すしログ日本料理編 No. 70 焼鳥今井@外苑前

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2016年11月末に千駄木から外苑前に移転した今井さん。

雰囲気がガラリと異なる街への引っ越しであると同時に、席数も10席から30席に大幅拡充され、大勝負に出られたと感じます。

既に2回訪問しましたが、僕は移転は成功だと感じます。

新たな客層を取り入れ、食材的により攻められるようになった事は、いち食べ手として嬉しい限りです。

千駄木からのファンの方もいらっしゃっており、美味しそうに食されつつ、今井さんに笑顔でエールを送られている光景には頬が緩みました。

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お店のデザインは非常にスタイリッシュで、住宅街に煌々と輝く看板が目を惹きます。

内装はすっきりしており、ハイスツールですが落ち着きます。

基本のコースは3,800円とリーズナブルな価格設定その後4,800円に変更されました→その後7,150円に変更されました。

スープ、レバーのパテ、焼鳥6種、本日のやさい焼き(4品程)、お口直しの構成です。

 

現在、鶏肉は主に奥久慈軍鶏を用いておられ、内臓部位は名古屋コーチンと使い分けておられるそう。

ジビエも同様ですが、その時の仕入によって他の銘柄も使用されている模様です。

1回目はスタンダードなコースを頂き、2回目は松風地鶏の特別コース(6,000円)を頂きました。

 

今井親方の焼きの特徴としては、

・串打ちの精度の高さ(脂の融点が低い鶏でも正確に打つ)

・強めの火入れで旨味を活性化しつつ瑞々しさを保持

・違う部位を同一串で供する一串のストーリーテリング

が特筆すべき点として挙げられます。

 

そして、貴重な松風地鶏についての特徴を挙げると、

・部位によって旨味、甘み、酸味のバランスが大きく異なる

・脂の融点が低い

・コーチンとは思えない繊維質のほどけ方

・そして、良い意味での歯ごたえがある

と言ったところ。

 

ちなみに、松風地鶏の産地は兵庫県三田です。

以下、2回の訪問を、別々にご紹介いたします。

 

【通常バージョン】

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スープ

極めてクリアな味わいながら、ベースに強い甘みがある。

聞けば、なんと筍のみで出汁を取ったとの事。

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レバーのパテ

これは絶品!洋食の人気店と比べても遜色無い出来栄え。

香りが良く、強いコクがあり、何よりも口溶けが素晴らしい。

パンはもっちりで歯応えと香りがあり、パテをしっかり受け止める。

(移転後、バゲットを変えられたそうです)

磯辺焼き

磯辺焼き

胸肉を用いているため、軽やかな酸味に海苔の香りが混じり、爽やか。

味付けも控えめで好印象。

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紅芯大根

実に滋味深い味わい。

火入れが良好で、硬くも柔らかくも無い身をかじると、芳醇な香りがじゅわっと広がり、甘みが舌を喜ばせる。

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レバー

前述の通りやや強めの火入れだが、嫌な残り方が無い。

むしろ、むちっとした身からレバーの旨味が弾ける仕掛けは魅力だと感じる。

とろとろに仕上げる火入れがトレンドだと思うが、異なる魅力を提示されており、興味深い。

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つくね

薬味の使い方が巧い。

旨味も非常に強いが、脂はサラッと流れる。

軟骨だけでなく筋も用いている模様。

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口直し

鬼おろしでおろした大根おろし。

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シャンピニオン

じゅわっと良い火入れ。

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小タマネギ

所謂ペコロス。

これは甘みを引き出しつつ、食感を残す火入れ。

玉葱は食感にも魅力があると感じるので、これは好み。

醤油を強めに利かせているが、玉葱の甘みが良い塩梅に調和する。

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丸ハツ

これは白眉。

パリッと皮が弾け、ぷりぷりの身はひたすらジューシィ。

皮付けたまま、串にくくりつけて焼いている。

美味しいハツ串の条件である鮮度と瑞々しさをクリアした上で、食感、香ばしさを付加しており、非常にハイレヴェルだと感じた。

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ジャガイモ

クミン掛け。

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パリパリ過ぎずムチムチに仕上げ、脂の旨味を伝える焼き方。

山椒をピリッと利かせており、鮮度の良い山椒。

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葱間

ネギはかなりシャキシャキに仕上げ、柔らかな肉とのコントラストが魅力。

タレは甘みを抑制しており、美味。

葱間はやっぱりタレですな。

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もも

奥久慈軍鶏の力強くも歯切れ良い肉質を体感。

程良い旨味に軽い酸味が混じる。

皮を削ぎ落としているため、旨味は上品。

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手羽

手羽元と手羽中ともに。

手羽なので脂の旨味が強いが、手羽としては脂がさっぱり目。

奥久慈軍鶏の特徴だろうか。

上品かつ、食後感が軽やかな手羽であった。

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サラダ

しっかり美味しい野菜とドレッシング。

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これも火入れが良く、甘みを引き出している。

照り焼きにによる苦味が堪らない。

醤油の焦がし方に妙がある。

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キントア豚頬肉

雄々しく力強い旨味!

脂が少なめな部位であったが、十分旨い豚で印象深い。

バスクの唐辛子、ピメントデスプレットを添えて。

この唐辛子は甘みもあり、食材を壊さない辛味であった。

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水上のヒヨドリ

2人分に解体頂き、心より感謝!

