すしログ:銀座の超好立地にある鮨店「ふくじゅ」

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

さて、「鮨の聖地」である銀座。

今も昔も日本トップクラスの鮨を頂ける世界でも稀な街です。

ただ、ネックとしては、「予約しづらいこと」と「お値段が張ること」が挙げられます。

こちらは「予約を取りやすく」「リーズナブル」なようなので、訪問を決めました。

結果としては、イメージとは異なりましたが、今後の鮨のビジネスモデルを考える契機となりましたので、記事にしたためたいと思います。

銀座 鮨ふくじゅの立地と雰囲気

鮨ふくじゅ看板

場所は「銀座のど真ん中」と言える、銀座四丁目交差点の至近です。

和光や三越がある交差点ですね。

その交差点から徒歩1分くらいのビルのワンフロアにあるので、訪問して軽く驚きました。

信じられないほどの好立地です。

そして、店内は広々と感じる空間で、接客の女性スタッフはきめ細かい対応をされています。

 

場所柄、同伴客が多いように思いましたが、男性も女性も一人客がいらっしゃり、客層は幅広いと感じました。

個室も完備していて接待ニーズも回収している点は考えられています。

銀座 鮨ふくじゅとは?

「鮨ふくじゅ」は資本系のお店となり、他に西麻布と新宿、御茶ノ水に展開している模様です。

個人的には資本系よりも個人店を推すポリシーですが、賃料が高い街では資本系が力を発揮するケースもあると実感しています。

例えば、同じ銀座だと「鮨弁慶 海」が挙げられますし、丸の内の「築地青空三代目」は非常に高い満足度を誇ります。

これらは資本の力を活かして、好立地にリーズナブルのお店を出し、腕の立つ職人さんにつけ場を任せているところが特徴です。

 

鮨ふくじゅさんは親方と二番手さんの2人体制でつけ場を回されていて、料理は専任の方が厨房にいらっしゃる様子です。

提供テンポは速く、コロナの時短営業下と言うのも差し引いても待たされることは無さそうです。

マニュアルが徹底されていると感じました。

 

そして、頂いた感想としては、色々と惜しいと感じました。

食べログ上では自分と同じTabelog Reviewer Awardのトップレビュアーも高評価を付けていますが、個人的には甘いと感じます。

お店のためを思うならば、客観的に事実を伝えるべきです。

以下に、問題となる「現在のビジネスモデル」と、僕が考える「ビジネスモデルの改善案」を挙げます。

現在のビジネスモデル

  • 低価格のコース設定を行い、高額のお酒で利益を確保する
  • 10,780円の握りコースはスピーディに提供して回転率を上げ、16,500円のコースは滞在時間を長くしてお酒で利益率を上げる
  • シャリは味よりもパフォーマンスを優先
  • 旬を意識しないタネ構成
  • 鮨よりも和食寄りの酒肴を提供

コース価格こそ上記の通りリーズナブルですが、如何せんお酒の価格が高額です。

例えば、角ハイ880円、マスターズドリーム生1,100円、日高見・純米吟醸弥助1,760円。

メニュー表記の価格にサービス料が掛かるので、実際には角ハイ968円、マスターズドリーム生1,210円、日高見・純米吟醸弥助1,936円です。

僕は原価厨ではありませんが、「お酒の価格は良心の価格」と考えます。

日高見・純米吟醸弥助は一升が3,300円なので、一合だと原価330円。

よって、値付けは原価の5.86倍となり、これはかなりの倍率です。

一般的にお酒の価格は原価の2〜3倍(日高見・純米吟醸弥助だと660円〜990円)と言われます。

 

そして、今回頂いた10,780円の握りコースは所要時間40分ほど。

僕は一人であれば問題無い時間ですが、今回は二人だったので、いささか早急だと感じました。

最後の方は握りと握りのスパンが短く、穴子と玉子は同時に提供されました。

街場のお店ならいざ知らず、銀座の一等地のお店なので、握りのコースと言ってもお客のスピードに調整されることが期待されます。

 

