさばいて仕事を施しますが、お昼までに仕込みを終わらせるのはかなり大変なので、ご苦労をお察しします。

 

伊勢海老出汁の海胆プリン

鮨稲穂伊勢海老出汁の海胆プリン

海胆の産地は北方四島産。

アメリケーヌソースを牛乳で割ってソースにしている。

ミルクの香りがやや阻害しているが、ソースによって海胆のクオリティを補っている。

 

鱧と松茸

鮨稲穂鱧と松茸

広島産の松茸に、広島産の鱧!

ご当地のものを合わせるとは、「出会いもの」を出す上で嬉しい心配り。

鮨稲穂松茸

出汁は羅臼昆布に、鱧のアラと九絵のアラ。

よって、パンチがしっかり利いている出汁だ。

鱧もまた魅力的で、脂が乗っている。

 

九絵、エゾイシカゲガイ、ショッコ

鮨稲穂九絵

九絵は五島産で1週間熟成、エゾイシカゲガイはご存知の通り陸前高田産、ショッコ(=汐っ子=カンパチ)は長谷川大樹さんからの仕入れ。

ショッコは酸味とクリアな香りが実に爽やかで、旨味もバッチリある。

酸味と旨味のバランスが良く、残り香も気持ち良い。

九絵はしっとり感に軽いむっちり感があり、寝かせの仕事が巧み。

旨味と脂が舌に残る。

付け合わせの塩は地中海の炭塩。

 

煮鮑の天麩羅

鮨稲穂煮鮑の天麩羅

これは意外性があり、かつ魅力的な一品。

サクッと揚げられていて、天麩羅の技術も高く、鮨と天麩羅の仕事が一体化している。

むっちりで柔らかな鮑で、肝も美味い!

呉産の四角豆も魅力的。

 

酢モツをイメージした九絵モツ

鮨稲穂酢モツをイメージした九絵モツ

非常にマニアックな一品で、いつもは常連さんにしか出さないそうだ。

九絵のモツは臭みは無く、「強い香り」として楽しませる。

香りと食感を楽しませる料理だ。

自家製の橙酢、酢味噌との相性も良い。

 

伊勢海老とキャヴィア

鮨稲穂伊勢海老とキャヴィア

伊勢海老は14時間寝かせている。

キャヴィアが添えらえていて、一瞬動揺する。

日本の高級食材と海外の高級食材を合わせる必然性を感じない事が多いためだ。

しかし、味わってみれば杞憂に終わる。

伊勢海老のとろ~り、ねっちり、シャクシャクした身を噛みしめると、甘みが溢れ、キャヴィアと巧く調和する。

香りのバランスも良い。

器はユーモラスでモダンな有田焼。

 

玉子焼き

玉子焼き

卵の香りが活きている玉子焼き。

 

この後、握りに移行します。

 

小鰭

鮨稲穂小鰭

なんと広島で一貫目が小鰭!

食感は艶めかしいけれど、〆てきっちり脱水されている。

小鰭の脂や甘みを引き出す仕事で、臭みは無く、皮も柔らかい。

10分10分の〆で、9時に〆たものとの事。

数日寝かせたものを頂いてみたくなった。

 

ミズイカ(アオリイカ)

鮨稲穂ミズイカ(アオリイカ)

島根産。

「天寿しのパクリ」と自重されながら出されている。

天寿しさんとはイカの食感と甘みの強さが違う点が面白い(先方はアカイカを使用)。

また、飛子を使用していない点も味わい的に大きな違い。

 

鮨稲穂鯖

日向灘の半養殖モノの鯖。

生っぽさをのこした〆加減だ。

 

鮪赤身

鮨稲穂鮪赤身

産地は大間。

夏よりも酸味が落ち着き、香りが強くなり、脂が乗ってきている事を実感する。

仲卸は広島との事。

 

鮪カマトロ

鮨稲穂鮪カマトロ

筋の食感は割と強く、脂はトロトロ。

血の香りや旨味が特徴的。

 

鮨稲穂鯛

これもショッコと同じく長谷川さん仕入れで、産地は佐島。

広島(や関西)ではレアな産地かと思うが、関東だと鯛が最も美味しい産地の一つだ。

14時に届いたものを軽く脱水している。

旨味が凝縮されていて、身のむっちり感も楽しめる。

 