写真の一番下から順にレバー、ハツ、砂肝、手羽元、もも、ガラ、胸、頭。

レバーの上質なコクと苦味は印象深く、砂肝も極小ながらに旨味と食感を申し分無く楽しませてくれた。

尚、鰹節の風味を感じるからと、叩いた梅を添えておられるのが面白い。

個人的に、特にももの脚の先の風味に最も合っていると感じた。

こう書くと何らかのフェティシズムの様だが、元々の風味と焦げの風味に梅が寄り添い、新たな香ばしさを提示してくれた。

確かに脂の乗りはこれからだろうが、頂けて良かった…と心から感じる、良き食材との出会いであり、職人技術に感銘を覚えた。

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焼鳥まぶしご飯

炊きたてのご飯に焼き鳥をまぶし、タレで混ぜたもの。

反則的な美味さ(笑)

タレが美味しく、焼きが巧いので、ノンストップ。

実山椒も嬉しい薬味。

以下が【松風地鶏バージョン】となります。

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鶏スープ

濃厚なゼラチン質由来の旨味が舌を包み、甘みも広がる。

写真的には上記のものとほとんど同じですねw

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笹身の昆布〆

かなり脱水しており、昆布の旨味と鶏の酸味が協奏する。

鶏自体の甘みも加わり、バランスが良い。

肉の昆布〆は牛肉よりも鶏肉の方が遥かに相性が良い仕事。

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レバーのパテ

やはり美味しい!

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胸肉の醤油焼き

醤油の塩梅が上品。

火入れはしっとりで、食感が良好。

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レバー

黒胡椒を使用。とろろろん、プリプリで絶妙な火入れ。

中心部の温度が良く、舌に旨味が馴染む。

前回よりもやや軽めの火入れで、満足度が向上していた。

移転されて火が強くなってしまうと伺っていたが、火をものにされつつあるのだろうと実感する。

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つくね

複数の部位を用いており、粗挽きの肉も入っている。

ぷりっとジューシィで脂が旨い。

また、こちらの炭は香りが良い。

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紅芯大根

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シャンピニオン

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赤身ともも肉のふくらはぎ

これはレア寄りの火入れ!

歯切れが良い上に、旨味はベストの状態で活性化している。

赤身はタフさと滑らかさを併せ持つ繊維質。

そして、その後にふくらはぎのムチムチな食感に移行するところは面白い。

肉が含有する酸味の変化も楽しめる。

一串でストーリー性を高める技は食の歓喜を招来する。

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ぼんぼちとペタ

筋肉系の2部位の後は、脂の物語。

中2つがぼんぼちとなる。

ペタ(腰皮の付いた部位)は脂の口溶けが抜群。

大きめで丸みを帯びた脂は爽快に溶けゆく。

それでいて、炭の燻香がキリッと引き締め、脂だが鶏の香りも感じさせる。

ぼんぼちはブリブリと力強さがある食感。

とにかく脂の二重奏が魅力的な一串で、山椒でピリリと引き締めている。

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もも肉のタタキ

皮パリに炙った後に冷凍し、ひんやりなのに皮をパリパリのままに保っている。

しかし、魅力は皮の食感に留まらず、脂の旨味が圧倒的。

低い温度帯で驚嘆に値する旨味で、

塩胡椒の振り加減、アクセントとしての炭の香りも良い。

串ではないが、鶏の魅力を引き出しており、感銘を覚えた。白眉!

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人参

クミンを用いつつ、人参の甘みが活性化しているので違和感無し。

シャクシャクとした食感で、甘みたっぷり。

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サラダ

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鶏もつ煮

こ、これは嬉しい!松風地鶏の鶏もつ煮とは…!希少部位の協演!

一つ一つのパーツが存在感を放っており、実に蠱惑的なもつ煮だった。

ちょうちんは勿論とろ〜り…

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タマネギ

この後、追加で頼ませて頂きました。

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頂いていない松風地鶏の部位を見せて頂き、全て頼みました(笑)

頂ける日が限られているならば、ケチっちゃダメですね!

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手羽もと

脂と筋繊維ともに脂がしっかり乗っている。

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ヒモ

胸肉とあばらの間の肉をこのように呼んでいるそうで、玉ヒモ(卵管)ではない。

濃厚な風味があり力強い味わい。

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ハラミ

脂たっぷりだが身の強い酸味と協奏し、爽やかな印象を与える。

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非常に薄い皮だが、脂の旨味はしっかり。

薄く脂が乗っていると言う事は串打ちが難しい事を示すが、波打つような串打ちを行い、親方の技術を体感させてくれる。

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ソリレス

有名な希少部位。両もものつけ根の骨の窪みにある丸い肉。

つまり、写真で1羽分となる。

頂くと、皮はパツンと即座に爆ぜ、肉汁がなだれ込む…

繊細ながらに旨味が非常に強い肉汁で、余韻もしっかり。

甘美の一言。

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手羽先

皮が厚めで、香りが強い。

ウイキョウ(フェンネル)を使用。

スパイスを部位ごとに変えるところが変態的で素敵。

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松風地鶏の親子丼

甘みが低く醤油をキリッと利かせている。

卵の甘みと鶏の旨味を引き立てる味付けで、好み。

鶏の力強い旨味に加えて炭火の香りが加わり、米の炊き加減も良いため、一気に頂いてしまう親子丼。

前回の焼鳥まぶしご飯とともに、次から悩む事、必至(笑)

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伺ったのがバレンタインだったので、親方からのプレゼントw

今後も足を運び続けようと思います。

店名:焼鳥 今井(やきとり いまい)

食べるべき逸品:卓越した串打ちと火入れによる個性豊かな焼き鳥。

予算の目安:基本コース4,800円、おまかせコース8,800円

最寄駅:外苑前駅外苑前駅から400m

TEL:03-6447-1710

住所:東京都渋谷区神宮前3-42-11

営業時間:17:00~22:00

定休日:日曜、月曜、祝日

※人気店なので、事前予約もしくは訪問前の電話確認がベターです

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