その他のご指摘をする前に、偉そうに語る以上、ビジネスモデルの改善案を提示いたします。

自分ならば、下記の内容で利益を確保しつつ、顧客満足度を高めます。

ビジネスモデルの改善案

  • お酒の価格を下げ、本質(味)で勝負する
  • 10,780円の握りコースはシャリ量を上げつつタネの切りつけを厚くして、鮨としての満足度を上げる
  • シャリを重視する
  • 旬を徹底的に意識する
  • 鮨店らしい酒肴を、多数ではなく少数に絞って提供する

さて、ここからが本当に伝えたいことです。

「シャリの重視」とは何ぞや?と言うことですが、こちらは赤酢と米酢のシャリを2種類併用しています。

しかし、クオリティに差がありすぎです。

ともに温度が人肌以上、米酢については人肌+1〜2℃ほどで安定している点は素晴らしいのですが、赤酢の方は粘度が非常に高い点がネックです。

米酢の方が強めの酸味に程よい甘みを利かせたシャリで、温度が良く、パラッとほどけ…つまり完成度が高いからこそ、赤酢のシャリの粗が目立つ。

米酢はヨコ井、赤酢はヨコ井と内堀醸造のブレンドとのことで、調味自体は良いのですが、粘度が課題であることは否めません。

 

僕はシャリを2種類併用することを決して否定していませんが、併用するならば両者の違和感が無いことが前提です。

吉祥寺のさき田さんも併用されていますが、硬さと温度に差が無く、極めて高い完成度を誇ります。

実はシャリを2種類併用することは諸刃の剣なんですよね。

使うからには高い完成度を求められてしまうので、シャリを重視して、いまいちどシャリに向き合うことを提言します。

 

そして、使用する食材は旬を徹底的に意識しないとダメです。

例えば、こちらでは時期外れのイクラにキャヴィアを乗せ、唐墨を削って供されます。

これは余りにも本質がありません。

あるいは鮪が弱い時期でリーズナブルな価格設定なのに、コースの握りで鮪を3貫も使ってしまいます。

味が弱い食材で3貫使うのならば、旬の美味しい食材で3貫使う方がお客のためです。

食べ手の多くが鮪を好むため3貫出されているのだと推察しますが、ちょっと味が分かるお客ならば僕と同じことを実感し、リピーターになることはありません。

日本人として、旬は素晴らしい概念なので、旬を意識して、旬の魅力を伝えてリピーターを増やすことを自分ならば選びます。

 

最後に、酒肴について述べます。

酒肴が多いコースではありませんでしたが、数品頂いても無理しているな…と感じました。

出汁の引き方や食材の取り合わせの知識と技術が無いならば、出さない方がベターです。

御料理の詳細については後述しますが、鮨店は鮨店らしい酒肴を出した方が正解であることの方が多いです。

そして、多数出すことで食材原価を散らすのではなく、少数に絞って提供した方が、お店とお客の相互にとってWIN-WINです。

 

冒頭で書いた通り銀座は「鮨の聖地」です。

個人店でも1万円代で素晴らしい鮨を提供する親方を数人知っています。

その方々と相対的に考えると、現在のコースの満足度は7,000円(お酒を2杯飲んで8,500円以内)であれば妥当と言えるライン。

これはランチェスター戦略の理論となりますが、資本系で資本力があったとしても、鮨業界においては「弱者」の立場でビジネス設計した方がベターです。

でなければリピーターは生まれませんので。

よって、リピーターを生むためのビジネスモデルを再構築されることを祈念しています。

ブログなのでビジネス論は軽く終わらせて、実際に頂いたもののご紹介に移ります。

銀座 ふくじゅのおまかせコースの詳細(実際に頂いたもの)

メニューは【おまかせ握りランチコース】6,600円に始まり、夜は2つのコースを用意されています。

【旬の握りを愉しむ おまかせ握りコース20品】10,780円と【旬のお寿司と料理を共に おまかせ握りコース26品】16,500円です。

僕は今回「リーズナブルさ」を検証するために訪問したので、前者のコースを頂きました。

結果としては、概要は上記に記載したとおりですが、「おまかせ握りコース20品」と書いてある割に、握りは10貫だけでした(+太巻き一切れ、玉子)。

 