鮪赤身

鮨稲穂鮪赤身

こちらの産地はスペインで、漬けにして提供。

香りと血の香りに加えて、どことなくスモーキーな香りもあるところが興味深かった。

 

ノドグロ(アカムツ)

鮨稲穂ノドグロ(アカムツ)

韓国産の700グラムで、1週間熟成。

脂が乗っている。

 

海胆

鮨稲穂海胆

愛媛産の赤海胆。

鮨稲穂海胆軍艦

濃厚で、香りはスッキリ。

シャリの酸味が活きる味わいの海胆だ。

 

うなきゅう手巻き

鮨稲穂うなきゅう手巻き

手袋を付けて巻かれている。

その理由は、海苔の食感を維持するためとの事。

確かにこだわるだけあり海苔はバリバリと食感が非常に良く、香りも旨味も抜群である。

温度管理も良い。

その海苔を活かすべくキュウリは水気を除かれていて、食感が良い。

鰻は穴子のように煮ている。

 

この鰻については養殖モノで、東広島黒瀬の「勝梅園」のものだそうだ。

しかも、ビカーラ種。

煮鰻で甘みも付けられているので厳密な味の違いは分からなかったが、調理法的にはニホンウナギと変わらないと感じた。

 

ビカーラ種はニホンウナギとは異なる品種で、フィリピンやインドネシアに生息している。

 

資源量に余裕があり、サステイナビリティを考慮すると素晴らしい試みだ。

関心が高まり、また「中土NAKADO」さんで頂いたナマズも「勝梅園」であったため、現地に見学に伺った。

「勝梅園」ではビカーラ種を黒瀬の綺麗な水で育て、臭みの無い鰻を育てられていた。

勝梅園▲形状が特徴的なドーム型施設で育てている

試行錯誤されていて、3~4ヶ月で成長するもの、成長に6ヶ月かかるもの、全く成長しないものが2:6:2の割合との事だ。

 

どうでも良い話だが、施設のシステムモニターがSF的で琴線に触れた。

稲穂勝梅園制御装置

 

ちなみに、「中土NAKADO」さんのナマズは三原親方が神経締めしてさばかれたとのことである。

良い協力関係!

 

鮨稲穂椀

鰹、昆布、魚のアラの出汁で、使用する味噌は広島のますや味噌。

赤と白をブレンドされている。

具はシンプルにブラウンえのき。

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鮨 稲穂の立地と雰囲気

お店の場所は、広島の歓楽街・流川にあり、超有名なビールスタンド重富のすぐそばです。

鮨稲穂外観

なかなかクラシカルなビルに入っていますが、お店の客層は良いので、怪しまなくて大丈夫です。

稲穂外観02

 

店内のカウンターはニス塗り加工はされていますが、材質は恐らくヒノキで立派です。

和食屋のような温かみのある雰囲気が魅力です。

照明も暖色系で、しっとりしているので、リラックスできるかと思います。

 

鮨 稲穂のお店情報と予約方法

WEB予約については、ぐるなび経由で可能です。

鮨 稲穂(ぐるなびのリンク)

ランチの予約についてはお電話でお申し込みするようです。

 

鮨 稲穂(食べログのリンク)

店名:鮨 稲穂(すし いなほ)

シャリの特徴:広島の赤酢を含む4種類ブレンドで、やさしい甘みも付けたシャリ。温度や硬さは良好

予算の目安:ランチ6,050円、おまかせ13,200円

TEL:082-545-5458

住所:広島県広島市中区銀山町11-11 スコッチ館銀山3F

最寄駅:銀山町駅から190m

営業時間:18:00~25:00、2021年6月よりお昼も予約営業

定休日:月曜

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文章で言及した中土NAKADOさん

中土九絵 すしログ:グルメ必訪のレストラン!広島で唯一無二の世界を編む【中土NAKADO(なかど)】

 

広島で有名な鮨店2軒

吉鮨

吉鮨鯵 すしログ No. 46  吉鮨@本通(広島県)

鮨処ひと志

ひと志小鰭 すしログ No. 222 鮨処ひと志@広島市(広島県)

 

日本全国に各県各様の鮨が生まれる日を切望する、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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