こちらは根津の駅からほど近い、不忍通りに面した場所にある焼鳥店です。
ご主人の杉本浩一郎さんは元々大衆焼鳥店で修業をスタートされましたが、2007年より名店・蘭奢待(らんじゃたい)で修行され、現代的焼き鳥のノウハウを蓄積されました。
さらに「鶏肉の勉強の為にイタリア料理の道に入る」と言うユニークな選択をされた後、2015年に「根津 焼鳥 照隅」を開店されたそうです。
蘭奢待も比内地鶏がメインのお店ですが、こちらも同様に比内地鶏を主力とされています。
店内のカウンター奥の壁には株式会社本家比内地鶏の証明書が貼られています。
比内地鶏は秋田県の地鶏となり、出荷日齢は平均165日で、飼育方法は放し飼いです(言うまでもなく地鶏の筆頭となり高価格な鶏です)。
店内の雰囲気はカジュアルですが、細かいところにセンスが光り、BGMもスタイリッシュ。
細部への細やかなセンスは御料理にも活きていると実感しました。
照隅さんのコースの概要
こちらはコース2本立てでされており、3,800円のものと4,800円のものがあります。
大きな違いは〆のご飯モノの有無との事です。
ご飯は単品で注文可能との事でしたので、今回は3,800円の【おまかせ串コース】を頂きました。
【おまかせ串コース】は「前菜、レバーパテと鶏料理一品、焼き物7種、小鉢、鶏スープ」で構成されます。
本体価格3,800円にテーブルチャージ500円(御料理無し)が付き、税込みで4,730円。
ドリンクと追加で客単価8,000円程なので、焼鳥として考えると準高級価格帯のお店となります。
強気の価格設定は、腕への自信の表れだと感じました。
今回頂いて感じた特徴と魅力については、以下のとおりです。
・小ポーションで味覚を上品に構築した焼鳥
・各部位の魅力を引き出す正確な火入れ
・センス溢れる調味料と薬味使い
・備長炭の香りを強く付ける調理
火入れについては非常に細かく配慮されており、メインの焼き場所の脇に燻し用のスペースを作り、焼き上げた後やパテ用のバゲットを燻しておられます。
また、低温エリアも設置して、火入れを変えている模様です。
焼鳥、炭火であっても調理の温度帯を分けている点は、味に結実していました。
提供スピードは遅くなるものの、味わいには個性があり、個性を繊細に表現されています。
「大ぶりな焼鳥」や「タレ味の焼鳥」をガッツリ食べたい方には確実に合いませんが、「個性」と言う観点においては昨今のモダン焼鳥店の中でも十分に確立されていると実感しました。
個人的にはもう少しポーションが大きい焼き鳥もしくは品数が多い方が腑に落ちる次第ではございますが、今後が楽しみな焼鳥職人さんだと感じます。
【おまかせコース】の内訳
・鶏と生姜のスープ
・胸肉のタタキ、笹身の湯引き
・レバーパテとぼんじりのタルタル
・振り袖
・ハツ
・鶉卵
・ヤングコーン
・鶏皮の二杯酢和え、糠漬け
・ソリレス
・ボンペタ
・つくね
・鶏スープ
・手羽先 追加330円
・親子丼 追加935円
この度頂いた飲み物
瓶ビール(赤星ラガー)825円、山の寿レモンサワー715円、
季の美 京都ドライジン・ジントニック825円、
洌・純米1,045円、菊姫・山廃純米990円
照隅さんのおまかせコースの詳細
鶏と生姜のスープ
旨味がありつつサッパリな仕様の鶏スープ。
味付けのみならず提供温度帯も考えられている。
40℃前後で提供され、初夏に嬉しい温度帯。
胸肉のタタキ、笹身の湯引き
自家製ポン酢と卵黄の組み合わせはセンスが良い。
サッパリと濃厚のコントラストが序盤戦に上品に盛り上げてくれる。
胸肉は皮付きで香ばしいが、部位的にサッパリ、しかし旨味が強いのは比内地鶏ならではか。
美味しい鶏は胸肉の旨味で分かるもの。
レバーパテとぼんじりのタルタル
大変魅力的な組み合わせで共に美味しい。
今や焼鳥店で王道の酒肴となったレバーパテに創作的な一品を組み合わせるセンスも嬉しい。
パテは洋酒のフレイバーは弱く上品な味わいで、乳製品の油脂でコクを加えまろやかに
仕上げている模様。
そして、バゲットが美味しい点も魅力。
「根津のパン」のバゲットを使用されているそう。
バゲットが良くないとレバーパテは画竜点睛を欠くものなので。
ぼんじりはイメージする「ぼんじりっぽさ」が無く、不思議な味わいを楽しませてくれる。
付け合わせはクレソンで良い相性。
振り袖
サクッ!と弾け、ひたすらジューシィ!
皮目の脂もじゅわっと込み上げ、香りと共に食欲を高める。
脂や香ばしさがありつつ、胸肉に近い肉なのでサッパリ感がある。
間に異なる食感(コリッと食感)の部位を挟む点も魅力。
これは一串目からテンションが上がる。
鮨店の一貫目と同じく、おまかせの焼鳥店は一串目が重要だ。
笹身もしくは胸肉の山葵で始めるのは定石。
それ以外のタネを選び、名刺代わりの一串目を出す職人さんには好感を抱く。
ハツ
ぷるっとジューシィで、脂も焦がさず上品に仕上げている。
調味料は塩と黒胡椒。
鶉卵
半熟でトロトロ。濃厚な味わい。
ヤングコーン
沖縄産。香り良く甘い。
低温で長時間じっくりと焼いて甘みを引き出している。
鶏皮の二杯酢和え、糠漬け
二杯酢和えにはパクチーが使用されていて面白い。
しかも、たっぷりではなく少量である点が素晴らしい。
パクチーはたっぷり乗せれば良いというものではないので。
糠漬けも良い味。
ソリレス
むっちりした筋繊維の食感を楽しませつつ、ジューシィ。
しかも、過度にジューシィではなくしっとりとほどける食感。
山椒の使用量も程良い。
ボンペタ
掛けられているのは白胡麻とフェンネルか?と思って尋ねたところ、中東のミックススパイス「デュカ」であった。
つくね
ジューシィでホロッとした食感のつくねで、軟骨は入っていない。
生姜が利いている。
キンカンとともに。
手羽先 追加
身離れが良く、サッパリした味わいの手羽先。
小ポーションで上品な味。
親子丼 追加
胸肉ともも肉を使用。卵が美味しい親子丼。
甘みや醤油の塩梅も中々。
鶏スープ
これは前菜のスープとは異なり濃厚な味わいで、熱々。
スープを2種類出されるのは大変魅力的な試み。
ポーションが小さい点は個人的に気になりましたが、
「また伺いたい」と感じさせる味わいの焼鳥店です。
根津 焼鳥 照隅さんのお店の情報
WEB予約はぐるなびより可能です。
店名:根津 焼鳥 照隅(ねづ やきとり てるすみ)
予算の目安:おまかせ串コース4,730円、照隅コース5,830円(税・チャージ込み)
最寄駅:根津駅から50m
TEL:03-5834-8891
住所:東京都文京区根津1-1-21
営業時間:18:00~24:00 L.O. food 23:00 / drink 23:30
定休日:毎週木曜、第1、第3水曜
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