ドリンクは【オールフリー】660円を頂き、お会計は12,826円。

総じて、職人さんの問題と言うよりも、お店のビジネスモデルの問題が大きいと実感した次第です(ご担当頂いた職人さんは頑張っておられました!)。

 

潮騒椀

潮騒椀

海藻の椀。

初手の椀はシンプルである方が上品。

 

ガリ

ガリ

甘みの強いクラシカルタイプ。

辛味もあるが、甘みが強い。

 

鮪中トロ

鮪中トロ

さっぱりした味の中トロ。

 

酒肴の盛り合わせ

酒肴の盛り合わせ

アスパラ胡麻餡、煮蛸、煮鮑、ホタルイカ、タケノコと蕗。

小ポーションでコースの25%に当たる「5品」確保。

煮蛸は食感と甘みのある家庭的な味わい。

タケノコがスタッフのご実家である丹波の朝どれだというエピソードが良かった。

 

鯛

米酢にスイッチ。昆布〆。

昆布〆は中々良い塩梅で、身をむっちりしっとりと〆て、昆布の旨味と香りは穏やか。

 

白イカ

白いか

コリコリした食感を長時間楽しませ、最後にとろり。

 

鯵

軽く脱水してむっちりとした鯵で、味は良いものの、切りつけが小さすぎる。

合わせ調味料も少量すぎる。

 

鮪赤身

鮪赤身

軽い漬けによりむっちりした食感で、味わいとしてはサッパリ味の赤身。

ほのかな鉄の香りが心地良い。

 

いくら、キャビア、唐墨

いくら

旬はずれのいくらであることに加えて漬けの醤油味が強い。

キャビアと唐墨の風味も弱く、使用する必然性に乏しい。

 

海胆

海胆

えりも産無添加の海胆。

濃厚な甘みに強い苦味が独特な味わい。

 

蛤餡の茶碗蒸し

蛤餡の茶碗蒸し

ヤングコーン、生キクラゲを使用。

甘みがあり、調理学校的な調理法。

 

ノドグロ

ノドグロ

炙り。シャリが温か目なのが良い。

 

小鰭

小鰭

バシッと〆て、酸味も強く浸透させ、食感はホロホロの小鰭。

柚子皮も使用。

 

鮪大トロ

鮪大トロ

脂が非常に強いいかにもな大トロ。

細やかな包丁が良い。

 

トロタク手巻き

トロタク手巻き

巻き簾ではなく手で巻いた太巻き。

赤酢のシャリの粘度が高いため、おはぎのようでかなり野暮ッたい。

 

穴子、玉子

穴子

穴子と玉子は好印象。

穴子はふわふわで、下味が濃すぎず、煮ツメが濃厚な点も魅力。

玉子は芝海老と和三盆を使用しているそう。

しっとりふわふわなカステラ玉子で完成度が高く、冷やして提供している点にもセンスを感じる。

 

椀

ヤマトシジミとオキシジミを使用した椀で、美味しい。

 

抹茶プリン

抹茶プリン

冠婚葬祭で出てくるようなスイーツ。

銀座・鮨ふくじゅのお店の情報と予約方法

複数のWEB予約に対応されているので、非常に予約しやすいです。

銀座・鮨ふくじゅ(一休のリンク)

銀座・鮨ふくじゅ(食べログのリンク)

銀座・鮨ふくじゅ(ぐるなびのリンク)

 

店名:鮨 ふくじゅ(すし ふくじゅ)

予算の目安:お昼6,600円~、夜10,780円~

最寄駅:新宿駅から180m

TEL:03-6263-8495

住所:東京都中央区銀座5-8-17 銀座プラザ58ビル8F

営業時間:12:00~20:00 ※緊急事態宣言に伴う

定休日:不定休(ビル休館日を除く)

 

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鮨文化の発展と消費者の体験価値の向上のため、鮨店のビジネスモデルを真面目に考える、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)でした。

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